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34.アリシアが本領発揮すると
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「元々彼のお父様は彼に後を継がせたいとお考えだったからか単に身分を証明する為のものかのどちらかじゃないかしら。それを彼がエリーに預けたのは彼の本気の現れかもね」
続きはタウンハウスに帰ってからにしようとマイラに言われ頷いたエリーは学園で聞いたバルサザール帝国の話を思い出しながら帰路に着いた。
エリーとマイラが居間に行くと自室にいたアリシアがやって来た。
「彼は・・ミゲル皇太子様はお義母様との間に問題があると。学園では第一皇子派と第二皇子派が長年争っていたと聞きました」
既に学園で聞いた内容かもしれないがと前置きしながらアリシアが詳しい話を教えてくれた。
ミゲルの母は隣国の公爵家から嫁いできたがミゲルが4歳の時権力闘争に敗れた公爵家は没落し王妃とミゲルは後ろ盾を失った。それと同じ頃その当時側室だったイライザの生家であるベルトラム侯爵家が王宮内に大きな力を持ちはじめた。
ミゲルが7歳の時王妃が急死してから問題が起こりはじめた。
「ミゲル様の食事に毒が盛られたり不審な事故に遭ったりということが頻発して、何度も命の危険に晒されたの」
王妃が亡くなって2年後、ミゲルが9歳の時に帝国議会からの圧力でイライザが王妃になった途端イライザの息子である第二皇子が皇太子に相応しいと議会で言いはじめた者達がいた。
「第一皇子には後ろ盾がないと言うのが理由なのだけどミゲル様は9歳で弟のベルナール様は6歳だから時期尚早だと皇帝陛下は話を濁しておられたの。
それで、ミゲル様は立太子できる年齢になるまでの間モブレー公爵様の元に身を寄せておられたのだと思うわ」
帝国とモブレー公爵領は海を挟んで対面している為先代の頃から交流が深かったが、プライベートでも現王と現公爵は親密だったようで2人が若い頃には密入国を繰り返し遊び回っていた。
「お二人ともお酒が過ぎるといつも後継ぎなんかやめて冒険者になるって仰ってたわ」
「お母様、ずいっ随分とお詳しいですね」
アリシアの能力に敬意を表しているマイラもこれには流石に度肝を抜かれて口籠り、驚きすぎたエリーはただポカンと口を開けてアリシアを見つめていた。
「わたくしがいくつかの貿易会社に出資しているのは知っているでしょう? お二人が密入国するためには船に乗らなくちゃいけないの。いつ船に乗り込んだのかも知っていますし、護衛役としてシリルさんとケビンさんがちょくちょく連れ回されていたのも彼等の評判も知っています。その頃はシリルじゃなくてジェイソンだったけど」
唖然としたエリーとマイラの前でアリシアはすました顔でお茶を飲み『あら、パンデピスね』とか『傭兵時代のシリルさんとケビンさんはそれはもう凄かったのよ』などと言いながらお菓子に手を伸ばしている。
「あの時モブレー公爵様が関わっておられたロンダール王国の官僚達の不正を正すための準備でシリルさんが走り回った後にミゲル様はモブレー公爵様達と帝国に入られたの」
採掘したカリオナイトを手にオーモンド公爵と堂々と渡り合ったミゲルは、エルムント山脈を開拓しオーモンド公爵領からミゲルの領地を経由して直接海に荷を運べる林道を作ることの見返りとして公での支援を確約させた。
「オーモンド公爵家は歴代大法官を務めた優秀なお家柄だけどベルトラム侯爵家が力をつけてからは中立派に宗旨替えされて領地に篭られるようになったの」
大法官とは宗教的な事柄を司る軍事法官で、教授職と聖職者の割り当てや判決の破棄・変更・新たな判決の作成の権利を持つ裁判官でもあった。任期は2年だが退任後再び同じ職に就くことが可能。
山脈を挟んでミゲルが相続した領地とオーモンド領が隣り合わせだったのは幸運だった。オーモンド公爵家がミゲルの後ろ盾になった為戦局が激変しミゲルが立太子できたと言っても過言ではない。
「そんな凄い方がいらっしゃったのならもっと早く連絡するわけにはいかなかったのですか?」
首を傾げたマイラと一緒にエリーもうんうんと頷いた。
「オーモンド公爵様は皇太子問題が終息するまで出仕しないと明言されて陛下からの勅命でさえ無視しておられたの」
「もしかして、ものすごい頑固な方とか?」
