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32.本性はいつ現れるかなぁ
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「サラ、まだ結婚したばかりなんだからもう少し我慢しなきゃダメじゃないか。呑気に暮らしていた実家と違って婚家では色々辛い思いをすることもあるだろうが、それを耐えてこそ一人前になれるんだよ」
「そうよ、サラはお義母様を口実にして好き勝手⋯⋯自由にしていたから公爵家が窮屈だったのかもしれないけど、少し我慢することを覚えなきゃね。大丈夫、サラならきっとできるわ」
「私ってこの家で呑気に自由を満喫してました?」
「何を今更言ってるんだ。まさか気付いてないなんて言わないでくれよ?」
「父上達は義姉上を大切だからと甘やかしてましたからこんなことになったんですよ」
「次期公爵夫人なんて羨ましい⋯⋯。お義姉様じゃなければ代わってほしいくらいの幸運なんだから、少しくらい我慢しなくちゃダメだと思うわ。
現公爵様はご病気なんでしょ? 介護好きのお義姉様がお世話して最後を看取って差し上げるべきだと思うの」
「公爵様はお元気になられましたの。今後に向けて意欲的に計画を立てておられましたわ」
「え! じゃあ、介護しなくても良いって事? それなら別にお義姉様じゃなくても⋯⋯」
ビクトリアの心の声が漏れて来た。『介護は嫌だけどそれがないなら次期公爵夫人の座は美味しすぎる』
(ビクトリアの満面の笑顔に笑いを堪えきれなくなりそう)
「お祖母様の介護・お父様の仕事の補佐・お義母様の代わりに家政の切り盛り・義妹と義弟の宿題。全部私に押し付けてましたよね。
お茶会・夜会・家族旅行は私だけ置いてけぼりで仕事させられてましたし、学園でかかる費用の全ては自腹でした。家族旅行の費用だとか、私が参加しない私の誕生日パーティーの費用を請求されたのは笑えました。
釣書だってきていたのは知っていますが、代わりにビクトリアを勧めてましたね」
「それは⋯⋯えーっと、サラの成長を促す為にだなぁ。まだサラには早いと思ったんだよ。可愛いサラには苦労をさせたくないからね」
「誓約書の内容を覚えておられますよね、離籍届のここにサインを」
相変わらず本心とはかけ離れた優しい言葉を連ねる侯爵家の面々にうんざりしたサラは、無用な話し合いをやめることにした。
(この人達に一番良い『ざまぁ』が何か知ってるし)
「皆さんの仰る良縁を破棄して商会に戻って働く私を侯爵家に残しておくのは外聞が悪いでしょう?」
「それはその通りだが、商会員など辞めて帰って来ればそれなりに色々できるだろう?」
「サインをいただけないなら誓約書に記載された金額をお支払いいただきますけど? 離籍届と一緒に接近禁止の書類にもサインしますね。
これがあれば今後が安心でしょう?」
「良いんじゃない? 私がボクス公爵家に行って可哀想なイーサン様をお慰めして差し上げるから、その手土産になると思うの。
逃げ出した我儘なお義姉様に罰を与えましたって言えば喜んでくださるわ」
「そうか、そうだな」
ビクトリアの見当違いな応援でサインをもらえたサラは小さく頷いて立ち上がった。
「それでは皆さまご機嫌よう。今後二度とお会いすることもないでしょう」
「ああ、さっさと出ていきなさい。お前のような親不孝者の顔など二度と見たくない。今後金に困っても助けてもらえると思うなよ!?」
「ご心配には及びませんわ。私はローゼン商会副会長ですの。個人資産は⋯⋯侯爵家より多いと思いますから」
「⋯⋯なんだと!」
「ちょっと待ちなさい!」
「母方の祖母の遺産を狙って私の学費や生活費さえ払ってもらえませんでしたから、頑張ってローゼン商会を立ち上げましたの。
お祖母様が亡くなられて家を出た時からこの家との縁は切れてましたけど、モーガン侯爵家の方々から二度と搾取されないと分かって漸く肩の荷が降りた気分ですわ」
部屋を出たサラの後ろから家族が追いかけて来た。
「待て! 話が違うじゃないか」
「商会だなんて、商会をよこしなさい!」
「誰か! サラを捕まえて部屋に閉じ込めろ!!」
サラの腕を掴もうとした侯爵が不思議な力で弾き飛ばされた。
「ぎゃあ! な、なんだ⋯⋯お前、その力は」
「サラを捕まえなさい! 金を吐き出させて一生使い潰してやる。誰かロープを持って来て!!」
唖然とする使用人達の前でサラを取り囲む侯爵一家だが、先程の不思議な力が怖くて手を出せないでいた。
使用人達はサラを助けるつもりはないらしくことの成り行きを見守っているだけだった。
(んじゃ、侯爵家だけでなく使用人達も『ざまぁ』かな)
「今後はローゼン商会副会長としてあちこちに顔を出す予定ですから、学生の身でお金を稼がなくては生きていけなかった理由もバレてしまいますね。
そんな侯爵家が社交界で生きていけるとも思えませんし、ここで働いていた使用人達の次の仕事も見つかるかどうか」
