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新しい地、カリーニン
91.マモンの宝石
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「さっきレギーが言った大量購入している食料品に当てはまってるな」
堕天使の中で最もさもしい根性の持ち主で、堕天する前も地上の財宝や黄金のみを賛美していたマモン。
堕天した後はルシファーの居城パンデモニウムに富を集め飾り立てる為、七十二の堕天使を使役し火山から黄金や宝石を採掘させている。
神との決戦の時も黄金を選び戦いを拒んだ物欲の権化で、マモンの渇望は地上のあらゆる物が対象になる。
人間に採掘技術を伝えたのも人間の欲を駆り立て堕落させる為だったと言う。
人間の欲を増長させる為にマモンから与えられた金銭や宝石は時間と共に馬糞や灰などに姿を変える。
「神とマモンとに仕えることはできないと言われるほど神の対極にいるのがマモンなの」
床に座り込んでゆらゆらと風に揺れるドアを見ながら蒼白の顔色をしたミリアが口籠もった。
「マモンが人間の願いと引き換えにするのは生命」
「じっじゃあ、みんなはもう・・」
「それは・・分からない。彼らが願っていなければ」
ミリアが下唇を噛んで黙り込んだ。
人の欲には際限がない。
もっと・・もっと。
「最悪だな」
「今の私たちでは何も出来ない。何か方法を考えなくちゃ・・」
ミリア達はターニャ達が暮らす家に泊めてもらうことになり、腰を落ち着けて話を聞くことにした。
「あたしの母さんとレギーの父さんは兄妹だったの」
ターニャの両親とレギーの両親はかつて四人パーティーで冒険者をしていた。
ある時複数のパーティーで大規模な商隊の護衛を請け負ったが、護衛の中に盗賊の一味が紛れ込んでいた。
盗賊の襲撃を受けた時には護衛達は総崩れし商人達は全滅、レギーの両親も亡くなってしまった。
これをキッカケにターニャの父親は冒険者を引退しギルドに就職しギルドマスターになったが、ターニャの母親は盗賊団を捕まえる為に冒険者を続けている。
その時からレギーはターニャ達と四人家族としてギルドの裏手にある一軒家で暮らしていた。
「町の奴らがどんどんおかしくなってってギルマスがなんか変だって言い出したんだ」
最初に町長が溜め込んでいた宝石や武器を売りはじめた。
そして農民達は全ての家畜を売り払い畑を丸裸にして鋤や鍬を持ち出し始め、粉挽きが石臼を荷車に積み込んだ。
「町ん中には食べる物が何もなくなってくのにみんな目の色変えて売れるもんを探し回ってた」
エリッソンから帰ってきた者達は大金を懐に家探しをしてはまた出かけて行ったが、一人また一人と帰ってこない者が現れはじめた。
急に大金を持ったからどこかで遊んでるんだろうと皆が思っていたが、帰ってこない人が増えるにつれ不信感が募っていったターニャの母親がエリッソンの様子を調べに行った。
「一ヶ月以上経っても母さんから何の連絡もなくて父さんが探しに行ったの」
「俺はギルマスからターニャを頼むって言われて食べ物の調達とかしてたんだけどここんとこ獲物が全然見つからなくて。
罠を仕掛けても何も捕まんねえから、木の実とか草を集めてる時にアンタ達が来るのが見えたんだ」
ターニャの母親と町の人を迎えにいったはずのギルマスからも連絡がなく途方に暮れた二人はエリッソンに探しに行くしかないのかと話し合ったばかりだったと言う。
「このままじゃ飢えて死んじまうって」
「その前に来れて良かった。この様子じゃあお前らまで帰ってこれなくなってたかも」
