【完結】結婚した途端記憶喪失を装いはじめた夫と離婚します

との

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92.往生際の悪い奴VS外堀を埋める奴

「だってさ、『法治国家ではなく教会第一主義国家』だとか『形ばかりの議会と式典用の王家なんだからもう少しゆっくりしていけ』とか⋯⋯他国で毎回毎回言われるんだよね。
私は遊んでばかりだけど、結構話は聞くんだよ。教会と言うかサマネス枢機卿が国のトップだとか、何をやっても教会に大金を寄付すればいいんだからやりたい放題だとか。ああ、『ワッツ公爵の悪魔』の詳細も他国では有名だし。
他国の枢機卿や司教から、同じプレステア教だと思わないでくれって、しょっちゅう言われるんだ。
我々は神に仕えるものとして教義を守り、妻帯も子をなすことも致しません。『政教分離』を徹底し、罪を憎み、寄付で罪を浄化できるなどと考えてはおりません。犯罪を肯定することも、信者に犯罪を指示する事もあり得ませんからって懇願された時には、流石に返事に困ったよ。
ローガンならば、どう返事をする?」

「そ、その様な話に耳を傾ける必要などございません! そのような⋯⋯我が国を貶める輩には正式に抗議せねばなりませんぞ!」

「事実だし。抗議してこれ以上の笑い者になれば残っている外交なんてなくなるんじゃないかな。運が悪ければ戦争になりかねない。
少し横道に逸れてしまったが⋯⋯現行犯逮捕だと言っていたが、彼等は今回、何をしでかしたのかな?」

「司教様達が他者の命を賭けたゲームを実行した現場に遭遇致しました。他人の資産を賞品とした悪辣な『デスゲーム』で、武装した傭兵達に生き残りをかけた戦いを行わせ、賞品となった資産の持ち主も始末すると言うゲームです。
その場で行われた盗品の売買は、第二騎士団のカーマイン団長が確認しております」

「それは酷いな、被害者は?」

「幸いにも早期解決に至りましたので、若干の負傷者が出たのみです。司法に携わる者として見過ごすわけにはまいりません」

「貴様ぁぁ、黙れ黙れ黙れ! 貴様の戯言など誰も聞く耳は持っておらんわい。教会と陛下と議会を敵に回して、タダで済むと思うな!」

「ローガン司法長官、もう一度だけ言う。口を閉じてくれ。それさえ出来ないなら、お気に入りの飼い主の元へ逃げ込んではどうかな?」

「し、しかし⋯⋯レオン第二王子殿下はご存じないのでしょうが、これは国を揺るがす一大事ですぞ! 何やら誤解があるようですので、ここは私めにお任せ下さいませ」

「はあ、口を閉じろと言ったばかりなんだがな。モートン商会のルーカス、君はどう思う?」

「恐れながら申し上げま⋯⋯」

「黙れ! たかが平民の分際で、殿下の御前で発言をするなど不敬だとわからんのか!?」

「レオン第二王子殿下からの問いにお答えしない方が不敬だと思いますが?」

 睨みつけるローガン司法長官に向けてこっそりと中指を立ててから、ルーカスが話を続けた。

「全ての犯罪をつまびらかにできたかは判りかねますが⋯⋯我が国の法律であれば、メイルーン司教様と愉快な仲間達が、今世だけでは足りぬ程の禁錮刑に処されるか、複数回の極刑を言い渡されるか⋯⋯その程度の罪状に対する証拠や証人を取り揃えた上で、ここに参った次第です。
何しろ通常の証拠では簡単に揉み消されてしまうのがこの国のルールですので、言い訳も誤魔化しもできないくらいに準備しております」

「ローガン司法長官は冤罪だと申しているが、その可能性は?」

「私ども平民の言葉では不確かだと仰せになる前に、証拠や証人を精査していただくべきかと。他者の名声を利用するなら『拝辞のドーソン』も証拠と証人の精査をしており、十分な量と質が揃っていると言っておられました。
我が国も建前上は司法主義国家と言われております。であれば、証拠隠滅や肩書きによる隠蔽などのない捜査と裁判が行われることを切に願っております。
先日の朝刊に過去の犯罪が一部掲載された由にございます。となりますと⋯⋯他国の目もありますでしょう。
今までのような不確かな結末でお茶を濁せば『恥晒し』と言われてしまいかねない。これ以上国が孤立せぬよう、公明正大なる結果を待ち望んでおります」

「レオン第二王子殿下! この者の言など耳に入れてはなりませんぞ! 王宮に戻り陛下に謁見を願われませ。さすれば、この者達がいかにこの国に害となる者達かお教えくださいます!
レオン第二王子殿下は政治をご存知ない為に、この者達の甘言に惑わされておられるのです! 長年、司法の長としてこの国の為に粉骨砕身して参ったワシの言葉をお聞きなさいませ」



「長年、司法の長としてこの国の為に粉骨砕身してきたローガン司法長官か⋯⋯うん、それは良いことを聞いた。ではこの国の司法の腐敗の責任をとってもらわなくては。罪を逃れてのうのうと暮らしている輩が蔓延っているのもローガンの責任という事だね」

「⋯⋯⋯⋯は⋯⋯はいぃ?」

 ポカンと口を開けたローガン司法長官の間抜けな顔を見たレオン第二王子殿下が、口を覆って笑いを堪えた。まさか今まで政治に無関心で遊び呆けてばかりいた王子から、反論されるとは思ってもいなかったらしい。

「司法長官として犯罪者の摘発や裁判の最終責任を持っているんだろ? 我が国の司法が機能していない⋯⋯それどころか犯罪者が優遇されまくってるのは、3歳の子供でも知っている事実だからね。
もちろん他国でも有名だし。まあ、司法だけではなく議会も貴族も腐りきっていて救いようがないから『俺だけのせいじゃない』と言えなくもないか。
他国との取引も多いルーカスはそう思わないかい?」

「全ての方達とまでは申しませんが⋯⋯多くの腐敗しきった方々のご乱行に、辛酸を舐めている方は多いと思っております。ただ⋯⋯私どもは身分の最も低い平民でございます故に、あまりあれこれと申し上げて『不敬だ』と話を逸らされては時間の無駄になりましょう。
この度の件、後始末はリチャード・メイソン裁判官にお任せ丸投げしようと考えて企んでおりましたが、レオン第二王子殿下にお任せできると知り安堵致しております」

 最もらしい口上で引き下がろうとしたルーカスだったが⋯⋯。

「待て待て! 折角面白く⋯⋯いや⋯⋯詳しく話を聞かせて欲しい。ルーカス、本題が漸く見えてきたのに、ここで抜けるのは許さん」

「私どもは平民のしがない商人でございます故に、大したお役には立てない⋯⋯それどころかお目汚しにしかならないのではないかと。
リチャード・メイソン裁判官の補佐としてであればチャールズ・ドーソン弁護士が後ろに控えておられますし、このお二方がおられれば過去の犯罪から今回の犯罪まで、取り調べを行うに十分な戦力であると愚考致します。
私どもは運悪く被害者となっただけの、所謂『チョイ役』でございます。調書等の作成につきましては、メイソン裁判官の指示に従って何時でもご協力致す所存でおります。
レオン第二王子殿下へ心よりの感謝をお伝えし、この場にて失礼させていただきたいと存じます」

 王家との関わりから逃れたいルーカスが言葉を尽くして逃げ出そうとしたが、ニヤリと笑ったレオン王子は⋯⋯。

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