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52.弁護士様も唖然
「あ~、分かった。商会長には言わないでおいてくれよ」
「話したら問題がありますか? 仕事を手伝ってくれるのが優秀な人なら喜ぶと思いますけど?」
(優秀な人ならね)
「あ~、まあそうなんだけどなあ。俺が手伝うって言えば喜ぶのは知ってるけど⋯⋯なんて言うか色々、貴族の都合みたいなのがあるんだよ。平民の仕事を貴族が手伝ってあげるなんて異例の事だからあちこちに手を回しておかないとね」
無駄に自信だけあるステファンは腕を組んで鷹揚に頷きながら『平民には分かんねえ貴族のしきたりだよ』と呟いた。
(ステファンってなんでも『貴族の』って言えば誤魔化せると思ってるけど、この商会ってこの国の王家と教会以外ならどことでも取引するんだけど? つまり貴族の顧客山盛りだよ?)
「じゃあ、とりあえず預かっておきますね。例のゲーム、出発は来週末ですよね。準備とか大丈夫なんですか?」
「ああ、そっちも問題ないさ~。俺は島にただ行くだけで勝ちが決まってるからな~」
(ん? 良いこと聞いちゃった~。ステファンがなんかをおねだりする時って必ずぽろっと口を滑らす癖があるよね。
あ! ステファンと普通の出会いをしてたらリリアナさんを紹介してあげられたのになあ⋯⋯似たもの同士でピッタリかも)
「それはすごいですね! 絶対に負けない賭けなんて⋯⋯あ! まさか、ステファンに限って八百長とか詐欺とかじゃないですよね?」
ふふんと鼻で笑ったステファンが目を細めた。
「んなことやるわけねえだろ? いいか、ゲームってのは頭でやるんだよ。作戦を立てて餌を撒いて敵が罠にかかるのを待つ、タイミングを見極めて一番美味しいとこで『キュッ!』て絞めりゃこっちのもんだ。
バカにも学のない平民にもできねえ遊びだな。心理戦ってやつだから、騙されたって騒ぐ奴もいるがそれこそお笑い種ってやつ。罠を回避できねえ奴の方が悪いんだからな」
「そうやって必ず勝ちをモノにするってすごい頭を使いそう!」
「俺みたいな大学卒で資格も持ってる位のやつじゃないと考えつかねえだろうなあ」
メリッサの嘘くさい褒め言葉に騙されて機嫌を良くしたステファンはソファにふんぞり返って腕を組んだ。
(この様子なら突っ込めばもうちょっと何か喋るかもね)
「でも⋯⋯運悪く負けて景品を奪われちゃうと気分が凹みそう」
「賞品つったってピンからキリまであるからな~、以前ワッツがやった事があるんだが⋯⋯箱と中身は別扱いってな。まあ、俺はアイツなんかのちゃちな計画なんかと違ってあっと驚くような仕掛けを考えてるけどな」
それ以上はどう言う意味か聞いてもニヤニヤ笑うだけで何も答えないステファンは『明日また来る』と言って商会を出て行った。
(相変わらずのクズっぷりは絶好調よね~、その方が下手に動き回られなくて助かるんだけどね)
ステファンが持ってきた書類を鞄に入れたメリッサは颯爽と立ち上がった。
モートン商会の顧問弁護士が所属する弁護士事務所は大通りの真ん中に立つ3階建ての大きな建物。1階は受付や応接室で2階は民事訴訟専門、3階が今からメリッサが行く企業専門になっている。
所属する弁護士の数としてはそれほど多くない⋯⋯少数精鋭を謳っているが実力と依頼金額の高さはこの国一番。
この国では法学部の学位は法曹資格と直結していない。司法官・弁護士・公証人等は各職業訓練校の試験を受けて入所し、修習を受けて修習試験に合格することが必要である。
(学校によっては『貴族ならお金で資格が買えます』が通用してるから卒業した職業訓練校の名前も大事なのよね)
その為、この事務所では登録している弁護士のネームプレートに卒業した訓練校の名前まで明記している徹底ぶり。
受付に声をかけるとすぐに3階のチャールズ・ドーソン弁護士の部屋に通されたメリッサは簡単な時節の挨拶の後本題を切り出した。
