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93.責任者出てこーいって叫んでいい?
「捕縛した犯罪者は全て離宮の牢に運べ。その他の者は私について来い。ルーカス、よいな」
「チッ!」
堂々と舌打ちをしたルーカスをローガン司法長官とポンフリー団長が睨んでいたが、レオン第二王子殿下はさっさと馬車に乗り込んでしまった。
大急ぎで第一騎士団を集めはじめたポンフリー団長とローガン司法長官は、意気揚々と『王宮に向かうぞ』と叫んで馬車に向けて走り出した。
「この状況になっても張り切ってるなんて、凄いポジティブ思考ねえ」
まだ挽回の要素があると信じているのは、レオン第二王子殿下が今まで一切政治に関わってこなかったからだろう。
「適当に話していれば気が済んで、自分達に丸投げしてくると思ってるんだろうな」
「俺は腹を下したとかで、後はリチャード・メイソン裁判官様に頼んでもいい⋯⋯わけはないか。はぁ~、王家ってやなんだよな~。それに、俺やメリッサの仕事は終わったと思うんだ。後はお偉い王族やらお貴族様の仕事だって」
今まで教会の横暴を黙認してきたのは、王家や貴族達だと言う思いが強いルーカスからしてみれば、これだけ下準備を済ませたのだから今度こそ『お前達が働け』と言いたい。
時間と資金だけでなく生命もかけて走り回り、一から十まで準備をしたのはメリッサとルーカスとケニスの3人。
(奴等の過去を洗い直し、証拠やら証人やらを集めて⋯⋯ここまでお膳立てしてやったんだから、後始末くらいやれって思っててもバチは当たらねえはずだよなあ)
「トイレの場所まで連れてってパンツも脱がしてやって紙を持たせて⋯⋯さあどうぞってしてやったのに、最後まで面倒見ろとか甘え過ぎだろ?
昔から『自分のケツは自分で拭け』って言うんだぜ? それくらい自分らでやりやがれってんだ」
大きな溜息を吐いて立ち上がったルーカスの横で、リチャードが『ざまぁっ』と耳打ちしてサムズアップしていた。
「ここまでお膳立てしたのはお前らだろ? んで、主役が逃げ出すとかあり得んし。レオン第二王子殿下がどこまでモチベーションを持続できるか分からんのに、俺一人じゃ気紛れな王子殿下は荷が重すぎる」
馬車に向かうとドーソン弁護士がドアの横に立っていた。
「皆さん、お疲れ様でした」
「おぉ、この後は宜しく頼みます。うるさい奴らが張り切って離宮に向かったので『プチッ』とやってくれますか」
「そうですね、ルーカスの言う通り⋯⋯無駄な枝葉を落としておけば少しは話も進みやすくなるでしょう」
王宮の澱んだ空気の元は、見つけ次第排除しておけば面倒が減ると言うドーソン弁護士は、余裕の表情で頷いた。
馬車に乗った後も不満そうなルーカスを揶揄うメイソンと、肩に力が入り両手の拳を震わせるハリーの隣に座ったドーソン。
(これから自分と弟の罪が公になるんだよな。弟は⋯⋯情状酌量の余地もないし、俺も自分の意思でワッツに従って罪を重ねてきたし)
終わりは見えてきたが、嬉しいとは言えないハリーの心の中にワッツの言葉が蘇る。
『俺のせいじゃなくハリーのせいに決まってるじゃないか⋯⋯貴様がワッツ公爵家に選ばれてやってきたからこそ、俺様が使ってやってたんだ。そんな事も知らなかったのか?』
(俺がワッツ閣下に目をつけられたから⋯⋯セオドアが犯罪者になって、両親が殺された。リリアナは病院に入れられて薬漬けでおかしくなって、ひとりぼっちに。全部俺のせい)
「ハリー、バカな事考えないでね。ハリーの責任なんか、ほんの欠片もないんだからね。ハリーが悪いとしたら、今まで『ワッツ家の悪魔』に殺された人達も悪いって事になるんだから」
パッと顔を上げ真剣な顔のメリッサと目が合ったハリーが慌てて目を逸らした。
「ワッツ公爵家の生贄に自ら志願したわけじゃないなら、ハリーにはなんの責任もない純粋な被害者だから」
「⋯⋯はい。それでも罪は償います。俺も悪事に加担しましたから」
「ハリーは情状酌量で保護観察。セオドアは薬物中毒の為、責任能力なしで治療優先⋯⋯その後はハリーと同じ保護観察といった結果になるでしょう。あまり気に病むことはありません。それ以上の罪に問われる事なく終わらせます」
