31 / 33
31.最後のざまぁ
しおりを挟む
(残りは後一つ⋯⋯これを終わらせてみんなに会いに行こう)
本店の前でルーシー達と別れたサラはモーガン侯爵家にやってきたが、見慣れたはずの侯爵家は以前より少し薄汚れて見えた。
(この間来た時は頭がいっぱいで気付かなかったけど、修理とか掃除とかができてない気がする)
資金繰りがあまり上手くいっていない事は知っていた。昔と変わらない手法で昔通りの領地経営をする父親は右肩下がりになっていく税収を気にも留めていなかった。
それでも、収入を上回る支出は年々増えていき考えを改める事は一度もなかった。
社交界きっての華やかで仲の良い家族は、流行りの衣装・豪華なアクセサリー・派手なパーティーで注目を集め家族愛を語り続けた。
『理想の家族像』
『この国で最も幸せな家族』
溜息をついたサラの周りで旋風が巻き起こった。
「よ!」
聞き慣れた声に振り向くと優しい笑顔を浮かべたライリーが立っていた。
「行くならついてくけど?」
ニヤッと悪どい笑みを浮かべたライリーが侯爵家を指差した。
「一人で行ってくる。ケジメは自分でつけたいから」
「ヤバいんじゃないか? 仮面が脱げたら監禁とかしそうな気がする」
「うーん、違うと言えないのがねえ」
振り返って侯爵家を見たサラの眉間に皺が寄った。
「じゃあ、1時間経っても出てこなかったらお願いしようかなあ」
「オッケー、そん時は派手な登場で姫を攫いに行くとするかな」
公爵家令息に相応しい正装のライリーは華やかな刺繍のコートとウエストコート。ジャボやカフスには高価なレースが使われている。
「貴族っぽいライリーはあの夜会以来だね」
「今日は待ちに待った王子様役だからなぁ。見惚れただろ?」
ドヤ顔のライリーが揶揄うように胸を張った。
「ちょっぴりね。じゃあ、行ってくる⋯⋯ずっと待っててくれてありがとう」
意味深な言葉を残したサラは侯爵家の門を潜った。
「サラ様、お帰りなさいませ」
以前より窶れた風情の執事が慌てて走り寄ってきた。
「ただ今と言うよりこんにちはかしら。先触れはお出ししてないんだけど、侯爵様はいらっしゃる?」
「⋯⋯こんにちはだなんて⋯⋯サラ様、もしかして」
「この後どんな状況になるか分からないから先に言っておくわね、今までありがとう。家族に対しては色々思うところがあるけど使用人のみんなには少しは感謝してる」
家族から大量に押し付けられる用事や仕事でいっぱいになっていたサラを率先して助けてくれたわけではないが、指示すれば文句を言わずこなしてくれた使用人達。
使用人達の前でも優しい家族を演じていた両親達だが流石に使用人達は気付いていたらしい。
この家は『サラの指示に従えば楽ができる』
黙っていればサラが全て差配してくれると気付いている執事、黙っていれば余分な仕事を増やされずに済むと知っている従者達。指示されるまで見ないふりをしておけば休憩できると理解しているメイド達。
(まさにモーガン侯爵家流だったよね)
サラさえいれば侯爵夫妻やビクトリア達から余分な仕事を言いつけられることもなく、サラなら時間外の勤務を言いつけてくることもないから。
適切に配分し適切な指示を出してくれるサラに任せておけばいい。
(長い間同じ屋敷にいて関わってきた人達だけど『寂しい』とは思えない程度の付き合いかな。それでも文句も言われなかったしきちんと仕事をしてくれたから)
「サラ様にお戻りいただきたいと使用人一同願っております。どうかお考え直しいただけないでしょうか?」
「それは無理ね⋯⋯『介護要員』はいらなくなったけど『雑務担当要員』がいなくて面倒になってるんでしょ? あの人達の我儘を捌いて仕事を割り振るのって本当なら執事やメイド頭の仕事なんだと思うのよね。今はどうか知らないけど、その為に他の人より高給をもらってるんだし。
使い捨ての面倒事を片付けてくれる便利な人材は2年前にやめたし、これからもするつもりはないの。
どんな種類の支援もしないって決めてるから、腹を括って仕事をしたらいいと思う。
じゃあ、侯爵様に取り次いでいただけるかしら?」
「⋯⋯今まで申し訳ありませんでした。旦那様に伺ってまいりますので応接室にご案内いたします」
ますます疲れ果てた執事に案内され応接室に向かった。
(ソファの張り替えの時期過ぎてそう、窓ガラスも曇ってる? 以前使ってたカーペットはどうしたんだろう⋯⋯この間はどうだったっけ)
行き届いていない掃除や家具をチラチラと見ていると大きな靴音を立てて侯爵夫妻達がやって来た。
