【完結】結婚しておりませんけど?

との

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31.最後のざまぁ

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(残りは後一つ⋯⋯これを終わらせてみんなに会いに行こう)

 本店の前でルーシー達と別れたサラはモーガン侯爵家にやってきたが、見慣れたはずの侯爵家は以前より少し薄汚れて見えた。

(この間来た時は頭がいっぱいで気付かなかったけど、修理とか掃除とかができてない気がする)



 資金繰りがあまり上手くいっていない事は知っていた。昔と変わらない手法で昔通りの領地経営をする父親は右肩下がりになっていく税収を気にも留めていなかった。

 それでも、収入を上回る支出は年々増えていき考えを改める事は一度もなかった。

 社交界きっての華やかで仲の良い家族は、流行りの衣装・豪華なアクセサリー・派手なパーティーで注目を集め家族愛を語り続けた。

『理想の家族像』
『この国で最も幸せな家族』

 溜息をついたサラの周りで旋風が巻き起こった。


 
「よ!」

 聞き慣れた声に振り向くと優しい笑顔を浮かべたライリーが立っていた。

「行くならついてくけど?」

 ニヤッと悪どい笑みを浮かべたライリーが侯爵家を指差した。

「一人で行ってくる。ケジメは自分でつけたいから」

「ヤバいんじゃないか? 仮面が脱げたら監禁とかしそうな気がする」

「うーん、違うと言えないのがねえ」

 振り返って侯爵家を見たサラの眉間に皺が寄った。

「じゃあ、1時間経っても出てこなかったらお願いしようかなあ」

「オッケー、そん時は派手な登場で姫を攫いに行くとするかな」

 公爵家令息に相応しい正装のライリーは華やかな刺繍のコートとウエストコート。ジャボやカフスには高価なレースが使われている。

「貴族っぽいライリーはあの夜会以来だね」

「今日は待ちに待った王子様役だからなぁ。見惚れただろ?」

 ドヤ顔のライリーが揶揄うように胸を張った。

「ちょっぴりね。じゃあ、行ってくる⋯⋯ずっと待っててくれてありがとう」

 意味深な言葉を残したサラは侯爵家の門を潜った。




「サラ様、お帰りなさいませ」

 以前より窶れた風情の執事が慌てて走り寄ってきた。

「ただ今と言うよりこんにちはかしら。先触れはお出ししてないんだけど、侯爵様はいらっしゃる?」

「⋯⋯こんにちはだなんて⋯⋯サラ様、もしかして」

「この後どんな状況になるか分からないから先に言っておくわね、今までありがとう。家族に対しては色々思うところがあるけど使用人のみんなには少しは感謝してる」

 家族から大量に押し付けられる用事や仕事でいっぱいになっていたサラを率先して助けてくれたわけではないが、指示すれば文句を言わずこなしてくれた使用人達。

 使用人達の前でも優しい家族を演じていた両親達だが流石に使用人達は気付いていたらしい。

 この家は『サラの指示に従えば楽ができる』

 黙っていればサラが全て差配してくれると気付いている執事、黙っていれば余分な仕事を増やされずに済むと知っている従者達。指示されるまで見ないふりをしておけば休憩できると理解しているメイド達。

(まさにモーガン侯爵家流だったよね)

 サラさえいれば侯爵夫妻やビクトリア達から余分な仕事を言いつけられることもなく、サラなら時間外の勤務を言いつけてくることもないから。

 適切に配分し適切な指示を出してくれるサラに任せておけばいい。

(長い間同じ屋敷にいて関わってきた人達だけど『寂しい』とは思えない程度の付き合いかな。それでも文句も言われなかったしきちんと仕事をしてくれたから)

「サラ様にお戻りいただきたいと使用人一同願っております。どうかお考え直しいただけないでしょうか?」

「それは無理ね⋯⋯『介護要員』はいらなくなったけど『雑務担当要員』がいなくて面倒になってるんでしょ? あの人達の我儘を捌いて仕事を割り振るのって本当なら執事やメイド頭の仕事なんだと思うのよね。今はどうか知らないけど、その為に他の人より高給をもらってるんだし。
使い捨ての面倒事を片付けてくれる便利な人材は2年前にやめたし、これからもするつもりはないの。
どんな種類の支援もしないって決めてるから、腹を括って仕事をしたらいいと思う。
じゃあ、侯爵様に取り次いでいただけるかしら?」

「⋯⋯今まで申し訳ありませんでした。旦那様に伺ってまいりますので応接室にご案内いたします」

 ますます疲れ果てた執事に案内され応接室に向かった。

(ソファの張り替えの時期過ぎてそう、窓ガラスも曇ってる? 以前使ってたカーペットはどうしたんだろう⋯⋯この間はどうだったっけ)

 行き届いていない掃除や家具をチラチラと見ていると大きな靴音を立てて侯爵夫妻達がやって来た。



「サラ、どうしてここにいるんだ!? イーサン様に見捨てられたのかい!?」

「いいえ、公爵家有責で婚約破棄してきたのでそのご報告に参りました。つきましてはお約束通り離籍届にサインをお願いします」

 あまり驚いていないのか『はあ~』と溜息をついた侯爵が口を開いた。

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