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24.ライラVSジェラルド
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既にハーヴィーに手をかけているのが真実ならジェラルドに躊躇いはないはずだとターニャが柳眉を逆立てた。
「ひとりがいいのです。ジェラルドはノアが強いと知っていますから、彼がそばにいたら警戒して話をしないかもしれません。わたくしは普段彼以外の護衛や侍女を連れていないので、別の人を連れていれば警戒されてしまいます」
「しかし⋯⋯」
「皆さんを信じておりますし、危険だと思えばすぐに退散しますので」
誰よりもノアを信じているし応接室の外にはデレクもいる。
(2人が応接室を挟んだ状態でいてくれればなんの心配もいらないわ)
プリンストン侯爵家の馬車と護送用の馬車を連ね、騎乗した騎士団に囲まれてメイヨー公爵家に向かった。
少し離れた場所で騎士団のメンバーとノアは待機し、デレクが操る馬車に乗ったライラがひとりで公爵家を訪れた。
「突然で申し訳ありません。ジェラルドに教えてもらいたいことができて⋯⋯」
今朝生徒会の金庫から持ち帰った箱をこれ見よがしに見せて、疲れたように話すライラを心配した執事が玄関脇の椅子を勧めてくれた。
「こちらにお掛けになって少々お待ち下さい」
急足で階段を登る執事の後ろ姿を眺めながら溜息をついた。
前回ここにきた時はハーヴィーと一緒の馬車でやって来た。その後ミリセントも交えた4人でお茶をしてボードゲームやトランプを楽しんだ。
(まさかジェラルドがハーヴィーとの付き合いを嫌がってるなんて思いもしなかったわ。理由はなんだったのかしら)
ハーヴィーが忙しくなったのはターンブリー侯爵家と貿易会社の不正に気付いてからだが、同じ頃ライラも付き合いを減らしプリンストン侯爵の帳簿を調べはじめた。ミリセントとは同じクラスだったのでお昼を一緒に食べ休憩時間も一緒にいることが多かった。
(ハーヴィーはそう言う事に目敏かったから気付いてたのかも⋯⋯私は全然気付いてなくて本当に情けないわ。
メイヨー公爵がターンブリー侯爵家との付き合いを嫌がりはじめたのなら、プリンストン侯爵家との付き合いも嫌がってたのかしら?
ミリセントからはそんな様子は感じなかったんだけどなあ)
隠し事が苦手で真っ直ぐな性格のミリセントならジェラルドから愚痴を聞いていれば態度に出ていた可能性があるし、距離を置きたい理由に納得していたのなら正直に言ってくれたような気がする。
(それにしても、人の心って分からないものね。あれほどミリセントと仲がいいジェラルドが浮気をしてたなんて⋯⋯それも犯罪に手を染めるほどなら相当めり込んでいたって言うことよね)
メイヨー公爵家はこの国でもトップクラスの資産家で、それはプリンストン侯爵家のような胡散臭いものではなく代々継承されてきたものや順調な領地経営から生まれたもの。
はっきりと聞いたことはないが普段の話の様子では小遣いとして毎月与えられている金額もかなりなもののように感じていた。
(かなり余裕があるみたいで、ミリセントが学生らしくない高額のプレゼントを貰ってるってミリアーナおばさまが気にしておられたくらいだもの)
「ライラ、突然どうしたんだい?」
朝から激動の時間が続き疲れ果てたライラがため息をついていると、少し慌てた様子のジェラルドが階段を駆け降りてきた。
「先触れも出さず突然来てごめんなさい」
膝に乗せた箱を置き換えながらライラが頭を下げた。
「そんなこと気にしないでいいよ。その箱は今朝の?」
「ええ、一度持ち帰ったけど鍵がなくて」
「そう⋯⋯箱は私が持つから取り敢えず居間に行こう。ノアがいないなんて珍しいね」
「あの、応接室じゃダメかしら⋯⋯その、応接室以外の場所ではハーヴィーの事を思い出しそうで」
「そうか、応接室は使ったことがなかったね。気が利かなくて申し訳ない」
「とんでもない、私こそ⋯⋯ありがとう」
テーブルの上に箱を置きテラスを一望できるソファにジェラルドと向かい合わせになって腰掛けた。ライラは勿論テラスの方を向いた席を選んで座ったのでジェラルドはテラスに背を向けて座ることになった。
使う予定のなかった応接室は冷え切っており、メイドが慌てて暖炉に火を起こしお茶とお菓子が運ばれてきた。
「ドアを少しだけ開けておいた方が良いかな?」
ライラが小さく首を横に振ると退出するメイドにドアを閉めるように言ったジェラルドと漸くふたりきりになった。
