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アルスター侯爵家
127.エレノアの願い通り?
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焼け跡に座り込んでいた筈の侯爵がこっそりと逃げ出し屋敷の陰に回り込む姿をカリストーが見つけ半立ちになりながら指差した。
「奴が逃げるぞ!」
ルカ達が走り出した横を龍に乗ったカシエルが飛んで行き屋敷の角を曲がった侯爵を追いかけた。その直後、龍の吐く炎に押されるようにして後退りする侯爵の姿が現れた。
ジリジリと下がる侯爵が尻餅をつき口をはくはくさせている。龍に乗ったカシエルが剣を突きつけると『ぎゃあ』と悲鳴が上がり侯爵が頭を抱え込んだ。
「ちびすけ!」
ルカの声にミリアが走りながらワンドを構え【バインド】
駆けつけたルカが侯爵の胸ぐらを掴んで引きずり起こし頬を思い切り殴りつけると数回バウンドしながら吹っ飛んだ侯爵が泣きながらルカに懇願した。
「助けてくれ。お願いだ見逃してくれ!」
侯爵を地下牢に放り込んだ後ルカはミリアの通信具を借りてギルド本部に連絡を入れた。
『何で本部に繋げられるんだ? お前、家に帰ったんじゃなかったのか? そこにはギルドはなかった筈だよな』
「ミリアの通信具を借りた。通信具に不満があるならウォーカーに文句を言ってくれ。トレントの森を出る前になんかやってたそうだからそん時だと思うぜ」
『はあ、んで何の用だ?』
ルカの説明に今回もセオドラが通信具を取り落とした音がした。
『こっ、今度はベルフェゴールだと?』
「おう、もう奴は帰ったがな。ニュンペーと神は残ってるからお前が来るまでガンガン働かせる」
『お前・・昔からとんでもねえ奴だったが怖いもの知らずと言うか・・バカなのか? しょぼい奴だったとしても神をこき使って後で何があるかわからんぞ?』
「しょぼい? ヘルメースだから結構有名な奴だぜ」
ゲラゲラと笑うルカの声を聞いて通信具の向こうでセオドラが溜息をついた。
『・・直ぐに一番近くのギルドまで転移する』
サンダルフォンとカシエルは天界に帰り、宿屋の荷物の撤収に向かうマイアとカリストーの後ろ姿を見ながらルカが全員に指示を出した。
「エレノアは被害状況の確認。カノンはエレノアの手伝いを頼む。ジョージは業者の手配だな。出来るだけこの村の奴を使いたいが多分足りねえだろう。
こっちの力仕事はヘルメース・・しっかり頑張れよ」
「ったく、しょうがねえ。とは言うものの神を力仕事にこき使う人間なんぞ初めて見た」
ヘルメースは髪をかき上げながら壊れた屋敷を見遣りはぁっと溜息をついた。
「この有様じゃ修繕するよりまるっと壊して新しく建てた方が早いと思うが?」
「今後どうするのか決めるのはエレノアだ。俺らには決定権はねえよ。それが決まるまで屋敷が崩れ落ちないようにしないとな」
ベルフェゴールの攻撃は屋敷の中央を貫いており応接室と玄関ホール、食堂や厨房の一部と2階の客室や階段が吹き飛んでいる。
「なあ、こんだけの威力で屋敷が壊れてるのに何で玄関の先の門柱や塀は壊れてないんだ?」
「ベルフェゴールが屋敷の裏に来た時大急ぎで結界の護符を貼ってもらったんです」
「ベルフェゴールの攻撃を防ぐ護符? 何だそりゃ。んなもんがあんなら屋敷だって守れただろうに」
計画の途中でベルフェゴールの攻撃が領内に被害を出さないようにとミリアはロビンに貰った結界の護符を全てテーブルの上に積み上げた。
「ベルフェゴールの攻撃をどの位防げるかわからないけどこれをお屋敷と馬場の間に貼りつめましょう」
これに異を唱え屋敷と領地の間にある鉄柵に貼れば良いとエレノアが言い出した。
「屋敷に当たれば少しだけでも威力が抑えられるでしょう? それにお父様の目の前で屋敷が壊れたら少しは目が覚めるかもしれません。代々受け継がれてきた領主館はお父様にとってかけがえのないものだと思いますの。だからきっと物凄くショックを受けられるでしょ?」
周りにいる者達がドン引きしているのに気付かないエレノアが心から楽しそうにふふっと笑った。
「・・この屋敷はお前が受け継ぐものなんだぞ。ベルフェゴールの攻撃を食らったら多分修復できない位の損害が出る」
「はい、お兄様がここを残したいと思われるなら別ですがわたくしは出来ればお父様の目の前で盛大に壊して頂けたら嬉しいですわ」
背筋を正したまま穏やかな笑みを浮かべたエレノアがとんでもないことを言い募った。
「エレノア・・お前可愛い顔して結構えげつない事考えるな」
「ミリアやっちゃおうよ。お得意の派手なドッカーンだよー」
「ディー、私別に破壊魔じゃないから。でも、エレノアさんが希望するならベルフェゴールの攻撃を一回後ろに逸らすくらいは簡単かも・・」
「ちびすけ・・お前はいつも何でそんなに余裕こいてんだ。マモンの時といい今回といい不安とか恐怖とかそう言う普通の感覚はねえのかよ」
「えっ? 退治するなら兎も角追い払うだけでしょう? ならルカさんがいるのに負けるわけないと思う」
「お坊っちゃま・・良い方と巡り合われたようで」
口をパクパクさせながら真っ赤になったルカが真顔で揶揄ってきたジョージを睨みつけた。