「⋯⋯これはまた、幼稚と言いますかおままごとで使うような契約書ですな」
「では、サインしても問題ないって事で合ってます?」
「わざわざ確認するまでもありません。委任状なのに権利の移行と書かれているだけでアウトですし、どのような権利を指しているのかも明記されていません。
書類に記載された日付の時点で妻でも義父でもなければ詐欺罪が適用されかねませんよ」
「例えばこの日付以降にステファンが婚姻届が差し戻しになっていると気付いて婚姻届を出し直ししなきゃならなくなった場合はどうなりますか?」
「その場合でも遡っての申請はできないと決まっていますからここにある日付より後であれば問題はないです。婚姻届が不受理なのをメリッサ様が知らなかった事が肝心ですが」
メリッサが書類が不備で差し戻されていた事を知っていたと証明されるとステファンではなくメリッサに詐欺罪が適用される可能性があると言う。
「差し戻しになった書類は父のところで止まっていますし、私自身はいまだに『白い結婚』だから(仮)とか(偽)だとは思ってたと言い張るつもりです。それでは問題になるでしょうか?」
ポカンと口を開けたドーソンが『え? マジですか!?』と呟いた。
「ステファンは婚約者の頃から愛人がいましたし、結婚式当日の夜から1週間愛人と遊びまわってたんです。で、帰ってきたら『記憶喪失だったから』って。そんな状態でしたから、いまだに友達以下の繋がりですね。情報とお金を交換するだけの清く正しくない関係って感じかしら」
ステファンとは手を繋いだことさえない見事に清い関係の2人。
ステファンにとってメリッサはお金があるだけの冴えない行き遅れなので、お金をせびりに来る時以外は性別さえ気付いていないのかもと思うほど関心がない。
メリッサにとってステファンはメイルーン達全員を捕まえる為の情報源でしかない。知っていることを吐き出してくれれば情報料を払いメイルーン達を上手く誘導してくれれば謝礼を渡すと言う、とてもビジネスライクな関係だと思っている。
「話したら問題がありますか? 仕事を手伝ってくれるのが優秀な人なら喜ぶと思いますけど?」
(優秀な人ならね)
「あ~、まあそうなんだけどなあ。俺が手伝うって言えば喜ぶのは知ってるけど⋯⋯なんて言うか色々、貴族の都合みたいなのがあるんだよ。平民の仕事を貴族が手伝ってあげるなんて異例の事だからあちこちに手を回しておかないとね」
無駄に自信だけあるステファンは腕を組んで鷹揚に頷きながら『平民には分かんねえ貴族のしきたりだよ』と呟いた。
(ステファンってなんでも『貴族の』って言えば誤魔化せると思ってるけど、この商会ってこの国の王家と教会以外ならどことでも取引するんだけど? つまり貴族の顧客山盛りだよ?)
「じゃあ、とりあえず預かっておきますね。例のゲーム、出発は来週末ですよね。準備とか大丈夫なんですか?」
「ああ、そっちも問題ないさ~。俺は島にただ行くだけで勝ちが決まってるからな~」
(ん? 良いこと聞いちゃった~。ステファンがなんかをおねだりする時って必ずぽろっと口を滑らす癖があるよね。
あ! ステファンと普通の出会いをしてたらリリアナさんを紹介してあげられたのになあ⋯⋯似たもの同士でピッタリかも)
「それはすごいですね! 絶対に負けない賭けなんて⋯⋯あ! まさか、ステファンに限って八百長とか詐欺とかじゃないですよね?」
ふふんと鼻で笑ったステファンが目を細めた。
「んなことやるわけねえだろ? いいか、ゲームってのは頭でやるんだよ。作戦を立てて餌を撒いて敵が罠にかかるのを待つ、タイミングを見極めて一番美味しいとこで『キュッ!』て絞めりゃこっちのもんだ。
バカにも学のない平民にもできねえ遊びだな。心理戦ってやつだから、騙されたって騒ぐ奴もいるがそれこそお笑い種ってやつ。罠を回避できねえ奴の方が悪いんだからな」
「そうやって必ず勝ちをモノにするってすごい頭を使いそう!」
「俺みたいな大学卒で資格も持ってる位のやつじゃないと考えつかねえだろうなあ」
