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新しいパーティー
83.あー、アホだからな
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「あー、俺駅馬車乗り場で見たっす。なんか薬草採取に行くって」
ソフィアが報告して来た例の冒険者だろう。
「んで、どこ行くって?」
鬼気迫るギルマスの様子に恐れをなした冒険者は思わず後ろに下がった。
ギルド内が静寂に包まれギルマスの低い声が響き渡った。
「きっ聞いてないっす」
「んだと、どういう事だ。なんで聞いてねえんだよ!」
「だって相手はSランクの冒険者っすよ。そんな人が行くとこなんて俺なんかが聞いても」
冒険者は冷や汗をダラダラと流し顔を引き攣らせている。
「くそ! 犬コロが一緒にいたよな。絶対にいたよな?」
「いや、見かけなかったっす」
「ああ? てめえ、よーく思い出してみろよ。ぜってえ足元にいたはずだ」
「いなかったっす。珍しいなーって思ったんで間違いないっす」
一歩また一歩と近づいてくるギルマスとそれに押されて後ろに下がっていく冒険者。
「くそウォーカーめ、今度会ったらボコボコにしてやる! 去勢して三つ編みにリボン巻いてやる。覚えとけよ!」
「おっ俺、ナッシュですけど?」
ナッシュの言葉を無視してギルマスは飛び出して行った。
「何だったんだ?」
「ギルマス、とうとう壊れたか?」
「アンタわかんないの? 鈍いねえ」
「本人も気づいてないんじゃね?」
「あー、アホだからな」
ゲラゲラ笑う者や意味がわからずキョトンとしている者、隣にいる冒険者に聞きはじめる者達でギルドの業務は完全にストップしてしまった。
内心やれやれと思いながら仮面をしっかりと装備したソフィアが受付で声を上げた。
「次に受付するのは誰ですか?」
ギルドを飛び出したギルマスはミリアが泊まっている宿に飛び込んだ。
「ちびすけ帰ってるか?」
「ギルマス、お久しぶりです。ミリアちゃん達ならまだですけど?」
それを聞いたギルマスは返事もせずに関所に向けて般若の形相で走り出した。
(へー、知らなかった。あの唐変木のギルマスがねえ)
「おい、ちびすけ帰って来てないか?」
「おー、久しぶり。なんだ? ちっこいのならまだだぞ」
「どこに行った?」
ギルマスの鬼のような表情に関所の役人が不審げな顔をした。
「確かサラエに行くって言ってたからもう直帰ってくるだろ? 血相変えてなんかあったか?」
ギルマスは返事もせずに関所を通り抜け、馬車が帰ってくるはずの方向を睨んでいた。
(ふうん、もしかしたらなーとは思ってたけど。こりゃ賭けは俺の勝ちだな)
夕日が西の空に沈みはじめ辺りはどんどん暗くなって来た。
「遅えよ、いつもこんなに遅いのか? なんかあったんじゃねえのか?」
ギルマスの悲壮な顔を見た関所の役人は笑いを堪えながら返事を返した。
「落ち着けって、もうじき・・ほら馬車が見えて来たぜ。そこに立ってたら馬車が通れねえ」
ギルマスは渋々端により馬車が来るのを待った。
馬車からぽつりぽつりと人が降りて来て、一番最後にミリアとカノンが降りてきた。
「あれ? こんばんは、こんなとこで会うなんて何かあったんですか?」
呑気なミリアの声を聞いてギルマスがブチ切れた。
「ちびすけ、犬コロはどうした! 何で勝手に出歩いてやがる」
「は? えっ、なに」
ギルマスの勢いにミリアは混乱しカノンと顔を見合わせた。
「ちびが二人でこんな時間まで。いや、何時だろうと許せねえ。
ウォーカーは絶対にボコボコにしてやる」
「ギルマス、一体どうしたんですか?」
ミリア達より先に馬車を降りた人や関所役人が周りでワクワクした顔で見ている。
「あの、みんなの注目を集めてます。恥ずかしいから取り敢えず場所を移動しませんか?」
ギルマスが無言でついてこいと合図し歩きはじめたので、ミリアとカノンはその後ろをドナドナされて行った。
ギルマスの後についてミリアとカノンはギルドの中に入って行った。
受付にいるソフィアに手を振り冒険者達にペコリと挨拶したミリアとカノンは、みんなのワクワク・キラキラした目を見てますます困惑していた。
「今日からソフィアがギルマス代行を務める。以上だ、ちびすけついてこい!」
ドシドシと音を立てて二階に上っていくギルマスを横目に見ながら、ミリアは急いでソフィアの元に走って行った。
「ソフィアさん、何があったんですか?」
「えー、そうそうカノンちゃんにちょっと話があるの。私と一緒に来てくれるかな? ミリアちゃんは二階にね」
ソフィアの仮面が外れかかり口元がヒクヒクしているのは、笑いを堪えているのだろうか?