「なにか⋯⋯おい、誰かこいつを捕まえろ!」
玄関のドアが蹴り開けられ大きな音を立てた。
「俺の姫を迎えに来たんだが? サラ、ごめん。1時間も待てなかった」
「そうよ、サラはお義母様を口実にして好き勝手⋯⋯自由にしていたから公爵家が窮屈だったのかもしれないけど、少し我慢することを覚えなきゃね。大丈夫、サラならきっとできるわ」
「私ってこの家で呑気に自由を満喫してました?」
「何を今更言ってるんだ。まさか気付いてないなんて言わないでくれよ?」
「父上達は義姉上を大切だからと甘やかしてましたからこんなことになったんですよ」
「次期公爵夫人なんて羨ましい⋯⋯。お義姉様じゃなければ代わってほしいくらいの幸運なんだから、少しくらい我慢しなくちゃダメだと思うわ。
現公爵様はご病気なんでしょ? 介護好きのお義姉様がお世話して最後を看取って差し上げるべきだと思うの」
「公爵様はお元気になられましたの。今後に向けて意欲的に計画を立てておられましたわ」
「え! じゃあ、介護しなくても良いって事? それなら別にお義姉様じゃなくても⋯⋯」
ビクトリアの心の声が漏れて来た。『介護は嫌だけどそれがないなら次期公爵夫人の座は美味しすぎる』
(ビクトリアの満面の笑顔に笑いを堪えきれなくなりそう)
「お祖母様の介護・お父様の仕事の補佐・お義母様の代わりに家政の切り盛り・義妹と義弟の宿題。全部私に押し付けてましたよね。
お茶会・夜会・家族旅行は私だけ置いてけぼりで仕事させられてましたし、学園でかかる費用の全ては自腹でした。家族旅行の費用だとか、私が参加しない私の誕生日パーティーの費用を請求されたのは笑えました。
釣書だってきていたのは知っていますが、代わりにビクトリアを勧めてましたね」
「それは⋯⋯えーっと、サラの成長を促す為にだなぁ。まだサラには早いと思ったんだよ。可愛いサラには苦労をさせたくないからね」
「誓約書の内容を覚えておられますよね、離籍届のここにサインを」
相変わらず本心とはかけ離れた優しい言葉を連ねる侯爵家の面々にうんざりしたサラは、無用な話し合いをやめることにした。
(この人達に一番良い『ざまぁ』が何か知ってるし)
「皆さんの仰る良縁を破棄して商会に戻って働く私を侯爵家に残しておくのは外聞が悪いでしょう?」
「それはその通りだが、商会員など辞めて帰って来ればそれなりに色々できるだろう?」
「サインをいただけないなら誓約書に記載された金額をお支払いいただきますけど? 離籍届と一緒に接近禁止の書類にもサインしますね。
これがあれば今後が安心でしょう?」
「良いんじゃない? 私がボクス公爵家に行って可哀想なイーサン様をお慰めして差し上げるから、その手土産になると思うの。
逃げ出した我儘なお義姉様に罰を与えましたって言えば喜んでくださるわ」
「そうか、そうだな」
ビクトリアの見当違いな応援でサインをもらえたサラは小さく頷いて立ち上がった。
「それでは皆さまご機嫌よう。今後二度とお会いすることもないでしょう」
「ああ、さっさと出ていきなさい。お前のような親不孝者の顔など二度と見たくない。今後金に困っても助けてもらえると思うなよ!?」
「ご心配には及びませんわ。私はローゼン商会副会長ですの。個人資産は⋯⋯侯爵家より多いと思いますから」
「⋯⋯なんだと!」
「ちょっと待ちなさい!」
「母方の祖母の遺産を狙って私の学費や生活費さえ払ってもらえませんでしたから、頑張ってローゼン商会を立ち上げましたの。
お祖母様が亡くなられて家を出た時からこの家との縁は切れてましたけど、モーガン侯爵家の方々から二度と搾取されないと分かって漸く肩の荷が降りた気分ですわ」
部屋を出たサラの後ろから家族が追いかけて来た。
「待て! 話が違うじゃないか」
「商会だなんて、商会をよこしなさい!」
「誰か! サラを捕まえて部屋に閉じ込めろ!!」
サラの腕を掴もうとした侯爵が不思議な力で弾き飛ばされた。
「ぎゃあ! な、なんだ⋯⋯お前、その力は」
「サラを捕まえなさい! 金を吐き出させて一生使い潰してやる。誰かロープを持って来て!!」
唖然とする使用人達の前でサラを取り囲む侯爵一家だが、先程の不思議な力が怖くて手を出せないでいた。
使用人達はサラを助けるつもりはないらしくことの成り行きを見守っているだけだった。
(んじゃ、侯爵家だけでなく使用人達も『ざまぁ』かな)
「今後はローゼン商会副会長としてあちこちに顔を出す予定ですから、学生の身でお金を稼がなくては生きていけなかった理由もバレてしまいますね。
そんな侯爵家が社交界で生きていけるとも思えませんし、ここで働いていた使用人達の次の仕事も見つかるかどうか」
「なにか⋯⋯おい、誰かこいつを捕まえろ!」
玄関のドアが蹴り開けられ大きな音を立てた。
「俺の姫を迎えに来たんだが? サラ、ごめん。1時間も待てなかった」
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