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アルスター侯爵家
128.復興に向けて
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退避していた使用人達が戻って来て全員で瓦礫や壊れた家具を運び出し、メイド達は料理人と共に炊き出しをはじめた。ミリアは土魔法で外壁の一時的な補強と2階への階段を作り出した後、エレノアやカノンの護衛として一緒に2階に上がって行った。
「護衛ならルカさんの方が適任なんですけどね・・」
『ヘルメースを働かせるには奴がいた方が良かろう。もしもの時は我が転移させる』
「そうね、ヴァンがいてくれたら大丈夫だわ」
ミリアは崩れかけている壁の修復に取り掛かった。
「魔法というのは本当に色々な事が出来るのですね。ミリアさんの戦いを見て吃驚したのですがそれ以外にも階段や壁を作り出したり物を収納したり」
「あのね、ミリアはおかしいの。普通はこんなにいろんな種類の魔法は使えないんだよー」
「そうなのですか? 魔法使いの方は皆さんミリアさんのように出来るのではないのですか?」
「普通は1種類か2種類の魔法しか使えないんだよー」
空に星が輝き焚き火の炎が煌々と辺りを照らしている。炊き出しで夕食を済ませたメンバーは芝の上でのんびりとお茶や酒を楽しんでいた。
「ねえ、グレーニアと温泉、どっち先にするー?」
「一番の功労者は今回もちびすけだからな、ちびすけが決めりゃ良いんじゃねえか?」
「うーん、ちょっと疲れたし温泉行く?」
「やったね」
ディーが枝を振り回しながら振り向くとみんな嬉しそうに頷いていた。
「んで、何でお前らまで喜んでんの? 連れてかないよ?」
芝に片肘をついて寝そべっていたルカが言うとヘルメースが持っていたフォークを振りながらケラケラと笑った。
「あ? 一緒の温泉は恥ずかしいってか? お前のポークビッツにゃ興味ねえしチビと一緒に入るとするか」
ガバッと起き上がったルカが目の前にあったカップをヘルメースに投げつけた。
「てめえは男だろうが! どうやって女湯に入るんだよ!」
「ふふん、神に不可能はない! 俺様のデカい持ち物に恐れをなしたお前の・・」
ヘルメースの言葉を遮ってルカが剣を構えた。
「俺のはポークビッツじゃねえ! てか、連れてかねえつってんだろ」
「ヴァン、ポークビッツって何?」
ミリアの問いかけにヴァンがそっぽを向いた。
「ミリア、それはルカのちっちゃなおち「ディー、煩え黙りやがれ! 小さくねえし」」
ヘルメースと睨み合っていたルカが慌てて叫んだ。
顳顬をピクピクさせているルカやニヤニヤ笑いのヘルメースとディーを無視してジョージが冷静に話しはじめた。
「11歳の坊っちゃましか存じませんがポークビッツよりは大きいと思われます。それよりも、ギルド本部の方がケーラスのギルドまで転移を使ったとしてもそこから馬車だと早くて4、5日。温泉行きましてもとんぼ返りになるのではないでしょうか」
「取り敢えずアイツらが到着するまではここに足止めだな。領民の様子も気にかかるしな」
「そうですね。今日の様子ではかなり揉めるのではないかと」
マイアとカリストーが宿を引き払った際数人の領民に囲まれ行き先を尋ねられた。焦ってヘルメースの事を問いただす女達と執拗にカリストーやベルフェゴールの行き先を聞く男達は明日にでも領主館にやってくる可能性が高い。
「どうすっかなあ。ここに来て屋敷の大穴を見たら奴ら大騒ぎしそうだし」
「これってアタシの出番?」
「お願いできるかな? 今日はもう遅いから明日の朝とかでも良いと思うんだけど」
「今晩のうちにパパってやっちゃうよ。行ってくるねー」
キョトンとしていたエレノアがフワフワと屋敷の方に飛んでいくディーを見つめて首を傾げた。
「ディーは木の妖精ドリアードなので屋敷が見えなくなるように鉄柵のとこに木の柵を作ってもらいます。私もちょっと行ってきますね」
ミリアが立ち上がるとエレノアが私も見たいと言ってついてきた。門扉の近くまで来た時には既にかなりの高さの木の柵を作りはじめていた。両手を前に突き出したディーの両手が光る度に地面から太い丸太が伸びていく光景にエレノアが溜息を漏らした。
「ここ数日で今までの価値観が覆された気がします。わたくしはとても小さな世界で生きていたんですね」
エレノアはルカが侯爵家を飛び出した1年後に侯爵家に引き取られた。エレノアの母親は隣国の領主館でメイドをしていたが、馬の売買にやってきた侯爵に見染められ拉致同然にこの地に連れてこられたと言う。
領地の外れに建てられた小さな家で生まれ母と2人暮らしをしていたエレノアは家から出る事を禁じられ糸を紡ぎ機を織り生計を立てていた。
「母が亡くなるまでわたくしが侯爵家の庶子だとは知りませんでした。ただ、毎週食料品や衣類などが届けられていたのと母から教わる礼儀作法などからある程度の予想はしていました。時折母を迎えに来る馬車もとても立派な物でしたし・・」
母親がなくなる直前エレノアは自分が侯爵家の庶子でルカと言う名前の兄がいると知ったが、今まで家から出たことのないエレノアは1人になってからも家を出る勇気がなかった。
「ある日ジョージがわたくしを迎えにやって来たのですが、それまで一度もお顔さえ見たことさえなかった方と一緒に暮らす気になれなくて離れを選びましたの」
