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20.行き先は経由地ありのアソコだね!
「よく聞いておきなさい。君達の台本にはいくつかの問題点があって実現不可能なんだよ。
まずひとつ目⋯⋯ 世間での噂は知っているがね、ローゼンタール伯爵家はキャンストル伯爵家から援助を受けたことも金を借りたこともない。先代の伯爵達が会社を設立する際にローゼンタールがキャンストルに多額の貸付を行ったが、それの返済をしてもらっていたのが『援助してもらっている』と誤解されて広まった。
ふたつ目⋯⋯リリベルは私が長期出張した際は社長代行として仕事をしているし、通常は経理部の部長として大口決済や予算の管理、銀行との折衝などを行っている。それ以外にも私達は犯罪者として摘発される理由はないと断言しよう。
3つ目⋯⋯ライルには他社との提携や合併などを決定する権限はない。彼は月に数日しか出社しないお飾り副社長だから、彼に決定権があるのは自分の昼飯のメニューくらいだろう。
4つ目⋯⋯わざわざキャンストル伯爵家と縁を結ぶ必要がローゼンタールにはない。アーシェがデイビッドと婚約していた時も爵位を継ぐのはアーシェだと何度も言ってあった。
そして最後に⋯⋯デイビッドにはキャンストル伯爵家の血は流れていない。托卵されて産まれたのはザッカリーではなくデイビッドだ」
「う、嘘だ! 兄上はキャンストルじゃないって知って家を出たんだ。そうだよな!」
デイビッドがキャサリンの肩を掴んだ。
「使用人達が言ってたって言ったよな!」
目を逸らしたキャサリンの表情で自信満々だったデイビッドの顔が恐怖に引き攣りはじめた。
「騙したのか? あれは全部嘘だった?」
「えーっと、嘘なわけないじゃん! じゃなければ大きなお屋敷に住んで使用人達に傅かれる生活を捨てて小さなアパートに住むなんてあり得ないじゃない!」
「あ~、そう言うことか。そう思い込んだからデイビッドの方こそキャンストルを継ぐ資格があると言って誑かしたのか」
ケインの話が本当らしいと気付きはじめたデイビッドがキャサリンの肩から手を下ろして一歩後ろに下がった。
「でも、父上が言っておられたんだ。ローゼンタールに金をくれてやらずに済めばうちはもっと金持ちだったって⋯⋯だから金を貸していたのは間違いないしお飾りの副社長なわけない。ですよね?」
自信なさそうにケインの様子を探っていたデイビッドが『これも嘘なのかよ』と呟いた。
「言葉には色々裏があるからね。ライルが噂を信じていたのかどうかは知らないからどう言う意味で『くれてやる』と言ったのか私には分からんが⋯⋯。
援助や借金が過去にあったかどうかは昔の帳簿を調べればすぐにわかるよ。ライルがお飾りの副社長に成り下がったのは⋯⋯詳しい事は本人に聞くのがいいと思うが⋯⋯仕事で大きなミスを連発したのが一番の原因だ。
それと個人投資で失敗して会社の株を悪質なブローカーに売り渡そうとした事が判明してその株は私が市場価格で買い取った。
その辺りのこともライルは気に入らなかったみたいでね、この数ヶ月ライルが会社を離れていても問題ないのは元々仕事をしていなかったからだよ」
ドスンと椅子に腰を落としたデイビッドが呆然としている間にケレイブ子爵とキャサリンが目配せして鞄を抱え暇乞いをはじめた。
「なにやら取り込んでおられるご様子。行き違いや思い違いがありましたことをお詫びして、わしら部外者は失礼させていただきましょう」
「ローゼンタールのおじさま、お会いできて楽しかったですわ。使用人達の言葉に騙されてたみたいで恥ずかしいですけど、次にお会いする時はキャサリンとお話ししてくださいませね」
「見捨てて帰るつもり? じゃあ俺はどうなるの」
