【完結】結婚しておりませんけど?

との

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17.一番えげつないのは

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「それでアイツらは真夜中までかかって帰ってきたって?」

 メリッサが楽しそうに笑い葡萄を摘んで口に放り込んだ。

「ああ、一度馬車を見つけて乗せてもらったのに態度が悪すぎて降ろされたそうだ」

「いやー、ライリーは相変わらずえげつないな。わざわざソールベリーの倉庫街を準備してそこに置き去りかよ。俺ももっとひねりを加えてやりゃ良かったぜ」

「ギルバートとメリッサの口撃があったから上手くいったんだけどな」

 ライリーが何気にギルバートの手に葡萄の房を乗せた。

「げっ! ベリーじゃん」

「ねえ、私が役に立ったってどう言う事?」

「流れがちょうど良かったんだよ。ギルバートに恫喝されてメリッサに叩き出された後でタイラーに冷たくあしらわれた。んで、サラのとこで成功した気になってたからな」

「ラ、ライリーは全体の流れを⋯⋯みみ、見ながら罠を張ったんですね」

 葡萄とライリーを睨むギルバートの迫力に押され、タイラーが久しぶりに吃ってしまった。

「そう、みんなが楽しんでる間に俺もなんかしてないとつまんないなーと」



「後は本番かぁ。結構先の話だよね」

「ねえ、やめちゃえば? 婚約破棄できるだけの証拠は集まったんだし」

「そうなんだけどね⋯⋯婚約したままじゃないとできないことがあるんだ」

 心配そうなメリッサがサラの顔を覗き込んだ。

「それって何か聞いていい?」

「ボクス公爵家と関わりがないままだと様子を見に行けないじゃない? だからギリギリまで粘ろうかと思ってるの」

「ボクス公爵って⋯⋯病気のこと?」

 そういえば誰にも話したことがなかったと気付いたサラは前公爵と祖母の事を簡単に説明した。

「あの時、誰も頼れない⋯⋯一人で頑張るしかないなーって思ってたんだけど、ボクス前公爵様の手紙が届いた時だけは『一人じゃないじゃん』って思えたんだよね。だから、何か少し恩を返せたら嬉しいかなって」

 ガバッとサラに抱きついたギルバートをライリーが投げ飛ばし、その隙にメリッサが抱きついた。

「もう、やだー! なんて良い子なの! お姉様って呼んで。うちにおいで、一緒に暮らそう!」

「えー、大したことないよ? イーサンとの話が出るまで『大変だねえ』くらいにしか思ってなかったし。
縁って言うやつかなって⋯⋯お祖母様が『恩返してきて~』って言ってきたみたいな?
ちょっと様子を見て、できることがあればちょっとだけ手伝って速攻で逃げ出すつもりだしね。
みんなのお陰でその為の証拠集めは終わってるもん」



 それ以来、流石に懲りたのかローゼン商会の店ではあまり大きな騒ぎは起こしていないが、その他の場所ではかなりやらかしているらしい。

 招待状もないのにお茶会や夜会に押しかけたり低位貴族や平民に暴力を振るったりもしたと言う。

 モーガン侯爵家からも手紙が届きイーサン達をなんとかしろと書いてあり、日を追うごとにサラの気分は盛り下がっていった。

「なんとかって、できるわけないよ~」

「奴ら、何をしでかしてんだ?」

「うちの店は断ったから大丈夫だけど、他の店の中にはそれができない店もあるから⋯⋯」

 イーサンとアリーシャはツケで買い物や飲食をしてはモーガン侯爵家に請求を回しており、モーガン侯爵が抗議すると決まって言うのが⋯⋯。

『行き遅れをもらってやるんだから』

 それぞれは少額でも数が多いのでかなりの金額になっていると言う。

「どうせサラに払えとか言ってきてるんだろ?」

「ぎくっ!」

 ライリーの鋭いツッコミにサラが固まると、ギルバートがわしゃわしゃと大きな手で頭を撫でてきた。

「サラはマジで苦労するなぁ。俺がボコボコにしてきてやるぜ?」

「それよりも婚約やめますって侯爵が言えばいいのよね⋯⋯って言えないのか」

「相手は公爵家だからね。それにボクス公爵家には巨人族の血が入ってるから怖いんじゃないかな」

「あと一ヶ月もないですけど、これだけ騒ぎを起こしてたらもうダメなんじゃないですか?」

 タイラーのもっともな意見に全員が頷いたがライリーは一人眉間に皺を寄せていた。



 その夜、ライリーが帰りかけていたサラを引き止めた。

「ちょっと話があるし、寮まで送る」

「うん、いいけど。なんかあった?」

「まあな」

 本店の裏口を出て夜の道を2人並んで歩いている間、ライリーは眉間に皺を寄せたまま黙り込んでいた。

「ライリー?」

「⋯⋯」

「どうしたの?」

「⋯⋯なあ、結婚なんてやめようぜ」

「突然どうしたの?」

「ボクス公爵家がなくなれば問題なくなる」

「ライリーっぽくない」

「⋯⋯ほんのちょっとの間でも他の奴のものにはなって欲しくないんだ」



「あのね、ライリーに頼みたいことがあるの。頼めるかな?」

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