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第七章 ただいま準備中

13.オーレリアの過去1(悲しすぎて閲覧注意)読み飛ばしOK

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「はじまりはランバルド王国で起きたの。わたくしには2人の兄と3人の姉がいたのだけど、あまり仲が良くなかった。すごく仲が悪かったと言った方がいいくらい」

 ランバルド王国は性別に関わらず末の子を次期王にする風習があり、オーレリアが次期女王になると言われていた。

「その後はわかるでしょう? 2つ上の姉はわたくしがいなければ女王になれると思い、その他の兄姉は法を改正する理由があればと考えたの」

 オーレリアに饗される料理から致死量の毒物が検出され、毒蛇や毒蠍がベッドから見つかった。馬車の襲撃や慰問先での火災。

 犯人が特定され安全が保障されるまで、オーレリアは離宮に身を潜めることとなった。



 それから暫くして王都のあちこちでとある噂が流れはじめた。

 その噂とは⋯⋯心身共に疲れ果てたオーレリア王女殿下は薬物に手を出し、国王の怒りをかって離宮に軟禁された。

 その後も新たな噂が次々に流れ続けた。平民街で広がった噂は王都から周辺の領地へ。平民街から貴族街へ。王宮に届いた頃には手の打ちどころがないほど広がっている。

 姉達の婚約者に甘言を弄して近付き薬を盛って関係を結んだ。

 拉致した兄の婚約者を生贄に姉達の婚約者達と乱行パーティーを繰り広げている。

「侍女や侍従も程度の差はあるけれど薬物中毒になり、その中の数名はパーティーに参加していると新聞に掲載されてからは、使用人達の生家にまで被害が出るようになったの」

 噂は国中に広がり消しても消しても新たな場所で再燃する。新聞が連日情報を掲載し、王宮にはばら撒かれたビラを持った国民が押し掛けた。

 その当時薬物中毒による被害が多発しており、薬を使用した犯罪は特に注目を集めた。襲撃を警戒し政務や慰問を控えていたのでさえ、中毒症状が酷いため外出を控えさせていると言われるように。

『手に負えない悪女』『性悪』だと国中から罵られたオーレリアは、王家からの離籍を望んでも修道院入りを願っても離宮に閉じ込められたまま。

 王家からの離籍が許されなかったのは偽の噂を広めた犯人が兄姉だったから。王家の監視下から逃れたオーレリアの反撃を危険視した国王の判断だった。

 修道院入りが許されなかったのは、教会の権力とオーレリアが結びつくのを危険視した兄姉の策略。

「モラヴィアス王国への輿入れが決まった時は驚いたけれど、嬉しくもあったの。議会で『毒杯を』という意見が大きくなっていて、覚悟していたから。あの時は陛下からの御温情に感謝しなければとさえ思っていたわ。
馬鹿げた噂から逃れられるのであれば、次こそは穏やかに暮らしたい。その為ならどんな努力でもしようと」

 モラヴィアス王国に向けて旅立つ日、見送りだと言って兄姉が揃ってやって来た。

『私達が演出した劇は楽しんでくれたかな?』

『モラヴィアス王国にもちゃ~んと話しておいたわ。死ぬまで噂に苦しめられて生きるのね』

『陛下からの伝言はな⋯⋯二度と我が国の土を踏んではならぬ⋯⋯だ』

『父上にもとうとう見捨てられたのよね~。ねえ、どんな気分? 今どんな気分?』


 国王がオーレリアを他国に嫁がせると決めたのは、オーレリアにまつわる一連の騒動に王子と王女全員が関与していたから。

 自分の血を次代に繋げたいが、罪を断ずれば残るのは被害者であるオーレリアのみとなる。国の辺境地まで広がった噂を収束させ、オーレリアを次期女王に立てるのにどれ程の時間と手間がかかるのか⋯⋯。

 それよりも、オーレリアを排除し残る子供達の中でもっとも矯正出来た者に継がせる方が、より早く事態を収束させる事ができる。

 身勝手な国王の最終判断は⋯⋯噂で国に混乱を招いたのは『オーレリアに隙があった』為でもある。従ってオーレリアの国外追放と兄姉の再教育は妥当な措置である。






 ハリーが口にした穀潰しの祖母オーレリアは、ランバルド国の第四王女にして次期女王となるべく教育を受け、兄姉の姦計によりその地位を奪われた。

 当時、ランバルド王国との国交樹立を願い交渉を続けていたモラヴィアス王国だったが、幾つかの案件で合意が得られず足踏み状態が続いていた。

『第四王女オーレリア様をモラヴィアス王国王太子の妃とするならば、モラヴィアスからの提案を受け入れましょう。
婚姻後5年間は関税率の引き下げも視野に入れており、復興支援も行います』

 度重なる天災で疲弊していたモラヴィアス王国へ、国力の差を誇示したランバルド王国からの強引な提案だった。

『手に負えない悪女』と有名な性悪で、とんでもない醜聞が広がっている王女との超最悪な縁談。王女を引き受けたいと言う者は国内外を合わせてどこにもおらず、受け入れてくれる修道院も見つからないと、モラヴィアス王国にも噂が流れてきている。

 紆余曲折の後⋯⋯ランバルド王国はミッドランド侯爵家嫡男との婚姻で手を打った。



 オーレリア王女の降嫁先が侯爵家だったのはモラヴィアス王国の意地だったが、リンドブルム帝国との間に問題を起こしたミッドランド侯爵家への制裁でもあった。

『社交界だけでなく市井の民の間でも真実の愛が持て囃されており、ミッドランド侯爵家こそがその先駆けだとか。
社交界に平然として顔を出し愛を語るミッドランド侯爵家の方々は、帝国との友好に大きな罅を入れられた王家と大臣達が外交に苦慮しておられるなど、気にも止めておられぬのでしょう。
帝国との不和が公になれば国民に不安を齎すと仰せになられた陛下の『国を思う御心』に我らは頭が下がる思いでおりますがな。
オーレリア王女と嫡男の婚姻がお気に召さない? これはまた意外な事を仰られる。真実の愛を至高とする家門に相応しい婚姻ではありませんか。あのご令嬢と同じくオーレリア王女も愛を至高と思われておられるようですからな』

 ミッドランド侯爵の前に座る宰相が語る『あの令嬢』とは、リンドブルム帝国の王子を捨てて真実の愛を貫いたと話題になっているミッドランド侯爵家の令嬢の事。

『王命ならば受けざるを得ない? いやいや、だからこそ王命ではないのですよ。ミッドランド侯爵家は致し方なく娶るのではなく、オーレリア王女をお迎えしたいと心から願っておられるのですからなぁ。
何しろ、愛の為であれば国の意向も政治も霞むミッドランド侯爵家ですから、己の欲望に忠実で国の意向も政治も捨て去ったオーレリア王女とは良縁中の良縁。全ての鍋にその蓋がある⋯⋯と言うやつですな』

 世間一般の評価と違って残念な頭を持つ当主が、王子を捨てて駆け落ちした娘を咎めもせず王侯貴族の前でも謝罪ひとつないまま胸を張っていたのは、国中が『真実の愛』を賛美していたから。

 国からの叱責を受ける前に情報操作を行なった家礼の作戦勝ちだと思われていたが、ここに至って作戦失敗の気配が濃厚になってきた。

 苦々しい思いで宰相を睨みつけていたミッドランド侯爵家にとって唯一の救いになったのは⋯⋯。

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