【完結】亡くなった婚約者の弟と婚約させられたけど⋯⋯【正しい婚約破棄計画】

との

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39.顛末

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 あの婚約破棄と不正告発から既に1年7か月。膨大な量の資料が集められ不正や密売の全容が漸く見えてきた。

 発覚当初は毎日王都の新聞の一面を占領していた話題も底をついたようで、最近では王太子妃の2人目の妊娠の話題が載るようになった。

 第二騎士団の強制捜査が入った日からほんの一カ月前まで、ライラは大勢の非難の目に晒されながら貿易会社の立て直しに奔走した。

 逮捕を免れた役員と古株の社員に頭を下げて得意先や取引先をまわり、仕入れ先との交渉にあたった。

 事業の縮小や撤退を余儀なくされ退職する社員の再就職先を探し、退職金や不足した給与を支払った。傾きかけた会社には戻ってきた役員報酬の全てと多くの私財を注ぎ込んだ。

 プリンストンとターンブリーの屋敷で働いていた使用人には退職金を渡したが、紹介状のほとんどは破り捨てられた。

(ハーヴィーが残してくれた役員報酬があったからなんとか持ち直せたかも)



 寝る暇もなく働いて得られたのはプリンストンの生き残りという悪評と裏切り者というレッテルで、蓄えもほとんど残っていない。

「家族を売って一人だけ罪を逃れた」

「社員達を混乱に陥れて平然と暮らしている」

「極悪非道な売女」



 非難と嘲笑の中でひたすら走り続けたライラの評価が変わったのは、王家からプリンストンとターンブリー両侯爵や旧役員達と一部の社員達が行っていた犯罪の全容が公開されてからだった。

 脱税だけであればこれほど大きな騒ぎにはなっていなかったが、武器の密売・奴隷売買・違法薬物の輸入⋯⋯悪質すぎる犯罪の羅列で、世論が一気にライラ賞賛に傾いた。

 規模を縮小した貿易会社は株式会社となり新役員を選出。以前の取引先や仕入れ先も戻りはじめ順調な滑り出しを見せ、それを確認したライラは退陣し屋敷に引き篭もった。


(ハーヴィーとの約束はこれで終わり)




 ターンブリー侯爵夫妻とプリンストン侯爵夫妻は褫爵と領地及び資産没収の後極刑となり断頭台の露と消えた。長年にわたる密輸や法律違反は膨大な量で、罪状を読み上げる執行官を辟易させた。
 立場を利用され陥れられた者達が訴える裁判所前の長い行列は一時期風刺画にもなった。

 両侯爵の犯罪に加担していた役員や社員達も極刑となった。

 ビクトールの母親の商会はターンブリー侯爵からの支援がなくなると同時に倒産し借金の返済の為娼館に売られた。


 ビクトールとサルーン男爵令嬢は爵位簒奪と公文書偽造の罪で同じく断頭台行きが決まった。たかだか紋章印の不正使用程度で⋯⋯と、量刑に不服を申し立てていたが、執行官から詳しく説明を受けてからはお互いに罵り合って最後を迎えた。

