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30.情緒を台無しにする女達
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「イーサンは『渡り』の鬼人族の子よ。鬼人族は子供ができにくいって聞いてたから遊んであげてたのに⋯⋯子供ができたって知った途端いなくなるし、お腹はどんどん大きくなるし」
「でも、でも⋯⋯父上の子供の可能性だって」
「アンタは産まれてから暫くの間額に小さな角があったの。鬼人族の特徴が消えるまで誰にも見せなかったのにジジイはそれに気付いて、ムカつくったらありゃしない。
どいつもこいつも邪魔ばかり」
「ビクトール、お前は何故エスメラルダに手を貸した?」
溜息をついたリチャードが少し声を張り上げた。
「⋯⋯わ、私はキャンベルをもう一度公爵家の主治医にしたくて⋯⋯エルフなんかに負けたまま飲んだくれてる父さんを見返して⋯⋯私の方が公爵家に相応しいんだ! グルーバーみたいな余所者より私の方が!!」
「公爵家に相応しいと証明する為に公爵家の者を毒殺した? 本末転倒だな、話にならん」
エスメラルダとビクトールは殺人罪と公爵家簒奪、イーサンとアリーシャは首都でしでかした数々の罪により逮捕された。
翌朝、荷物を纏めたサラは公爵邸の前でリチャード達に別れを告げた。
「ありがとうの言葉では足りないほどサラには助けられた。この恩はいつか必ず⋯⋯何かあった時はいつでも声をかけて欲しい」
「先代様のお薬を届られたので一番の目的は果たせましたから。それと、2つばかりお願いしてもよろしいでしょうか?」
「勿論、なんなりと言って欲しい」
「モーガン侯爵家への支払いよりイーサン様達のツケを最優先していただきたいのです⋯⋯商人仲間として申し訳なく思っておりますの。
それと、もう薬は残っておりませんしどうやって入手されたのかも存じませんから、内密にしていただけると助かります」
「勿論だよ。支払いは既にウォルターに指示しているし、毒をあっという間に中和し延命のできる薬の存在が知られてしまったら国中が騒ぎになってしまうからね。
サラにお義父様と呼ばれたかった。それが残念でならない」
(イーサン様が白い結婚だなんて言い出さず、最低限のルールを守ってくれていたら⋯⋯私も公爵様をお義父様と呼びたかったです)
「ディゼル伯爵家からいらっしゃる方がその望みを叶えて下さいますわ。それまでお身体にお気をつけてお過ごし下さいませ」
リチャードは病気と付き合いながら領地の立て直しと後継者を育てる為に精力的に動きはじめ、ウォルターとメアリーを慌てさせることになっていく。
サラ達が乗りこんだ馬車の周りは3人の護衛が騎馬で走り、物々しい迫力を周りに見せつけている。
公爵領に来る時はシエナと2人だったが帰りの馬車にはルーシーとチェルシーも乗り、じゃんけんで勝ったルーシーがサラの隣を占領し元気一杯でおやつを出しはじめた。
「いや~、お疲れ様でしたぁ。こんな時は甘いものに限りますね!」
「ルーシーが食べたいだけだよね~」
「じゃ、チェルシーはなし」
「姉ちゃんのケチ!!」
元気な姉妹の掛け合いを聞きながらサラは窓から外を眺めた。
(この街もすぐに元通りになりそうだし、様子を見て出店の準備をはじめても良いかも)
「サラ様、まーた仕事のこととか考えてませんかぁ? 帰るまでは休憩時間ですからね」
「公爵閣下に預けた店舗の事でも考えておられたんでしょうけど、取り敢えずは女子トークですからね。
次の街で何を食べるか決めましょう」
ルーシーとチェルシーから釘を刺されたサラは苦笑いを浮かべてオヤツを口に放り込んだ。
それから2日間は『お嬢様とメイドごっこ』をしようとルーシーが言い出した。
「それ賛成。サラ様にお仕えするメイドとか最高じゃないですか!」
「身の回りのお世話とかお世話とか⋯⋯賛成、大賛成!!」
「ふふっ、私が一番慣れてるからね~」
チェルシーとシエナまで盛り上がってしまった。
「私、お嬢様ってした事ないんだけど?」
「だったら益々楽しいじゃないですか! 私達メイドに傅かれる貴族のお嬢様をやって下さいね」
「お風呂と着替えは却下だから」
退屈凌ぎの遊びに付き合うのは構わないがそこだけは譲れない。
「「「えーーー!」」」
一番の楽しみを奪われたと落ち込むチェルシーと、着替えの準備だけでも幸せだと怪しげな笑みを浮かべるルーシー。
少し大人のシエナがいてくれて良かったとサラが胸を撫で下ろした⋯⋯のは時期早々だったらしい。
「サラ様の靴磨きは私の担当だからね!」
人に知られてはいけないシエナの性癖を知ることになって頭を抱えてしまった。
「この道ってなーんも出なくてつまんないっすねえ」
「盗賊くらい出ろよな」
食事中にボソボソと話していた2人の護衛がケビンに頭を叩かれた。
「ライリー様に報告しますね」
「「ごめんなさい!! それだけは勘弁してください。まだ、死にたくないです!」」
盛り上がりすぎる3人に気押されるサラ⋯⋯慈愛の目で『手に負えないヤンチャな子供』を見守るケビンと、戦闘好きの2人の護衛。