「ええ、マイラの言う通りよ。あの方の首を縦に振らせるのは至難の業だったでしょうね。皇太子の元にはシリルとケビンが未だに護衛として付き従っているわ」
「・・つまりお二人がお側にいないと駄目なくらい危険だと言うことですか?」
続きはタウンハウスに帰ってからにしようとマイラに言われ頷いたエリーは学園で聞いたバルサザール帝国の話を思い出しながら帰路に着いた。
エリーとマイラが居間に行くと自室にいたアリシアがやって来た。
「彼は・・ミゲル皇太子様はお義母様との間に問題があると。学園では第一皇子派と第二皇子派が長年争っていたと聞きました」
既に学園で聞いた内容かもしれないがと前置きしながらアリシアが詳しい話を教えてくれた。
ミゲルの母は隣国の公爵家から嫁いできたがミゲルが4歳の時権力闘争に敗れた公爵家は没落し王妃とミゲルは後ろ盾を失った。それと同じ頃その当時側室だったイライザの生家であるベルトラム侯爵家が王宮内に大きな力を持ちはじめた。
ミゲルが7歳の時王妃が急死してから問題が起こりはじめた。
「ミゲル様の食事に毒が盛られたり不審な事故に遭ったりということが頻発して、何度も命の危険に晒されたの」
王妃が亡くなって2年後、ミゲルが9歳の時に帝国議会からの圧力でイライザが王妃になった途端イライザの息子である第二皇子が皇太子に相応しいと議会で言いはじめた者達がいた。
「第一皇子には後ろ盾がないと言うのが理由なのだけどミゲル様は9歳で弟のベルナール様は6歳だから時期尚早だと皇帝陛下は話を濁しておられたの。
それで、ミゲル様は立太子できる年齢になるまでの間モブレー公爵様の元に身を寄せておられたのだと思うわ」
帝国とモブレー公爵領は海を挟んで対面している為先代の頃から交流が深かったが、プライベートでも現王と現公爵は親密だったようで2人が若い頃には密入国を繰り返し遊び回っていた。
「お二人ともお酒が過ぎるといつも後継ぎなんかやめて冒険者になるって仰ってたわ」
「お母様、ずいっ随分とお詳しいですね」
アリシアの能力に敬意を表しているマイラもこれには流石に度肝を抜かれて口籠り、驚きすぎたエリーはただポカンと口を開けてアリシアを見つめていた。
「わたくしがいくつかの貿易会社に出資しているのは知っているでしょう? お二人が密入国するためには船に乗らなくちゃいけないの。いつ船に乗り込んだのかも知っていますし、護衛役としてシリルさんとケビンさんがちょくちょく連れ回されていたのも彼等の評判も知っています。その頃はシリルじゃなくてジェイソンだったけど」
唖然としたエリーとマイラの前でアリシアはすました顔でお茶を飲み『あら、パンデピスね』とか『傭兵時代のシリルさんとケビンさんはそれはもう凄かったのよ』などと言いながらお菓子に手を伸ばしている。
「あの時モブレー公爵様が関わっておられたロンダール王国の官僚達の不正を正すための準備でシリルさんが走り回った後にミゲル様はモブレー公爵様達と帝国に入られたの」
採掘したカリオナイトを手にオーモンド公爵と堂々と渡り合ったミゲルは、エルムント山脈を開拓しオーモンド公爵領からミゲルの領地を経由して直接海に荷を運べる林道を作ることの見返りとして公での支援を確約させた。
「オーモンド公爵家は歴代大法官を務めた優秀なお家柄だけどベルトラム侯爵家が力をつけてからは中立派に宗旨替えされて領地に篭られるようになったの」
大法官とは宗教的な事柄を司る軍事法官で、教授職と聖職者の割り当てや判決の破棄・変更・新たな判決の作成の権利を持つ裁判官でもあった。任期は2年だが退任後再び同じ職に就くことが可能。
山脈を挟んでミゲルが相続した領地とオーモンド領が隣り合わせだったのは幸運だった。オーモンド公爵家がミゲルの後ろ盾になった為戦局が激変しミゲルが立太子できたと言っても過言ではない。
「そんな凄い方がいらっしゃったのならもっと早く連絡するわけにはいかなかったのですか?」
首を傾げたマイラと一緒にエリーもうんうんと頷いた。
「オーモンド公爵様は皇太子問題が終息するまで出仕しないと明言されて陛下からの勅命でさえ無視しておられたの」
「もしかして、ものすごい頑固な方とか?」
「ええ、マイラの言う通りよ。あの方の首を縦に振らせるのは至難の業だったでしょうね。皇太子の元にはシリルとケビンが未だに護衛として付き従っているわ」
「・・つまりお二人がお側にいないと駄目なくらい危険だと言うことですか?」
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