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50.久しぶりに会った妹は
ブツブツと呟いているケニスの肩を叩いて『大丈夫、今穿いてるのは新品ばかりだからね』と慰めてからハリーの方に顔を向けた。
「リリアナの様子を知らないって事はセオドアの様子も知らないって事ね。最後に会ったのはいつでどんな様子だった?」
「セオドア⋯⋯は半年前に一度遠目に見ただけだし⋯⋯ぼうっと椅子に座ってただけで⋯⋯様子はよくわかりません」
リリアナの奇行にショックを受けたらしいハリーが項垂れたまま訥々と説明した。
「それヤバくない?」
「人数を増やした方が良さそうだね。薬物とかの可能性がありそうだし、暴れたら何をしでかすかわからない」
顔を上げたハリーがガバッと牢の鉄柵にしがみついた。
「セオドアのところに行くなら俺も連れてって下さい! 絶対に裏切らないと約束しますし、領地の屋敷の間取りとか詳しいですから!」
必死の形相のハリーが鉄柵を握りしめた指が白くなっていた。
「次にピーター・ワッツに報告に行くのはいつだったの?」
「毎週土曜の夜に伺い報告することになっております。連れて行っていただけますか!?」
「初めはそのつもりでお願いできたら良いなあって思ってたんだけどね、やめといた方が良さそうだって思い直したの」
「ああ、死んだミゲルはどうでもいいって感じで罪悪感は薄そうだし倫理観も歪んでるから信用できない」
「申し訳ありませんでした。いくらでもお詫び致します。弟を助けたいんです! どうか、どうか連れて行って下さい。この通りお願いします!」
土下座したハリーのつむじを見つめながらメリッサが冷たく返事を返した。
「弟を助ける為に逃しましたって言われるのが関の山だと思う。今回の件にはもうすでに多くの人が関わってるの。セオドアの幸せの為に犠牲を出すわけにはいかないから悪いけど連れて行けない」
翌日、ケニスがメイドにガッチリと両脇を掴まれたリリアナを連れて地下牢への階段を降りはじめた。
「ケニス~、こんなとこに何があるの? 折角ケニスが会いにきてくれたのに、このメイド達が邪魔なんだけどぉ」
「⋯⋯」
「お仕事が終わったんならさぁ、こんな不気味なとこじゃなくてどこか連れてってよ!
もう屋敷にいるの飽きちゃったんだもん、いくら忙しいからってリリアナぷんぷんなんだからね!
貴族って休みの日には劇を見に行ったりお買い物に行ったり豪華な食事に行ったりするんでしょお?⋯⋯ケニス~、なんで黙ってるの? もう、アンタ達が邪魔するからアタシ達の話が続かないんだからね! どっか行きなさ⋯⋯ちょ、離してよ!
ケニス~、聞いてる? アタシ欲しいものがあるんだ~。ほら、アタシ何も持たずにここに来たから足りないものがいっぱいじゃん。ケニスの為にう~んとう~んと綺麗にしてなくちゃいけないから⋯⋯だから、この邪魔な使用人をどっかにやっちゃって買い物に連れてってぇ。アタシを救い出した運命の王子様の責任なんだからね~!
