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23.エリーの夢
「エリーの叶えたい夢って?」
「叔母様は船に乗った事はおありですか?」
突然のエリーの質問にマイラはキョトンと首を傾げた。
「え? ええ、何度か」
「マイケルはガレオン船の事とても詳しくて船には普通女の人は乗れないけど、いつか船に乗せてくれるって言ってくれたんです。だから私はそれまでに船の事を一杯勉強しておくねって約束したんです」
エリーはあの時見た巨大なガレオン船や朝日に照らされて時折キラッと光った灯台を思い出し目を細めて空を見上げた。
『帆を一杯に張った船が疾走する時、波をかき分けて水飛沫が上がって迫力満点なんだ』
「確かに普通は船に乗れないわね。でも私やお母様が船に乗ったことがあるように方法がないわけじゃないの」
商船であれば船の所有者である父親や夫に同行する方法。海軍の戦艦であれば士官が妻を同行させたケースと船乗りとして船に乗ったケースがある。その他には航海術を知らず船の運行に貢献しない売春婦がいる。
「タウンハウスにあった本で調べたんですけど、紀元前480年にハリカルナッソスの女王アルテミシアと、5世紀半ばに活躍したゴート族の王娘アルヴィルダ。16世紀にはウール族の王娘グラニュウェールがいました」
「エリーは海賊になるの?」
「とんでもないです。船の持ち主になるかその家族なら女性でも船に乗れるってわかっただけです」
「ほう、家族ねぇ。マイケルと?」
「え? あっ! いえ、あの」
マイラが揶揄うと真っ赤になってしどろもどろのエリーはパタパタと手を振り回した。
「ふふっ、お母様が貿易会社に利権を持ってるのは知ってる? お母様もエリーと同じ事を考えたから自身の船もお持ちなの」
エリーが目を丸くするとマイラが吹き出した。
「エリーはお母様と血が繋がってないはずなのに本当に良く似てるわ。大人しそうに見えて心の強いとこや既成概念に囚われないとことか」
「私は地味で目立たない方だと・・」
「11歳で家出して教会に保護を求めるとか。しかもメソメソ泣いたりしないで私達が迎えに行くまで冒険を楽しんでたんでしょう?」
マイラにそう言われると『確かに』とエリーは納得した。宿を出る時も教会でも不安はあったが泣いたり落ち込んだりはしていなかったと思い出した。
アリシアとマイラは必ず迎えにきてくれると信じていたからと言うのはあったが、もし兄のフレディやミリーだったら自分ほど元気に楽しんではいなかっただろう。
「お祖母様に似ているところがあるならとても嬉しいです。それどころか最高の気分」
夕方日が陰り始める前にタウンハウスに戻ったがお昼に食べすぎたせいで夕食が入らないと困っているとアリシアから伝言が届いた。
「大奥様は夕食にお出かけになられるそうなのでお茶だけでもと仰られておられますが?」
エリーが昼間に描いたデッサンを持ち大急ぎで2階の居間に行くとアリシアと手紙を読んでいるマイラがソファに腰掛けていた。
「ガーデン・スクエアは楽しかった?」
「はい、とっても楽しかったです」
エリーがその時描いたデッサンだと言いながら手渡すとじっくりと時間をかけて細部まで見ているアリシアに胸がドキドキしてきた。
「よく描けていますよ。木々の間から覗いている窓は多分エリーの部屋の窓ね」
「はい、叔母様がとてもいい場所を教えてくださったんです」
頬を赤らめながらガーデン・スクエアで見つけた物や気付いた事を勢い込んで話すエリーをアリシアが優しい笑顔で見つめていた。
「試験は大事だけど偶には出かけるのも気分転換になっていいわね。聞いている話では十分な学力はありそうだし少し肩の力を抜いてサロニカの街を楽しんでらっしゃいな」
「試験が終わったら一杯お出かけとかしたいと思います。あと少ししか時間はないし、少しでもいい成績で試験に合格したいんです」
後先考えず家を飛び出したエリーを快く受け入れた上にサロニカにタウンハウスを購入してまでパドラス附属学園への入学試験に間に合わせてくれようとしたアリシアとマイラの為にエリーはなるべく良い成績をとりたいと思っていた。
(試験が受けられるだけの学力があるのもお祖母様達が準備してくださった教材のお陰だし)
アリシアの屋敷に引き取られていた間エリーにつけてくれた家庭教師だけでなく伯爵家に戻ってからも参考書や教材を度々送ってくれた。それがなければパドラスの受験など到底叶わなかっただろう。
(試験の成績順でクラス分けされるんだもの、頑張って出来るだけいい成績で入学するわ!)