「⋯⋯それで、今日はどうしたんだい?」
「ええ⋯⋯教室に置いておくのは不安になって⋯⋯あの後ね、屋敷に持ち帰ることにしたの」
緊張しているライラの態度を疲れだろうと思ったジェラルドがサクサクとした食感のジャンブルを勧めてきた。
「食べてごらん、今回のはナッツを入れてもらったんだ」
「ええ、ありがとう」
「えっと、帰り道は大丈夫だった? いや、特に理由はないんだけど⋯⋯最近物騒な事件が多いって父上が仰ってたから」
「ああ、雑木林の所で賊が出たけどノアがいたから無事だったわ。なんだか運が悪くて嫌になっちゃうわ」
とってつけたようなジェラルドの説明だが、何も知らない人が聞けばただの雑談に聞こえたかもしれない。
「あの箱って中はなんだったんだい?」
ライラの顔を覗き見るようにしてジェラルドが尋ねた。
「私は鍵を持ってないから⋯⋯」
鍵を持っているのはノアだから嘘は言っていない。表情を変えないライラが箱を見ながら呟くとあからさまにホッとした態度を見せたジェラルドに呆れ返った。
(こんな分かりやすい人だった? それなのに一度も違和感を感じていなかったなんて、私って⋯⋯)
『ライラは鈍感だからなあ』
『えー、そんな言い方って酷すぎるわ』
『私はそこも気に入ってるよ。そのお陰で一緒にいて肩の力が入らずにリラックスできるんだ』
『ぬいぐるみ扱いされてるみたいで納得いかないけど許してあげる』
(ハーヴィーにも認定されてたし、今更かもね)
「これをどうしようかなって考えてて⋯⋯」
「と言うと?」
「ハーヴィーが私に託したものでしょう、そう思うと⋯⋯」
「そうか、よかったら暫くの間私が預ろうか? ライラの気持ちが落ち着くまでとか」
前のめりになって勢いこむジェラルドを思わず睨みそうになったライラはグッと息を堪えた後溜息をついて誤魔化した。
「そう言う方法もあるのかしら?」
ライラがぽそりと呟いた時テラスの隅でデレクが手を振っているのが見えた。
(流石騎士団だわ。もう準備できたなんて)
暖炉の火を入れるのに時間がかかったのがラッキーだったとしても予想以上の速さに驚いた。
この国では第三騎士団が平民の問題や平民街で起こるトラブルを担当している。第二騎士団は貴族と貴族街の問題を担当している為、非常時には貴族の捕縛や屋敷の強制捜査などを執行する権利を持っている。
(それにしても早い⋯⋯ターニャ様がゴリ押ししたのかしら。メイヨー公爵家くらいの家格になれば王女殿下のお顔も知っていたのかも)
「前に教えてくれたハーヴィーの最後、もう一度教えてもらえないかしら」
「ひとりがいいのです。ジェラルドはノアが強いと知っていますから、彼がそばにいたら警戒して話をしないかもしれません。わたくしは普段彼以外の護衛や侍女を連れていないので、別の人を連れていれば警戒されてしまいます」
「しかし⋯⋯」
「皆さんを信じておりますし、危険だと思えばすぐに退散しますので」
誰よりもノアを信じているし応接室の外にはデレクもいる。
(2人が応接室を挟んだ状態でいてくれればなんの心配もいらないわ)
プリンストン侯爵家の馬車と護送用の馬車を連ね、騎乗した騎士団に囲まれてメイヨー公爵家に向かった。
少し離れた場所で騎士団のメンバーとノアは待機し、デレクが操る馬車に乗ったライラがひとりで公爵家を訪れた。
「突然で申し訳ありません。ジェラルドに教えてもらいたいことができて⋯⋯」
今朝生徒会の金庫から持ち帰った箱をこれ見よがしに見せて、疲れたように話すライラを心配した執事が玄関脇の椅子を勧めてくれた。
「こちらにお掛けになって少々お待ち下さい」
急足で階段を登る執事の後ろ姿を眺めながら溜息をついた。
前回ここにきた時はハーヴィーと一緒の馬車でやって来た。その後ミリセントも交えた4人でお茶をしてボードゲームやトランプを楽しんだ。
(まさかジェラルドがハーヴィーとの付き合いを嫌がってるなんて思いもしなかったわ。理由はなんだったのかしら)
ハーヴィーが忙しくなったのはターンブリー侯爵家と貿易会社の不正に気付いてからだが、同じ頃ライラも付き合いを減らしプリンストン侯爵の帳簿を調べはじめた。ミリセントとは同じクラスだったのでお昼を一緒に食べ休憩時間も一緒にいることが多かった。
(ハーヴィーはそう言う事に目敏かったから気付いてたのかも⋯⋯私は全然気付いてなくて本当に情けないわ。
メイヨー公爵がターンブリー侯爵家との付き合いを嫌がりはじめたのなら、プリンストン侯爵家との付き合いも嫌がってたのかしら?