「いや~、聞いておった話と違いすぎてわしらの手にはおえませんからのう。アンジーもライル殿に騙されておるようじゃからすぐに手を打たねば⋯⋯結婚するまでに捕まえんと大変な事になる! 今なら傷も浅く済むでしょうから、色々教えていただいて助かりましたぞ。
今後は直接ご連絡させていただき末長いお付き合いをいたしましょう⋯⋯会社の業務提携の件はケイン殿との直接交渉になったと社員には伝えておきます。今後ともよろし⋯⋯」
「お帰りになられるなら馬車の準備はできておるようです。迎えは第二騎士団ですから王宮の貴族牢へ直通ですが、すぐに地下牢へ引っ越しすることになるでしょう」
隊列を組んだ制服姿の騎士が玄関の方から急足で庭を横切って来るのを見たケレイブ子爵が床に座り込みキャサリンが泣き出した。
「ゆ、許してくだされ! ラ、ライル殿に嘘を吹き込まれ勘違いしておりましただけで⋯⋯わしらはなにもしておりません! 誤解があっただけでこんな!」
「そうよ、アタシは使用人達の言葉をデイビッドに伝えただけだもん。アタシは悪くない!」
「そこのお嬢さんは泣いていらしたと思ったけど嘘泣きだったみたいねえ」
「我々に泣き言を言うよりも取調室で相談した方がいいでしょうな。アンジー・ケレイブが意図的にライルとの出会いを演出したことや我が社から機密を盗み出そうとしていたこと、ここであった話も全て第二騎士団が承知していますからね」
ケインが目線で示した先にいた従者3人が騎士団特有の敬礼で答えた。
「証言は全て記録いたしました。提出頂いた犯罪の証拠と合わせて精査させていただきますが、ご協力頂きました事感謝致しております」
「こちらこそ、本人の自白が一番だと思いましたが思いの外時間がかかり申し訳なく思っています」
連行されるキャサリンは泣き叫んでデイビッドやケインの名を呼び続けていたが、ケレイブ子爵は娘を助けに行きたいから見逃してくれと騒ぎながら連行されて行った。
まずひとつ目⋯⋯ 世間での噂は知っているがね、ローゼンタール伯爵家はキャンストル伯爵家から援助を受けたことも金を借りたこともない。先代の伯爵達が会社を設立する際にローゼンタールがキャンストルに多額の貸付を行ったが、それの返済をしてもらっていたのが『援助してもらっている』と誤解されて広まった。
ふたつ目⋯⋯リリベルは私が長期出張した際は社長代行として仕事をしているし、通常は経理部の部長として大口決済や予算の管理、銀行との折衝などを行っている。それ以外にも私達は犯罪者として摘発される理由はないと断言しよう。
3つ目⋯⋯ライルには他社との提携や合併などを決定する権限はない。彼は月に数日しか出社しないお飾り副社長だから、彼に決定権があるのは自分の昼飯のメニューくらいだろう。
4つ目⋯⋯わざわざキャンストル伯爵家と縁を結ぶ必要がローゼンタールにはない。アーシェがデイビッドと婚約していた時も爵位を継ぐのはアーシェだと何度も言ってあった。
そして最後に⋯⋯デイビッドにはキャンストル伯爵家の血は流れていない。托卵されて産まれたのはザッカリーではなくデイビッドだ」
「う、嘘だ! 兄上はキャンストルじゃないって知って家を出たんだ。そうだよな!」
デイビッドがキャサリンの肩を掴んだ。
「使用人達が言ってたって言ったよな!」
目を逸らしたキャサリンの表情で自信満々だったデイビッドの顔が恐怖に引き攣りはじめた。
「騙したのか? あれは全部嘘だった?」
「えーっと、嘘なわけないじゃん! じゃなければ大きなお屋敷に住んで使用人達に傅かれる生活を捨てて小さなアパートに住むなんてあり得ないじゃない!」
「あ~、そう言うことか。そう思い込んだからデイビッドの方こそキャンストルを継ぐ資格があると言って誑かしたのか」