「ソフィアさん?」
「ちびすけ、さっさと上ってこい!」
二階からギルマスが凄まじい形相で怒鳴った。
「ソフィアさん、助けてください。私まだ死にたくありません」
ミリアは必死でソフィアに助けを求めた。
「大丈夫だから行ってあげて。ギルマスが泣き出さないうちにね」
ぷぷっと一人が吹き出すとソフィアも冒険者や職員達も我慢出来なくなったようでケラケラと笑い出した。
意味が分からないミリアとカノンは不安気に顔を見合わせたが、カノンがソフィアに連れて行かれてしまったのでミリアは仕方なく二階へ上って行った。
開け放たれたドアから顔を覗かせたミリアは部屋の真ん中に腕を組んで仁王立ちしているギルマスと目があってしまった。
「えへ?」
思わず笑って誤魔化したミリア。
「犬コロはどこだ?」
「えーっと、ギルマスには関係ないと思うけど。ヴァンならちょっとヨルムガンドと出かけてて」
ギルマスの顔がますます怖くなっていく。
ソフィアが報告して来た例の冒険者だろう。
「んで、どこ行くって?」
鬼気迫るギルマスの様子に恐れをなした冒険者は思わず後ろに下がった。
ギルド内が静寂に包まれギルマスの低い声が響き渡った。
「きっ聞いてないっす」
「んだと、どういう事だ。なんで聞いてねえんだよ!」
「だって相手はSランクの冒険者っすよ。そんな人が行くとこなんて俺なんかが聞いても」
冒険者は冷や汗をダラダラと流し顔を引き攣らせている。
「くそ! 犬コロが一緒にいたよな。絶対にいたよな?」
「いや、見かけなかったっす」
「ああ? てめえ、よーく思い出してみろよ。ぜってえ足元にいたはずだ」
「いなかったっす。珍しいなーって思ったんで間違いないっす」
一歩また一歩と近づいてくるギルマスとそれに押されて後ろに下がっていく冒険者。
「くそウォーカーめ、今度会ったらボコボコにしてやる! 去勢して三つ編みにリボン巻いてやる。覚えとけよ!」
「おっ俺、ナッシュですけど?」
ナッシュの言葉を無視してギルマスは飛び出して行った。
「何だったんだ?」
「ギルマス、とうとう壊れたか?」
「アンタわかんないの? 鈍いねえ」
「本人も気づいてないんじゃね?」
「あー、アホだからな」
ゲラゲラ笑う者や意味がわからずキョトンとしている者、隣にいる冒険者に聞きはじめる者達でギルドの業務は完全にストップしてしまった。
内心やれやれと思いながら仮面をしっかりと装備したソフィアが受付で声を上げた。
「次に受付するのは誰ですか?」
ギルドを飛び出したギルマスはミリアが泊まっている宿に飛び込んだ。
「ちびすけ帰ってるか?」
「ギルマス、お久しぶりです。ミリアちゃん達ならまだですけど?」
それを聞いたギルマスは返事もせずに関所に向けて般若の形相で走り出した。
(へー、知らなかった。あの唐変木のギルマスがねえ)
「おい、ちびすけ帰って来てないか?」
「おー、久しぶり。なんだ? ちっこいのならまだだぞ」
「どこに行った?」
ギルマスの鬼のような表情に関所の役人が不審げな顔をした。
「確かサラエに行くって言ってたからもう直帰ってくるだろ? 血相変えてなんかあったか?」
ギルマスは返事もせずに関所を通り抜け、馬車が帰ってくるはずの方向を睨んでいた。
