【完結】亡くなった婚約者の弟と婚約させられたけど⋯⋯【正しい婚約破棄計画】

との

文字の大きさ
25 / 49

25.追い詰めるライラ

しおりを挟む
「ハーヴィーの最後?」

「ええ、あの日はすごく動揺してたから聞き逃したこととかがいっぱいあるんじゃないかって思うの。それで、もう一度話してもらえたらって」

「いいけど⋯⋯やめておいた方が良くないかな?」

「他に知ってる人っていないでしょう? ジェラルドに聞くしかなくて」



 ジェラルドの話は前回とほぼ同じだった。

 金曜日、書記や広報達が帰宅した生徒会室でハーヴィーと2人でいた時に『日曜に』帳簿を片付けると言われたこと。

 ジェラルド自身は用事があって来れないと言った事。

 ハーヴィーはお昼前に学園に来て途中外出もしていないし、その日は誰も学園に来ていないと守衛が話していたこと。

 夕方守衛が様子を見に行った時階段下にひとりで倒れているハーヴィーを守衛が発見した。

 で血を流し既に息をしていなかった。慌てて警ら隊や病院に連絡を入れターンブリー侯爵家にも連絡した。

 鍵はハーヴィーの上着のから発見された。

 大階段の途中に鞄が落ちており中の物が散乱していた。

 病院ではなく学園から直接侯爵家に運ばれた。

 を強打していたのが原因。

 帳簿は全部終わってた。



「学園内にハーヴィーしかいなかったのなら、鍵をポケットに入れたのって誰だったのかしら」

「え? ハーヴィーに決まってるだろ?」

「だって、ハーヴィーは左利きよ? 人前では右手でやるように意識してたけど、私と2人の時はいつも左手で鍵をしてに入れていたの。
しょっちゅう揶揄ってたから間違いないわ」

「⋯⋯じゃ、じゃあ左だったのかな。私の聞き違いかもしれないね」

 冷や汗が浮いた額を手の甲で拭きながらジェラルドが目を泳がせた。


「土曜日ハーヴィーに会った時にね『ひとりじゃない』って言ってたの。あの人と一緒だって、彼ならもう少し詳しく何か知ってるのかしら。どう思う?」

「⋯⋯そうか、それは初耳だな。この間はそんなこと言わなかったじゃないか」

「ええ、あの頃の記憶は曖昧で⋯⋯後から思い出したの。聞きに行ってみようかしら」




「⋯⋯あの日、アイツが? だって、いや」

 ジェラルドは貧乏ゆすりしはじめ右手の親指の爪を噛んではぶつぶつと呟いている。

 ジェラルドは以前からライラの事を内心馬鹿にしていた。

(勉強ができるだけの愚鈍なライラなんて関わりたくもないのに。女のくせにでしゃばりのこんな奴にあちこちかき回されて邪魔をされるなんて。
どうしよう、どうすれば興味をよそに向けられる? アイツが左利きだったなんて!)

 目の前のライラがジェラルドの焦りや苛立ちに気付いているなどと思ってもおらず、自分の考えに没頭していた。



「ジェラルド、顔が真っ青よ? どうしたの?」

「⋯⋯ああ? なんだって?」

 考えに没頭していたところに水を差されて思わず不機嫌な声を上げたジェラルドは勢いのままライラを睨みつけた。

「ハーヴィーは後頭部の傷で即死したのにうつ伏せで発見されたのなら誰かがいたって事かなって思うの。
例えばだけど、その誰かがハーヴィーの左ポケットから鍵を取り出す時身体の向きを変えた。生徒会室に侵入して用事を済ませた後右ポケットに鍵を返した。
そうじゃなくちゃ話がおかしい気がするの」