「でも、セオドアも俺も自分の意思でやったので」
「ハリーは家族を盾にして脅迫されていましたし、ピーター・ワッツの手先と言っても大したことはやっていません。
現時点でかなり薬の影響が出ているセオドアは、いつから薬物を投与されていたのかを証明するのはとても難しいでしょう。メイルーンの指示に従っていた時、薬物が使われていなかったと言う証明を彼等が出来なければ大きな罪にはなりません。
所謂『悪魔の証明』と言うやつですね」
ハリーの顔を見ながらほんの少し笑みを浮かべたドーソン弁護士の頭の中では、既に全員の刑罰の結果まで計算されているように見えた。
「後は⋯⋯レオン王子殿下がどう動くかだよな。お気楽王子の興味がどこまで続くのかが問題だな」
大きな溜息をついたメイソンがドーソンの反応を窺ってみたが、ドーソンの表情は変わらない。
「⋯⋯へ? レオン第二王子殿下が出てきた時点で俺達の勝ちは決まってるし? 後は証拠を渡してなるべく早くトンズラすりゃ問題ねえ」
「おじさんはレオン第二王子殿下を信用してるんですか!? 王子としての責任から逃げてるって有名なのに」
「離宮の牢に入れろと言ってたってことは、既に受け入れ準備が済んでるってこと。それにレオン王子殿下に本腰入れる気がなけりゃ、教会やら王家の批判はしねえよ」
サラッと当たり前のように、しかも簡潔にレオン王子は教会と王家や議会をディスっていたが、彼の話は決して人前で話してはいけない事が多く含まれていた。
「レオン王子殿下の話を要約すると、既に他国の全てから嘲笑われており、外交も危険な状態でいつ国交断絶になってもおかしくない。
教会が全てを取り仕切り、王家も議会も貴族も腐敗。司法は崩壊し、犯罪も不正も教会さえ味方につければやりたい放題。という感じですね」
しかも何気ないフリを装おうとしていたが、証拠の精度や量についてかなりしつこく聞いてきた。
「冤罪だと言われないかを凄く気にしておられた気もするわ」
「だろ? 少し離れてたドーソンにも聞こえたんだ。あの辺りにいた民衆にも聞こえてただろう。しかもサマネスの腰巾着のローガンとポンフリーの前でだからな、覚悟を決めたんだよ」
「そう言われれば⋯⋯長年、王族も貴族も信用できないと思って仕事をしてきた弊害かな、視野が狭くなってた。
落ち着いて考えてみたら、レオン王子殿下はかなり的確に国の状況を把握しておられたし、うまく最後まで話を持っていけばいけるかも」
「今までレオン王子殿下は好き放題してたんだ、人参ぶら下げてケツをバンバン叩いてやれ。あ! 先に言っとく。俺は平民だし、政治なんぞには関わってねえ一般人だからな。商会の仕事が溜まってて、これ以上は時間が取れねえからな」
「チッ!」
堂々と舌打ちをしたルーカスをローガン司法長官とポンフリー団長が睨んでいたが、レオン第二王子殿下はさっさと馬車に乗り込んでしまった。
大急ぎで第一騎士団を集めはじめたポンフリー団長とローガン司法長官は、意気揚々と『王宮に向かうぞ』と叫んで馬車に向けて走り出した。
「この状況になっても張り切ってるなんて、凄いポジティブ思考ねえ」
まだ挽回の要素があると信じているのは、レオン第二王子殿下が今まで一切政治に関わってこなかったからだろう。
「適当に話していれば気が済んで、自分達に丸投げしてくると思ってるんだろうな」
「俺は腹を下したとかで、後はリチャード・メイソン裁判官様に頼んでもいい⋯⋯わけはないか。はぁ~、王家ってやなんだよな~。それに、俺やメリッサの仕事は終わったと思うんだ。後はお偉い王族やらお貴族様の仕事だって」
今まで教会の横暴を黙認してきたのは、王家や貴族達だと言う思いが強いルーカスからしてみれば、これだけ下準備を済ませたのだから今度こそ『お前達が働け』と言いたい。
時間と資金だけでなく生命もかけて走り回り、一から十まで準備をしたのはメリッサとルーカスとケニスの3人。
(奴等の過去を洗い直し、証拠やら証人やらを集めて⋯⋯ここまでお膳立てしてやったんだから、後始末くらいやれって思っててもバチは当たらねえはずだよなあ)
「トイレの場所まで連れてってパンツも脱がしてやって紙を持たせて⋯⋯さあどうぞってしてやったのに、最後まで面倒見ろとか甘え過ぎだろ?