(ふうん、もしかしたらなーとは思ってたけど。こりゃ賭けは俺の勝ちだな)
夕日が西の空に沈みはじめ辺りはどんどん暗くなって来た。
「遅えよ、いつもこんなに遅いのか? なんかあったんじゃねえのか?」
ギルマスの悲壮な顔を見た関所の役人は笑いを堪えながら返事を返した。
「落ち着けって、もうじき・・ほら馬車が見えて来たぜ。そこに立ってたら馬車が通れねえ」
ギルマスは渋々端により馬車が来るのを待った。
馬車からぽつりぽつりと人が降りて来て、一番最後にミリアとカノンが降りてきた。
「あれ? こんばんは、こんなとこで会うなんて何かあったんですか?」
呑気なミリアの声を聞いてギルマスがブチ切れた。
「ちびすけ、犬コロはどうした! 何で勝手に出歩いてやがる」
「は? えっ、なに」
ギルマスの勢いにミリアは混乱しカノンと顔を見合わせた。
「ちびが二人でこんな時間まで。いや、何時だろうと許せねえ。
ウォーカーは絶対にボコボコにしてやる」
「ギルマス、一体どうしたんですか?」
ミリア達より先に馬車を降りた人や関所役人が周りでワクワクした顔で見ている。
「あの、みんなの注目を集めてます。恥ずかしいから取り敢えず場所を移動しませんか?」
ギルマスが無言でついてこいと合図し歩きはじめたので、ミリアとカノンはその後ろをドナドナされて行った。
ギルマスの後についてミリアとカノンはギルドの中に入って行った。
受付にいるソフィアに手を振り冒険者達にペコリと挨拶したミリアとカノンは、みんなのワクワク・キラキラした目を見てますます困惑していた。
「今日からソフィアがギルマス代行を務める。以上だ、ちびすけついてこい!」
ドシドシと音を立てて二階に上っていくギルマスを横目に見ながら、ミリアは急いでソフィアの元に走って行った。
「ソフィアさん、何があったんですか?」
「えー、そうそうカノンちゃんにちょっと話があるの。私と一緒に来てくれるかな? ミリアちゃんは二階にね」
ソフィアの仮面が外れかかり口元がヒクヒクしているのは、笑いを堪えているのだろうか?
「ソフィアさん?」
「ちびすけ、さっさと上ってこい!」
二階からギルマスが凄まじい形相で怒鳴った。
「ソフィアさん、助けてください。私まだ死にたくありません」
ミリアは必死でソフィアに助けを求めた。
「大丈夫だから行ってあげて。ギルマスが泣き出さないうちにね」
ぷぷっと一人が吹き出すとソフィアも冒険者や職員達も我慢出来なくなったようでケラケラと笑い出した。
意味が分からないミリアとカノンは不安気に顔を見合わせたが、カノンがソフィアに連れて行かれてしまったのでミリアは仕方なく二階へ上って行った。
開け放たれたドアから顔を覗かせたミリアは部屋の真ん中に腕を組んで仁王立ちしているギルマスと目があってしまった。
「えへ?」
思わず笑って誤魔化したミリア。
「犬コロはどこだ?」
「えーっと、ギルマスには関係ないと思うけど。ヴァンならちょっとヨルムガンドと出かけてて」
ギルマスの顔がますます怖くなっていく。
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