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第三章 ロケットスタート
13.お買い上げ、ありがとうございま〜す
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「あ~、そう言うこと。ようやく契約書の謎が解けたわ」
「やっぱり分かる人には分かるよね~。純利益って言っているラッセルに全利益って書かれた契約書を見せても、シモンの威力にやられて斜め読みしかしてなかったんだよ。後で気が付いてもぽやっと君のうっかりミスだとか思ってそう」
「ラッセルの言ってる事は話半分に聞いて、全利益で契約してこいって言ったのはミリーじゃん。俺の考えで動いていいなら純利益なんてダメだってちゃんと話し合ってたに決まってるだろ!?」
意見の相違があってもミリーが無視しろと言った理由は⋯⋯。
「だってぇ、シモンをね~、舐め腐ったままでいて欲しかったんだ~。言い間違えてるよ~、大切な契約書にうっかりミスしてるよ~ってね。そんなヘマをするお間抜けちゃんだって思っといてくれたら後が楽なんだもん」
「ままって⋯⋯舐め腐ったままって⋯⋯酷いよ、俺頑張って来たのに⋯⋯知らない人、苦手なのに⋯⋯馬車酔い、酷いのにぃぃ⋯⋯」
ソファに倒れ込んだシモンの前にイリナがそっとクッキーを差し出した。
お子ちゃまか! とツッコミかけたレオンがイリナに睨まれて口を閉ざしたのは賢明な判断だっただろう。
「白皙の美少年⋯⋯少年から青年に変わりゆく危うさ⋯⋯性別を超えた美貌が醸し出す憂い⋯⋯不安な思いから漂い出す頼りなさ。そんなすっごいのを見せつけられて、気もそぞろになっちゃったんだねぇ。大切な契約の場で、そりゃダメだよねぇ。大人なのに何やってんだか、やれやれ」
「ダメだよじゃねぇよ。完全に騙しにかかってんじゃねえか!」
「え~! シモンにあんな仕草しろとか、こんな態度を見せつけろとか言ってないのに? たまったまシモンが緊張して、たまったまラッセルがすけべ心を出して、書類をちゃ~んと読むより妄想とかしてただけじゃん。私は何も指示してませ~ん」
俺で妄想⋯⋯呟いたシモンがソファから崩れ落ちた。
「銭ゲバもここまでくると恐怖で毛が逆立つぜ」
「そ、そうね。幼児なのに考えがちょっとエゲツない気がしてきたわ」
「お願い、悪魔から俺を解放して⋯⋯」
「別に犯罪をしようとしてるわけじゃないのに⋯⋯熊達が酷すぎる。これって幼児に対する心的暴行で通報とか出来ないの?
契約書には堂々と『全利益』って記載して、言葉でも『全利益』って言って⋯⋯ほら、こっちは間違った事してないじゃん。相手の心情とか身体的変化とかがその時どういう状態になるかなんて知らないも~ん。
あとは~、正式な契約書に則った取引をしようとしてるだけだよ? 山越えしてる証拠やら裏帳簿やらをたまたま見つけるだけだもん。通りがかりに見つけるとか偶然拾うとかで。ちゃ~んと契約書通りの取引をしようねって言うだけだよ? 『約束は守らなくちゃダメだって学校で習わなかった?』って聞くだけ。ほら、やっぱ良い子じゃん」
「ラッセルが密売してる確証とか証拠でもあんのか?」
「ん~と⋯⋯ないよ?」
「んじゃ、山越えの証拠とかは?」
「それもない」
「チビすけ、10年間雀の涙くらいしか受け取れねえ可能性もあるって分かってるよな」
「分かってないね。だって山越えで密輸してなきゃ数字がおかしいんだもん。ラッセル領と山を挟んだ帝国側にある領地は農業に適した土地じゃなくて酪農中心なんだ。育ててるのは馬・牛・豚・ロバがメインだけど騾馬もいる。その中で騾馬だけは出荷した記録がないんだ。
それなのにかなりの量の農作物を出荷してる」
