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アルスター侯爵家
101.ルカのお願い
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ルカ・アルスターは侯爵家令息。家族は父ダイアンと妹のエレノア。
(助けてって言われてもなぁ、家を出てから十二年も経つしエレノアには会ったこともねえ)
アルスター侯爵家はダーハル王国の独立戦争で功を挙げ陞爵、それ以降コルネリア西部に広大な領地を有している。
領地の北側にあるボスデリア山から流れ出る豊かな水源と穏やかな気候に恵まれ、小麦・豆・根菜などの畑が広がる長閑な田園風景が広がっている。
南側のケーラス湾には大型船舶も停泊できる港を有しており、侯爵家の主要な財源であると共にダーハル王国の輸出入の要となっている。
「そういやあ、新しいクレイモア持ってきたぜ。突然いなくなるから渡せやしねえ」
「ん? 頼んでねえけど」
何気に読んだ手紙のせいで物思いに耽っていたルカはガンツの言葉で我に返った。
「ミリアからお前にお礼したいって頼まれたんだよ」
「て事はアレか?」
「おう、勿論アレだぜ」
満面の笑みでサムズアップしたガンツと渋い顔のルカ。
「バレたら奴が出てくる。バリバリって、今度こそ黒焦げにされる」
ルカがウォーカーの電撃を思い出し震え上がった。
「ミリアはあの朝なんで突然エリッソンに行くって言い出したんだい?」
「蜘蛛が出たの」
「・・ほう?」
セオドラの話に聞き耳を立てていたルカが片方の眉を上げてミリアを凝視した。
「部屋に二匹も出たの。だから・・」
「つまり、あれか。ちびすけはたかだか二匹の蜘蛛のせいで悪魔を退治しに行く気になったと」
「そうよ、だって蜘蛛だよ」
ルカがなんで不思議がっているのかわからない・・と首を傾げたミリアだった。
「ぷっ」
「ぶはっ」
「「「うわっはっはっ」」」
全員の大爆笑が聞こえる中、顔を引き攣らせるルカと呆然として目を見開くウォーカーを見ながらミリアも流石に不味いと気が付いた。
「・・ウォーカー、お前の育て方ぜってえおかしすぎるぜ」
「俺も最近そんな気がしてる」
初めて二人の意見が一致した。
「なあ、そっちの様子はどうなってる?」
「ワイバーンの情報は少しずつ集まってきてる。今度巣を攻略しようと思って準備してたとこなんだけど、ディエチミーラの事を気にするなんてどう言う風の吹き回し?」
「あー、ちょい野暮用ができたんで暫くジェルソミーノを離れようかと」
「ミリアはなんて言ってる?」
「まだ話してねえ。ちびすけに言ったらヴァン達がいるから2人だけで大丈夫って言うだろ?」
「だな、うーん。カノンを連れてくのは不味いしミリアを放置するのは不安だな」
意見の一致したルカとウォーカーがのんびりうたた寝しているヴァンの元に連れ立ってやってきた。
「なあ、暫くちびすけとカノンの事頼めねえかな?」
『・・』
ヴァンの前にしゃがみ込んだルカが声をかけたがヴァンは目を閉じたままユラユラと尻尾を揺らしている。
「なっ? 今回だけで良いから、頼むよ」
『・・』
「この後ディエチミーラはワイバーンの巣を攻略するからカノンを連れて行くのはやめておきたいんだ。こいつが帰ってくるまでヴァンに頼めたら助かるんだ」
ウォーカーもルカの後押しをしたがヴァンは相変わらず目を閉じたまま寝そべっていた。
『我に甘えず、連れて行けば良い』
「はあ、何があるかわかんねえんだ。向こうに着いたら多分間違いなくちびすけ達は嫌な思いをする。わかってんだろ?」
『・・連れて行け』
「すごく嫌な予感が・・連れて行った方がいいって事?」
『我は何も知らぬ』
ヴァンの説得を諦めた二人は立ち上がりミリアの方に向けて歩きはじめた。
