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ハーミット王国、ダンジョン
60.口にしていい事悪い事
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ミスラがアータルの口を押さえた。
「アータル、お前は口にしていい事と悪い事を学びなさい」
「えー、だって別に悪い事じゃないじゃん。ちょっとギルマスはおっさんかなーとは思うけどさ」
「おっさんじゃねえわ!」
ギルマスは相手が誰であろうといつも通り悪態がつける。
(この男、意外に大物かもしれん。若しくはただ無謀な愚か者か)
ミスラが心の中でギルマスを吟味していたが、
『愚か者』
ヴァンが断言した。
(ギルマス・・ミイの事を)
リンドが白い顔をますます青白くさせていた。
『ボスの話を聞きに来たのではないのか?』
わざとギルマスに誤解を与え楽しんだヴァンは、ギルマスの慌てふためく様に溜飲を下げ助け舟を出す事にした。
「おっおう。ちびすけ、ダンジョンボスの話だが」
「はい、何だかすごく気になったので」
ミリアはダンジョンの様子や自分の感じた事を話し、今後予測される可能性を伝えた。
「今はまだダンジョンは立ち入り禁止だから問題ないが、冒険者が入るまでにその辺のところをキッチリさせとく方がいいかもしれんな。
それか、ボスについては不確定って言っとくかだな」
「すみません、はっきりしたことが言えなくて」
「いや、十分だ。それ以上は誰だって分かんねえだろ。寧ろそれだけ分かってるだけでも有り難い。
さて、次の話だ。ミリア正座!」
「はい? 私何かやりましたっけ」
「さっきペリが言ってたよな。実験って何だ? さっさと吐け!」
「えーっと、大したことではなくて。ギルマスが気にするようなことじゃないです」
ミリアはウロウロと目を泳がせなんとかその場をやり過ごそうとしたが、
「吐け、ワンド取り上げるぞ」
ギルマスの静かな怒りに全てを白状させられた。
「おやつ? イタチ」
ピキピキとギルマスの顳顬が音を立てている。
「今度お仕置きな」
落ち込んで肩を落としたミリアだった。
ガンツが酒を持ってギルマスの横に移動してきた。
「ギルマス飲めや」
ドワーフは酒と名のつくものなら何でも飲む。エール・蜂蜜やリンゴ、木苺などで作る果実酒・命の水と呼ばれるウィスキーやブランデー・ワイン。
ガンツがウイスキーを注いでいると、横からミリアがそっと別のコップを差し出していた。
中には並々と蜂蜜酒が入っている。
まだ機嫌の治らないギルマスがジロリと睨むとミリアがポツリ。
「ギルマスに賄賂」
一瞬静まりかえった広場に“ケラケラ・あはは” と笑い声が響き渡った。
「ちびすけ、それを言うなら“お詫び” だ。賄賂じゃ露骨すぎんだろ」
「あっ」
真っ赤な顔になったミリアの頭をギルマスがくしゃくしゃと撫でた。
「無茶すんなって言っといたのに、ったく」
ガンツに断りを入れて蜂蜜酒を飲んだギルマスは「甘!」と、叫んだ。
ミスラとガンツに散々酒を注がれヨレヨレのギルマスがギルドに帰ると、部屋には仁王立ちしたソフィアが般若のような顔で書類の山を握りしめていた。
「やべぇ」
「お早いお帰りで。ご依頼の書類作成が終わりましたので、ずーっと・・ずーっとお待ちしておりました」
「ミリアの様子を見に行ったらとんでもねえ事になっててよ・・」
ミリアの名前を出した途端ソフィアの顔が綻び「元気でしたか?」と聞いてきた。
(ミリア様のお陰で玉とられずに済んだぜ)
翌日の朝、ギルマスが二日酔いで頭を抱えていると部屋のドアがバン! と音を立てて開いた。