「あのなぁ、そいつは状況証拠にさえならん、ただの仮説ってやつだ。確かにチビすけの話は筋が通ってる。だが、相手を追い詰めるには『山越えしてる証拠や裏帳簿』が絶対に必要になる」
「うん、だから頑張ってね」
「⋯⋯⋯⋯は?」
「熊ってば脳みそ枯れちゃった? やっぱり本当に筋肉が詰まってるとかかな⋯⋯ってなると役に立たないかも。う~ん、それは大問題だよぉ」
「何が言いたいんだ?」
「覚えてないの?」
【集まった証拠くらいいくらでも好きにさせてあげるからさ⋯⋯勿論、報酬次第だけどね】
「うちの商会は情報を売ってるの。お買い上げありがとうございました~」
両手を揃えてペコリと頭を下げたミリーがちろっと顔を上げると、怒髪天を衝いたレオンがふうふうと荒い息を吐きながら睨みつけていた。
「イリスゥ、熊が怒ってる~。初めにちゃんと言っといたのに、忘れてたのかなぁ。でもねぇ、しつこく教えて欲しがったのは熊だし⋯⋯もしかしてこの国のお貴族様って、情報はただで手に入るって思ってる? ここまで調べるの結構大変だったから、それを知りたいのならそれなりの報酬が発生するのは当然だと思うんだけどなぁ。国交がないからさぁ、帝国の情報を集めるのは特に大変だったんだよ?」
「分かった。他にも知ってる事とか証拠集めに有益な話を見つけたら教えてくれ。もちろん対価は払う。ついでに教えて欲しいんだが、チビす⋯⋯お前のその知識はどこから仕入れた? 本とか言うなよ。そこまでの情報がわかる本なんてねえからな。お前の言ってた保険だの騾馬だの⋯⋯ギルドの行く末なんか、まるで見てきたみたいに話してたしな」
「⋯⋯それは教えられないな~。その情報に見合う対価を熊は持ってないから。イリスもシモンもね」
「やっぱり分かる人には分かるよね~。純利益って言っているラッセルに全利益って書かれた契約書を見せても、シモンの威力にやられて斜め読みしかしてなかったんだよ。後で気が付いてもぽやっと君のうっかりミスだとか思ってそう」
「ラッセルの言ってる事は話半分に聞いて、全利益で契約してこいって言ったのはミリーじゃん。俺の考えで動いていいなら純利益なんてダメだってちゃんと話し合ってたに決まってるだろ!?」
意見の相違があってもミリーが無視しろと言った理由は⋯⋯。
「だってぇ、シモンをね~、舐め腐ったままでいて欲しかったんだ~。言い間違えてるよ~、大切な契約書にうっかりミスしてるよ~ってね。そんなヘマをするお間抜けちゃんだって思っといてくれたら後が楽なんだもん」
「ままって⋯⋯舐め腐ったままって⋯⋯酷いよ、俺頑張って来たのに⋯⋯知らない人、苦手なのに⋯⋯馬車酔い、酷いのにぃぃ⋯⋯」
ソファに倒れ込んだシモンの前にイリナがそっとクッキーを差し出した。
お子ちゃまか! とツッコミかけたレオンがイリナに睨まれて口を閉ざしたのは賢明な判断だっただろう。
「白皙の美少年⋯⋯少年から青年に変わりゆく危うさ⋯⋯性別を超えた美貌が醸し出す憂い⋯⋯不安な思いから漂い出す頼りなさ。そんなすっごいのを見せつけられて、気もそぞろになっちゃったんだねぇ。大切な契約の場で、そりゃダメだよねぇ。大人なのに何やってんだか、やれやれ」
「ダメだよじゃねぇよ。完全に騙しにかかってんじゃねえか!」
「え~! シモンにあんな仕草しろとか、こんな態度を見せつけろとか言ってないのに? たまったまシモンが緊張して、たまったまラッセルがすけべ心を出して、書類をちゃ~んと読むより妄想とかしてただけじゃん。私は何も指示してませ~ん」
俺で妄想⋯⋯呟いたシモンがソファから崩れ落ちた。
「銭ゲバもここまでくると恐怖で毛が逆立つぜ」
「そ、そうね。幼児なのに考えがちょっとエゲツない気がしてきたわ」
「お願い、悪魔から俺を解放して⋯⋯」
「別に犯罪をしようとしてるわけじゃないのに⋯⋯熊達が酷すぎる。これって幼児に対する心的暴行で通報とか出来ないの?
