【完結】婚約者取り替えっこしてあげる。子爵令息より王太子の方がいいでしょ?

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25.色々知って驚愕のモブレー公爵

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 エリーが乗った馬車を見送ったマイケルはシリルと共にお館様アルバート・モブレー公爵の屋敷にやってきた。

 モブレー公爵は執務室で書類を睨んでいたがマイケルとシリルを見た途端ペンを机の上に投げ出し相好を崩した。

「お? マイケルは随分といい顔してるじゃねえか。なんか良いことがあったか?」

 がっしりとした体格のモブレー公爵がドスンと椅子の背にもたれるとギシッと椅子が軋んだ。

「はい、国に帰ります」

「ほー、んでここにシリルがいるって事は・・」

「護衛よ。ご・え・い。ケビンも参加したいって言ってるわよ~」

「マジか、戦争でもする気か?」

「やあねえ、そんな訳ない・・と思うけどぉそれも楽しそうっちゃ楽しそうよね。マルっと纏めて片付けちゃうと楽ちんだし?」

「相変わらずあぶねー奴だな。お前、国家転覆罪って知ってるか?」

 モブレー公爵は頭の後ろで腕を組みひどく楽しそうにニヤニヤと笑っている。

「あら、そんなの国家がなくなったら関係なくない?」

「シリル、国がなくなったらエリーを迎えにいけなくなるから困る」

 マイケルが真剣な顔でシリルの服を両手で掴んだ。

「そうよね、エリーちゃんが泣いちゃうのはアタシもやだわぁ」

「エリー? コーンウォリス伯爵家の長女だったな。マイケルが本気になったのはそのせいか」

「えっ? お館様はエリーの事ご存じだったんですか?」

「何をするにしろ一番大事なのは情報だからなあ。今の伯爵も前伯爵もボンクラだがエリーを連れてったアリシア・コーンウォリスと娘のマイラは超曲者だぞ。エリーが欲しいならマイケルはてっぺんを目指すしかないだろうな。じゃなきゃ返り討ちにあうぜ?」

「うーん、それも良くない? 愛の逃避行とか。追っ手を撒きながら宿を転々として・・」

「シリルがいたんじゃ隠密行動は出来ねえよ。それとも途中でマイケル達を放り出せるのか?」

「そうねえ・・エリーって超ぬけててそんでもって滅茶苦茶可愛いのよぉ。あの子の子供だったらさぞ・・うん、ついてくわね」


「さて、真面目な話だ。マイケルはこの後どうしたい?」

「後ろ盾になってくれる貴族を探します。イライザ義母である現王妃の実家より力のある貴族」

「ふーん、まあ何人かいるっちゃいるわな。で、お前は何を差し出せる? 頼み事にはそれ相応の見返りが必要になる。たかだか12歳のお前じゃ同じテーブルにつくことも出来んだろ?」

「亡き母上から僕が相続した領地とオーモンド公爵の領地とはエルムント山脈を挟んで隣接しています。そこを取引に使います。エルムント山脈を切り開いて領地を繋げば公爵は海洋貿易に乗り出せます」

「・・切り開くための費用は?」

「エルムント山脈からは磁器の製造に使えるカオリナイトが産出されるのでそれを売れば費用は作れます」

「カオリナイトか、それが本当なら間違いなく交渉材料になるな」

 カオリナイト又はカオリン石は白く硬い岩で磁器の特徴である透明感のある白く薄い磁器を作るのに使う。通常より高温で焼くことが出来るため硬い磁器を焼くことが出来る上に、この一帯ではカリオナイトは産出されないためほんの僅かでとてつもない高額の取引が出来る。

「そんな情報を流して大丈夫なのか? カリオナイトが手に入ると聞いただけで有象無象が集ってくるぞ?」

「母上からお聞きしたオーモンド公爵のお人柄なら大丈夫だと思っていましたが代替わりしてからは中立派になられたようですし、現公爵の事はよくわからなくて。
ギリギリまで手の内を見せずに交渉したいとは思うんですが」

「現在のオーモンド公爵は結構事なかれ主義だとは聞くが、逆に言えば現在の王家の不和を不満に思ってる可能性がないわけでもないな」

 モブレー公爵は腕を組み椅子をギシギシ言わせながら考え込んだ。


「それと多分ですが弟は陛下の子供ではありません」

「はあ? マジか!! それが本当ならバルサザール帝国の王位継承資格がない事になるじゃねえか。お前、なんでそんな大事な事を黙ってたんだ。いや、そりゃ言えねえか」

「はい、ハッキリした証拠があるわけではないので口に出来ませんでした」

 今まで秘密にしていた情報を口にしたマイケルは握り込んだ両手が力の入れ過ぎで白くなっている。


「ねえ、アンタはそんな大事な事をいつ知ったの?」

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