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第一章 マーサと共に
02.夢から覚めて、心も冷めた
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どこを直せば⋯⋯何をすれば⋯⋯ぐるぐる回って答えが出ない。兄や姉のように小さい頃の事を教えて欲しい、兄や姉のように手を繋いで歩いてみたい、兄や姉のように笑顔で話しかけてもらいたい。
兄姉のように⋯⋯ 兄姉のように⋯⋯ 兄姉のように⋯⋯ 兄姉のように⋯⋯ 兄姉のように⋯⋯。
小学2年の時、突然の土砂降りでクラスメイト達は傘を持って迎えにきた母親と帰って行った。教室の外が薄暗くなりはじめて、教室に一人になっても実里だけは迎えが来ない。
(暗くなってきたから帰ろう⋯⋯)
教室を飛び出して土砂降りの中を走り続けていると、家に着く直前で雨が上がってしまった。
(あー、運が悪すぎ)
玄関を入った実里が一番に目にしたのは、雨の滴を垂らしている母の傘と姉の傘だった。
(お姉ちゃんを迎えに小学校に来たんなら、私のとこにも来てくれたら良かったのに⋯⋯なんで⋯⋯)
部屋に入るとのんびりとお茶を飲む姉と母の姿があった。
「こんなびしょ濡れになって、風邪でもひいたらどうするんね⋯⋯はぁ、もう少し待っとったら濡れずに済んだのに」
「⋯⋯ごめんなさい」
高校生の頃、学校の図書室でたまたま見つけた本に書いてあった言葉に実里は衝撃を受けた。
『子供はどんな親でも愛するが、親は必ずしも子供を愛するわけではない』
『同じ我が子でも、愛せる子供と愛せない子供がいる』
(ああ、そう言うことか⋯⋯元々が違ってたから、努力するだけ無駄だったんだ)
それを実里が知った時はもう遅かったのだろう。両親の願いを叶えご機嫌をとる癖はいつまで経っても治らず、無理やり止めても両親のがっかりした顔を見ると、罪悪感で身動きが取れなくなる様子が映し出されている。
親や兄姉、親戚や近所の評判も変わらないまま⋯⋯実里はアラサーと呼ばれる年になった。
空回りして失敗ばかりで、邪魔でウザかったのはあっただろう⋯⋯でも実里はずっと両親に愛されたがっていた。
元々、何をしてもダメだったのか。
やり方が間違えば⋯⋯もっと上手くやれたら⋯⋯もしかしたらを考えて堂々巡りばかりの人生を過ごしてしまった。
歳をとっても長年の習慣は変えられず、両親から『お願い』されるとどんな事でも叶えずにはいられない。
結婚しても両親を優先してしまう実里が離婚を切り出されたのは当然の事だった。
そんな実里を軽蔑していた兄姉とは疎遠になり、仕事をして家に帰るだけの人生になってしまった。
親に対するジレンマが解消されないまま、どんどん歳だけとり、アルツハイマーになった母は実里の顔だけ思い出せなくなった。
「ごめんねぇ、聞いてもすぐ忘れるんよ、あんたは誰じゃったかねえ」
父が亡くなる前、兄姉と3人で病院を訪れたが、父は実里の顔をチラッと見た後で、姉の手を握り兄に何やら話しかけてから眠りについた。
(どうすれば良かったのか聞いても答えなんて⋯⋯ああ、そう言えば理由は教えてもらってた)
3人目はいらない⋯⋯失敗した
(元々ダメだったのに⋯⋯産まれる前からダメダメだったのに。大人しく気配を消してなかったから、相乗効果ってやつで悪化して⋯⋯最初から諦めて気配を殺してれば良かったんだ)
『実里だけは顔も性格もなんか違うて⋯⋯お兄ちゃんとお姉ちゃんだけで十分じゃったんじゃがのう』
かつて、お酒に酔った父が目を細めながら言っていたのを思い出した実里。
『あんたさえ産まれんかったら、私はとうの昔にお父ちゃんと離婚できとったのにって何遍も思っとったんよ。あんたは誰にも似とらんし、な~んか可愛いと思えんかったしねぇ』
笑いながら言っていた母の言葉が実里の心に突き刺さる。
(もっと早くに気付いて違う生き方をしてたら⋯⋯少しは幸せになれたのかな)
『⋯⋯家族に連絡はつきましたか?』
『はい。お兄さんとお姉さんに。ただ、遠方の為にお越しになるのは難しいそうです。それに縁を切っているからとも仰られたので⋯⋯』
