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57.箱と中身が違うのは
「父上がメリッサとミゲルに婚約を無理矢理押し付けなければアイツは大学に入ってないんだから、その理論は俺にも当てはまるんだよ? それにさあ、メリッサが奴らの手に落ちたら俺は絶対乗り込んでいくし。だったらこのまま作戦に参加しといた方が良くない?」
「⋯⋯何があっても無視すれば良いじゃん。ケニスには代々続いてきたラインフェルト伯爵家を守る義務があるからね!」
「なら、俺はラインフェルトから籍を抜いてくる。母上に養子をとってくださいって言っとくから大丈夫だし、おじさんさえ頑張ってくれたら母上が後継を産む可能性だってあるからね⋯⋯このふたりならまだ大丈夫のはずだよ」
「父さんが頑張るって何を?」
「俺はもう無理! 種切れだからな、打ち止めで干上がってんの⋯⋯ケニス、マーサ様にケツを引っ叩かれたいのか!?」
「えーっと、ええっ! 父さんとマーサおば様ってそういう関係だったの!? 全然知らなかった、マジかあ~」
「はぁ、ケニスのせいでメリッサが勘違いしてんじゃねえか! これ、どうしてくれんだよ!?」
「あ~、なんか納得! ケニスのお仕置き用地下牢より父さん用の地下牢の方が絶対必要だもんね!」
口をぽかんと開けたルーカスの膝にステファンが持ってきた書類をポンと置いたメリッサは得意満面で腕を組んだが、ケニスは珍しく呆然とするルーカスを見てゲラゲラと笑い出した。
「なあ⋯⋯あれ、どう言う事?」
「メリッサですからね、あんなもんですよ」
「おう、メリッサだもんな⋯⋯」
「その書類をステファンが持ってきたからサインして渡そうと思ってる」
ようやく我に返って書類を手にしたルーカスが内容を確認してからケニスに差し出した。
「ドーソンに確認は取ったんだな」
「うん、法律上確実に役に立たない書類だから問題ないって」
弁護士事務所でドーソン弁護士から聞いた話を説明し終わるとケニスが恐る恐ると言った感じで聞いてきた。
「これってまさかと思うけど⋯⋯殺られるのはおじさんだけってこと?」
書類から顔を上げたケニスが目に期待を浮かべてルーカスを見つめた。
「ケニスにしたら素早い判断だがな、何でそんな嬉しそうなんだよ!」
「だってメリッサに対する危険度が少し下がったなあって思ったら嬉しいに決まってるじゃないですか! おじさんなら大丈夫、殺されても10回くらいなら生き返れますからね」
口を尖らせて『ゾンビじゃねえし』と文句を言うルーカスも満更ではないらしくニヤニヤと笑いながらテーブルの上のクッキーに手を伸ばしてメリッサにはたき落とされた。
「不謹慎な冗談とおやつの食べ過ぎは禁止で~す! ヤバいよ片付け忘れてたじゃん」
席を立ったメリッサがテーブルの上をさっさと片付けてソファに座り直した。
モートン商会の商会長ルーカスが亡くなればひとり娘のメリッサが全てを受け継ぐのが当たり前だがステファンももちろんそれは知っている。
ゲームの場になる無人島でルーカスを亡き者にしてメリッサが遺産を全て相続、その後ステファンが自由に管理するのが狙いなのだろうが⋯⋯。
「でも、商会はゲームの景品にしたんだからメリッサが相続するのを狙っても意味ないし、メリッサが訴えるって分かりきってますよね」
「ふふん、情けねえ~! ケニスよりクズテファンの方が悪知恵は回るって事かよ。そんなんじゃ簡単に騙されて領地を奪われちまうぜ」
「真面目に生きてきましたからね、悪知恵だけで生きてるステファンとは育った部分が違うんです!」
「あっちの大きさも違うってか? メリッサに聞いても分から⋯⋯」
「おじさん! メリッサの前で下ネタ禁止!」
ガタンと立ち上がったケニスがルーカスに指を突きつけるとメリッサが下から顔を見上げた。
「ケニス、今のがなんで下ネタになるの?」
「ブハッ! ケ、ケニスの自爆だな」
ルーカスに指を突きつけたまま固まっていたケニスが真っ赤な顔になってソファに座り『ゴホン』とわざとらしい咳をした。
「そうだよな、勘違いした。それよりもおじさん、ステファンの景品のカラクリを教えて下さい」