メリッサの嘘くさい褒め言葉に騙されて機嫌を良くしたステファンはソファにふんぞり返って腕を組んだ。
(この様子なら突っ込めばもうちょっと何か喋るかもね)
「でも⋯⋯運悪く負けて景品を奪われちゃうと気分が凹みそう」
「賞品つったってピンからキリまであるからな~、以前ワッツがやった事があるんだが⋯⋯箱と中身は別扱いってな。まあ、俺はアイツなんかのちゃちな計画なんかと違ってあっと驚くような仕掛けを考えてるけどな」
それ以上はどう言う意味か聞いてもニヤニヤ笑うだけで何も答えないステファンは『明日また来る』と言って商会を出て行った。
(相変わらずのクズっぷりは絶好調よね~、その方が下手に動き回られなくて助かるんだけどね)
ステファンが持ってきた書類を鞄に入れたメリッサは颯爽と立ち上がった。
モートン商会の顧問弁護士が所属する弁護士事務所は大通りの真ん中に立つ3階建ての大きな建物。1階は受付や応接室で2階は民事訴訟専門、3階が今からメリッサが行く企業専門になっている。
所属する弁護士の数としてはそれほど多くない⋯⋯少数精鋭を謳っているが実力と依頼金額の高さはこの国一番。
この国では法学部の学位は法曹資格と直結していない。司法官・弁護士・公証人等は各職業訓練校の試験を受けて入所し、修習を受けて修習試験に合格することが必要である。
(学校によっては『貴族ならお金で資格が買えます』が通用してるから卒業した職業訓練校の名前も大事なのよね)
その為、この事務所では登録している弁護士のネームプレートに卒業した訓練校の名前まで明記している徹底ぶり。
受付に声をかけるとすぐに3階のチャールズ・ドーソン弁護士の部屋に通されたメリッサは簡単な時節の挨拶の後本題を切り出した。
「⋯⋯これはまた、幼稚と言いますかおままごとで使うような契約書ですな」
「では、サインしても問題ないって事で合ってます?」
「わざわざ確認するまでもありません。委任状なのに権利の移行と書かれているだけでアウトですし、どのような権利を指しているのかも明記されていません。
書類に記載された日付の時点で妻でも義父でもなければ詐欺罪が適用されかねませんよ」
「例えばこの日付以降にステファンが婚姻届が差し戻しになっていると気付いて婚姻届を出し直ししなきゃならなくなった場合はどうなりますか?」
「その場合でも遡っての申請はできないと決まっていますからここにある日付より後であれば問題はないです。婚姻届が不受理なのをメリッサ様が知らなかった事が肝心ですが」
メリッサが書類が不備で差し戻されていた事を知っていたと証明されるとステファンではなくメリッサに詐欺罪が適用される可能性があると言う。
「差し戻しになった書類は父のところで止まっていますし、私自身はいまだに『白い結婚』だから(仮)とか(偽)だとは思ってたと言い張るつもりです。それでは問題になるでしょうか?」
ポカンと口を開けたドーソンが『え? マジですか!?』と呟いた。
「ステファンは婚約者の頃から愛人がいましたし、結婚式当日の夜から1週間愛人と遊びまわってたんです。で、帰ってきたら『記憶喪失だったから』って。そんな状態でしたから、いまだに友達以下の繋がりですね。情報とお金を交換するだけの清く正しくない関係って感じかしら」
ステファンとは手を繋いだことさえない見事に清い関係の2人。
ステファンにとってメリッサはお金があるだけの冴えない行き遅れなので、お金をせびりに来る時以外は性別さえ気付いていないのかもと思うほど関心がない。
メリッサにとってステファンはメイルーン達全員を捕まえる為の情報源でしかない。知っていることを吐き出してくれれば情報料を払いメイルーン達を上手く誘導してくれれば謝礼を渡すと言う、とてもビジネスライクな関係だと思っている。
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小説家になろうでも、掲載しています。
Hotランキング1位、ありがとうございます。