豪華なドレスやアクセサリーを買ってお友達の貴族とかにそろそろ紹介して欲しいしぃ、そろそろ貴族のパーティーとかにも連れてって~。そしたらこないだのおばさんなんかよりアタシの方が伯爵夫人に相応しいってみんな思って羨ましがられちゃうよ!? アタシより可愛い子なんて絶対ぜ~ったいいないもん。
うふふっ、アタシってば王子様に救い出されたお姫様にピッタリだもんね⋯⋯ケニスの自慢の恋人だしね! 王宮の舞踏会とかでもアタシが一番綺麗なのは間違いないから、早く連れてって~。
あと、ケニスのお母様だって知ってるから我慢したげてるけどババア⋯⋯年寄りはもう口出すなって言っといてね! それか、もうアタシの家なんだからアタシが女主人だもん、追い出しちゃおうか?」
階段を降りたところで立ち止まってリリアナが言いたいことを全部言い終わるのを待っていたケニスが牢の奥に向かって歩き出し一番奥の牢の前で立ち止まった。
「ハリー、久しぶりの対面なんだろ? これが甘えん坊でなんとかって言ってたお前の妹だ」
リリアナの声が聞こえてきた時から鉄柵を掴んでいたハリーはあまりにも酷い話に絶句していた。
「感動の再会だろ? 守っていた療養中の妹と生きてるうちに対面できて良かったな」
「リリアナ⋯⋯お前、さっきの話は本気で言ってたのか?」
「アンタ誰? ケニス~、この人アタシのこと睨んでるしぃ⋯⋯超怖~い、こんなとこさっさと出ようよぉ。ちょっとアンタ達、今からケニスとお茶するからアタシの部屋に準備しなさいよ! で、最高のお茶と珍しいお菓子をいっぱい持ってきなさい! もうすぐケニスの妻になって伯爵夫人になるアタシの命令なんだから言うこと聞かなかったら鞭打ちして叩き出すんだから! 貴族の家ではそうするって友達に聞いたんだからね。
ほんと、ここんちの使用人ってマジ使えないやつばっか⋯⋯あ、もうアタシの家なんだからみんな辞めさせちゃえばいいんだ! 使えない使用人に鞭打って追い出すのは女主人の仕事なんだって知ってるもの。
ケニスの為にちゃ~んと伯爵夫人の仕事をしてあげるから、今晩はアタシの部屋に来なきゃダメだぞ~。あんまりほっときすぎると浮気しちゃうからね~」
「リリアナ、折角兄のハリーに会えたのに無視するのは酷くないか?」
「えぇ? ハリー⋯⋯この人があ? う~ん、似てるけどぉ⋯⋯でもなぁ、地下牢に入ってるって事は犯罪者でしょお? 伯爵夫人になるのに犯罪者の兄がいるのはまずいよねえ⋯⋯多分だけどぉ、名前が同じなだけの他人なんだよ。もし兄のハリーだったとしても妹の幸せの為に他人ですって言うはず! だから、ほっといてお茶しよ? 何を買いに行くか決めなくちゃだもんね」
ハリーに向かって『フンっ!』と鼻を鳴らしたリリアナがケニスに手を伸ばしかけてメイドに阻まれた。
「ちょっと! 退きなさいよ、アンタ邪魔な⋯⋯」
「リリアナ! ちょっとその部屋の中を覗いてみてくれないか?」
メイドに向けて手を振り上げたリリアナの言葉を遮ったケニスが、ハリーの牢の向かいの牢を指差した。
「なになに? え~、もしかしてサプライズってやつ? やだぁ、早く言ってくれたらいいのに~、やっぱりアタシ愛されてるじゃん」
「リリアナの様子を知らないって事はセオドアの様子も知らないって事ね。最後に会ったのはいつでどんな様子だった?」
「セオドア⋯⋯は半年前に一度遠目に見ただけだし⋯⋯ぼうっと椅子に座ってただけで⋯⋯様子はよくわかりません」
リリアナの奇行にショックを受けたらしいハリーが項垂れたまま訥々と説明した。
「それヤバくない?」
「人数を増やした方が良さそうだね。薬物とかの可能性がありそうだし、暴れたら何をしでかすかわからない」
顔を上げたハリーがガバッと牢の鉄柵にしがみついた。
「セオドアのところに行くなら俺も連れてって下さい! 絶対に裏切らないと約束しますし、領地の屋敷の間取りとか詳しいですから!」
必死の形相のハリーが鉄柵を握りしめた指が白くなっていた。
「次にピーター・ワッツに報告に行くのはいつだったの?」
「毎週土曜の夜に伺い報告することになっております。連れて行っていただけますか!?」
「初めはそのつもりでお願いできたら良いなあって思ってたんだけどね、やめといた方が良さそうだって思い直したの」
「ああ、死んだミゲルはどうでもいいって感じで罪悪感は薄そうだし倫理観も歪んでるから信用できない」
「申し訳ありませんでした。いくらでもお詫び致します。弟を助けたいんです! どうか、どうか連れて行って下さい。この通りお願いします!」
土下座したハリーのつむじを見つめながらメリッサが冷たく返事を返した。
「弟を助ける為に逃しましたって言われるのが関の山だと思う。今回の件にはもうすでに多くの人が関わってるの。セオドアの幸せの為に犠牲を出すわけにはいかないから悪いけど連れて行けない」
翌日、ケニスがメイドにガッチリと両脇を掴まれたリリアナを連れて地下牢への階段を降りはじめた。
「ケニス~、こんなとこに何があるの? 折角ケニスが会いにきてくれたのに、このメイド達が邪魔なんだけどぉ」
「⋯⋯」
「お仕事が終わったんならさぁ、こんな不気味なとこじゃなくてどこか連れてってよ!