「くくっ! 話を元に戻そうとした努力は認めるが、自爆についちゃあ全然誤魔化せてないな~」
一頻り笑った後で息を整えいつもの人を食ったような態度で話しはじめたルーカスの推測は⋯⋯。
元々ゲームまでに財産を全て奪っておくつもりで商会をゲームの商品にしたのだろう。
メリッサ経由で資産を全て奪うつもりが予想以上にガードが固く豪遊できたのはほんの短い間だけで終わってしまった頃、真珠のネックレス紛失事件(嘘)でゲームにメイルーンを参加させることができたステファンは欲をかいた。
メイルーンに言うことを聞かせられる今ならどんな事をしても司法を誤魔化してくれる⋯⋯それならルーカス&メリッサを消してしまえばまどろっこしい事など考えなくても財産を奪える。
ゲームにふたりを招待してその場でサクッと殺りメイルーンに一言言わせれば終わるはずだとステファンは余裕をかましていた。
それなのに⋯⋯収入はなく借金漬けになってしまったステファンは二進も三進も行かなくなってしまった。
予想以上に商会の屋台骨が揺らいだと勘違いしたステファンだが『まだ残ってる財産を一日でも早く手に入れる方法』を考えながらダラダラとその日暮らしを続けていたのだろう。
「ス⋯⋯奴は残ってる資金を奪う方法をずっと考えていたんだろうが、それ以外にもふたりいっぺんに殺ったら流石にマズイとでも思ったんじゃねえか?」
「残りの資産を根こそぎ奪う方法を変更したってこと?」
商会の仕事に割り込んで資産を自由にする事もメリッサから吐き出させる事もできないままでゲームがはじまれば勝者に資産を奪われてしまう可能性が出てきたステファンの苦肉の策が目の前の書類だろうとルーカスは予測した。
「少しでも残ってるならそれを全部奪って商会の名義だけを賞品にするって事ですか?」
「ス、奴は空の箱とゴミを押し付けて勝ち抜けするつもりだろうが、奴の頭じゃ思いつかねえはずだから別の奴がやったのを真似してんだろ」
名前を口にするのさえ嫌なようでルーカスは『ステファン』と言いかけては奴と言い直すのが癖になっているらしい。
「別の奴⋯⋯そう言えば『ワッツが昔やった箱と中身は違う』の改良版だってステファンが言ってた。箱はゲームの勝者に渡してゴミは⋯⋯私に残すって事?」
「⋯⋯何があっても無視すれば良いじゃん。ケニスには代々続いてきたラインフェルト伯爵家を守る義務があるからね!」
「なら、俺はラインフェルトから籍を抜いてくる。母上に養子をとってくださいって言っとくから大丈夫だし、おじさんさえ頑張ってくれたら母上が後継を産む可能性だってあるからね⋯⋯このふたりならまだ大丈夫のはずだよ」
「父さんが頑張るって何を?」
「俺はもう無理! 種切れだからな、打ち止めで干上がってんの⋯⋯ケニス、マーサ様にケツを引っ叩かれたいのか!?」
「えーっと、ええっ! 父さんとマーサおば様ってそういう関係だったの!? 全然知らなかった、マジかあ~」
「はぁ、ケニスのせいでメリッサが勘違いしてんじゃねえか! これ、どうしてくれんだよ!?」
「あ~、なんか納得! ケニスのお仕置き用地下牢より父さん用の地下牢の方が絶対必要だもんね!」
口をぽかんと開けたルーカスの膝にステファンが持ってきた書類をポンと置いたメリッサは得意満面で腕を組んだが、ケニスは珍しく呆然とするルーカスを見てゲラゲラと笑い出した。
「なあ⋯⋯あれ、どう言う事?」
「メリッサですからね、あんなもんですよ」
「おう、メリッサだもんな⋯⋯」
「その書類をステファンが持ってきたからサインして渡そうと思ってる」
ようやく我に返って書類を手にしたルーカスが内容を確認してからケニスに差し出した。
「ドーソンに確認は取ったんだな」
「うん、法律上確実に役に立たない書類だから問題ないって」
弁護士事務所でドーソン弁護士から聞いた話を説明し終わるとケニスが恐る恐ると言った感じで聞いてきた。
「これってまさかと思うけど⋯⋯殺られるのはおじさんだけってこと?」
書類から顔を上げたケニスが目に期待を浮かべてルーカスを見つめた。
「ケニスにしたら素早い判断だがな、何でそんな嬉しそうなんだよ!」