ミリアのアイテムバックから食材を出しターニャとレギーが台所に立った。カノンは二人の手伝いをはじめたが、ミリアは窓辺に立ち尽くしエリッソンの方向を見つめていた。
ルカがギルドのドアの蝶番を直しているとヴァンがのっそりと歩いてきた。
「・・」
『我が動けばルシファーがそれを好機と捉えて騒ぎ出す』
「ああ、そうなったら人間は終わりだな。さっきは怒鳴って悪かった、まさか相手が悪魔とは思わねえだろ?」
『マモンは悪魔ではない、堕天使じゃ』
「そうか、俺にゃ違いがわからねえ」
『元から悪の存在なのが悪魔、善から悪に堕ちた者が堕天使』
「そう言う意味でいやあ、マモンは悪魔でいんじゃね?」
『確かに、彼奴は昔から悪であったな』
夕焼けが辺りを染めはじめ風が冷たくなってきはじめた町の通りには僅かな生き物の気配さえしなかった。
ルカは町を見渡しながら呟いた。
「虫も鳴いてねえし」
『蜘蛛』
「・・ああ、そうだったな」
全員でテーブルを囲んだがレギーは久しぶりのご馳走に興奮していた。
「凄え、肉肉肉・・」
「レギー、野菜も食べないと母さんに言いつけるからね」
旺盛な食欲を見せるレギーとは裏腹にミリアとターニャはちまちまとパンを齧っていた。
片付けを済ませたルカはレギーと一緒の部屋に、ミリアとカノンはターニャの両親の部屋を借りる事になった。
「ミリアちゃん、大丈夫?」
「ええ、なんとか」
ミリアは空元気を出してカノンに笑いかけた。
「昔、兄さんが言ってたの。越えられない山はないって」
「うん、ミリアちゃんならきっと大丈夫。カノン達を救ってくれた人だもん」
カノンがミリアに抱きついてきたのでミリアは頭を撫でながら考え込んでいた。
(何をするにしろカノンちゃんの安全も考えなくちゃ)
窓際近くにはヴァンとヨルムガンドが寝そべり、その間に挟まったディーは二つのもふもふに埋もれていた。
朝まだ暗いレギーの部屋のドアが「バン!」と大きな音を立てて開き、寝巻き姿のミリアが血相を変えて走り込んできた。
「ルカ、エリッソンに乗り込むわよ!」
堕天使の中で最もさもしい根性の持ち主で、堕天する前も地上の財宝や黄金のみを賛美していたマモン。
堕天した後はルシファーの居城パンデモニウムに富を集め飾り立てる為、七十二の堕天使を使役し火山から黄金や宝石を採掘させている。
神との決戦の時も黄金を選び戦いを拒んだ物欲の権化で、マモンの渇望は地上のあらゆる物が対象になる。
人間に採掘技術を伝えたのも人間の欲を駆り立て堕落させる為だったと言う。
人間の欲を増長させる為にマモンから与えられた金銭や宝石は時間と共に馬糞や灰などに姿を変える。
「神とマモンとに仕えることはできないと言われるほど神の対極にいるのがマモンなの」
床に座り込んでゆらゆらと風に揺れるドアを見ながら蒼白の顔色をしたミリアが口籠もった。
「マモンが人間の願いと引き換えにするのは生命」
「じっじゃあ、みんなはもう・・」
「それは・・分からない。彼らが願っていなければ」
ミリアが下唇を噛んで黙り込んだ。
人の欲には際限がない。
もっと・・もっと。
「最悪だな」
「今の私たちでは何も出来ない。何か方法を考えなくちゃ・・」
ミリア達はターニャ達が暮らす家に泊めてもらうことになり、腰を落ち着けて話を聞くことにした。
「あたしの母さんとレギーの父さんは兄妹だったの」
ターニャの両親とレギーの両親はかつて四人パーティーで冒険者をしていた。
ある時複数のパーティーで大規模な商隊の護衛を請け負ったが、護衛の中に盗賊の一味が紛れ込んでいた。
盗賊の襲撃を受けた時には護衛達は総崩れし商人達は全滅、レギーの両親も亡くなってしまった。
これをキッカケにターニャの父親は冒険者を引退しギルドに就職しギルドマスターになったが、ターニャの母親は盗賊団を捕まえる為に冒険者を続けている。
