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12.沈着冷静なステラは
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ジェイクとジェラールの話し合いは数日間朝から深夜まで行われた。
仕事の話が殆どの時間を占めているので、エリンはずっと蚊帳の外に置かれている。
(婚約破棄の後は白い結婚なんて、可哀想すぎだわ)
エリンは今でも態々結婚する必要はないと思っていたが、ステラの意見は違っていた。
「リーガン公爵様にはマクガバン師長が手を出せないと言うのであれば、お嬢様の安全が守られると言う事ですね。
旦那様のお仕事の問題も片付いて一石二鳥ではございませんか」
「リーガン公爵家に乗り込んだって言った時はすごく怒ってたくせに」
「当然です。レディが供もつけず紳士の屋敷を訪れるなんて非常識すぎますから」
「だって、言えば反対したでしょう?」
「勿論です。運が悪ければお嬢様の事が公になって、逃げ回らなくてはならなくなっていたかも。
それとも不名誉な噂が立てられて、貴族社会にいられなくなっていたかもしれないのですよ」
「今だって十分はみ出てるわ。昔からお友達の一人もいないし、学園でも一人ぼっちだもの」
「それはバイオレット様のせいです。あの方はとてもお上手にお嬢様の悪い噂を広めておられましたから」
「気がついてたの?」
「はい、当然です」
「まあ、お陰でお父様が仰っていた通り“目立たずひっそり” やってこれたのかもしれないけど。
誰も寄ってこなかったから」
「これからは堂々となさいませ。リーガン公爵様の後ろ盾があれば、王宮錬金術師達も簡単には手を出せないでしょうから」
「それはそれでムカつくのよね。ジェイク様の思う壺? あのニヤついた笑い顔を見たらステラだって腹が立つと思うわよ」
「お嬢様をからかっておられるのでしょう。とても良い方だと思います」
「ステラ、まさか物に釣られたんじゃないわよね」
エリンの部屋にはジェイクからの贈り物が所狭しと置かれている。
クローゼットに入りきらないドレスや帽子、大量のアクセサリーと小物類。毎日届く大量の花はエリンの部屋から溢れ出し、屋敷のあちこちに飾られている。
「お花屋さんを開こうかしら。
町の花屋は品切れかもしれないから、高く売れそうだわ」
ジェイクが教会から許可証を手に入れ、婚約と同時に結婚式が行われた。
結婚式はジェラールとステラ、両家の執事が立会人として参加しただけのとても質素なものだった。
その日からエリンは、ジェイクのタウンハウスにステラと共に移り住んだが、学園の教員達には箝口令が敷かれ、生徒達は変化に気づく事なく日々を過ごしていた。
エリンは学業の傍ら、ローダナムの作成に没頭していた。
ジェイクは錬金術に使用する道具や材料を惜しみなく集め、エリンの研究の後押しをしてくれている。
寝泊まりする部屋は別々で、食事の時もジェイクとは顔を合わせない。必要な物がある時は執事に声をかけておくと数日の内に届いている。
そんなある日、メイドが料理を乗せた盆を離れに運んでいるのを見かけた。
(誰かいるのかしら?)
仕事の話が殆どの時間を占めているので、エリンはずっと蚊帳の外に置かれている。
(婚約破棄の後は白い結婚なんて、可哀想すぎだわ)
エリンは今でも態々結婚する必要はないと思っていたが、ステラの意見は違っていた。
「リーガン公爵様にはマクガバン師長が手を出せないと言うのであれば、お嬢様の安全が守られると言う事ですね。
旦那様のお仕事の問題も片付いて一石二鳥ではございませんか」
「リーガン公爵家に乗り込んだって言った時はすごく怒ってたくせに」
「当然です。レディが供もつけず紳士の屋敷を訪れるなんて非常識すぎますから」
「だって、言えば反対したでしょう?」
「勿論です。運が悪ければお嬢様の事が公になって、逃げ回らなくてはならなくなっていたかも。
それとも不名誉な噂が立てられて、貴族社会にいられなくなっていたかもしれないのですよ」
「今だって十分はみ出てるわ。昔からお友達の一人もいないし、学園でも一人ぼっちだもの」
「それはバイオレット様のせいです。あの方はとてもお上手にお嬢様の悪い噂を広めておられましたから」
「気がついてたの?」
「はい、当然です」
「まあ、お陰でお父様が仰っていた通り“目立たずひっそり” やってこれたのかもしれないけど。
誰も寄ってこなかったから」
「これからは堂々となさいませ。リーガン公爵様の後ろ盾があれば、王宮錬金術師達も簡単には手を出せないでしょうから」
「それはそれでムカつくのよね。ジェイク様の思う壺? あのニヤついた笑い顔を見たらステラだって腹が立つと思うわよ」
「お嬢様をからかっておられるのでしょう。とても良い方だと思います」
「ステラ、まさか物に釣られたんじゃないわよね」
エリンの部屋にはジェイクからの贈り物が所狭しと置かれている。
クローゼットに入りきらないドレスや帽子、大量のアクセサリーと小物類。毎日届く大量の花はエリンの部屋から溢れ出し、屋敷のあちこちに飾られている。
「お花屋さんを開こうかしら。
町の花屋は品切れかもしれないから、高く売れそうだわ」
ジェイクが教会から許可証を手に入れ、婚約と同時に結婚式が行われた。
結婚式はジェラールとステラ、両家の執事が立会人として参加しただけのとても質素なものだった。
その日からエリンは、ジェイクのタウンハウスにステラと共に移り住んだが、学園の教員達には箝口令が敷かれ、生徒達は変化に気づく事なく日々を過ごしていた。
エリンは学業の傍ら、ローダナムの作成に没頭していた。
ジェイクは錬金術に使用する道具や材料を惜しみなく集め、エリンの研究の後押しをしてくれている。
寝泊まりする部屋は別々で、食事の時もジェイクとは顔を合わせない。必要な物がある時は執事に声をかけておくと数日の内に届いている。
そんなある日、メイドが料理を乗せた盆を離れに運んでいるのを見かけた。
(誰かいるのかしら?)
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