「煩え、冒険者のパーティーの信頼関係ってやつだ。この次揶揄ったらボコボコにすんぞ!」
エレノアの希望通り(?)屋敷の真ん中には大きな風穴があいた。
「奴が逃げるぞ!」
ルカ達が走り出した横を龍に乗ったカシエルが飛んで行き屋敷の角を曲がった侯爵を追いかけた。その直後、龍の吐く炎に押されるようにして後退りする侯爵の姿が現れた。
ジリジリと下がる侯爵が尻餅をつき口をはくはくさせている。龍に乗ったカシエルが剣を突きつけると『ぎゃあ』と悲鳴が上がり侯爵が頭を抱え込んだ。
「ちびすけ!」
ルカの声にミリアが走りながらワンドを構え【バインド】
駆けつけたルカが侯爵の胸ぐらを掴んで引きずり起こし頬を思い切り殴りつけると数回バウンドしながら吹っ飛んだ侯爵が泣きながらルカに懇願した。
「助けてくれ。お願いだ見逃してくれ!」
侯爵を地下牢に放り込んだ後ルカはミリアの通信具を借りてギルド本部に連絡を入れた。
『何で本部に繋げられるんだ? お前、家に帰ったんじゃなかったのか? そこにはギルドはなかった筈だよな』
「ミリアの通信具を借りた。通信具に不満があるならウォーカーに文句を言ってくれ。トレントの森を出る前になんかやってたそうだからそん時だと思うぜ」
『はあ、んで何の用だ?』
ルカの説明に今回もセオドラが通信具を取り落とした音がした。
『こっ、今度はベルフェゴールだと?』
「おう、もう奴は帰ったがな。ニュンペーと神は残ってるからお前が来るまでガンガン働かせる」
『お前・・昔からとんでもねえ奴だったが怖いもの知らずと言うか・・バカなのか? しょぼい奴だったとしても神をこき使って後で何があるかわからんぞ?』
「しょぼい? ヘルメースだから結構有名な奴だぜ」
ゲラゲラと笑うルカの声を聞いて通信具の向こうでセオドラが溜息をついた。
『・・直ぐに一番近くのギルドまで転移する』
サンダルフォンとカシエルは天界に帰り、宿屋の荷物の撤収に向かうマイアとカリストーの後ろ姿を見ながらルカが全員に指示を出した。
「エレノアは被害状況の確認。カノンはエレノアの手伝いを頼む。ジョージは業者の手配だな。出来るだけこの村の奴を使いたいが多分足りねえだろう。
こっちの力仕事はヘルメース・・しっかり頑張れよ」
「ったく、しょうがねえ。とは言うものの神を力仕事にこき使う人間なんぞ初めて見た」
ヘルメースは髪をかき上げながら壊れた屋敷を見遣りはぁっと溜息をついた。
「この有様じゃ修繕するよりまるっと壊して新しく建てた方が早いと思うが?」
「今後どうするのか決めるのはエレノアだ。俺らには決定権はねえよ。それが決まるまで屋敷が崩れ落ちないようにしないとな」
ベルフェゴールの攻撃は屋敷の中央を貫いており応接室と玄関ホール、食堂や厨房の一部と2階の客室や階段が吹き飛んでいる。
「なあ、こんだけの威力で屋敷が壊れてるのに何で玄関の先の門柱や塀は壊れてないんだ?」
「ベルフェゴールが屋敷の裏に来た時大急ぎで結界の護符を貼ってもらったんです」
「ベルフェゴールの攻撃を防ぐ護符? 何だそりゃ。んなもんがあんなら屋敷だって守れただろうに」
計画の途中でベルフェゴールの攻撃が領内に被害を出さないようにとミリアはロビンに貰った結界の護符を全てテーブルの上に積み上げた。
「ベルフェゴールの攻撃をどの位防げるかわからないけどこれをお屋敷と馬場の間に貼りつめましょう」
これに異を唱え屋敷と領地の間にある鉄柵に貼れば良いとエレノアが言い出した。
「屋敷に当たれば少しだけでも威力が抑えられるでしょう? それにお父様の目の前で屋敷が壊れたら少しは目が覚めるかもしれません。代々受け継がれてきた領主館はお父様にとってかけがえのないものだと思いますの。だからきっと物凄くショックを受けられるでしょ?」
周りにいる者達がドン引きしているのに気付かないエレノアが心から楽しそうにふふっと笑った。
「・・この屋敷はお前が受け継ぐものなんだぞ。ベルフェゴールの攻撃を食らったら多分修復できない位の損害が出る」
「はい、お兄様がここを残したいと思われるなら別ですがわたくしは出来ればお父様の目の前で盛大に壊して頂けたら嬉しいですわ」
背筋を正したまま穏やかな笑みを浮かべたエレノアがとんでもないことを言い募った。
「エレノア・・お前可愛い顔して結構えげつない事考えるな」
「ミリアやっちゃおうよ。お得意の派手なドッカーンだよー」
「ディー、私別に破壊魔じゃないから。でも、エレノアさんが希望するならベルフェゴールの攻撃を一回後ろに逸らすくらいは簡単かも・・」
「ちびすけ・・お前はいつも何でそんなに余裕こいてんだ。マモンの時といい今回といい不安とか恐怖とかそう言う普通の感覚はねえのかよ」
「えっ? 退治するなら兎も角追い払うだけでしょう? ならルカさんがいるのに負けるわけないと思う」
「お坊っちゃま・・良い方と巡り合われたようで」
口をパクパクさせながら真っ赤になったルカが真顔で揶揄ってきたジョージを睨みつけた。
「煩え、冒険者のパーティーの信頼関係ってやつだ。この次揶揄ったらボコボコにすんぞ!」
エレノアの希望通り(?)屋敷の真ん中には大きな風穴があいた。
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