その時からレギーはターニャ達と四人家族としてギルドの裏手にある一軒家で暮らしていた。
「町の奴らがどんどんおかしくなってってギルマスがなんか変だって言い出したんだ」
最初に町長が溜め込んでいた宝石や武器を売りはじめた。
そして農民達は全ての家畜を売り払い畑を丸裸にして鋤や鍬を持ち出し始め、粉挽きが石臼を荷車に積み込んだ。
「町ん中には食べる物が何もなくなってくのにみんな目の色変えて売れるもんを探し回ってた」
エリッソンから帰ってきた者達は大金を懐に家探しをしてはまた出かけて行ったが、一人また一人と帰ってこない者が現れはじめた。
急に大金を持ったからどこかで遊んでるんだろうと皆が思っていたが、帰ってこない人が増えるにつれ不信感が募っていったターニャの母親がエリッソンの様子を調べに行った。
「一ヶ月以上経っても母さんから何の連絡もなくて父さんが探しに行ったの」
「俺はギルマスからターニャを頼むって言われて食べ物の調達とかしてたんだけどここんとこ獲物が全然見つからなくて。
罠を仕掛けても何も捕まんねえから、木の実とか草を集めてる時にアンタ達が来るのが見えたんだ」
ターニャの母親と町の人を迎えにいったはずのギルマスからも連絡がなく途方に暮れた二人はエリッソンに探しに行くしかないのかと話し合ったばかりだったと言う。
「このままじゃ飢えて死んじまうって」
「その前に来れて良かった。この様子じゃあお前らまで帰ってこれなくなってたかも」
ミリアのアイテムバックから食材を出しターニャとレギーが台所に立った。カノンは二人の手伝いをはじめたが、ミリアは窓辺に立ち尽くしエリッソンの方向を見つめていた。
ルカがギルドのドアの蝶番を直しているとヴァンがのっそりと歩いてきた。
「・・」
『我が動けばルシファーがそれを好機と捉えて騒ぎ出す』
「ああ、そうなったら人間は終わりだな。さっきは怒鳴って悪かった、まさか相手が悪魔とは思わねえだろ?」
『マモンは悪魔ではない、堕天使じゃ』
「そうか、俺にゃ違いがわからねえ」
『元から悪の存在なのが悪魔、善から悪に堕ちた者が堕天使』
「そう言う意味でいやあ、マモンは悪魔でいんじゃね?」
『確かに、彼奴は昔から悪であったな』
夕焼けが辺りを染めはじめ風が冷たくなってきはじめた町の通りには僅かな生き物の気配さえしなかった。
ルカは町を見渡しながら呟いた。
「虫も鳴いてねえし」
『蜘蛛』
「・・ああ、そうだったな」
全員でテーブルを囲んだがレギーは久しぶりのご馳走に興奮していた。
「凄え、肉肉肉・・」
「レギー、野菜も食べないと母さんに言いつけるからね」
旺盛な食欲を見せるレギーとは裏腹にミリアとターニャはちまちまとパンを齧っていた。
片付けを済ませたルカはレギーと一緒の部屋に、ミリアとカノンはターニャの両親の部屋を借りる事になった。
「ミリアちゃん、大丈夫?」
「ええ、なんとか」
ミリアは空元気を出してカノンに笑いかけた。
「昔、兄さんが言ってたの。越えられない山はないって」
「うん、ミリアちゃんならきっと大丈夫。カノン達を救ってくれた人だもん」
カノンがミリアに抱きついてきたのでミリアは頭を撫でながら考え込んでいた。
(何をするにしろカノンちゃんの安全も考えなくちゃ)
窓際近くにはヴァンとヨルムガンドが寝そべり、その間に挟まったディーは二つのもふもふに埋もれていた。
朝まだ暗いレギーの部屋のドアが「バン!」と大きな音を立てて開き、寝巻き姿のミリアが血相を変えて走り込んできた。
「ルカ、エリッソンに乗り込むわよ!」
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