「うっせえ、もちっと静かに・・あっ」
「とっくに就業時間過ぎてますけど? ギルドの社則読み直しますか?」
ギルド本部長のセオドラを従えた本部所属鑑定士テスタロッサが仁王立ちしていた。
「急いで呼び出した割にはとても優雅な朝を過ごしておられるようで」
ソファに座ったテスタロッサが鞄から資料を取り出しながら悪態をつく。
「ドワーフに潰されたんだよ。これも仕事の一環だからな。
にしても早えな、連絡入れたの一昨日の夕方だぜ?」
「・・全くセオドラもルカもどうしてこんなにお酒にだらしないのか・・あっ、ありがとう」
テスタロッサはギルマスに文句を言いながらも、お茶を出したソフィアにはキチンと礼を言っている。
「ルカ、黄金の林檎だろ?」
ギルマスを救うためセオドラが話を振ってくれた。
よろよろと立ち上がったギルマスは机の引き出しからキラキラと輝く林檎を取り出し戻ってきた。
「お前、そんなとこに入れとくなよ。なくなったらどうすんだ」
「無くならねえよ、この部屋に入るにゃソフィアの鉄壁の守りを破らなきゃならんからな。だろ? ソフィア」
お茶を出し終わって待機していたソフィアは大きく頷いて、
「ギルマスは机に鍵をかける習慣がいつまで経っても身につかないので」
林檎を見てからテスタロッサは無言になり目は林檎を追い続けている。
「ほれ」
ギルマスが差し出した林檎をテスタロッサが恐る恐る受け取った。
「セオドラ、間違いない。本物だわ」
簡易鑑定をしたのだろう。テスタロッサの顔が赤らんできた。
「正式な鑑定書に所有者を入れてくれよ」
「勿論よ。一体どこのパーティーがラードーンを攻略したの? ディエチミーラはまだ休止中でしょ?」
ギルマスが悪辣な顔でニヤリと笑った。
「しっかり鑑定してみろよ。面白いことがわかるはずだぜ」
目を輝かせたテスタロッサが鑑定をはじめた。詳細な鑑定ならラードーンの討伐場所や討伐した者の名前まで表示される。
「うそ、間違ってる。なんで?」
「アータル、お前は口にしていい事と悪い事を学びなさい」
「えー、だって別に悪い事じゃないじゃん。ちょっとギルマスはおっさんかなーとは思うけどさ」
「おっさんじゃねえわ!」
ギルマスは相手が誰であろうといつも通り悪態がつける。
(この男、意外に大物かもしれん。若しくはただ無謀な愚か者か)
ミスラが心の中でギルマスを吟味していたが、
『愚か者』
ヴァンが断言した。
(ギルマス・・ミイの事を)
リンドが白い顔をますます青白くさせていた。
『ボスの話を聞きに来たのではないのか?』
わざとギルマスに誤解を与え楽しんだヴァンは、ギルマスの慌てふためく様に溜飲を下げ助け舟を出す事にした。
「おっおう。ちびすけ、ダンジョンボスの話だが」
「はい、何だかすごく気になったので」
ミリアはダンジョンの様子や自分の感じた事を話し、今後予測される可能性を伝えた。
「今はまだダンジョンは立ち入り禁止だから問題ないが、冒険者が入るまでにその辺のところをキッチリさせとく方がいいかもしれんな。
それか、ボスについては不確定って言っとくかだな」
「すみません、はっきりしたことが言えなくて」
「いや、十分だ。それ以上は誰だって分かんねえだろ。寧ろそれだけ分かってるだけでも有り難い。
さて、次の話だ。ミリア正座!」
「はい? 私何かやりましたっけ」
「さっきペリが言ってたよな。実験って何だ? さっさと吐け!」
「えーっと、大したことではなくて。ギルマスが気にするようなことじゃないです」
ミリアはウロウロと目を泳がせなんとかその場をやり過ごそうとしたが、
「吐け、ワンド取り上げるぞ」
ギルマスの静かな怒りに全てを白状させられた。
「おやつ? イタチ」