契約書には堂々と『全利益』って記載して、言葉でも『全利益』って言って⋯⋯ほら、こっちは間違った事してないじゃん。相手の心情とか身体的変化とかがその時どういう状態になるかなんて知らないも~ん。
あとは~、正式な契約書に則った取引をしようとしてるだけだよ? 山越えしてる証拠やら裏帳簿やらをたまたま見つけるだけだもん。通りがかりに見つけるとか偶然拾うとかで。ちゃ~んと契約書通りの取引をしようねって言うだけだよ? 『約束は守らなくちゃダメだって学校で習わなかった?』って聞くだけ。ほら、やっぱ良い子じゃん」
「ラッセルが密売してる確証とか証拠でもあんのか?」
「ん~と⋯⋯ないよ?」
「んじゃ、山越えの証拠とかは?」
「それもない」
「チビすけ、10年間雀の涙くらいしか受け取れねえ可能性もあるって分かってるよな」
「分かってないね。だって山越えで密輸してなきゃ数字がおかしいんだもん。ラッセル領と山を挟んだ帝国側にある領地は農業に適した土地じゃなくて酪農中心なんだ。育ててるのは馬・牛・豚・ロバがメインだけど騾馬もいる。その中で騾馬だけは出荷した記録がないんだ。
それなのにかなりの量の農作物を出荷してる」
「あのなぁ、そいつは状況証拠にさえならん、ただの仮説ってやつだ。確かにチビすけの話は筋が通ってる。だが、相手を追い詰めるには『山越えしてる証拠や裏帳簿』が絶対に必要になる」
「うん、だから頑張ってね」
「⋯⋯⋯⋯は?」
「熊ってば脳みそ枯れちゃった? やっぱり本当に筋肉が詰まってるとかかな⋯⋯ってなると役に立たないかも。う~ん、それは大問題だよぉ」
「何が言いたいんだ?」
「覚えてないの?」
【集まった証拠くらいいくらでも好きにさせてあげるからさ⋯⋯勿論、報酬次第だけどね】
「うちの商会は情報を売ってるの。お買い上げありがとうございました~」
両手を揃えてペコリと頭を下げたミリーがちろっと顔を上げると、怒髪天を衝いたレオンがふうふうと荒い息を吐きながら睨みつけていた。
「イリスゥ、熊が怒ってる~。初めにちゃんと言っといたのに、忘れてたのかなぁ。でもねぇ、しつこく教えて欲しがったのは熊だし⋯⋯もしかしてこの国のお貴族様って、情報はただで手に入るって思ってる? ここまで調べるの結構大変だったから、それを知りたいのならそれなりの報酬が発生するのは当然だと思うんだけどなぁ。国交がないからさぁ、帝国の情報を集めるのは特に大変だったんだよ?」
「分かった。他にも知ってる事とか証拠集めに有益な話を見つけたら教えてくれ。もちろん対価は払う。ついでに教えて欲しいんだが、チビす⋯⋯お前のその知識はどこから仕入れた? 本とか言うなよ。そこまでの情報がわかる本なんてねえからな。お前の言ってた保険だの騾馬だの⋯⋯ギルドの行く末なんか、まるで見てきたみたいに話してたしな」
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