✖️✖️の薬を作ったら牢に入れられました。ここで薬を作れ? それは嫌かなー。って事でさよならします

との

文字の大きさ
66 / 149
Sランク登録

64.謹厳実直な人

しおりを挟む
「映像を記録しています」


「「「えっ?」」」


「それは私が作ったやつです。既に登録済みで一応は商品化されています。
高すぎるせいで需要はあまりなくて、王家とか余程金の余ってる奴らが持ってるくらいですね」

(ウォーカーが出したテーブルセットがゴージャスなはずだぜ。多分通信の魔道具もウォーカーだな)



「ミリアさんは何の薬が作れるんですか?」

「・・大した物ではありません。もう作るつもりもありませんし」


「ミリアさんは薬師ですよね。なのに作らない?」

「他の薬は作ります。でもあれは・・元々兄を吃驚させるために作ったので、目的は達成していますし」


「えっ、そうだったの?」

 ミリアの言葉にウォーカーが吃驚して目を丸くしている。


「孤児院で兄の迎えを待っている間に作ったんです」



 セオドラとテスタロッサは二つの考えの間で揺れ動いていた。

 小国とは言え王家が騒いで手に入れようとする程貴重な薬。
 しかし孤児院にいる間に子供が作った物ならば、大した薬ではない可能性も。



「ギルマス、お前は知ってるのか?」

 セオドラが少し期待した目でギルマスを見た。


「はあ? 知らねえよ、ってか知りたくねえな。俺はな《謹厳実直》に生きてんだよ」


「慎み深く厳格、まじめで正直。ギルマスに一番似合わない言葉です」

「ソフィア、てめえ目が腐ってんのか? それとも喧嘩売ってんのかよ」

「素直なだけですが?」



 目の前で繰り広げられる会話に耳を傾ける振りをしながら、ウォーカーは初めてミリアが薬を見せてくれた時のことを思い出していた。




「兄ちゃん、見ててね」


 十一歳で冒険者登録をしたミリアと、初めて『モンストルムの森』に行った時の事。


 ミリアは明るい日差しに溢れていた孤児院の裏の山とは違う、木や草が密集した薄暗い森の雰囲気に目を輝かせていた。

 しっとりした空気と湿った草の濃厚な匂い。木の根本には苔やシダが生えている。


「依頼にあったエルダーの木はこの先にあるんだ」


 小さい頃から頻繁に山を走り回っていたミリアは木の根に躓くこともなくサクサクと進んでいく。

(いつもならとっくに魔物に遭遇してるんだが)


「ミリア、お前なんかした?」

「まだ何もしてないよ」

「野生動物も魔物も見かけないんだけど?」

「いつも弱い子は寄ってこないの。兎とか抱っこしてみたいんだけどね」

 ミリアが少し元気がなくなったように見えた。


 エルダーの木は少し陰った場所にある低木で黒っぽい紫色の実をつけていた。

「実も取っていい? 帰ったらジュースにするの」

「ああ、パイを焼いてやるよ」

 ミリアは「やったぁ」と喜びながら走り出して行った。



 エルダーの小枝と実を採取した帰り道、瀕死の狸を見つけた。

「魔物にやられたんだ。まだ近くにいるかもしれない、気を付けて」

 ミリアは話を聞いているのかいないのか、バックの中に手を突っ込んでゴソゴソと何かを探している。


「兄ちゃん、見ててね」

 バックから出した壺の封を開け狸の傷に振りかけると食いちぎられた狸の足がみるみるうちに再生していった。


「!」

「吃驚した?」

 唖然としているウォーカーの顔を見て満足そうに目を輝かしているミリアは、

「兄ちゃんを驚かせられた、ふふ」


「・・その薬」

「作ったの。兄ちゃんがくれた母さんのペンダントに入ってた石といろんなハーブとかを混ぜて作ったんだよ」

(母さん、なんて物を作ってたんだ)



 数年後、ウォーカーがその石を調べると賢者の石に近いものだと推測された。

 完成品には程遠いがエリクサーを作る材料には使えたということのようで、その頃にはウォーカーが同レベルの石を作れるようになっていた。




「ウォーカー、大丈夫か?」

 ロビンが心配して声をかけてきた。

「あ、ああ。ちょっと昔を思い出してた」



「あの薬について口外しないのは正しい選択だと思う。
余計な混乱を招くだけだから」

 ウォーカーが話を打ち切った。



 セオドラとテスタロッサは納得がいかない顔をしていたが渋々のように頷き、

(後でギルマスを問い詰めてやる。予想くらいはついてそうだ)