もう屋敷にいるの飽きちゃったんだもん、いくら忙しいからってリリアナぷんぷんなんだからね!
貴族って休みの日には劇を見に行ったりお買い物に行ったり豪華な食事に行ったりするんでしょお?⋯⋯ケニス~、なんで黙ってるの? もう、アンタ達が邪魔するからアタシ達の話が続かないんだからね! どっか行きなさ⋯⋯ちょ、離してよ!
ケニス~、聞いてる? アタシ欲しいものがあるんだ~。ほら、アタシ何も持たずにここに来たから足りないものがいっぱいじゃん。ケニスの為にう~んとう~んと綺麗にしてなくちゃいけないから⋯⋯だから、この邪魔な使用人をどっかにやっちゃって買い物に連れてってぇ。アタシを救い出した運命の王子様の責任なんだからね~!
豪華なドレスやアクセサリーを買ってお友達の貴族とかにそろそろ紹介して欲しいしぃ、そろそろ貴族のパーティーとかにも連れてって~。そしたらこないだのおばさんなんかよりアタシの方が伯爵夫人に相応しいってみんな思って羨ましがられちゃうよ!? アタシより可愛い子なんて絶対ぜ~ったいいないもん。
うふふっ、アタシってば王子様に救い出されたお姫様にピッタリだもんね⋯⋯ケニスの自慢の恋人だしね! 王宮の舞踏会とかでもアタシが一番綺麗なのは間違いないから、早く連れてって~。
あと、ケニスのお母様だって知ってるから我慢したげてるけどババア⋯⋯年寄りはもう口出すなって言っといてね! それか、もうアタシの家なんだからアタシが女主人だもん、追い出しちゃおうか?」
階段を降りたところで立ち止まってリリアナが言いたいことを全部言い終わるのを待っていたケニスが牢の奥に向かって歩き出し一番奥の牢の前で立ち止まった。
「ハリー、久しぶりの対面なんだろ? これが甘えん坊でなんとかって言ってたお前の妹だ」
リリアナの声が聞こえてきた時から鉄柵を掴んでいたハリーはあまりにも酷い話に絶句していた。
「感動の再会だろ? 守っていた療養中の妹と生きてるうちに対面できて良かったな」
「リリアナ⋯⋯お前、さっきの話は本気で言ってたのか?」
「アンタ誰? ケニス~、この人アタシのこと睨んでるしぃ⋯⋯超怖~い、こんなとこさっさと出ようよぉ。ちょっとアンタ達、今からケニスとお茶するからアタシの部屋に準備しなさいよ! で、最高のお茶と珍しいお菓子をいっぱい持ってきなさい! もうすぐケニスの妻になって伯爵夫人になるアタシの命令なんだから言うこと聞かなかったら鞭打ちして叩き出すんだから! 貴族の家ではそうするって友達に聞いたんだからね。
ほんと、ここんちの使用人ってマジ使えないやつばっか⋯⋯あ、もうアタシの家なんだからみんな辞めさせちゃえばいいんだ! 使えない使用人に鞭打って追い出すのは女主人の仕事なんだって知ってるもの。
ケニスの為にちゃ~んと伯爵夫人の仕事をしてあげるから、今晩はアタシの部屋に来なきゃダメだぞ~。あんまりほっときすぎると浮気しちゃうからね~」
「リリアナ、折角兄のハリーに会えたのに無視するのは酷くないか?」
「えぇ? ハリー⋯⋯この人があ? う~ん、似てるけどぉ⋯⋯でもなぁ、地下牢に入ってるって事は犯罪者でしょお? 伯爵夫人になるのに犯罪者の兄がいるのはまずいよねえ⋯⋯多分だけどぉ、名前が同じなだけの他人なんだよ。もし兄のハリーだったとしても妹の幸せの為に他人ですって言うはず! だから、ほっといてお茶しよ? 何を買いに行くか決めなくちゃだもんね」
ハリーに向かって『フンっ!』と鼻を鳴らしたリリアナがケニスに手を伸ばしかけてメイドに阻まれた。
「ちょっと! 退きなさいよ、アンタ邪魔な⋯⋯」
「リリアナ! ちょっとその部屋の中を覗いてみてくれないか?」
メイドに向けて手を振り上げたリリアナの言葉を遮ったケニスが、ハリーの牢の向かいの牢を指差した。
「なになに? え~、もしかしてサプライズってやつ? やだぁ、早く言ってくれたらいいのに~、やっぱりアタシ愛されてるじゃん」
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