「でも学園には誰もいないと守衛が証言しているじゃないか!?」

 目を血走らせたジェラルドが『バン!』とテーブルを叩いた。


「抜け道があるじゃない。ジェラルドも知ってるアレ」

「⋯⋯は? 女のくせになんでそんな事を知ってるんだ?」

「結構有名らしいわよ。門を通る許可の降りない人と守衛にバレたくない人が抜け道を使ってハーヴィーに会いに行ったのね」

「それは単なる想像だろう? 俺はこの後用事があるんだ、妄想に付き合う暇がなくて申し訳ないが⋯⋯」



「ねえ、なんで横領なんてしたの?」

「⋯⋯なんのことを言ってるのか俺には」

「ハーヴィーと私は仲が良かったの」

「何を聞いたんだ⋯⋯アイツは何を言っていた?」

 腰を浮かしかけたジェラルドは今にも立ち上がり掴みかかってきそうな様子になり、ライラは持ってきていた鞄を引き寄せた。



「ねえ、ミリセントがいるのにどうしてルシンダなんかと浮気したの?」

「⋯⋯ル、ルシンダ?」


「芝居小屋の女優なんかの為に横領するなんて馬鹿みたい!」

「⋯⋯なんのことだか俺には」


「大階段からハーヴィーを引き摺り落とした時後悔はしなかったの?」

「な!」


「ポケットを漁ってた時、ハーヴィーは息をしてなかったの?」

「⋯⋯あ、あれは」


「生徒会室で何をしたかったの?」

「⋯⋯」


「偽装工作している時、倒れているハーヴィーに何も感じなかったの?」

「⋯⋯俺は、俺は知らな⋯⋯」


「ポケットに鍵を返す時ハーヴィーに何を思ったの?」

「⋯⋯やめろ、やめてくれ!!」



 ライラが疑問を投げつけるたびにガタガタと震えが酷くなっていくジェラルド。ブルブルと震える手で顔を擦って⋯⋯まるで何かの記憶を消したがっているかのように見えた。



「ねえ、どうしてハーヴィーを嫌ったの?」

「⋯⋯」

 両手で頭を抱え込んだジェラルドが何も言わずに首を振っている。膝がテーブルにあたり手をつけていないカップから紅茶が溢れた。

「し、知らない。俺は何も知らない」


「ハーヴィーはジェラルドの事を大切だって思ってたのに、なんで?」

「ア、アイツが悪いんだ。俺は公爵家なのに⋯⋯体裁だけの侯爵家のくせに首席で⋯⋯父上⋯⋯生徒会副会長なんて不名誉だって」

「その程度のことでハーヴィーを嫌ったの!?」

「その程度だと! 俺がどんな気持ちでいたか知りもしないくせに⋯⋯筆頭公爵家の嫡男が下衆な侯爵家に一度も勝てないなんて許されないんだ。その上会長にもなれなくて我が家の恥だって。
おまけに生意気なライラは首席で生徒会に入ったのにミリセントは成績もダメダメで生徒会にも選ばれなくて⋯⋯そんな婚約者なんて恥ずかしくないのかって言われて」

「ミリセントの成績はダメダメなんかじゃないわ。いつもトップ10位以内にいるじゃない!」

「その程度じゃあ公爵家には相応しくないんだ。俺達は常に最高じゃないとダメなんだから」


(そんな事でハーヴィーを嫌っていた⋯⋯妬んでいたなんて)



「だから横領して浮気? 最低だわ!!」

「ルシンダが悪いんだ! ミリセントのつけていたネックレスより豪華じゃなきゃ嫌だとか、ミリセントがつけていたイエローダイヤと同じものが欲しいとか」

「それで生徒会のお金に手をつけたわけね」

「仕方ないじゃないか! 突然ミリセントへのプレゼントの質を下げたら怪しまれる。ルシンダなんてほんのちょっと気晴らししたくて付き合っただけだったのに⋯⋯。
ミリセントを傷つけたくなかったんだ!」


『えー、じゃあミリセントさんに言っちゃおうかなぁ。ジェラルドってケチですよね~って』

『イエローダイヤってやっぱり綺麗!! そう言えば以前、ミリセントさんがつけてたのってピジョンブラッドのルビーですよね~。私、あれも欲しいな~。ミリセントさんに貸してって言ってみようかな? ジェラルドのプレゼントなら私だってつける資格あるでしょう?』




「ウェイン・マーシャルが捕まったって知ってる?」

しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

差し出された毒杯

しろねこ。
恋愛
深い森の中。 一人のお姫様が王妃より毒杯を授けられる。 「あなたのその表情が見たかった」 毒を飲んだことにより、少女の顔は苦悶に満ちた表情となる。 王妃は少女の美しさが妬ましかった。 そこで命を落としたとされる少女を助けるは一人の王子。 スラリとした体型の美しい王子、ではなく、体格の良い少し脳筋気味な王子。 お供をするは、吊り目で小柄な見た目も中身も猫のように気まぐれな従者。 か○みよ、○がみ…ではないけれど、毒と美しさに翻弄される女性と立ち向かうお姫様なお話。 ハピエン大好き、自己満、ご都合主義な作者による作品です。 同名キャラで複数の作品を書いています。 立場やシチュエーションがちょっと違ったり、サブキャラがメインとなるストーリーをなどを書いています。 ところどころリンクもしています。 ※小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿しています!

とある虐げられた侯爵令嬢の華麗なる後ろ楯~拾い人したら溺愛された件

紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
侯爵令嬢リリアーヌは、10歳で母が他界し、その後義母と義妹に虐げられ、 屋敷ではメイド仕事をして過ごす日々。 そんな中で、このままでは一生虐げられたままだと思い、一念発起。 母の遺言を受け、自分で自分を幸せにするために行動を起こすことに。 そんな中、偶然訳ありの男性を拾ってしまう。 しかし、その男性がリリアーヌの未来を作る救世主でーーーー。 メイド仕事の傍らで隠れて淑女教育を完璧に終了させ、語学、経営、経済を学び、 財産を築くために屋敷のメイド姿で見聞きした貴族社会のことを小説に書いて出版し、それが大ヒット御礼! 学んだことを生かし、商会を設立。 孤児院から人材を引き取り育成もスタート。 出版部門、観劇部門、版権部門、商品部門など次々と商いを展開。 そこに隣国の王子も参戦してきて?! 本作品は虐げられた環境の中でも懸命に前を向いて頑張る とある侯爵令嬢が幸せを掴むまでの溺愛×サクセスストーリーです♡ *誤字脱字多数あるかと思います。 *初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ *ゆるふわ設定です

元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜

日々埋没。
ファンタジー
​「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」  ​かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。  その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。  ​レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。 ​ 地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。 ​「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」  ​新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。  一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。  ​やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。  レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。

虐げられ続けてきたお嬢様、全てを踏み台に幸せになることにしました。

ラディ
恋愛
 一つ違いの姉と比べられる為に、愚かであることを強制され矯正されて育った妹。  家族からだけではなく、侍女や使用人からも虐げられ弄ばれ続けてきた。  劣悪こそが彼女と標準となっていたある日。  一人の男が現れる。  彼女の人生は彼の登場により一変する。  この機を逃さぬよう、彼女は。  幸せになることに、決めた。 ■完結しました! 現在はルビ振りを調整中です! ■第14回恋愛小説大賞99位でした! 応援ありがとうございました! ■感想や御要望などお気軽にどうぞ! ■エールやいいねも励みになります! ■こちらの他にいくつか話を書いてますのでよろしければ、登録コンテンツから是非に。 ※一部サブタイトルが文字化けで表示されているのは演出上の仕様です。お使いの端末、表示されているページは正常です。

醜い私は妹の恋人に騙され恥をかかされたので、好きな人と旅立つことにしました

つばめ
恋愛
幼い頃に妹により火傷をおわされた私はとても醜い。だから両親は妹ばかりをかわいがってきた。伯爵家の長女だけれど、こんな私に婿は来てくれないと思い、領地運営を手伝っている。 けれど婚約者を見つけるデェビュタントに参加できるのは今年が最後。どうしようか迷っていると、公爵家の次男の男性と出会い、火傷痕なんて気にしないで参加しようと誘われる。思い切って参加すると、その男性はなんと妹をエスコートしてきて……どうやら妹の恋人だったらしく、周りからお前ごときが略奪できると思ったのかと責められる。 会場から逃げ出し失意のどん底の私は、当てもなく王都をさ迷った。ぼろぼろになり路地裏にうずくまっていると、小さい頃に虐げられていたのをかばってくれた、商家の男性が現れて……

捨てられた私は遠くで幸せになります

高坂ナツキ
恋愛
ペルヴィス子爵家の娘であるマリー・ド・ペルヴィスは来る日も来る日もポーションづくりに明け暮れている。 父親であるペルヴィス子爵はマリーの作ったポーションや美容品を王都の貴族に売りつけて大金を稼いでいるからだ。 そんな苦しい生活をしていたマリーは、義家族の企みによって家から追い出されることに。 本当に家から出られるの? だったら、この機会を逃すわけにはいかない! これは強制的にポーションを作らせられていた少女が、家族から逃げて幸せを探す物語。 8/9~11は7:00と17:00の2回投稿。8/12~26は毎日7:00に投稿。全21話予約投稿済みです。

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。

処理中です...