ミリセントからはそんな様子は感じなかったんだけどなあ)
隠し事が苦手で真っ直ぐな性格のミリセントならジェラルドから愚痴を聞いていれば態度に出ていた可能性があるし、距離を置きたい理由に納得していたのなら正直に言ってくれたような気がする。
(それにしても、人の心って分からないものね。あれほどミリセントと仲がいいジェラルドが浮気をしてたなんて⋯⋯それも犯罪に手を染めるほどなら相当めり込んでいたって言うことよね)
メイヨー公爵家はこの国でもトップクラスの資産家で、それはプリンストン侯爵家のような胡散臭いものではなく代々継承されてきたものや順調な領地経営から生まれたもの。
はっきりと聞いたことはないが普段の話の様子では小遣いとして毎月与えられている金額もかなりなもののように感じていた。
(かなり余裕があるみたいで、ミリセントが学生らしくない高額のプレゼントを貰ってるってミリアーナおばさまが気にしておられたくらいだもの)
「ライラ、突然どうしたんだい?」
朝から激動の時間が続き疲れ果てたライラがため息をついていると、少し慌てた様子のジェラルドが階段を駆け降りてきた。
「先触れも出さず突然来てごめんなさい」
膝に乗せた箱を置き換えながらライラが頭を下げた。
「そんなこと気にしないでいいよ。その箱は今朝の?」
「ええ、一度持ち帰ったけど鍵がなくて」
「そう⋯⋯箱は私が持つから取り敢えず居間に行こう。ノアがいないなんて珍しいね」
「あの、応接室じゃダメかしら⋯⋯その、応接室以外の場所ではハーヴィーの事を思い出しそうで」
「そうか、応接室は使ったことがなかったね。気が利かなくて申し訳ない」
「とんでもない、私こそ⋯⋯ありがとう」
テーブルの上に箱を置きテラスを一望できるソファにジェラルドと向かい合わせになって腰掛けた。ライラは勿論テラスの方を向いた席を選んで座ったのでジェラルドはテラスに背を向けて座ることになった。
使う予定のなかった応接室は冷え切っており、メイドが慌てて暖炉に火を起こしお茶とお菓子が運ばれてきた。
「ドアを少しだけ開けておいた方が良いかな?」
ライラが小さく首を横に振ると退出するメイドにドアを閉めるように言ったジェラルドと漸くふたりきりになった。
「⋯⋯それで、今日はどうしたんだい?」
「ええ⋯⋯教室に置いておくのは不安になって⋯⋯あの後ね、屋敷に持ち帰ることにしたの」
緊張しているライラの態度を疲れだろうと思ったジェラルドがサクサクとした食感のジャンブルを勧めてきた。
「食べてごらん、今回のはナッツを入れてもらったんだ」
「ええ、ありがとう」
「えっと、帰り道は大丈夫だった? いや、特に理由はないんだけど⋯⋯最近物騒な事件が多いって父上が仰ってたから」
「ああ、雑木林の所で賊が出たけどノアがいたから無事だったわ。なんだか運が悪くて嫌になっちゃうわ」
とってつけたようなジェラルドの説明だが、何も知らない人が聞けばただの雑談に聞こえたかもしれない。
「あの箱って中はなんだったんだい?」
ライラの顔を覗き見るようにしてジェラルドが尋ねた。
「私は鍵を持ってないから⋯⋯」
鍵を持っているのはノアだから嘘は言っていない。表情を変えないライラが箱を見ながら呟くとあからさまにホッとした態度を見せたジェラルドに呆れ返った。
(こんな分かりやすい人だった? それなのに一度も違和感を感じていなかったなんて、私って⋯⋯)
『ライラは鈍感だからなあ』
『えー、そんな言い方って酷すぎるわ』
『私はそこも気に入ってるよ。そのお陰で一緒にいて肩の力が入らずにリラックスできるんだ』
『ぬいぐるみ扱いされてるみたいで納得いかないけど許してあげる』
(ハーヴィーにも認定されてたし、今更かもね)
「これをどうしようかなって考えてて⋯⋯」
「と言うと?」
「ハーヴィーが私に託したものでしょう、そう思うと⋯⋯」
「そうか、よかったら暫くの間私が預ろうか? ライラの気持ちが落ち着くまでとか」
前のめりになって勢いこむジェラルドを思わず睨みそうになったライラはグッと息を堪えた後溜息をついて誤魔化した。
「そう言う方法もあるのかしら?」
ライラがぽそりと呟いた時テラスの隅でデレクが手を振っているのが見えた。
(流石騎士団だわ。もう準備できたなんて)
暖炉の火を入れるのに時間がかかったのがラッキーだったとしても予想以上の速さに驚いた。
この国では第三騎士団が平民の問題や平民街で起こるトラブルを担当している。第二騎士団は貴族と貴族街の問題を担当している為、非常時には貴族の捕縛や屋敷の強制捜査などを執行する権利を持っている。
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