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ハーミット王国、ガンツの本領発揮
44.ケット・シーに絡まれる
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「ディーの広場って、初めて会ったあの広場?」
「そうだよ、あの子達は光のエルフとハーフエルフ。兄妹なんだ」
「この街すげえな、ドワーフとエルフ。じきに獣人とかにも会えんじゃね?」
「ディー、連れてって。私お願いしてみる」
久しぶりに来たトレントの森は真昼の日差しに照らされた緑と草や土の新鮮な香りに溢れていた。
トレント達はミリアをチラリと見ただけでのんびりと日向ぼっこをしており、ケット・シーの仲間だと思われる猫達もあちらこちらに丸くなっている。
「すごく良いでしょ? ミリアのお陰でここは昔通りになったの。
猫はちょっと邪魔だけど意地悪しないから我慢したげてるの」
ディーはとても嬉しそうに広場を回っているが、その姿がキラキラと輝いている。
「エルフの子達はたまにしか来ないからいつ会えるかわかんないよ」
「うん、気長に待ってみるね」
ミリアはエルフ達を待っている間、コンポジット・ボウに矢を番え狙いを定める練習を繰り返していた。
一時間くらい経った頃カサカサと音を立ててケット・シーが走って帰って来た。
「何だよ、来るなら来るって言えよ。で、貢物は持って来たんだろうな?」
横柄な態度とは裏腹にケット・シーはソワソワもじもじと可愛らしい態度。
「お菓子食べる?」
「うん! いや、食ってやっても良いぜ」
ミリアが何種類かのお菓子を出すと嬉しそうに食べ始め、近寄って来た猫達を追い払っている。
「これは俺様のだからな。手を出したらここから追い出すぞ」
ディーにもお茶とお菓子を渡して、みんなで仲良くおやつタイム。
「約束守ってやってるからな、だから偶には貢物持って来やがれ」
「そうね、ここはすごく素敵な場所になったね。良い匂いがしてるし」
少し涼しい風が吹きはじめている。汗ばんでいた背中がフッと楽になった気がした。
「折角気を使ってやってるのにコイツは滅多に帰ってこないし」
「まるで寂しがってるみたいに言わないで! アンタと仲良くする気なんてないもん」
そんなミリア達を見つめる気配がしている。
そろそろ日が翳り始める頃木立の影から一人の女の子がひょっこりと現れ、ミリアからかなり離れた場所で立ち止まった。
「それなあに?」
女の子が指差しているのはコンポジット・ボウ。
「コンポジット・ボウって言うの。ちょっと変わったショート・ボウよ」
「ボウ・・ゆみ? へんなの」
女の子は首を傾げミリアとコンポジット・ボウを見比べている。
「あなたが持ってるのはロング・ボウね」
女の子は身長とそれほど変わらない長い弓を左手に持ち矢筒を襷掛けにしている。
「しらない、これはただのゆみ」
人見知りには見えないが側には寄って来ず、いつでも森に逃げ込めるように片足を後ろに引いている。
「まだ全然上手くいかないの。触ってみる?」
ミリアが誘うと女の子は首を横に振り、
「にいちゃんにおこられる」
と、残念そうにコンポジット・ボウを見ていた。
「明日も来るからお兄さんに聞いてみたらどうかな?」
「うん」
女の子が後ろを振り向いた途端にふっと姿は消えていた。
「ハーフエルフの子?」
「うん、すっごく良い子だよー。いつもは一緒にお喋りしたり追いかけっこするの」
「ディーのお陰でちょっぴりお話しできた。明日も来てくれると嬉しいんだけど」
そういえばフェンリルの姿が見えない。
いつの間にかどこかへ行ってしまったらしい。
「暗くなる前にギルドに帰ろうか。フェンリルはどこかしら」
「すぐ戻ってくるって言ってた。ハーフエルフが来る前にいなくなったよ」
フェンリルはハーフエルフを怖がらせないよう距離を取ってくれたのかもしれない。
「ねえ、フェンリルには名前つけないの?」
「えっ、それは失礼かなあって。それに一緒にいるのは暫くの間って言ってたし。
ディーは名前をつけてって言ってくれたから」
「でも、パーティーだし一緒にダンジョン行くのに?」
『名を付けよ』
「へっ?」
『我に名を付けよ』
いつの間に戻って来たのかフェンリルはミリアの側でお座りをしている。
「あっありがとうございます。えーっと、フェンリルの別名はヴァナルガンドだから・・ヴァン?」
「かっこいー、すっごく似合ってるぅ。ヴァンー、ヴァンー。ふふ、呼びやすーい」
フェンリルも気に入ってくれたようで尻尾を振っている。
(良かったー。人前で声かけられなくていつも悩んでたのよね)
「おい、ダンジョンって何だよ!」
「あたし達だけでダンジョンに行くの。アンタはまだお仕置き中なんだからね!」
ディーはビシッと人差し指をケット・シーに突きつけた。
(お仕置きしてたんだ・・)
「でも俺様水魔法が使えんだぜ。連れてかなきゃ後悔するぞ」
「しませんー」
「連れてかなかったらこの広場をまたおし○こだらけに・・置いてくなよー、なっ」
両手を胸の前で合わせ涙目で見つめてくるケット・シーに、ミリアは途方に暮れてしまった。
「ヴァン、どうしよう」
『・・』
「取り敢えずまだずっと先の話だから考えとくね」
『上手く誤魔化したな』
「えへっ、じゃあ今日は帰ろう! 明日また来るね」
ディーの転送魔法で帰った先は・・ソファでこっそりエールを飲んでいるギルマスの隣だった。
「ぶはっゲホゲホッ。お前なんでそこに飛ぶんだよ! もうちょっと空気を読め」
「ごめんなさい?」
