✖️✖️の薬を作ったら牢に入れられました。ここで薬を作れ? それは嫌かなー。って事でさよならします

との

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アルスター侯爵家

102.ルカのお願い・・叶わず

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グレーニア浜ぼうふう? 行く! グレーニアはね解熱・発汗・神経痛に効くし消化促進にもなるの。ヴァン、ケーラス湾ってどこにあるの?」

 興奮して飛び跳ねるミリアを無視してルカはヴァンを睨んだ。

「ヴァン、てめえ・・」

『ボスデリア山には温泉も湧いておる』

「温泉? 行く行く、そのボスなんとかに行こう!」

 ディーがヴァンの上で飛び跳ねた。


「・・どうやらそこはルカさんの目的地のようですね。男は諦めが肝心とも言います」

「ヴァンとディーが一緒なら大丈夫だから、ルカさんとは別行動「だー、くそっ、連れてきゃいいんだろ。その代わり嫌な思いをしても知らねえからな。向こうにいるのはクソ親父と会ったこともねえ妹だ。覚悟しろよ!」」


 ミリア達はそそくさと準備を進め機嫌の悪いルカと一緒に颯爽と旅立った。目的地はアルスター侯爵家のあるダハール王国のコルネリア。トレントの森からは馬車を乗り継いでも1週間かかるが、不機嫌なルカの横でミリアはご機嫌で鼻歌を歌っている。

「ミリアちゃん、ルカさんの顔が怖いよお」

「大丈夫だよ、直ぐに慣れるからね。私が会った時はいつもあんな顔してたし、ルカさんが機嫌が悪いのは通常運転みたいなものだから」

 大雨で土砂崩れが起き道を迂回したり落雷の被害で宿に泊まれず農家の納屋を借りたりしたミリア達は12日かかって漸くコルネリアに辿り着いた。

「まるで何かに邪魔されてるみたいだったね」

「カノン、不吉な事を言うんじゃねえよ。言霊ってのがあってな、縁起の悪い事は口にしねえ方がいいんだぜ」

「はーい、ルカさんお尻大丈夫?」

「おっ、おう。鍛えてるからな」

 ミリアとカノンは顔を見合わせ『お尻って鍛えられるの?』と首を傾げたが少しへっぴり腰で歩くルカを見て黙っておくことにした。ミリアとカノンは途中何度も身体強化をかけたが、ルカはミリアにお尻を向けるのが恥ずかしかったのか断り続けていた。

(恥ずかしいなら全身にかけたげたのに)



「先にケーラス湾に行くか」

「えっ? 妹さんが待ってるんでしょう? 私は後でいいです」

 ミリアと手を繋いで歩くカノンもうんうんと頷いている。

「あたしもー、ゆっくり温泉に浸かりたいから後でいいよー」

 相変わらずヴァンの背中に座っているディーが杖を振るたびにキラキラと光がこぼれ落ちていく。

「お前の杖、バージョンアップしてんな」

「うん、ガンツがやってくれたのー」


「・・そうか。えーっとだな、12年会ってねえが今でも間違いなくうちの親父はすげえムカつく奴のはずだから気にしないようにしてくれ。妹は会った事がねえから分からん」

「大丈夫です。ローデリア王家の人で慣れてますから少々じゃめげません」

 ミリアがにっこり笑うとディーがルカの前に飛び出した。

「すげえムカつく奴ならルカで慣れてるよー」

「アイツにあったら間違いなく意見が変わると思うぜ」



 アルスター侯爵家の屋敷は綺麗に整えられた芝の向こうに悠然と建つ巨大なマナーハウスだった。

 ルネサンス建築特有の左右対称で整然と並ぶ半円状のアーチと半球状のドームに圧倒されたミリアとカノンは正面玄関近くであんぐりと口を開けて立ち止まった。

「一体何部屋あるんだろう」

「デカイばっかりで、古くて使い勝手が悪いんだ。隙間風が凄えし、立派なのは裏の馬場くらいのもんだ。馬はアイツの趣味だからな」

 ルカは人に冷たく馬だけを大切にする父親が大嫌いだった。ほんの少しでも馬に異常があると馬丁や調教師に物を投げつけ鞭で打つ。
 ピカピカに磨き上げられた厩舎には金を惜しまないが、使用人はほんの僅かなミスでも給金を減額される。


 本邸の裏には広い庭園があり温室はコンサバトリーガラス張りの談話室オランジェリー植物を育てる温室。厩舎と障害物を設置した馬術練習所と本格的な馬場がある。


 玄関の大きな扉が開き見目の良い従僕が顔を覗かせた。ルカの腰に下げたクレイモアと3人の冒険者らしい服装をジロリと見た後フンと鼻を鳴らした従僕は無言でドアを閉めかけた。

 ドアの隙間に靴を差し込んだルカが慌てて説明をはじめた。

「ちょっ待ってくれ! 俺はルカ。ルカ・アルスターだ、エレノアに会いに帰って来たんだ」

「エレノアお嬢様を呼び捨てにするなど、無礼討ちされたいのか!」

「だーかーらー、俺は12年前に家出したここんちの息子のルカだっつうの」

 頑なにドアを閉めようと力を入れる従僕が「ルカ?」と呟きドアから手を離した。

 力任せに引っ張りあっていたドアがバーンと壁にぶつかり、ミリアはすかさずカノンを抱えて脇によけたがルカは思いっきり尻餅をついてしまった。

「痛ってえ!」

「ポーション・・いる?」


 ホールの奥の方から老齢の男性が騒ぎを聞きつけてやって来た。

「玄関先で騒がしいですね。何事ですか」

「おっ、ジョージじゃねえか。随分とジジイになったな」

 目を細め座り込んだままのルカを睨みつけた白髪の老人が呟いた。

「・・はて、どちら様でございますか?」

「そうかぁ、とうとうボケたか。ジジイだからしょうがねえな」

 ルカが胡座をかき腕を組んでぶつぶつ呟いていると、顳顬をピクピクさせた老人が低い声で唸った。

「相変わらずでございますね。ルカ様」

「おー、わかるか? 12年ぶりだな」

「なんと見窄らしいお姿になられたのでしょう」

 立ち上がったルカが苦笑いを浮かべた。

「頭は真っ白になったが毒舌は変わらねえ・・昔より拍車がかかってそうだな」

 ルカは嬉しそうに笑った。

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