ケインの話が本当らしいと気付きはじめたデイビッドがキャサリンの肩から手を下ろして一歩後ろに下がった。
「でも、父上が言っておられたんだ。ローゼンタールに金をくれてやらずに済めばうちはもっと金持ちだったって⋯⋯だから金を貸していたのは間違いないしお飾りの副社長なわけない。ですよね?」
自信なさそうにケインの様子を探っていたデイビッドが『これも嘘なのかよ』と呟いた。
「言葉には色々裏があるからね。ライルが噂を信じていたのかどうかは知らないからどう言う意味で『くれてやる』と言ったのか私には分からんが⋯⋯。
援助や借金が過去にあったかどうかは昔の帳簿を調べればすぐにわかるよ。ライルがお飾りの副社長に成り下がったのは⋯⋯詳しい事は本人に聞くのがいいと思うが⋯⋯仕事で大きなミスを連発したのが一番の原因だ。
それと個人投資で失敗して会社の株を悪質なブローカーに売り渡そうとした事が判明してその株は私が市場価格で買い取った。
その辺りのこともライルは気に入らなかったみたいでね、この数ヶ月ライルが会社を離れていても問題ないのは元々仕事をしていなかったからだよ」
ドスンと椅子に腰を落としたデイビッドが呆然としている間にケレイブ子爵とキャサリンが目配せして鞄を抱え暇乞いをはじめた。
「なにやら取り込んでおられるご様子。行き違いや思い違いがありましたことをお詫びして、わしら部外者は失礼させていただきましょう」
「ローゼンタールのおじさま、お会いできて楽しかったですわ。使用人達の言葉に騙されてたみたいで恥ずかしいですけど、次にお会いする時はキャサリンとお話ししてくださいませね」
「見捨てて帰るつもり? じゃあ俺はどうなるの」
「いや~、聞いておった話と違いすぎてわしらの手にはおえませんからのう。アンジーもライル殿に騙されておるようじゃからすぐに手を打たねば⋯⋯結婚するまでに捕まえんと大変な事になる! 今なら傷も浅く済むでしょうから、色々教えていただいて助かりましたぞ。
今後は直接ご連絡させていただき末長いお付き合いをいたしましょう⋯⋯会社の業務提携の件はケイン殿との直接交渉になったと社員には伝えておきます。今後ともよろし⋯⋯」
「お帰りになられるなら馬車の準備はできておるようです。迎えは第二騎士団ですから王宮の貴族牢へ直通ですが、すぐに地下牢へ引っ越しすることになるでしょう」
隊列を組んだ制服姿の騎士が玄関の方から急足で庭を横切って来るのを見たケレイブ子爵が床に座り込みキャサリンが泣き出した。
「ゆ、許してくだされ! ラ、ライル殿に嘘を吹き込まれ勘違いしておりましただけで⋯⋯わしらはなにもしておりません! 誤解があっただけでこんな!」
「そうよ、アタシは使用人達の言葉をデイビッドに伝えただけだもん。アタシは悪くない!」
「そこのお嬢さんは泣いていらしたと思ったけど嘘泣きだったみたいねえ」
「我々に泣き言を言うよりも取調室で相談した方がいいでしょうな。アンジー・ケレイブが意図的にライルとの出会いを演出したことや我が社から機密を盗み出そうとしていたこと、ここであった話も全て第二騎士団が承知していますからね」
ケインが目線で示した先にいた従者3人が騎士団特有の敬礼で答えた。
「証言は全て記録いたしました。提出頂いた犯罪の証拠と合わせて精査させていただきますが、ご協力頂きました事感謝致しております」
「こちらこそ、本人の自白が一番だと思いましたが思いの外時間がかかり申し訳なく思っています」
連行されるキャサリンは泣き叫んでデイビッドやケインの名を呼び続けていたが、ケレイブ子爵は娘を助けに行きたいから見逃してくれと騒ぎながら連行されて行った。
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