無機質なベッドに寝ているのは60を過ぎているように見える実里。その横に立つ白衣の男性医師と看護師が溜め息混じりで話している。
『そうですか』
『家族は拒絶。友人がいるかは不明で、勤めている会社も対応を拒否⋯⋯』
既に意識がないらしく、繋がれた機械から聞こえるピッピッという規則的な音だけが生き長らえている事を伝えている。隣のベッドからは老人特有の微かなイビキが聞こえていた。
『困りましたね。では行政へ連絡を入れてください。それ程時間は残っていないでしょうから、後は役所に丸投げしましょう』
『⋯⋯はい』
それ以外の時も実里のそれとよく似た人生を送っているのが早送りのように流れ⋯⋯家族の中で空回りして孤立して終わりを迎えていた。
(はぁ、またこのパターンかぁ。毎回『ぼっち』でジ・エンドとか⋯⋯何の罰ゲームかっての! しかも、それを最後の最後になって思い出すってどういう事よ? 今更思い出しても意味ないし、思い出さない方がマシじゃん)
『哀れとは思いますが、面倒な事に変わりはないですね』
『本当ですね。正直、別の街で倒れてくれてれば⋯⋯』
(マジで⋯⋯何回も言うけどさぁ、どうせ思い出すならもっと早く思い出せよ。そしたら、違う人生に出来たかもなのに! あーもームカつく、これじゃ『次もボッチ決定の人生で~す、ざまぁ』って言われてる気になるじゃんか)
『さっさと役所に提出する書類を⋯⋯適当に⋯⋯』
意識のない女性とイビキをかく老人しかいない病室には、言いたい放題の医師と看護師の言葉だけが響いていた。
(ウザい、マジでウザい。医者も看護師も話すなら他所でやれぇ!!
次があるってんならぜーったいにもっと早く思い出してやる。こんな最悪の終わりばっか続くのなんてもう嫌だぁぁぁ⋯⋯)
繰り返す人生で持って産まれる顔面偏差値もとい、スペックはいつも同じなのか。ガチャを回した時のように当たりとハズレがあるのか。
(良く似た基本情報を持って産まれるとしても、考え方とかやり方を変えれれば違う人生になるかも。あ~、記憶持ったまま産まれ変われたら、もうちょっとはマシな人生に出来たりしないかなぁ)
ガバッ!
「こ、こ、こ、ここは⋯⋯」
兄姉のように⋯⋯ 兄姉のように⋯⋯ 兄姉のように⋯⋯ 兄姉のように⋯⋯ 兄姉のように⋯⋯。
小学2年の時、突然の土砂降りでクラスメイト達は傘を持って迎えにきた母親と帰って行った。教室の外が薄暗くなりはじめて、教室に一人になっても実里だけは迎えが来ない。
(暗くなってきたから帰ろう⋯⋯)
教室を飛び出して土砂降りの中を走り続けていると、家に着く直前で雨が上がってしまった。
(あー、運が悪すぎ)
玄関を入った実里が一番に目にしたのは、雨の滴を垂らしている母の傘と姉の傘だった。
(お姉ちゃんを迎えに小学校に来たんなら、私のとこにも来てくれたら良かったのに⋯⋯なんで⋯⋯)
部屋に入るとのんびりとお茶を飲む姉と母の姿があった。
「こんなびしょ濡れになって、風邪でもひいたらどうするんね⋯⋯はぁ、もう少し待っとったら濡れずに済んだのに」
「⋯⋯ごめんなさい」
高校生の頃、学校の図書室でたまたま見つけた本に書いてあった言葉に実里は衝撃を受けた。
『子供はどんな親でも愛するが、親は必ずしも子供を愛するわけではない』
『同じ我が子でも、愛せる子供と愛せない子供がいる』
(ああ、そう言うことか⋯⋯元々が違ってたから、努力するだけ無駄だったんだ)
それを実里が知った時はもう遅かったのだろう。両親の願いを叶えご機嫌をとる癖はいつまで経っても治らず、無理やり止めても両親のがっかりした顔を見ると、罪悪感で身動きが取れなくなる様子が映し出されている。
親や兄姉、親戚や近所の評判も変わらないまま⋯⋯実里はアラサーと呼ばれる年になった。
空回りして失敗ばかりで、邪魔でウザかったのはあっただろう⋯⋯でも実里はずっと両親に愛されたがっていた。
元々、何をしてもダメだったのか。
やり方が間違えば⋯⋯もっと上手くやれたら⋯⋯もしかしたらを考えて堂々巡りばかりの人生を過ごしてしまった。