 父親が大事にしていた紋章印を見せびらかしたかっただけのビクトールと中途半端な知識をひけらかしただけの2人は、最後まで現実を受け入れる事はなかった。

 サルーン男爵は平民となり一家離散、その後行方知れずになった。

 モグリの弁護士ベン・モートンは公文書偽造と身分詐称で国外追放。


 ジェラルドは最後まで自分の非を認めようとしなかったが、執行官がライラにこっそりと教えてくれたのは⋯⋯。

『ハーヴィーはいつだって俺の前にいて、まっすぐ前を向いていた。それがすごく輝いていて羨ましかった』

 極刑で断頭台行きが決定した時⋯⋯。

『そうか、俺はアイツとは別のとこしか行けないんだよね。当然か⋯⋯俺がしなくちゃいけなかったのは、アイツは凄いんだよって言う事だったんだ』

 メイヨー公爵は降爵し子爵となり、領地の大半と資産を没収され夫人とは離縁。メイヨー子爵となった後返り咲きを狙い奮闘していたが、元夫人共々社交界から消えていった。

 ジェラルドの罪の隠蔽に関与した医師・警ら隊副団長・ベリントン男爵は身分剥奪の上国外追放、盗賊達は余罪も判明し極刑に。


 ウェインは30年の強制収容所送りとなり横領額の返済が課せられた。ジェラルドの犯罪を黙認した事で裁判官達の心証を悪くしたことは間違いなく、『見捨てれば罪の発覚を防げると思ったのではないか?』と聞かれ返答に詰まったのも量刑に大きく影響した。

 マーシャル夫人とルシンダは犯罪の隠匿その他の罪で極寒の修道院送りに決まった。ルシンダの言動は恐喝と看做されそれを示唆したマーシャル夫人も同罪。
 兄達の犯行を知りつつも金品の返却を行わなかったのは横領の共謀に等しいとされ、資産を持ち逃亡しようとした事は悪質とみなされた。

 全てを黙認していたマーシャル伯爵は褫爵と資産没収で国外追放。




 ライラもプリンストン侯爵家の一員として彼等と同じ罰を受ける覚悟で出頭した。

 それはハーヴィーと一緒に家族と会社を告発すると決めてから予定していた事。

『会社で真面目に働いている人や使用人達への責任を果たしたら僕達も侯爵家の者として出頭しよう、極刑は確実だね』

『覚悟ならできてるって、ハーヴィーは心配性なんだから。なんなら断頭台まで仲良く手を繋いで行く?』



「馬鹿な事を考えないで! ハーヴィーとライラは我が国の功労者なのよ。中々公表できなくて辛い思いをさせてごめんね」

 ターニャ副団長から抱きしめられて頭を撫でられたライラは途方に暮れた。

(この後の予定⋯⋯なくなっちゃった。ハーヴィー、私どうすれば)



 最後まで減刑を求め続けた侯爵夫妻4人とお互いを罵りあうビクトールとキャサリン。同じ極刑を言い渡された役員や社員達が喚きながら断頭台へ連れてこられる中で、ジェラルドだけは虚な目をしていた。

 時々顔を上げて辺りを伺ってはまた俯いてしまう。

 まるで、誰かを探すように。

 フードを被ったライラは断頭台へ向かう人達に民衆の陰から別れを告げた。



 ライラの最後の仕事は旧侯爵領にいたプリンストン侯爵の庶子2人の事。

 ひとりは母親が男爵家令嬢でもうひとりの母親は子爵家令嬢だった為、成人までの生活の保障と希望があれば学費の負担を申し出た。

 ふたりともプリンストンの名とは離れて暮らしたいと言い、ライラから資金を受け取った後母親を伴い他国へ留学した。




 学園は既に退学し事業からも手を引いたライラは、第二騎士団からの呼び出しもなくなりほとんど自宅に篭って暮らしていた。

 定期的に会社から戻ってきて欲しいと連絡が来たり新役員が顔を出したりするが、ライラは全く関わりを持とうとしない。

 学園で親しかった人や興味本位の人からもパーティーやお茶会への招待状が届いているが、ライラは全て断りの手紙を書いている。

『老兵は消え去るのみ!』

『この屋敷の中で一番若いお嬢様が老兵ですか?』

『例えってやつだからいいの』



 ミリセントやシェルバーン伯爵家からお茶会の誘いが来ても、なんだかんだと理由をつけて断っている。

『誰かさんに教わったのよね~。平民ですから貴族の方と同席なんて腹が痛くなるんですよぉ』



 ミリセントは学園を卒業した後キャラウェイ侯爵家のイーサンと婚約し近々結婚式が行われる予定になっているが、先日呪いの手紙が届いて大笑いしたばかり。

『結婚式をブッチしたらウェディングドレスのまま押しかけて、みんなの前で膝に乗せてお尻を叩くからね!』



『ミリセントは自分の結婚式でとんでもないサプライズを考えているらしいの』

『新しい風刺画が発売されるっすね』

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