と考えていた。




 セオドラとテスタロッサが書類を作成し押印、ミリアは正式にSランクに昇格した。

 アスカリオル帝国へ謁見希望の連絡も済ませると、後は返事待ちですることがない。



 セオドラがウォーカーに今後のディエチミーラの予定を聞き出そうとしたり、テスタロッサがミリアに他に珍しい素材などはないのかとにじり寄ったり・・。


「ガンツ達を避難させた方が良いかもな」

 ソファで「頭いてー」とぶつぶつ言っていたギルマスが突然言い出した。

「団長はあの通りしつけえ奴だからな、しかも見た目よりは知恵が回る。
ちょいちょいガンツがここに出入りしてた事に気づいてる可能性がある」


「だからって鍛冶屋に何かするかしら?」

 テスタロッサが首を傾げた。

「俺を隠匿罪で連行しようとしたように、ガンツにそれを当てはめるかもな」


 ミリアが慌てて立ち上がった。

「ヴァン、頼めるか? お前ならいっぺんに連れてこれんじゃね?」


『仕方あるまい』

 ヴァンの姿が消えギルマスとミリアは目を見合わせた。


「リンドとカノンは大丈夫かしら?」

しおりを挟む
感想 92

あなたにおすすめの小説

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

よくある父親の再婚で意地悪な義母と義妹が来たけどヒロインが○○○だったら………

naturalsoft
恋愛
なろうの方で日間異世界恋愛ランキング1位!ありがとうございます! ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 最近よくある、父親が再婚して出来た義母と義妹が、前妻の娘であるヒロインをイジメて追い出してしまう話……… でも、【権力】って婿養子の父親より前妻の娘である私が持ってのは知ってます?家を継ぐのも、死んだお母様の直系の血筋である【私】なのですよ? まったく、どうして多くの小説ではバカ正直にイジメられるのかしら? 少女はパタンッと本を閉じる。 そして悪巧みしていそうな笑みを浮かべて── アタイはそんな無様な事にはならねぇけどな! くははははっ!!! 静かな部屋の中で、少女の笑い声がこだまするのだった。

断罪中、味方が多すぎて王子が孤立している件について

夏乃みのり
恋愛
バーンスタイン伯爵家の令嬢ラミリアは、魔力も剣の才能もない「ごく普通」の地味な女性。 ある日のパーティーで、婚約者であるジェラルド第二王子から「地味で無能で嫉妬深い」と罵られ、身に覚えのない罪で婚約破棄を突きつけられてしまう。 しかし、断罪劇は予想外の展開へ。

お姉さまに挑むなんて、あなた正気でいらっしゃるの?

中崎実
ファンタジー
若き伯爵家当主リオネーラには、異母妹が二人いる。 殊にかわいがっている末妹で気鋭の若手画家・リファと、市中で生きるしっかり者のサーラだ。 入り婿だったのに母を裏切って庶子を作った父や、母の死後に父の正妻に収まった継母とは仲良くする気もないが、妹たちとはうまくやっている。 そんな日々の中、暗愚な父が連れてきた自称「婚約者」が突然、『婚約破棄』を申し出てきたが…… ※第2章の投稿開始後にタイトル変更の予定です ※カクヨムにも同タイトル作品を掲載しています(アルファポリスでの公開は数時間~半日ほど早めです)

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

私の婚約者でも無いのに、婚約破棄とか何事ですか?

狼狼3
恋愛
「お前のような冷たくて愛想の無い女などと結婚出来るものか。もうお前とは絶交……そして、婚約破棄だ。じゃあな、グラッセマロン。」 「いやいや。私もう結婚してますし、貴方誰ですか?」 「俺を知らないだと………?冗談はよしてくれ。お前の愛するカーナトリエだぞ?」 「知らないですよ。……もしかして、夫の友達ですか?夫が帰ってくるまで家使いますか?……」 「だから、お前の夫が俺だって──」 少しずつ日差しが強くなっている頃。 昼食を作ろうと材料を買いに行こうとしたら、婚約者と名乗る人が居ました。 ……誰コイツ。

処理中です...