歳をとっても長年の習慣は変えられず、両親から『お願い』されるとどんな事でも叶えずにはいられない。
結婚しても両親を優先してしまう実里が離婚を切り出されたのは当然の事だった。
そんな実里を軽蔑していた兄姉とは疎遠になり、仕事をして家に帰るだけの人生になってしまった。
親に対するジレンマが解消されないまま、どんどん歳だけとり、アルツハイマーになった母は実里の顔だけ思い出せなくなった。
「ごめんねぇ、聞いてもすぐ忘れるんよ、あんたは誰じゃったかねえ」
父が亡くなる前、兄姉と3人で病院を訪れたが、父は実里の顔をチラッと見た後で、姉の手を握り兄に何やら話しかけてから眠りについた。
(どうすれば良かったのか聞いても答えなんて⋯⋯ああ、そう言えば理由は教えてもらってた)
3人目はいらない⋯⋯失敗した
(元々ダメだったのに⋯⋯産まれる前からダメダメだったのに。大人しく気配を消してなかったから、相乗効果ってやつで悪化して⋯⋯最初から諦めて気配を殺してれば良かったんだ)
『実里だけは顔も性格もなんか違うて⋯⋯お兄ちゃんとお姉ちゃんだけで十分じゃったんじゃがのう』
かつて、お酒に酔った父が目を細めながら言っていたのを思い出した実里。
『あんたさえ産まれんかったら、私はとうの昔にお父ちゃんと離婚できとったのにって何遍も思っとったんよ。あんたは誰にも似とらんし、な~んか可愛いと思えんかったしねぇ』
笑いながら言っていた母の言葉が実里の心に突き刺さる。
(もっと早くに気付いて違う生き方をしてたら⋯⋯少しは幸せになれたのかな)
『⋯⋯家族に連絡はつきましたか?』
『はい。お兄さんとお姉さんに。ただ、遠方の為にお越しになるのは難しいそうです。それに縁を切っているからとも仰られたので⋯⋯』
無機質なベッドに寝ているのは60を過ぎているように見える実里。その横に立つ白衣の男性医師と看護師が溜め息混じりで話している。
『そうですか』
『家族は拒絶。友人がいるかは不明で、勤めている会社も対応を拒否⋯⋯』
既に意識がないらしく、繋がれた機械から聞こえるピッピッという規則的な音だけが生き長らえている事を伝えている。隣のベッドからは老人特有の微かなイビキが聞こえていた。
『困りましたね。では行政へ連絡を入れてください。それ程時間は残っていないでしょうから、後は役所に丸投げしましょう』
『⋯⋯はい』
それ以外の時も実里のそれとよく似た人生を送っているのが早送りのように流れ⋯⋯家族の中で空回りして孤立して終わりを迎えていた。
(はぁ、またこのパターンかぁ。毎回『ぼっち』でジ・エンドとか⋯⋯何の罰ゲームかっての! しかも、それを最後の最後になって思い出すってどういう事よ? 今更思い出しても意味ないし、思い出さない方がマシじゃん)
『哀れとは思いますが、面倒な事に変わりはないですね』
『本当ですね。正直、別の街で倒れてくれてれば⋯⋯』
(マジで⋯⋯何回も言うけどさぁ、どうせ思い出すならもっと早く思い出せよ。そしたら、違う人生に出来たかもなのに! あーもームカつく、これじゃ『次もボッチ決定の人生で~す、ざまぁ』って言われてる気になるじゃんか)
『さっさと役所に提出する書類を⋯⋯適当に⋯⋯』
意識のない女性とイビキをかく老人しかいない病室には、言いたい放題の医師と看護師の言葉だけが響いていた。
(ウザい、マジでウザい。医者も看護師も話すなら他所でやれぇ!!
次があるってんならぜーったいにもっと早く思い出してやる。こんな最悪の終わりばっか続くのなんてもう嫌だぁぁぁ⋯⋯)
繰り返す人生で持って産まれる顔面偏差値もとい、スペックはいつも同じなのか。ガチャを回した時のように当たりとハズレがあるのか。
(良く似た基本情報を持って産まれるとしても、考え方とかやり方を変えれれば違う人生になるかも。あ~、記憶持ったまま産まれ変われたら、もうちょっとはマシな人生に出来たりしないかなぁ)
ガバッ!
「こ、こ、こ、ここは⋯⋯」
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