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アカデミー、後期

16.期末試験 ②

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「セーフエリアに入れないって?」
 ライリー殿下の声。

「そうです。みんなズルをしてる人と一緒だと、落ち着いて休憩できないからって」
 側近1号の声。

「それじゃあ、10日も体力もたないんじゃないかな」
 ライリー殿下が聞き返す。

「それが狙い目みたいですね。グレースの発案です」
 側近2号の声。

「これに懲りて、ズルしなくなるはずだって。頭いいと思いませんか?」
 側近3号の声。

「確かに、ズルしなくなるのはいい事だよね」
 ライリー殿下が言った。

(そう言うことだったんだ。学年全体で、きっと先生もだ)

 ミリアは隠密と身体強化をかけて、上の階に上がって行く。

(もういい、帰ろう)


 アカデミーを辞める決心がついた。住む家も仕事もある。何よりあそこには、大切な仲間がいる。

 周りでは生徒達が魔物と戦ったり、お喋りしたりしている。隠密をかけているミリアには、誰も気付かない。


 5階まで上がってきた時、大量の魔物の気配がした。ミリアは思わず駆け出した。3人の生徒が横を駆け抜けて行った。見た事のある顔、Sクラスの生徒だ。

 振り返ったミリアに、3人の声が聞こえてきた。

「ヤバいよ何あれ」
「あんなの聞いてない。アカデミーのミスだ」
「モンスターハウスでしょ」
「ケビンは?」
「知らない、後から来るんじゃね」

(最低、仲間を置いて逃げ出したんだ)

 
 ミリアは駆け出した。小さく開いたドアが見える。その中に大量の魔物の気配がある。ドアの隙間から中に入ると、尻餅をついて剣を振り回している男子生徒がいた。

「来るなー」
「あっち行けよ」
「くそー、みんな置いてきやがって」

 周りを取り囲んでいる魔物達は、男子生徒を弄ぶかの様に、じわりじわりと近づいている。

 ミリアは隠密を解き、男子生徒ケビンにシールドをかけて、前に回り込む。2人の周りに【アース・ウォール】で壁を作った。

「助けはいる?」
「何だよ」
「だから助けるのか、放っておいて欲しいのか。どっちなの?」
「・・助けてくれ」

「シールドをはってるから、そこから動かないで。いい?」

 こくこくと頷く男子生徒ケビン。ミリアは土の壁を壊し、【フリーズテンペスト】で、氷の嵐を巻き起こす。殆どの魔物が瞬殺され、【アイスカッター】で残った魔物を一掃した。

 ミリアは男子生徒ケビンのシールドを解除して、手を差し出した。
「お前、そんなに強いのに何でズルなんかしてんだよ! お前に助けられたなんてバレたら、俺まで仲間外れにされるじゃんか」

 ミリアは立ち止まって、男子生徒ケビンを見つめた。

「ズルなんてした事ない【クリーン】」

 ミリアは隠密をかけて、駆け出した。さっき逃げ出した生徒達が、教師と話をしている。

(もう、どうでもいい)
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