昔から『自分のケツは自分で拭け』って言うんだぜ? それくらい自分らでやりやがれってんだ」
大きな溜息を吐いて立ち上がったルーカスの横で、リチャードが『ざまぁっ』と耳打ちしてサムズアップしていた。
「ここまでお膳立てしたのはお前らだろ? んで、主役が逃げ出すとかあり得んし。レオン第二王子殿下がどこまでモチベーションを持続できるか分からんのに、俺一人じゃ気紛れな王子殿下は荷が重すぎる」
馬車に向かうとドーソン弁護士がドアの横に立っていた。
「皆さん、お疲れ様でした」
「おぉ、この後は宜しく頼みます。うるさい奴らが張り切って離宮に向かったので『プチッ』とやってくれますか」
「そうですね、ルーカスの言う通り⋯⋯無駄な枝葉を落としておけば少しは話も進みやすくなるでしょう」
王宮の澱んだ空気の元は、見つけ次第排除しておけば面倒が減ると言うドーソン弁護士は、余裕の表情で頷いた。
馬車に乗った後も不満そうなルーカスを揶揄うメイソンと、肩に力が入り両手の拳を震わせるハリーの隣に座ったドーソン。
(これから自分と弟の罪が公になるんだよな。弟は⋯⋯情状酌量の余地もないし、俺も自分の意思でワッツに従って罪を重ねてきたし)
終わりは見えてきたが、嬉しいとは言えないハリーの心の中にワッツの言葉が蘇る。
『俺のせいじゃなくハリーのせいに決まってるじゃないか⋯⋯貴様がワッツ公爵家に選ばれてやってきたからこそ、俺様が使ってやってたんだ。そんな事も知らなかったのか?』
(俺がワッツ閣下に目をつけられたから⋯⋯セオドアが犯罪者になって、両親が殺された。リリアナは病院に入れられて薬漬けでおかしくなって、ひとりぼっちに。全部俺のせい)
「ハリー、バカな事考えないでね。ハリーの責任なんか、ほんの欠片もないんだからね。ハリーが悪いとしたら、今まで『ワッツ家の悪魔』に殺された人達も悪いって事になるんだから」
パッと顔を上げ真剣な顔のメリッサと目が合ったハリーが慌てて目を逸らした。
「ワッツ公爵家の生贄に自ら志願したわけじゃないなら、ハリーにはなんの責任もない純粋な被害者だから」
「⋯⋯はい。それでも罪は償います。俺も悪事に加担しましたから」
「ハリーは情状酌量で保護観察。セオドアは薬物中毒の為、責任能力なしで治療優先⋯⋯その後はハリーと同じ保護観察といった結果になるでしょう。あまり気に病むことはありません。それ以上の罪に問われる事なく終わらせます」
「でも、セオドアも俺も自分の意思でやったので」
「ハリーは家族を盾にして脅迫されていましたし、ピーター・ワッツの手先と言っても大したことはやっていません。
現時点でかなり薬の影響が出ているセオドアは、いつから薬物を投与されていたのかを証明するのはとても難しいでしょう。メイルーンの指示に従っていた時、薬物が使われていなかったと言う証明を彼等が出来なければ大きな罪にはなりません。
所謂『悪魔の証明』と言うやつですね」
ハリーの顔を見ながらほんの少し笑みを浮かべたドーソン弁護士の頭の中では、既に全員の刑罰の結果まで計算されているように見えた。
「後は⋯⋯レオン王子殿下がどう動くかだよな。お気楽王子の興味がどこまで続くのかが問題だな」
大きな溜息をついたメイソンがドーソンの反応を窺ってみたが、ドーソンの表情は変わらない。
「⋯⋯へ? レオン第二王子殿下が出てきた時点で俺達の勝ちは決まってるし? 後は証拠を渡してなるべく早くトンズラすりゃ問題ねえ」
「おじさんはレオン第二王子殿下を信用してるんですか!? 王子としての責任から逃げてるって有名なのに」
「離宮の牢に入れろと言ってたってことは、既に受け入れ準備が済んでるってこと。それにレオン王子殿下に本腰入れる気がなけりゃ、教会やら王家の批判はしねえよ」
サラッと当たり前のように、しかも簡潔にレオン王子は教会と王家や議会をディスっていたが、彼の話は決して人前で話してはいけない事が多く含まれていた。
「レオン王子殿下の話を要約すると、既に他国の全てから嘲笑われており、外交も危険な状態でいつ国交断絶になってもおかしくない。
教会が全てを取り仕切り、王家も議会も貴族も腐敗。司法は崩壊し、犯罪も不正も教会さえ味方につければやりたい放題。という感じですね」
しかも何気ないフリを装おうとしていたが、証拠の精度や量についてかなりしつこく聞いてきた。
「冤罪だと言われないかを凄く気にしておられた気もするわ」
「だろ? 少し離れてたドーソンにも聞こえたんだ。あの辺りにいた民衆にも聞こえてただろう。しかもサマネスの腰巾着のローガンとポンフリーの前でだからな、覚悟を決めたんだよ」
「そう言われれば⋯⋯長年、王族も貴族も信用できないと思って仕事をしてきた弊害かな、視野が狭くなってた。
落ち着いて考えてみたら、レオン王子殿下はかなり的確に国の状況を把握しておられたし、うまく最後まで話を持っていけばいけるかも」
「今までレオン王子殿下は好き放題してたんだ、人参ぶら下げてケツをバンバン叩いてやれ。あ! 先に言っとく。俺は平民だし、政治なんぞには関わってねえ一般人だからな。商会の仕事が溜まってて、これ以上は時間が取れねえからな」
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