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新しい地、カリーニン
95.こんなもんかしら・・
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「まずはこれ・・。
六月二十四日に収穫したセントジョンズワートで作ったハーブティーを持って参りましたの。
若干苦みはありますが、睡眠障害の解消や気持ちを落ち着ける効果がありますからとても評判が良くて」
ミリアはにっこりと笑いハーブティーを両手に乗せてテーブルに置き、次の包みを取り出した。
梱包を解き中から出てきた壺の蓋を開けてテーブルに置くと広間に漂う香りが一段と強くなった。
「こちらは生のセントジョンズワートとオリーブオイルを四週間太陽の光に当てて浸出したオイルですわ。
お肌がとても綺麗になりますし、赤ちゃんにも使えますのよ」
三つ目の包みには新鮮な生の葉が包まれており、今までの中で一番強い匂いが広がった。
「セントジョンズワートの香り・・悪魔が嫌うので魔よけの草にもお使いになれますわ」
(想像以上にすげえ)
マモンが脂汗を垂らしながらガタガタと震え出し、男爵の周りにいた使用人はマモンとミリアをチラチラと見ながら少しずつ後ろに下がっていった。
マモン達の様子を意に介さずミリアは次の包みを出してテーブルに広げはじめた。
「それからこの包みには・・部屋の臭いを消すハーブも調合してまいりましたの。
ティーツリー、ラベンダー、ローズマリー、オレウムシレー、ユーカリ。
これはお部屋の動物臭を消してくれますの。
ゴブリンや狐や狸などは本当に酷く臭くて嫌になりますでしょう?
ハリネズミ除けにペパーミントも入っておりますし、オレウムシレーは昆虫が嫌いな匂いですので蜘蛛よけになります」
男爵の周りの者達が途端に鼻を押さえて怯え始めた。
ミリアは本気で嫌そうな顔で鼻をヒクヒクさせ、
「ただ、残念ですけどカラスはハーブでは撃退できないので別の方法に頼らなくては・・」
ミリアは鞄から出すふりをしながらアイテムバックからひと抱えもある大きな包みを取り出しドスンとテーブルに置いた。
包みを開くと酷い異臭が漂いはじめマモンが椅子から飛び上がって後ずさった。椅子が大きな音を立てて倒れマモンは「ひっ!」と悲鳴を上げ飛び上がった。
バジリスクを凝視するマモンの目は血走り口と鼻を覆っている手が震えている。
「カラスの苦手な蛇・・折角なのでバジリスクの切り身を持って参りましたの。
この臭いなら絶対にカラスは寄り付きませんわ、何と言っても蛇の王ですから」
ふふっと天使の笑顔で笑うミリア。
マモンやその取り巻きにとっては彼女こそが悪魔に見えていたかもしれない。
誰もが口と鼻を押さえ青褪めてブルブルと震えている。
広間の中は何種類もの動物臭とバジリスクの異臭、様々なハーブの香りが混ざり合いルカは吐き気を抑えるのに必死になりながら腰のクレイモアに手をかけていた。
そんな中でミリア一人が笑みを浮かべながら小首を傾げ平然と立っている。
「こんなもんかしら・・他にもあるにはありますけど・・」
ミリアの呟きが広間に広がった。
(この臭いの中で平気とか、薬師怖え)
怯えて立ち竦んでいたマモンの姿がぼやけ、烏の双頭を持った黒い悪魔が現れた。
「まあ、やはりマモンの頭は烏でしたのね。でしたら蛇は苦手かしら?」
「・・わしがマモンと気付いていながらここに来たのか?」
「勿論ですわ。この品揃えを見ていただければご理解頂けますでしょう?」
両手をテーブルに向けにっこりと笑う。
ごうっと広間に強い風が吹き荒れ、ルカは咄嗟にミリアと自分の周りに強い結界を張ったがピシリピシリと音を立てて小さな亀裂が入っていく。
マモンが咆哮を上げ、テーブルの上の物やマモンの後ろにいた眷属が吹き飛んだ。
「グゥオーン」
ミリアは手にしたワンドをテーブルに向け【ウインドランス】。マモンのおこした風にびくともしなかったテーブルを粉々に打ち砕いた。
テーブルの残骸が勢いよく飛び散りマモンや眷属に降り注ぐと、眷属達は頭を抱えてしゃがみ込んだ。
顔を引き攣らせたマモンが怒鳴り声を上げた。
「わしの、わしのテーブルをよくも壊しやがったな!」
マモンが右手を伸ばしミリアに向けて強力な闇の刃を幾つも飛ばしてきた。
ルカが結界を重ね掛けし攻撃をギリギリで防御すると同時に、ミリアがワンドを広間の壁に向け【ウインドランス】を立て続けに放った。
バリン、ガシャンと音がして飾られていた絵画やランプが砕け散って行く。
「ぎゃー、やめろ! わしのわしの宝が!」
無表情のミリアがワンドをマモンに向け【ファイアランス】を放つと、ドガーンと大きな音を立ててマモンの背後の壁が崩れ落ちた。
「ねっ願いはなんだ! わしがなんでも叶えてやろう。金か、宝石か?」
「マモンにお願いなんてあり得ない。金や宝石はいずれ塵に変わるし。でも、計画ならあるの」
そう言いながらミリアは無表情で広間の装備品を一つずつ壊していく。
ピシッ、パリン。ピシッ、ガシャン・・。
壊れていく装備品を見ながらマモンがこっそりと右手を上げると、ミリア達の周りに強力な竜巻が巻き起こった。
六月二十四日に収穫したセントジョンズワートで作ったハーブティーを持って参りましたの。
若干苦みはありますが、睡眠障害の解消や気持ちを落ち着ける効果がありますからとても評判が良くて」
ミリアはにっこりと笑いハーブティーを両手に乗せてテーブルに置き、次の包みを取り出した。
梱包を解き中から出てきた壺の蓋を開けてテーブルに置くと広間に漂う香りが一段と強くなった。
「こちらは生のセントジョンズワートとオリーブオイルを四週間太陽の光に当てて浸出したオイルですわ。
お肌がとても綺麗になりますし、赤ちゃんにも使えますのよ」
三つ目の包みには新鮮な生の葉が包まれており、今までの中で一番強い匂いが広がった。
「セントジョンズワートの香り・・悪魔が嫌うので魔よけの草にもお使いになれますわ」
(想像以上にすげえ)
マモンが脂汗を垂らしながらガタガタと震え出し、男爵の周りにいた使用人はマモンとミリアをチラチラと見ながら少しずつ後ろに下がっていった。
マモン達の様子を意に介さずミリアは次の包みを出してテーブルに広げはじめた。
「それからこの包みには・・部屋の臭いを消すハーブも調合してまいりましたの。
ティーツリー、ラベンダー、ローズマリー、オレウムシレー、ユーカリ。
これはお部屋の動物臭を消してくれますの。
ゴブリンや狐や狸などは本当に酷く臭くて嫌になりますでしょう?
