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SSランク登用試験

4.孤軍奮闘 ②

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 ギルド本部は、24時間営業している。午前中が最も人の出入りが多いが、深夜になってもかなりの人が出入りしている。

「おい、あれギルマスだろ? あんなとこに座り込んで、何やってんだ?」

「ギルマスー、何やってんすか?」
「おう、本部長の仕事が終わるの待ってんだ」
「こんなとこに座って? ギルドで待ってりゃ伝令鳩が来るんじゃね?」
「それだとちょっとなぁ。当分ここにいるから、何か用事があったらここに来いよ」

 ギルマスはまた、雑誌を読み始めた。

ユージーンギルマス、本気でここに籠城するつもりか?」
「おう、なんか文句あるか? 別に規約に反してはないと思うが?」
「・・」

 翌日の朝早く、
「出来たぞ、ほら。お陰で徹夜だ、俺はこれから仮眠をと「よっしゃ、なら次の書類な。ほい」」

 書類を確認したギルマスは、次の書類を本部長に手渡す。

「で、いつ出来る?」

 本部長が書類を読んで絶句した。

「お前、これSSランクの登用試験? しかも試験受けるのはアメリアだと? SSランク登用試験は、Sランク10人を1分以内に倒さなきゃいけないんだぞ」

「おう、知ってるとも。俺も早く帰って寝たいんで、さっさとやってくれ」
「無茶言うなよ、Sランク昇格とは訳が違うんだぞ」
「んなこたぁ分かってる。準備はして来た、俺の体力が持つ間にやってくれ」

「ずっとここにいるつもりか?」
「あぁ、ここしか安全なとこはねえからな」
「もしかして、アメリアは今みんなが探し回ってるミリ「お喋りしてねぇで、さっさと仕事しろよ。終わったらたっぷり寝りゃいい」」

「アメリア達はどこにいる?」
「それ聞いてどうする? 手続きは俺がやる。奴らは試験会場に行くまで、誰にも見つからん」

「・・分かった。だが邪魔が入るのは覚悟しとけよ」
「おう」


 ギルマスの周りに少しずつ、ギルドの冒険者達が集まり始めた。

「ギルマス、差し入れ持って来た。食えよ」
「すまん、これが終わったら貰うわ」
「何で? 毒とか入ってないぜ?」
「お前のことは信用してる。ただ今回だけは負けられないんだ。悪いな」

 1週間経っても、書類審査は難航していた。ギルマスはポーションを飲み、目を血走らせてロビーで胡座をかいている。

 12日目、目を赤くした本部長がやってきた。
「お前、大丈夫か?」
「それより、どうなってる?」
「漸く帝国がおれた」

「後は?」

「メンバー選出だ。
今世界中でSランクは5人。Aランク2人でSランク1人に換算するから、Aランクを10人の選出する。自分とこから出したがってるやつが、わんさかいてな。
アメリアが13歳だからって大騒ぎだ」

「みんな、舐めてんだろ? まぁ、誰でもそう思うよな」

「アメリアが、奴らが探してたミリア・オルグレンだって気付いてる。とてつもない魔法を使う13歳なんて、そうそういないからな」

「ふん、今更遅えんだよ」
「お前がここに籠城した理由が分かって、ほっとしたよ。頭がおかしくなったのかと思った」
「だいぶ怪しくなり始めてるがな。なるべく急いでくれ。SSランクになるまでは気を抜けねえんだ」
「しかし、随分入れ込んでるんだな」
「お前も会えばわかる」

「楽しみにしてる。アメリアか」
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