ニヤニヤと笑うディーを恨みがましい目で睨んだミリアだった。
すりすりっとギルマスと距離をとったミリアはソファの端っこに座ったまま話しはじめた。
「ハーフエルフに会えました」
「そうだよ、あの子達は光のエルフとハーフエルフ。兄妹なんだ」
「この街すげえな、ドワーフとエルフ。じきに獣人とかにも会えんじゃね?」
「ディー、連れてって。私お願いしてみる」
久しぶりに来たトレントの森は真昼の日差しに照らされた緑と草や土の新鮮な香りに溢れていた。
トレント達はミリアをチラリと見ただけでのんびりと日向ぼっこをしており、ケット・シーの仲間だと思われる猫達もあちらこちらに丸くなっている。
「すごく良いでしょ? ミリアのお陰でここは昔通りになったの。
猫はちょっと邪魔だけど意地悪しないから我慢したげてるの」
ディーはとても嬉しそうに広場を回っているが、その姿がキラキラと輝いている。
「エルフの子達はたまにしか来ないからいつ会えるかわかんないよ」
「うん、気長に待ってみるね」
ミリアはエルフ達を待っている間、コンポジット・ボウに矢を番え狙いを定める練習を繰り返していた。
一時間くらい経った頃カサカサと音を立ててケット・シーが走って帰って来た。
「何だよ、来るなら来るって言えよ。で、貢物は持って来たんだろうな?」
横柄な態度とは裏腹にケット・シーはソワソワもじもじと可愛らしい態度。
「お菓子食べる?」
「うん! いや、食ってやっても良いぜ」
ミリアが何種類かのお菓子を出すと嬉しそうに食べ始め、近寄って来た猫達を追い払っている。
「これは俺様のだからな。手を出したらここから追い出すぞ」
ディーにもお茶とお菓子を渡して、みんなで仲良くおやつタイム。
「約束守ってやってるからな、だから偶には貢物持って来やがれ」
「そうね、ここはすごく素敵な場所になったね。良い匂いがしてるし」
少し涼しい風が吹きはじめている。汗ばんでいた背中がフッと楽になった気がした。
「折角気を使ってやってるのにコイツは滅多に帰ってこないし」
「まるで寂しがってるみたいに言わないで! アンタと仲良くする気なんてないもん」
そんなミリア達を見つめる気配がしている。
そろそろ日が翳り始める頃木立の影から一人の女の子がひょっこりと現れ、ミリアからかなり離れた場所で立ち止まった。
「それなあに?」
女の子が指差しているのはコンポジット・ボウ。
「コンポジット・ボウって言うの。ちょっと変わったショート・ボウよ」
「ボウ・・ゆみ? へんなの」
女の子は首を傾げミリアとコンポジット・ボウを見比べている。
「あなたが持ってるのはロング・ボウね」
女の子は身長とそれほど変わらない長い弓を左手に持ち矢筒を襷掛けにしている。
「しらない、これはただのゆみ」
人見知りには見えないが側には寄って来ず、いつでも森に逃げ込めるように片足を後ろに引いている。
「まだ全然上手くいかないの。触ってみる?」
ミリアが誘うと女の子は首を横に振り、
「にいちゃんにおこられる」
と、残念そうにコンポジット・ボウを見ていた。
「明日も来るからお兄さんに聞いてみたらどうかな?」
「うん」
女の子が後ろを振り向いた途端にふっと姿は消えていた。
「ハーフエルフの子?」
「うん、すっごく良い子だよー。いつもは一緒にお喋りしたり追いかけっこするの」
「ディーのお陰でちょっぴりお話しできた。明日も来てくれると嬉しいんだけど」
そういえばフェンリルの姿が見えない。
いつの間にかどこかへ行ってしまったらしい。
「暗くなる前にギルドに帰ろうか。フェンリルはどこかしら」
「すぐ戻ってくるって言ってた。ハーフエルフが来る前にいなくなったよ」
フェンリルはハーフエルフを怖がらせないよう距離を取ってくれたのかもしれない。
「ねえ、フェンリルには名前つけないの?」
「えっ、それは失礼かなあって。それに一緒にいるのは暫くの間って言ってたし。
ディーは名前をつけてって言ってくれたから」
「でも、パーティーだし一緒にダンジョン行くのに?」
『名を付けよ』
「へっ?」
『我に名を付けよ』
いつの間に戻って来たのかフェンリルはミリアの側でお座りをしている。
「あっありがとうございます。えーっと、フェンリルの別名はヴァナルガンドだから・・ヴァン?」
「かっこいー、すっごく似合ってるぅ。ヴァンー、ヴァンー。ふふ、呼びやすーい」
フェンリルも気に入ってくれたようで尻尾を振っている。
(良かったー。人前で声かけられなくていつも悩んでたのよね)
「おい、ダンジョンって何だよ!」
「あたし達だけでダンジョンに行くの。アンタはまだお仕置き中なんだからね!」
ディーはビシッと人差し指をケット・シーに突きつけた。
(お仕置きしてたんだ・・)
「でも俺様水魔法が使えんだぜ。連れてかなきゃ後悔するぞ」
「しませんー」
「連れてかなかったらこの広場をまたおし○こだらけに・・置いてくなよー、なっ」
両手を胸の前で合わせ涙目で見つめてくるケット・シーに、ミリアは途方に暮れてしまった。
「ヴァン、どうしよう」
『・・』
「取り敢えずまだずっと先の話だから考えとくね」
『上手く誤魔化したな』
「えへっ、じゃあ今日は帰ろう! 明日また来るね」
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「ぶはっゲホゲホッ。お前なんでそこに飛ぶんだよ! もうちょっと空気を読め」
「ごめんなさい?」
ニヤニヤと笑うディーを恨みがましい目で睨んだミリアだった。
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