着々と柵が作られていく光景を見つめながらエレノアは言葉を詰まらせた。
「侯爵家の過去の出来事を知って決心がつきました。ミリアさん、相談に乗っていただけますか?」
「護衛ならルカさんの方が適任なんですけどね・・」
『ヘルメースを働かせるには奴がいた方が良かろう。もしもの時は我が転移させる』
「そうね、ヴァンがいてくれたら大丈夫だわ」
ミリアは崩れかけている壁の修復に取り掛かった。
「魔法というのは本当に色々な事が出来るのですね。ミリアさんの戦いを見て吃驚したのですがそれ以外にも階段や壁を作り出したり物を収納したり」
「あのね、ミリアはおかしいの。普通はこんなにいろんな種類の魔法は使えないんだよー」
「そうなのですか? 魔法使いの方は皆さんミリアさんのように出来るのではないのですか?」
「普通は1種類か2種類の魔法しか使えないんだよー」
空に星が輝き焚き火の炎が煌々と辺りを照らしている。炊き出しで夕食を済ませたメンバーは芝の上でのんびりとお茶や酒を楽しんでいた。
「ねえ、グレーニアと温泉、どっち先にするー?」
「一番の功労者は今回もちびすけだからな、ちびすけが決めりゃ良いんじゃねえか?」
「うーん、ちょっと疲れたし温泉行く?」
「やったね」
ディーが枝を振り回しながら振り向くとみんな嬉しそうに頷いていた。
「んで、何でお前らまで喜んでんの? 連れてかないよ?」
芝に片肘をついて寝そべっていたルカが言うとヘルメースが持っていたフォークを振りながらケラケラと笑った。
「あ? 一緒の温泉は恥ずかしいってか? お前のポークビッツにゃ興味ねえしチビと一緒に入るとするか」
ガバッと起き上がったルカが目の前にあったカップをヘルメースに投げつけた。
「てめえは男だろうが! どうやって女湯に入るんだよ!」
「ふふん、神に不可能はない! 俺様のデカい持ち物に恐れをなしたお前の・・」
ヘルメースの言葉を遮ってルカが剣を構えた。
「俺のはポークビッツじゃねえ! てか、連れてかねえつってんだろ」
「ヴァン、ポークビッツって何?」
ミリアの問いかけにヴァンがそっぽを向いた。
「ミリア、それはルカのちっちゃなおち「ディー、煩え黙りやがれ! 小さくねえし」」
ヘルメースと睨み合っていたルカが慌てて叫んだ。
顳顬をピクピクさせているルカやニヤニヤ笑いのヘルメースとディーを無視してジョージが冷静に話しはじめた。
「11歳の坊っちゃましか存じませんがポークビッツよりは大きいと思われます。それよりも、ギルド本部の方がケーラスのギルドまで転移を使ったとしてもそこから馬車だと早くて4、5日。温泉行きましてもとんぼ返りになるのではないでしょうか」
「取り敢えずアイツらが到着するまではここに足止めだな。領民の様子も気にかかるしな」
「そうですね。今日の様子ではかなり揉めるのではないかと」
マイアとカリストーが宿を引き払った際数人の領民に囲まれ行き先を尋ねられた。焦ってヘルメースの事を問いただす女達と執拗にカリストーやベルフェゴールの行き先を聞く男達は明日にでも領主館にやってくる可能性が高い。
「どうすっかなあ。ここに来て屋敷の大穴を見たら奴ら大騒ぎしそうだし」
「これってアタシの出番?」
「お願いできるかな? 今日はもう遅いから明日の朝とかでも良いと思うんだけど」
「今晩のうちにパパってやっちゃうよ。行ってくるねー」
キョトンとしていたエレノアがフワフワと屋敷の方に飛んでいくディーを見つめて首を傾げた。
「ディーは木の妖精ドリアードなので屋敷が見えなくなるように鉄柵のとこに木の柵を作ってもらいます。私もちょっと行ってきますね」
ミリアが立ち上がるとエレノアが私も見たいと言ってついてきた。門扉の近くまで来た時には既にかなりの高さの木の柵を作りはじめていた。両手を前に突き出したディーの両手が光る度に地面から太い丸太が伸びていく光景にエレノアが溜息を漏らした。
「ここ数日で今までの価値観が覆された気がします。わたくしはとても小さな世界で生きていたんですね」
エレノアはルカが侯爵家を飛び出した1年後に侯爵家に引き取られた。エレノアの母親は隣国の領主館でメイドをしていたが、馬の売買にやってきた侯爵に見染められ拉致同然にこの地に連れてこられたと言う。
領地の外れに建てられた小さな家で生まれ母と2人暮らしをしていたエレノアは家から出る事を禁じられ糸を紡ぎ機を織り生計を立てていた。
「母が亡くなるまでわたくしが侯爵家の庶子だとは知りませんでした。ただ、毎週食料品や衣類などが届けられていたのと母から教わる礼儀作法などからある程度の予想はしていました。時折母を迎えに来る馬車もとても立派な物でしたし・・」
母親がなくなる直前エレノアは自分が侯爵家の庶子でルカと言う名前の兄がいると知ったが、今まで家から出たことのないエレノアは1人になってからも家を出る勇気がなかった。
「ある日ジョージがわたくしを迎えにやって来たのですが、それまで一度もお顔さえ見たことさえなかった方と一緒に暮らす気になれなくて離れを選びましたの」
着々と柵が作られていく光景を見つめながらエレノアは言葉を詰まらせた。
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