「サラ、どうしてここにいるんだ!? イーサン様に見捨てられたのかい!?」
「いいえ、公爵家有責で婚約破棄してきたのでそのご報告に参りました。つきましてはお約束通り離籍届にサインをお願いします」
あまり驚いていないのか『はあ~』と溜息をついた侯爵が口を開いた。
本店の前でルーシー達と別れたサラはモーガン侯爵家にやってきたが、見慣れたはずの侯爵家は以前より少し薄汚れて見えた。
(この間来た時は頭がいっぱいで気付かなかったけど、修理とか掃除とかができてない気がする)
資金繰りがあまり上手くいっていない事は知っていた。昔と変わらない手法で昔通りの領地経営をする父親は右肩下がりになっていく税収を気にも留めていなかった。
それでも、収入を上回る支出は年々増えていき考えを改める事は一度もなかった。
社交界きっての華やかで仲の良い家族は、流行りの衣装・豪華なアクセサリー・派手なパーティーで注目を集め家族愛を語り続けた。
『理想の家族像』
『この国で最も幸せな家族』
溜息をついたサラの周りで旋風が巻き起こった。
「よ!」
聞き慣れた声に振り向くと優しい笑顔を浮かべたライリーが立っていた。
「行くならついてくけど?」
ニヤッと悪どい笑みを浮かべたライリーが侯爵家を指差した。
「一人で行ってくる。ケジメは自分でつけたいから」
「ヤバいんじゃないか? 仮面が脱げたら監禁とかしそうな気がする」
「うーん、違うと言えないのがねえ」
振り返って侯爵家を見たサラの眉間に皺が寄った。
「じゃあ、1時間経っても出てこなかったらお願いしようかなあ」
「オッケー、そん時は派手な登場で姫を攫いに行くとするかな」
公爵家令息に相応しい正装のライリーは華やかな刺繍のコートとウエストコート。ジャボやカフスには高価なレースが使われている。
「貴族っぽいライリーはあの夜会以来だね」
「今日は待ちに待った王子様役だからなぁ。見惚れただろ?」
ドヤ顔のライリーが揶揄うように胸を張った。
「ちょっぴりね。じゃあ、行ってくる⋯⋯ずっと待っててくれてありがとう」
意味深な言葉を残したサラは侯爵家の門を潜った。
「サラ様、お帰りなさいませ」
以前より窶れた風情の執事が慌てて走り寄ってきた。
「ただ今と言うよりこんにちはかしら。先触れはお出ししてないんだけど、侯爵様はいらっしゃる?」
「⋯⋯こんにちはだなんて⋯⋯サラ様、もしかして」
「この後どんな状況になるか分からないから先に言っておくわね、今までありがとう。家族に対しては色々思うところがあるけど使用人のみんなには少しは感謝してる」
家族から大量に押し付けられる用事や仕事でいっぱいになっていたサラを率先して助けてくれたわけではないが、指示すれば文句を言わずこなしてくれた使用人達。
使用人達の前でも優しい家族を演じていた両親達だが流石に使用人達は気付いていたらしい。
この家は『サラの指示に従えば楽ができる』
黙っていればサラが全て差配してくれると気付いている執事、黙っていれば余分な仕事を増やされずに済むと知っている従者達。指示されるまで見ないふりをしておけば休憩できると理解しているメイド達。
(まさにモーガン侯爵家流だったよね)
サラさえいれば侯爵夫妻やビクトリア達から余分な仕事を言いつけられることもなく、サラなら時間外の勤務を言いつけてくることもないから。
適切に配分し適切な指示を出してくれるサラに任せておけばいい。
(長い間同じ屋敷にいて関わってきた人達だけど『寂しい』とは思えない程度の付き合いかな。それでも文句も言われなかったしきちんと仕事をしてくれたから)
「サラ様にお戻りいただきたいと使用人一同願っております。どうかお考え直しいただけないでしょうか?」
「それは無理ね⋯⋯『介護要員』はいらなくなったけど『雑務担当要員』がいなくて面倒になってるんでしょ? あの人達の我儘を捌いて仕事を割り振るのって本当なら執事やメイド頭の仕事なんだと思うのよね。今はどうか知らないけど、その為に他の人より高給をもらってるんだし。
使い捨ての面倒事を片付けてくれる便利な人材は2年前にやめたし、これからもするつもりはないの。
どんな種類の支援もしないって決めてるから、腹を括って仕事をしたらいいと思う。
じゃあ、侯爵様に取り次いでいただけるかしら?」
「⋯⋯今まで申し訳ありませんでした。旦那様に伺ってまいりますので応接室にご案内いたします」
ますます疲れ果てた執事に案内され応接室に向かった。
(ソファの張り替えの時期過ぎてそう、窓ガラスも曇ってる? 以前使ってたカーペットはどうしたんだろう⋯⋯この間はどうだったっけ)
