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11.怒りでプルプル

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 スールベリー侯爵とエリンは絶句してジェイクを見つめた。

「なっ、突然何を言われるのか。タチの悪い冗談はやめて頂きたい」

「冗談でこのような時間まで居座ったりするほど酔狂ではありません」

「では、本気でエリンと? しかし、我が家は今・・お恥ずかしい話ですが、我が家は今それどころではなくて」


「スールベリー卿のご事情は存じておりますし、それでも構わないと思っております。
失礼を承知で申し上げますが、その件についてご助力できるのではないかと」


「・・ありがたい話ですが、お断りさせて頂きます。エリンには幸せになって欲しいのです。
何の支度もしてやれない今の状況で、筆頭公爵のリーガン家に嫁ぐのはエリンに肩身の狭い思いをさせてしまうだけです」


 エリンは話の展開についていけず、父親とジェイクを交互に見ながらパニックに陥っていた。


「エリンと結婚して、スールベリー侯爵家に共同出資させて頂きます」

「・・そこまでする意図は? 何が狙いですか?」


「エリンと私が愛し合っているとは思われませんか?」

「思いませんね。エリンは少し前婚約破棄されたばかりです。
誰かと出会うには時間が足りない。それに、学生のエリンとリーガン公爵には接点がありません」


「一目惚れしたと思って頂けたら。エリンの為に手助けしたいと思いました」


 エリンは今度こそ本当にジェイクを叩いてやりたいと心から思った。

(一目惚れ? 愛し合ってる? 巫山戯ないで)

 それでも、もしかしたらこれが父親を助ける最善の方法なのだろうかと思いもしたが、怒りで顔が真っ赤になり握りしめた手がプルプルと震えるのを止めることができなかった。

 エリンの様子を横目でチラッと見たジェイクには気付かれているようで、ジェイクはエリンの震える手を軽く叩きニヤリと笑った。


「エリン、お前の気持ちを聞かせてくれないか?」

 突然父親に話しかけられたエリンはびっくりして飛び上がった。

「わた・・私? 私はその、お父様にお任せしたいと」

「エリン、もう正直になろうじゃないか。今日君は私の前でガウンを脱いで、ペチコートの紐「煩いわね、お父様が誤解されるような言い方しないで」」

 エリンは立ち上がり、スカートの裾を握りしめてプルプルと怒りに震えた。

「私は嘘は言ってない。あの時君の胸元に並んだほくろの位置も覚えてる」


「・・分かりました。エリンを宜しくお願いします」

 スールベリー侯爵がジェイクに頭を下げた。


 詳しい話をする為午後改めて訪問することになったジェイクは、玄関でコートを受け取り帰り支度を始めた。

 怒りのおさまらないエリンは、
「何を考えておられるのか知らないけど、結婚なんて絶対にありえないわ。
そんな事しなくても話し合えば済む事じゃない」


「安心して良い、結婚すると言ってもただの白い結婚だから。
では、午後にまた伺うからそれまで少し休んだ方がいい。随分と酷い顔をしてる」


 エリンが手を振り上げようとした時には既に、ジェイクは玄関の外へと逃げ出していた。

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