「お前、どこに行くつもりなんだ?」
「あ? ちょい家に帰ってこようと思ってな」
「アルスター侯爵家か?」
いつも仲の悪い2人が並んでいるのを見たミリアは目を丸くして見上げた。
「あのなあ、あーどうすっかなあ。ちびすけ達は暫くハーミットのギルドで留守番してくんねえか?」
「何かあったんですか?」
「ん? ちょい野暮用で出かけてえんだ。んでなんかあっても困るしソフィアと一緒にいてくれりゃ助かるなあと」
「こいつは暫くアルスター侯爵家に帰るんだって」
「一度も会ったことねえ妹なんだが、なんか困ってるらしくてよお。ちょっと様子を見てこようと思うんだ」
「心配いりません。カノンと2人でのんびり薬草「だーかーらー、それが信用できねえの。ちびすけは呼び込み体質だからな。絶対なんかしでかす! 間違いねえ」」
ルカとウォーカーが仲良くうんうんと頷いている。
(そんなとこだけ結託しなくても良いのに)
ちょっとムッとしたミリアは立ち上がり両手を腰に当ててルカを見上げた。
「呼び込み体質は私じゃなくてルカさんだと思う。ハーミットに来るまでは普通の薬師だったもの!」
「普通? ウォーカー、ちびすけが普通だった事あるのか?」
「いやあ、そこで俺に振るのはちょっと酷すぎないかなあ」
ウォーカーが目を泳がせるとルカがドヤ顔でミリアを指差した。
「ほら、やっぱりちびすけだろ? 大切なにいちゃんもそう言ってるぞー」
「なんだ、ルカが実家に帰るんだったらミリアを連れてけばいいじゃないか。人間は顔合わせってのをするもんなんだろ?」
「ヘル・・頼むから訳のわからん事を言わんでくれ」
それでなくても実家に帰るのが億劫なルカは横から茶々を入れて来たヘルを睨んだ。
「僕からもお願いして良いかな。あんな事があったばかりだし、これからワイバーンの巣を攻略に行くから安心したいんだ」
「分かったわ。心配のしすぎだとは思うけど暫くハーミットにいる」
ルカとウォーカーがホッと安心した時念話が聞こえた。
『ケーラス湾ではグレーニアが採取できるがな』
(助けてって言われてもなぁ、家を出てから十二年も経つしエレノアには会ったこともねえ)
アルスター侯爵家はダーハル王国の独立戦争で功を挙げ陞爵、それ以降コルネリア西部に広大な領地を有している。
領地の北側にあるボスデリア山から流れ出る豊かな水源と穏やかな気候に恵まれ、小麦・豆・根菜などの畑が広がる長閑な田園風景が広がっている。
南側のケーラス湾には大型船舶も停泊できる港を有しており、侯爵家の主要な財源であると共にダーハル王国の輸出入の要となっている。
「そういやあ、新しいクレイモア持ってきたぜ。突然いなくなるから渡せやしねえ」
「ん? 頼んでねえけど」
何気に読んだ手紙のせいで物思いに耽っていたルカはガンツの言葉で我に返った。
「ミリアからお前にお礼したいって頼まれたんだよ」
「て事はアレか?」
「おう、勿論アレだぜ」
満面の笑みでサムズアップしたガンツと渋い顔のルカ。
「バレたら奴が出てくる。バリバリって、今度こそ黒焦げにされる」
ルカがウォーカーの電撃を思い出し震え上がった。
「ミリアはあの朝なんで突然エリッソンに行くって言い出したんだい?」
「蜘蛛が出たの」
「・・ほう?」
セオドラの話に聞き耳を立てていたルカが片方の眉を上げてミリアを凝視した。
「部屋に二匹も出たの。だから・・」
「つまり、あれか。ちびすけはたかだか二匹の蜘蛛のせいで悪魔を退治しに行く気になったと」
「そうよ、だって蜘蛛だよ」
ルカがなんで不思議がっているのかわからない・・と首を傾げたミリアだった。
「ぷっ」
「ぶはっ」
「「「うわっはっはっ」」」
全員の大爆笑が聞こえる中、顔を引き攣らせるルカと呆然として目を見開くウォーカーを見ながらミリアも流石に不味いと気が付いた。
「・・ウォーカー、お前の育て方ぜってえおかしすぎるぜ」
「俺も最近そんな気がしてる」
初めて二人の意見が一致した。
「なあ、そっちの様子はどうなってる?」
「ワイバーンの情報は少しずつ集まってきてる。今度巣を攻略しようと思って準備してたとこなんだけど、ディエチミーラの事を気にするなんてどう言う風の吹き回し?」
「あー、ちょい野暮用ができたんで暫くジェルソミーノを離れようかと」
「ミリアはなんて言ってる?」
「まだ話してねえ。ちびすけに言ったらヴァン達がいるから2人だけで大丈夫って言うだろ?」
「だな、うーん。カノンを連れてくのは不味いしミリアを放置するのは不安だな」
意見の一致したルカとウォーカーがのんびりうたた寝しているヴァンの元に連れ立ってやってきた。
「なあ、暫くちびすけとカノンの事頼めねえかな?」
『・・』
ヴァンの前にしゃがみ込んだルカが声をかけたがヴァンは目を閉じたままユラユラと尻尾を揺らしている。
「なっ? 今回だけで良いから、頼むよ」
『・・』
「この後ディエチミーラはワイバーンの巣を攻略するからカノンを連れて行くのはやめておきたいんだ。こいつが帰ってくるまでヴァンに頼めたら助かるんだ」
ウォーカーもルカの後押しをしたがヴァンは相変わらず目を閉じたまま寝そべっていた。
『我に甘えず、連れて行けば良い』
「はあ、何があるかわかんねえんだ。向こうに着いたら多分間違いなくちびすけ達は嫌な思いをする。わかってんだろ?」
『・・連れて行け』
「すごく嫌な予感が・・連れて行った方がいいって事?」
『我は何も知らぬ』
ヴァンの説得を諦めた二人は立ち上がりミリアの方に向けて歩きはじめた。
「お前、どこに行くつもりなんだ?」
「あ? ちょい家に帰ってこようと思ってな」
「アルスター侯爵家か?」
いつも仲の悪い2人が並んでいるのを見たミリアは目を丸くして見上げた。
「あのなあ、あーどうすっかなあ。ちびすけ達は暫くハーミットのギルドで留守番してくんねえか?」
「何かあったんですか?」
「ん? ちょい野暮用で出かけてえんだ。んでなんかあっても困るしソフィアと一緒にいてくれりゃ助かるなあと」
「こいつは暫くアルスター侯爵家に帰るんだって」
「一度も会ったことねえ妹なんだが、なんか困ってるらしくてよお。ちょっと様子を見てこようと思うんだ」
「心配いりません。カノンと2人でのんびり薬草「だーかーらー、それが信用できねえの。ちびすけは呼び込み体質だからな。絶対なんかしでかす! 間違いねえ」」
ルカとウォーカーが仲良くうんうんと頷いている。
(そんなとこだけ結託しなくても良いのに)
ちょっとムッとしたミリアは立ち上がり両手を腰に当ててルカを見上げた。
「呼び込み体質は私じゃなくてルカさんだと思う。ハーミットに来るまでは普通の薬師だったもの!」
「普通? ウォーカー、ちびすけが普通だった事あるのか?」
「いやあ、そこで俺に振るのはちょっと酷すぎないかなあ」
ウォーカーが目を泳がせるとルカがドヤ顔でミリアを指差した。
「ほら、やっぱりちびすけだろ? 大切なにいちゃんもそう言ってるぞー」
「なんだ、ルカが実家に帰るんだったらミリアを連れてけばいいじゃないか。人間は顔合わせってのをするもんなんだろ?」
「ヘル・・頼むから訳のわからん事を言わんでくれ」
それでなくても実家に帰るのが億劫なルカは横から茶々を入れて来たヘルを睨んだ。
「僕からもお願いして良いかな。あんな事があったばかりだし、これからワイバーンの巣を攻略に行くから安心したいんだ」
「分かったわ。心配のしすぎだとは思うけど暫くハーミットにいる」
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