行き届いていない掃除や家具をチラチラと見ていると大きな靴音を立てて侯爵夫妻達がやって来た。
「サラ、どうしてここにいるんだ!? イーサン様に見捨てられたのかい!?」
「いいえ、公爵家有責で婚約破棄してきたのでそのご報告に参りました。つきましてはお約束通り離籍届にサインをお願いします」
あまり驚いていないのか『はあ~』と溜息をついた侯爵が口を開いた。
629
あなたにおすすめの小説
[完結]思い出せませんので
シマ
恋愛
「早急にサインして返却する事」
父親から届いた手紙には婚約解消の書類と共に、その一言だけが書かれていた。
同じ学園で学び一年後には卒業早々、入籍し式を挙げるはずだったのに。急になぜ?訳が分からない。
直接会って訳を聞かねば
注)女性が怪我してます。苦手な方は回避でお願いします。
男性視点
四話完結済み。毎日、一話更新
腹に彼の子が宿っている? そうですか、ではお幸せに。
四季
恋愛
「わたくしの腹には彼の子が宿っていますの! 貴女はさっさと消えてくださる?」
突然やって来た金髪ロングヘアの女性は私にそんなことを告げた。
お父様、お母様、わたくしが妖精姫だとお忘れですか?
サイコちゃん
恋愛
リジューレ伯爵家のリリウムは養女を理由に家を追い出されることになった。姉リリウムの婚約者は妹ロサへ譲り、家督もロサが継ぐらしい。
「お父様も、お母様も、わたくしが妖精姫だとすっかりお忘れなのですね? 今まで莫大な幸運を与えてきたことに気づいていなかったのですね? それなら、もういいです。わたくしはわたくしで自由に生きますから」
リリウムは家を出て、新たな人生を歩む。一方、リジューレ伯爵家は幸運を失い、急速に傾いていった。
婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
兄のお嫁さんに嫌がらせをされるので、全てを暴露しようと思います
きんもくせい
恋愛
リルベール侯爵家に嫁いできた子爵令嬢、ナタリーは、最初は純朴そうな少女だった。積極的に雑事をこなし、兄と仲睦まじく話す彼女は、徐々に家族に受け入れられ、気に入られていく。しかし、主人公のソフィアに対しては冷たく、嫌がらせばかりをしてくる。初めは些細なものだったが、それらのいじめは日々悪化していき、痺れを切らしたソフィアは、両家の食事会で……
[完結]本当にバカね
シマ
恋愛
私には幼い頃から婚約者がいる。
この国の子供は貴族、平民問わず試験に合格すれば通えるサラタル学園がある。
貴族は落ちたら恥とまで言われる学園で出会った平民と恋に落ちた婚約者。
入婿の貴方が私を見下すとは良い度胸ね。
私を敵に回したら、どうなるか分からせてあげる。
結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました
ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。
ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。
王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。
そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。
「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。
「可愛げがない」と婚約破棄された公爵令嬢ですが、領地経営をしていたのは私です
希羽
恋愛
「お前のような可愛げのない女との婚約は破棄する!」
卒業パーティの会場で、婚約者である第二王子デリックはそう宣言し、私の義妹ミナを抱き寄せました。 誰もが私が泣き崩れると思いましたが――正直、せいせいしました。 だって、王子の領地経営、借金返済、結界維持、それら全ての激務を一人でこなしていたのは「可愛げのない」私だったのですから。
「承知しました。では、あとはミナと二人で頑張ってください」
私は手切れ金代わりに面倒な仕事を全て置いて国を出ました。 すると、国境で待っていたのは、隣国ガルガディア帝国の冷徹皇太子ことクライド様。なぜか彼は私を溺愛し、帝国で最高の地位と環境を与えてくれて……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる