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アスカリオル帝国へ
78.どっちもヤダ
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謁見室から皇帝の私室に移動した。
ソフィアやガンツが心配しているから帰りたいと言うと、皇帝はさっさと通信の魔道具でソフィアとハーミット王国に連絡してしまった。
「冒険者ミリアの国家反逆罪はローデリア王国による冤罪だと判明した。
騎士団その他早急に指示を致せ。
Sランクに昇格した冒険者ミリアに今後手を出す者はアスカリオル帝国が黙っておらぬと心得よ」
威厳たっぷりに皇帝が言い放っている相手はハーミット王国国王陛下で、アスカリオル帝国の属国の一つであるハーミット王国の者達は恐らく真っ青になって震えている事だろう。
ソフィアのいるギルドへも皇帝が直々に連絡を入れ、驚くほど優しい口調で説明を入れていた。
今後の予定などを話し合うから暫く時間がかかるとしつこく念を押しながら・・。
ソファでゆったりとお茶を飲みながら皇帝がミリアの今後の活動予定を聞いてきた。
「リンドとカノンの三人でパーティーを組んで、少しずつ依頼を受けていこうと思っています」
皇帝がミリアを見つめた直後に「ふむ」と一言だけ口にした。
「暫くはディエチミーラと一緒に行動するよね?」
「うん、それもリンドと話し合ってみる。リンドはそれでいい?」
「はい、僕はまだまだ実力不足です。我儘なのは承知しているのですがディエチミーラの方々の側で勉強させて頂けたらと思います」
「闘技大会を開催しようと思う」
皇帝が突然にっこり笑い、膝を叩いて宣言した。
皇帝の性格を熟知しているギルマスとセオドラは訝しんで目を眇め、ミリア達は吃驚して目を丸くした。
「前回の大会からまだ三年しか経ってねえだろうが、おっさん何考えてんだよ」
「俺は冒険者に戻る」
ニマニマと笑いながら一人悦にいる皇帝。
「「「はあ?」」」
「皇帝ってつまんねえんだよ。お前らも見たからわかんだろ?」
ソファの背にもたれ腹に置いた手を組んでギルマスをチラ見した皇帝はうんざりした顔をしていた。
「なら何で大会に出たんだよ」
ラシッドの横暴に慣れているはずのギルマスとセオドラも流石に呆れている。
「ん? 暇つぶし。あの頃でかい案件もなくて退屈してたんだよなー」
「いい歳して『なー』じゃねえよ」
三年前、ラシッド・エルミストは暇を持て余していた。
「ショボい依頼しかねえしボケっとしてりゃくだらねえ依頼が舞い込んでくるし。
あー! つまんねー」
酒場の隅でパーティーメンバーとグダを巻いていたラシッドは、すりすりと近づいてきた冒険者に睨みつけシッシッと手で追い払った。
「くそ、落ち着いて酒も飲めねえ」
「だったら闘技大会出てみれば? お前の家アスカリオルじゃん。暇つぶしになんじゃね?」
「闘技大会ねえ。運動不足解消くらいにはなるかもな」
「勝ったら皇帝とかすっかり忘れててよ。仕方ねえから皇帝らしく頑張ってきたわけよ。
結構サマになってたろ?」
ラシッドは口煩い父親を真似てあの口調と態度をキープしていたと、心底嫌そうな顔をして口元を歪めた。
「でもよお、なんかすげえ面白そうになって来てんじゃんか。
ディエチミーラがSランクになった時、冒険者辞めんじゃなかったーって滅茶苦茶後悔したもんな。
それが今回はこのちびすけだ。
見たところミリアのパーティーには前衛がいねえ、だから俺が入る! 俺は強えぜ」
全員の顔が恐怖に引き攣り、ギルマスが「バン!」と机を叩いて立ち上がった。
「断る! 間に合ってんだよ」
「「「えっ?」」」
「あっ? いや、もちっとマシなのを探してくる。このオッサンは禁止。
ウォーカーもそう思うよな」
「ルカと同じ意見なのは嫌だが、それと同じくらい皇帝がミリアのパーティーに入るのは嫌だ」
「ウォーカー、比べる対象酷くねえか? 俺お前に何もした覚えねえんだけど」
「・・したら許さん。しなくても、やっぱり許さん」
パチパチと放電しはじめたウォーカーを横目に見ながらギルマスはミリアに囁いた。
「なあちびすけ、お前のにいちゃんヤバくね?」
「ギルマスの事以外は真面なんで大丈夫ですよ」
ミリアはにっこりと笑いながらお菓子に手を伸ばした。
「おっさん、気にすんなよ。若者を見守る年長者の余裕ってやつ? あれだよあれ」
「アータル、俺ウォーカーと二つしか変わんねえぞ?」
「「「・・はあ?」」」
「だからおっさん言うなって事」
ウォーカーが立ち上がり叫んだ。
「貴様、何歳だ」
「二十三、お前二十一。ほらおっさんじゃねえだろ?」
「嘘だ、そんな! ・・許容範囲じゃないか」
項垂れて落ち込むウォーカーをメンバーが優しく慰めた。
「「「ウォーカー、ドンマイ」」」
「俺がいらねえって誰か当てでもあんのかよ」
「本人には断られてますが勧誘している冒険者は一人いるんで」
まだ当分復活出来なさそうなウォーカーを横目にロビンが言った。
「どっちもヤダ、漸く一緒にパーティー組めると思ってたのに変なのばっか付いて来る。何でだ? 俺のせいか? それとも・・」
ウォーカーが遠い目をして小声で呟いている。
「一人しか見つけてねえなら二人でもいいだろ? そいつの獲物が何なのか知らねえが、俺の獲物はツヴァイハンダーだ」
ラシッドが得意満面に言い切ったが、ギルマスとセオドラは盛大な溜息をついた。
ソフィアやガンツが心配しているから帰りたいと言うと、皇帝はさっさと通信の魔道具でソフィアとハーミット王国に連絡してしまった。
「冒険者ミリアの国家反逆罪はローデリア王国による冤罪だと判明した。
騎士団その他早急に指示を致せ。
Sランクに昇格した冒険者ミリアに今後手を出す者はアスカリオル帝国が黙っておらぬと心得よ」
威厳たっぷりに皇帝が言い放っている相手はハーミット王国国王陛下で、アスカリオル帝国の属国の一つであるハーミット王国の者達は恐らく真っ青になって震えている事だろう。
ソフィアのいるギルドへも皇帝が直々に連絡を入れ、驚くほど優しい口調で説明を入れていた。
今後の予定などを話し合うから暫く時間がかかるとしつこく念を押しながら・・。
ソファでゆったりとお茶を飲みながら皇帝がミリアの今後の活動予定を聞いてきた。
「リンドとカノンの三人でパーティーを組んで、少しずつ依頼を受けていこうと思っています」
皇帝がミリアを見つめた直後に「ふむ」と一言だけ口にした。
「暫くはディエチミーラと一緒に行動するよね?」
「うん、それもリンドと話し合ってみる。リンドはそれでいい?」
「はい、僕はまだまだ実力不足です。我儘なのは承知しているのですがディエチミーラの方々の側で勉強させて頂けたらと思います」
「闘技大会を開催しようと思う」
皇帝が突然にっこり笑い、膝を叩いて宣言した。
皇帝の性格を熟知しているギルマスとセオドラは訝しんで目を眇め、ミリア達は吃驚して目を丸くした。
「前回の大会からまだ三年しか経ってねえだろうが、おっさん何考えてんだよ」
「俺は冒険者に戻る」
ニマニマと笑いながら一人悦にいる皇帝。
「「「はあ?」」」
「皇帝ってつまんねえんだよ。お前らも見たからわかんだろ?」
ソファの背にもたれ腹に置いた手を組んでギルマスをチラ見した皇帝はうんざりした顔をしていた。
「なら何で大会に出たんだよ」
ラシッドの横暴に慣れているはずのギルマスとセオドラも流石に呆れている。
「ん? 暇つぶし。あの頃でかい案件もなくて退屈してたんだよなー」
「いい歳して『なー』じゃねえよ」
三年前、ラシッド・エルミストは暇を持て余していた。
「ショボい依頼しかねえしボケっとしてりゃくだらねえ依頼が舞い込んでくるし。
あー! つまんねー」
酒場の隅でパーティーメンバーとグダを巻いていたラシッドは、すりすりと近づいてきた冒険者に睨みつけシッシッと手で追い払った。
「くそ、落ち着いて酒も飲めねえ」
「だったら闘技大会出てみれば? お前の家アスカリオルじゃん。暇つぶしになんじゃね?」
「闘技大会ねえ。運動不足解消くらいにはなるかもな」
「勝ったら皇帝とかすっかり忘れててよ。仕方ねえから皇帝らしく頑張ってきたわけよ。
結構サマになってたろ?」
ラシッドは口煩い父親を真似てあの口調と態度をキープしていたと、心底嫌そうな顔をして口元を歪めた。
「でもよお、なんかすげえ面白そうになって来てんじゃんか。
ディエチミーラがSランクになった時、冒険者辞めんじゃなかったーって滅茶苦茶後悔したもんな。
それが今回はこのちびすけだ。
見たところミリアのパーティーには前衛がいねえ、だから俺が入る! 俺は強えぜ」
全員の顔が恐怖に引き攣り、ギルマスが「バン!」と机を叩いて立ち上がった。
「断る! 間に合ってんだよ」
「「「えっ?」」」
「あっ? いや、もちっとマシなのを探してくる。このオッサンは禁止。
ウォーカーもそう思うよな」
「ルカと同じ意見なのは嫌だが、それと同じくらい皇帝がミリアのパーティーに入るのは嫌だ」
「ウォーカー、比べる対象酷くねえか? 俺お前に何もした覚えねえんだけど」
「・・したら許さん。しなくても、やっぱり許さん」
パチパチと放電しはじめたウォーカーを横目に見ながらギルマスはミリアに囁いた。
「なあちびすけ、お前のにいちゃんヤバくね?」
「ギルマスの事以外は真面なんで大丈夫ですよ」
ミリアはにっこりと笑いながらお菓子に手を伸ばした。
「おっさん、気にすんなよ。若者を見守る年長者の余裕ってやつ? あれだよあれ」
「アータル、俺ウォーカーと二つしか変わんねえぞ?」
「「「・・はあ?」」」
「だからおっさん言うなって事」
ウォーカーが立ち上がり叫んだ。
「貴様、何歳だ」
「二十三、お前二十一。ほらおっさんじゃねえだろ?」
「嘘だ、そんな! ・・許容範囲じゃないか」
項垂れて落ち込むウォーカーをメンバーが優しく慰めた。
「「「ウォーカー、ドンマイ」」」
「俺がいらねえって誰か当てでもあんのかよ」
「本人には断られてますが勧誘している冒険者は一人いるんで」
まだ当分復活出来なさそうなウォーカーを横目にロビンが言った。
「どっちもヤダ、漸く一緒にパーティー組めると思ってたのに変なのばっか付いて来る。何でだ? 俺のせいか? それとも・・」
ウォーカーが遠い目をして小声で呟いている。
「一人しか見つけてねえなら二人でもいいだろ? そいつの獲物が何なのか知らねえが、俺の獲物はツヴァイハンダーだ」
ラシッドが得意満面に言い切ったが、ギルマスとセオドラは盛大な溜息をついた。
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