ハリネズミ除けにペパーミントも入っておりますし、オレウムシレーは昆虫が嫌いな匂いですので蜘蛛よけになります」
男爵の周りの者達が途端に鼻を押さえて怯え始めた。
ミリアは本気で嫌そうな顔で鼻をヒクヒクさせ、
「ただ、残念ですけどカラスはハーブでは撃退できないので別の方法に頼らなくては・・」
ミリアは鞄から出すふりをしながらアイテムバックからひと抱えもある大きな包みを取り出しドスンとテーブルに置いた。
包みを開くと酷い異臭が漂いはじめマモンが椅子から飛び上がって後ずさった。椅子が大きな音を立てて倒れマモンは「ひっ!」と悲鳴を上げ飛び上がった。
バジリスクを凝視するマモンの目は血走り口と鼻を覆っている手が震えている。
「カラスの苦手な蛇・・折角なのでバジリスクの切り身を持って参りましたの。
この臭いなら絶対にカラスは寄り付きませんわ、何と言っても蛇の王ですから」
ふふっと天使の笑顔で笑うミリア。
マモンやその取り巻きにとっては彼女こそが悪魔に見えていたかもしれない。
誰もが口と鼻を押さえ青褪めてブルブルと震えている。
広間の中は何種類もの動物臭とバジリスクの異臭、様々なハーブの香りが混ざり合いルカは吐き気を抑えるのに必死になりながら腰のクレイモアに手をかけていた。
そんな中でミリア一人が笑みを浮かべながら小首を傾げ平然と立っている。
「こんなもんかしら・・他にもあるにはありますけど・・」
ミリアの呟きが広間に広がった。
(この臭いの中で平気とか、薬師怖え)
怯えて立ち竦んでいたマモンの姿がぼやけ、烏の双頭を持った黒い悪魔が現れた。
「まあ、やはりマモンの頭は烏でしたのね。でしたら蛇は苦手かしら?」
「・・わしがマモンと気付いていながらここに来たのか?」
「勿論ですわ。この品揃えを見ていただければご理解頂けますでしょう?」
両手をテーブルに向けにっこりと笑う。
ごうっと広間に強い風が吹き荒れ、ルカは咄嗟にミリアと自分の周りに強い結界を張ったがピシリピシリと音を立てて小さな亀裂が入っていく。
マモンが咆哮を上げ、テーブルの上の物やマモンの後ろにいた眷属が吹き飛んだ。
「グゥオーン」
ミリアは手にしたワンドをテーブルに向け【ウインドランス】。マモンのおこした風にびくともしなかったテーブルを粉々に打ち砕いた。
テーブルの残骸が勢いよく飛び散りマモンや眷属に降り注ぐと、眷属達は頭を抱えてしゃがみ込んだ。
顔を引き攣らせたマモンが怒鳴り声を上げた。
「わしの、わしのテーブルをよくも壊しやがったな!」
マモンが右手を伸ばしミリアに向けて強力な闇の刃を幾つも飛ばしてきた。
ルカが結界を重ね掛けし攻撃をギリギリで防御すると同時に、ミリアがワンドを広間の壁に向け【ウインドランス】を立て続けに放った。
バリン、ガシャンと音がして飾られていた絵画やランプが砕け散って行く。
「ぎゃー、やめろ! わしのわしの宝が!」
無表情のミリアがワンドをマモンに向け【ファイアランス】を放つと、ドガーンと大きな音を立ててマモンの背後の壁が崩れ落ちた。
「ねっ願いはなんだ! わしがなんでも叶えてやろう。金か、宝石か?」
「マモンにお願いなんてあり得ない。金や宝石はいずれ塵に変わるし。でも、計画ならあるの」
そう言いながらミリアは無表情で広間の装備品を一つずつ壊していく。
ピシッ、パリン。ピシッ、ガシャン・・。
壊れていく装備品を見ながらマモンがこっそりと右手を上げると、ミリア達の周りに強力な竜巻が巻き起こった。
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