ピキピキとギルマスの顳顬が音を立てている。
「今度お仕置きな」
落ち込んで肩を落としたミリアだった。
ガンツが酒を持ってギルマスの横に移動してきた。
「ギルマス飲めや」
ドワーフは酒と名のつくものなら何でも飲む。エール・蜂蜜やリンゴ、木苺などで作る果実酒・命の水と呼ばれるウィスキーやブランデー・ワイン。
ガンツがウイスキーを注いでいると、横からミリアがそっと別のコップを差し出していた。
中には並々と蜂蜜酒が入っている。
まだ機嫌の治らないギルマスがジロリと睨むとミリアがポツリ。
「ギルマスに賄賂」
一瞬静まりかえった広場に“ケラケラ・あはは” と笑い声が響き渡った。
「ちびすけ、それを言うなら“お詫び” だ。賄賂じゃ露骨すぎんだろ」
「あっ」
真っ赤な顔になったミリアの頭をギルマスがくしゃくしゃと撫でた。
「無茶すんなって言っといたのに、ったく」
ガンツに断りを入れて蜂蜜酒を飲んだギルマスは「甘!」と、叫んだ。
ミスラとガンツに散々酒を注がれヨレヨレのギルマスがギルドに帰ると、部屋には仁王立ちしたソフィアが般若のような顔で書類の山を握りしめていた。
「やべぇ」
「お早いお帰りで。ご依頼の書類作成が終わりましたので、ずーっと・・ずーっとお待ちしておりました」
「ミリアの様子を見に行ったらとんでもねえ事になっててよ・・」
ミリアの名前を出した途端ソフィアの顔が綻び「元気でしたか?」と聞いてきた。
(ミリア様のお陰で玉とられずに済んだぜ)
翌日の朝、ギルマスが二日酔いで頭を抱えていると部屋のドアがバン! と音を立てて開いた。
「うっせえ、もちっと静かに・・あっ」
「とっくに就業時間過ぎてますけど? ギルドの社則読み直しますか?」
ギルド本部長のセオドラを従えた本部所属鑑定士テスタロッサが仁王立ちしていた。
「急いで呼び出した割にはとても優雅な朝を過ごしておられるようで」
ソファに座ったテスタロッサが鞄から資料を取り出しながら悪態をつく。
「ドワーフに潰されたんだよ。これも仕事の一環だからな。
にしても早えな、連絡入れたの一昨日の夕方だぜ?」
「・・全くセオドラもルカもどうしてこんなにお酒にだらしないのか・・あっ、ありがとう」
テスタロッサはギルマスに文句を言いながらも、お茶を出したソフィアにはキチンと礼を言っている。
「ルカ、黄金の林檎だろ?」
ギルマスを救うためセオドラが話を振ってくれた。
よろよろと立ち上がったギルマスは机の引き出しからキラキラと輝く林檎を取り出し戻ってきた。
「お前、そんなとこに入れとくなよ。なくなったらどうすんだ」
「無くならねえよ、この部屋に入るにゃソフィアの鉄壁の守りを破らなきゃならんからな。だろ? ソフィア」
お茶を出し終わって待機していたソフィアは大きく頷いて、
「ギルマスは机に鍵をかける習慣がいつまで経っても身につかないので」
林檎を見てからテスタロッサは無言になり目は林檎を追い続けている。
「ほれ」
ギルマスが差し出した林檎をテスタロッサが恐る恐る受け取った。
「セオドラ、間違いない。本物だわ」
簡易鑑定をしたのだろう。テスタロッサの顔が赤らんできた。
「正式な鑑定書に所有者を入れてくれよ」
「勿論よ。一体どこのパーティーがラードーンを攻略したの? ディエチミーラはまだ休止中でしょ?」
ギルマスが悪辣な顔でニヤリと笑った。
「しっかり鑑定してみろよ。面白いことがわかるはずだぜ」
目を輝かせたテスタロッサが鑑定をはじめた。詳細な鑑定ならラードーンの討伐場所や討伐した者の名前まで表示される。
「うそ、間違ってる。なんで?」
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