「だってメリッサに対する危険度が少し下がったなあって思ったら嬉しいに決まってるじゃないですか! おじさんなら大丈夫、殺されても10回くらいなら生き返れますからね」
口を尖らせて『ゾンビじゃねえし』と文句を言うルーカスも満更ではないらしくニヤニヤと笑いながらテーブルの上のクッキーに手を伸ばしてメリッサにはたき落とされた。
「不謹慎な冗談とおやつの食べ過ぎは禁止で~す! ヤバいよ片付け忘れてたじゃん」
席を立ったメリッサがテーブルの上をさっさと片付けてソファに座り直した。
モートン商会の商会長ルーカスが亡くなればひとり娘のメリッサが全てを受け継ぐのが当たり前だがステファンももちろんそれは知っている。
ゲームの場になる無人島でルーカスを亡き者にしてメリッサが遺産を全て相続、その後ステファンが自由に管理するのが狙いなのだろうが⋯⋯。
「でも、商会はゲームの景品にしたんだからメリッサが相続するのを狙っても意味ないし、メリッサが訴えるって分かりきってますよね」
「ふふん、情けねえ~! ケニスよりクズテファンの方が悪知恵は回るって事かよ。そんなんじゃ簡単に騙されて領地を奪われちまうぜ」
「真面目に生きてきましたからね、悪知恵だけで生きてるステファンとは育った部分が違うんです!」
「あっちの大きさも違うってか? メリッサに聞いても分から⋯⋯」
「おじさん! メリッサの前で下ネタ禁止!」
ガタンと立ち上がったケニスがルーカスに指を突きつけるとメリッサが下から顔を見上げた。
「ケニス、今のがなんで下ネタになるの?」
「ブハッ! ケ、ケニスの自爆だな」
ルーカスに指を突きつけたまま固まっていたケニスが真っ赤な顔になってソファに座り『ゴホン』とわざとらしい咳をした。
「そうだよな、勘違いした。それよりもおじさん、ステファンの景品のカラクリを教えて下さい」
「くくっ! 話を元に戻そうとした努力は認めるが、自爆についちゃあ全然誤魔化せてないな~」
一頻り笑った後で息を整えいつもの人を食ったような態度で話しはじめたルーカスの推測は⋯⋯。
元々ゲームまでに財産を全て奪っておくつもりで商会をゲームの商品にしたのだろう。
メリッサ経由で資産を全て奪うつもりが予想以上にガードが固く豪遊できたのはほんの短い間だけで終わってしまった頃、真珠のネックレス紛失事件(嘘)でゲームにメイルーンを参加させることができたステファンは欲をかいた。
メイルーンに言うことを聞かせられる今ならどんな事をしても司法を誤魔化してくれる⋯⋯それならルーカス&メリッサを消してしまえばまどろっこしい事など考えなくても財産を奪える。
ゲームにふたりを招待してその場でサクッと殺りメイルーンに一言言わせれば終わるはずだとステファンは余裕をかましていた。
それなのに⋯⋯収入はなく借金漬けになってしまったステファンは二進も三進も行かなくなってしまった。
予想以上に商会の屋台骨が揺らいだと勘違いしたステファンだが『まだ残ってる財産を一日でも早く手に入れる方法』を考えながらダラダラとその日暮らしを続けていたのだろう。
「ス⋯⋯奴は残ってる資金を奪う方法をずっと考えていたんだろうが、それ以外にもふたりいっぺんに殺ったら流石にマズイとでも思ったんじゃねえか?」
「残りの資産を根こそぎ奪う方法を変更したってこと?」
商会の仕事に割り込んで資産を自由にする事もメリッサから吐き出させる事もできないままでゲームがはじまれば勝者に資産を奪われてしまう可能性が出てきたステファンの苦肉の策が目の前の書類だろうとルーカスは予測した。
「少しでも残ってるならそれを全部奪って商会の名義だけを賞品にするって事ですか?」
「ス、奴は空の箱とゴミを押し付けて勝ち抜けするつもりだろうが、奴の頭じゃ思いつかねえはずだから別の奴がやったのを真似してんだろ」
名前を口にするのさえ嫌なようでルーカスは『ステファン』と言いかけては奴と言い直すのが癖になっているらしい。
「別の奴⋯⋯そう言えば『ワッツが昔やった箱と中身は違う』の改良版だってステファンが言ってた。箱はゲームの勝者に渡してゴミは⋯⋯私に残すって事?」
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