彼等に付き合わされたサラは首都が見えはじめた時に嬉しさのあまりケビンに抱きついた。
「漸く着いた! こんなに疲れる2日は生まれて初めてだったもん」
「サラ様、大変嬉しゅうございますが、ライリー様にはご内聞に願います。まだ長生きしとうございます故」
「でも、でも⋯⋯父上の子供の可能性だって」
「アンタは産まれてから暫くの間額に小さな角があったの。鬼人族の特徴が消えるまで誰にも見せなかったのにジジイはそれに気付いて、ムカつくったらありゃしない。
どいつもこいつも邪魔ばかり」
「ビクトール、お前は何故エスメラルダに手を貸した?」
溜息をついたリチャードが少し声を張り上げた。
「⋯⋯わ、私はキャンベルをもう一度公爵家の主治医にしたくて⋯⋯エルフなんかに負けたまま飲んだくれてる父さんを見返して⋯⋯私の方が公爵家に相応しいんだ! グルーバーみたいな余所者より私の方が!!」
「公爵家に相応しいと証明する為に公爵家の者を毒殺した? 本末転倒だな、話にならん」
エスメラルダとビクトールは殺人罪と公爵家簒奪、イーサンとアリーシャは首都でしでかした数々の罪により逮捕された。
翌朝、荷物を纏めたサラは公爵邸の前でリチャード達に別れを告げた。
「ありがとうの言葉では足りないほどサラには助けられた。この恩はいつか必ず⋯⋯何かあった時はいつでも声をかけて欲しい」
「先代様のお薬を届られたので一番の目的は果たせましたから。それと、2つばかりお願いしてもよろしいでしょうか?」
「勿論、なんなりと言って欲しい」
「モーガン侯爵家への支払いよりイーサン様達のツケを最優先していただきたいのです⋯⋯商人仲間として申し訳なく思っておりますの。
それと、もう薬は残っておりませんしどうやって入手されたのかも存じませんから、内密にしていただけると助かります」
「勿論だよ。支払いは既にウォルターに指示しているし、毒をあっという間に中和し延命のできる薬の存在が知られてしまったら国中が騒ぎになってしまうからね。
サラにお義父様と呼ばれたかった。それが残念でならない」
(イーサン様が白い結婚だなんて言い出さず、最低限のルールを守ってくれていたら⋯⋯私も公爵様をお義父様と呼びたかったです)
「ディゼル伯爵家からいらっしゃる方がその望みを叶えて下さいますわ。それまでお身体にお気をつけてお過ごし下さいませ」
リチャードは病気と付き合いながら領地の立て直しと後継者を育てる為に精力的に動きはじめ、ウォルターとメアリーを慌てさせることになっていく。
サラ達が乗りこんだ馬車の周りは3人の護衛が騎馬で走り、物々しい迫力を周りに見せつけている。
公爵領に来る時はシエナと2人だったが帰りの馬車にはルーシーとチェルシーも乗り、じゃんけんで勝ったルーシーがサラの隣を占領し元気一杯でおやつを出しはじめた。
「いや~、お疲れ様でしたぁ。こんな時は甘いものに限りますね!」
「ルーシーが食べたいだけだよね~」
「じゃ、チェルシーはなし」
「姉ちゃんのケチ!!」
元気な姉妹の掛け合いを聞きながらサラは窓から外を眺めた。
(この街もすぐに元通りになりそうだし、様子を見て出店の準備をはじめても良いかも)
「サラ様、まーた仕事のこととか考えてませんかぁ? 帰るまでは休憩時間ですからね」
「公爵閣下に預けた店舗の事でも考えておられたんでしょうけど、取り敢えずは女子トークですからね。
次の街で何を食べるか決めましょう」
ルーシーとチェルシーから釘を刺されたサラは苦笑いを浮かべてオヤツを口に放り込んだ。
それから2日間は『お嬢様とメイドごっこ』をしようとルーシーが言い出した。
「それ賛成。サラ様にお仕えするメイドとか最高じゃないですか!」
「身の回りのお世話とかお世話とか⋯⋯賛成、大賛成!!」
「ふふっ、私が一番慣れてるからね~」
チェルシーとシエナまで盛り上がってしまった。
「私、お嬢様ってした事ないんだけど?」
「だったら益々楽しいじゃないですか! 私達メイドに傅かれる貴族のお嬢様をやって下さいね」
「お風呂と着替えは却下だから」
退屈凌ぎの遊びに付き合うのは構わないがそこだけは譲れない。
「「「えーーー!」」」
一番の楽しみを奪われたと落ち込むチェルシーと、着替えの準備だけでも幸せだと怪しげな笑みを浮かべるルーシー。
少し大人のシエナがいてくれて良かったとサラが胸を撫で下ろした⋯⋯のは時期早々だったらしい。
「サラ様の靴磨きは私の担当だからね!」
人に知られてはいけないシエナの性癖を知ることになって頭を抱えてしまった。
「この道ってなーんも出なくてつまんないっすねえ」
「盗賊くらい出ろよな」
食事中にボソボソと話していた2人の護衛がケビンに頭を叩かれた。
「ライリー様に報告しますね」
「「ごめんなさい!! それだけは勘弁してください。まだ、死にたくないです!」」
盛り上がりすぎる3人に気押されるサラ⋯⋯慈愛の目で『手に負えないヤンチャな子供』を見守るケビンと、戦闘好きの2人の護衛。
彼等に付き合わされたサラは首都が見えはじめた時に嬉しさのあまりケビンに抱きついた。
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