「今日、サイラスから手紙が届いたの。と言うかリューゼルに届いた手紙をこちらに転送してもらったの」
「叔母様は船に乗った事はおありですか?」
突然のエリーの質問にマイラはキョトンと首を傾げた。
「え? ええ、何度か」
「マイケルはガレオン船の事とても詳しくて船には普通女の人は乗れないけど、いつか船に乗せてくれるって言ってくれたんです。だから私はそれまでに船の事を一杯勉強しておくねって約束したんです」
エリーはあの時見た巨大なガレオン船や朝日に照らされて時折キラッと光った灯台を思い出し目を細めて空を見上げた。
『帆を一杯に張った船が疾走する時、波をかき分けて水飛沫が上がって迫力満点なんだ』
「確かに普通は船に乗れないわね。でも私やお母様が船に乗ったことがあるように方法がないわけじゃないの」
商船であれば船の所有者である父親や夫に同行する方法。海軍の戦艦であれば士官が妻を同行させたケースと船乗りとして船に乗ったケースがある。その他には航海術を知らず船の運行に貢献しない売春婦がいる。
「タウンハウスにあった本で調べたんですけど、紀元前480年にハリカルナッソスの女王アルテミシアと、5世紀半ばに活躍したゴート族の王娘アルヴィルダ。16世紀にはウール族の王娘グラニュウェールがいました」
「エリーは海賊になるの?」
「とんでもないです。船の持ち主になるかその家族なら女性でも船に乗れるってわかっただけです」
「ほう、家族ねぇ。マイケルと?」
「え? あっ! いえ、あの」
マイラが揶揄うと真っ赤になってしどろもどろのエリーはパタパタと手を振り回した。
「ふふっ、お母様が貿易会社に利権を持ってるのは知ってる? お母様もエリーと同じ事を考えたから自身の船もお持ちなの」
エリーが目を丸くするとマイラが吹き出した。
「エリーはお母様と血が繋がってないはずなのに本当に良く似てるわ。大人しそうに見えて心の強いとこや既成概念に囚われないとことか」
「私は地味で目立たない方だと・・」
「11歳で家出して教会に保護を求めるとか。しかもメソメソ泣いたりしないで私達が迎えに行くまで冒険を楽しんでたんでしょう?」
マイラにそう言われると『確かに』とエリーは納得した。宿を出る時も教会でも不安はあったが泣いたり落ち込んだりはしていなかったと思い出した。
アリシアとマイラは必ず迎えにきてくれると信じていたからと言うのはあったが、もし兄のフレディやミリーだったら自分ほど元気に楽しんではいなかっただろう。
「お祖母様に似ているところがあるならとても嬉しいです。それどころか最高の気分」
夕方日が陰り始める前にタウンハウスに戻ったがお昼に食べすぎたせいで夕食が入らないと困っているとアリシアから伝言が届いた。
「大奥様は夕食にお出かけになられるそうなのでお茶だけでもと仰られておられますが?」
エリーが昼間に描いたデッサンを持ち大急ぎで2階の居間に行くとアリシアと手紙を読んでいるマイラがソファに腰掛けていた。
「ガーデン・スクエアは楽しかった?」
「はい、とっても楽しかったです」
エリーがその時描いたデッサンだと言いながら手渡すとじっくりと時間をかけて細部まで見ているアリシアに胸がドキドキしてきた。
「よく描けていますよ。木々の間から覗いている窓は多分エリーの部屋の窓ね」
「はい、叔母様がとてもいい場所を教えてくださったんです」
頬を赤らめながらガーデン・スクエアで見つけた物や気付いた事を勢い込んで話すエリーをアリシアが優しい笑顔で見つめていた。
「試験は大事だけど偶には出かけるのも気分転換になっていいわね。聞いている話では十分な学力はありそうだし少し肩の力を抜いてサロニカの街を楽しんでらっしゃいな」
「試験が終わったら一杯お出かけとかしたいと思います。あと少ししか時間はないし、少しでもいい成績で試験に合格したいんです」
後先考えず家を飛び出したエリーを快く受け入れた上にサロニカにタウンハウスを購入してまでパドラス附属学園への入学試験に間に合わせてくれようとしたアリシアとマイラの為にエリーはなるべく良い成績をとりたいと思っていた。
(試験が受けられるだけの学力があるのもお祖母様達が準備してくださった教材のお陰だし)
アリシアの屋敷に引き取られていた間エリーにつけてくれた家庭教師だけでなく伯爵家に戻ってからも参考書や教材を度々送ってくれた。それがなければパドラスの受験など到底叶わなかっただろう。
(試験の成績順でクラス分けされるんだもの、頑張って出来るだけいい成績で入学するわ!)
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