【完結】結婚した途端記憶喪失を装いはじめた夫と離婚します

との

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49.ハリーお兄ちゃんは期待できるの?

「お前らに殺されたミゲルは逃げる余裕もなかったのによく堂々と言えるよなあ。お前らを見逃す気があるならわざわざ手間かけて探すわけないだろ?
ハリー、アンタはそれを知ってたんだよな。弟のセオドアが何をしでかしたか、他にも散々やらかしてるのも承知でワッツの下で働いてるんだよな」

 牢に入れられてからずっと所在無げに彷徨いていたハリーが足を止めて柵に縋りついた。

「お、弟と妹が人質になっていて⋯⋯言い訳だと分かっていますし亡くなった彼には申し訳ありませんが、俺に残された家族はアイツらだけなんです!」

「ミゲルのご両親は健在だから同じ事言ってみる? ミゲルってひとりっ子だったの。
『うちの弟がちょっとした悪戯に加担したせいであんなことになったのは知ってるんですねどね~、俺は犯罪者になりながら家族を守ってるんでアンタ達の辛さなんか知ったこっちゃないんです』って堂々と言う? さっきハリーが言ったのってそう言う意味だよね?」

「そんなつもりは⋯⋯弟妹の安全が確保できたら必ず償います! それまででいいんです、その後はどのような事でもしますから今だけ見逃してもらえませんか!?」

「セオドアを見逃すつもりなんてないからそれは無理だね~。それに三兄妹がいなくなったらワッツ達がミゲルのご両親に八つ当たりするかもしれないじゃん。この戦いは私が勝手にはじめたからおじさんやおばさんは何も知らなくてさ、迷惑なんて絶対にかけられないの。
それに、やらかした本人は罪を償わせず上手い事逃がせたんで代理で謝罪に来ました~、なんでもやりますから許してね~って言うつもり? バカにしすぎじゃん」

 腕を組んで仁王立ちしたメリッサが目を細めてハリーを睨んだ。

「そんなつもりはありません。アイツにはちゃんと反省させますし、頭を下げさせて詫びを言わせますから」

「確か『ごめんで済むなら騎士団も牢屋もいらない』って言うんだっけ? 妹のリリアナは現時点で高位貴族への不敬をやらかし続けてて断罪への道をものすごい勢いで突き進んでるんだけど、劣悪な病院とワッツの監視から助け出すのは私の発案だったの。
セオドアは『ちょっとした悪戯』で馬車に仕掛けをしてミゲルを死なせる事になったでしょ? で、『ちょっとした親切心』で私が病院から助け出したから高位貴族に不敬を働くチャンスができたって考えると、種類は違うけど結果は一緒だよね。
リリアナが断罪された後『死んだんだから仕方ないよね』って言ってあげようか? 『ちょっとした親切心』だっただけでまさかこんな事になるとは思ってなかったんだ~、なんかして欲しい事あるならやるからねって言ってあげる。
ミゲルはもう死んだんだから仕方ない、我慢しろって言うならリリアナはもう死んだから仕方ない我慢だよって言われてもにっこり頷いてね」

「リリアナが高位貴族に不敬って⋯⋯アイツは甘えん坊で頼りなくて、病院で介護を受けなきゃいけないくらい重症で⋯⋯不敬なんてできるわけがない!」

「気にするのはそこ? まあ、そうか⋯⋯リリアナはすっごく元気よ? あの病院は危険だからって保護したんだけど全然話を聞かなくて、毎日伯爵夫人の座に座ろうとして大騒ぎしてる。
言葉の問題だけじゃなく現伯爵のベッドに裸で潜り込んだり伯爵のお母様のお部屋やあちこちから物を盗んで⋯⋯バレたら『もう直ぐ全部自分の物になる』とか『ババア⋯⋯ 伯爵のお母様のことね⋯⋯より私の方が似合う』って開き直ってる。
伯爵の部屋に潜り込んで子作りする為にシーツで作ったロープを使って2階から抜け出すくらいだし、怪我の後遺症なんて気配もないわね」

「まさかそんな! 俺の聞いてた話と違う⋯⋯リリアナは真面に歩けなくて泣いてばかりだとか食事が喉を通らないくらい憔悴してるとか」

「被害者は隣にいるケニス・ラインフェルト伯爵とお母様のマーサ様で後は⋯⋯殴られたり蹴られたりした使用人達だね。被害を受け続けてる証人が目の前にいるから聞いてみたら?」

「殴られたじゃなくリリアナが殴った?」

「当家ではどんな失礼な相手でも手を出したりはしない。あの時は家に帰ったら鍵をかけていたはずの俺の部屋のベッドにリリアナが全裸で寝てたから使用人に連れ出してもらおうとしたんだが、今日からここで寝ると騒いで使用人達をボコボコにして捻挫や骨折をさせた。
因みに俺は終日外出していて部屋に入る時からずっと執事と一緒だったから冤罪をかけようとしても無駄だからな」

 ハリーが目を見開きポカンと口を開けてケニスを見つめた。

「鍵開けの技術も凄腕だから全部屋の鍵を最新式に付け替えたってマーサ様が仰ってたし、なくなった物があったらリリアナを泊めている部屋に行けって使用人達が言ってるし、今の所全部リリアナに貸してる部屋から出てきてる。
あ、元の場所に戻そうとすると『もうアタシの物なんだから』って騒いで暴れるからリリアナは間違いなく自白してる。使用人達が意地悪したんじゃないって分かるよね」

「マジで!? それ聞いてないんだけど」

 ハリー同様に目を大きく見開いたケニスがメリッサの肩を掴んだ。

「ケニスがこれ以上窶れたら可哀想だから内緒だって仰ってた。ついでに言っちゃうけど、ケニスの部屋は特に狙われてリリアナはちょっと変態⋯⋯ゲフンゲフン ⋯⋯特定の物に引き寄せられるから常時複数の従者を置いてる」

「はぁ~、それがなんなのか想像がついたのが怖い。ちょっと前に全部新品に変わって、洗濯物の管理が厳重になったからね。あ~、もう無理! 絶対我慢できない!
ハリー、喜べ。明日の朝一番でリリアナに会えるし終日おしゃべりもできるようになる。リリアナの部屋はお前の向かい側にしてやるからな」

「ま、待って下さい! リリアナには俺からちゃんと言い聞かせますから! 地下牢に入れるのだけは!」

「俺のパ◯ツを盗む奴を放置してられっか!」

「プッ⋯⋯あ、ごめん」

「パ、パ◯ツを盗むって嘘だろ⋯⋯それは絶対に嘘だ!」

「貴族は結婚したら下着も共有するって病院にいた貴族令嬢に教わったんですって。で、毎日ケニスの部屋の周りを彷徨いたり洗い場に置いてある洗濯前の衣服を漁ってるって」

「な、なあ⋯⋯聞くのが怖いんだけど、それってまさか⋯⋯いや、なんでもない。聞くは気の毒、見るは目の毒だもんな、俺は何も聞いてない!」

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