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24.お祝いの席
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屋敷に着いて一番に父のいる執務室にやってきた。
父は以前と違い顔色も良く、痩せ細っていた体型もかなり昔に戻って来たようだ。
「お父様ただいま帰りました」
2人並んでソファに座った。エリンを心配していたのだろう。ジェラールはソワソワと落ち着かない様子で話をはじめた。
「お帰り、今日はどうだったかい?」
「大成功よ。罪を認めさせられたわけじゃないけど、精一杯できたと思う」
「やっぱり私も行けば良かった。お前のそばにいて支えになってやれたかもしれないのに。
お前の母様が『エリンを一人で行かせるなんて』って今頃ぷんぷん怒ってそうだ」
エリンの手を握りしめ目を潤ませたジェラールは、壁に飾られた亡き妻の肖像画を見つめている。
「駄目よ、あの場にいたらきっとお父様は我慢なんて出来なかったと思うの。
陛下の前で暴力沙汰になったら、私一人ぼっちになっちゃうもの」
「ジェイクがいるだろう?」
「ジェイクは大好きな人の元に帰ったわ。元々特別な仲じゃなかったの。
これからまたここで暮すから宜しくお願いします」
「そうか。ジェイクに別の人が・・意外だったな。彼は本気なんだと思っていたんだがな」
ジェラールはエリンを抱きしめて背中をトントンと叩いた。エリンの体が震えている。
「そうだ、お前に報告がある。イライザと漸く離婚できたんだがね、バイオレットはお前の妹じゃなかったんだよ」
「どう言う事?」
「バイオレットの本当の父親は、伯爵家のお抱え絵師だったそうだ。
父親の伯爵も分かっていて私を騙したと認めたよ。
離婚に腹を立てたイライザがうっかり口を滑らせたんだ。
女に騙されて、共同経営者にも騙されて。
情けなくて目も当てられないよ」
赤い目のエリンはハンカチを探しながら、
「もう忘れましょう、全部わかって良かったってことで。
それよりもね私はこんなだから、もう結婚は無理だと思うの。だから、早めに養子を迎えるべきだと思うの」
「そうか、お前には苦労をかけてきたからのんびりするといい。
今日は祝いだな」
エリンとジェラールは2人で食卓を囲み、お祝いをしていた。
話のメインは亡くなった母親の話。悪戯好きでよく笑う女性だったと、ジェラールは優しい顔で語ってくれた。
これからは遠慮なく母親の話が出来ると二人で喜びを分かち合った。
楽しい会話が続き食事がほぼ終わる頃、ジェイクが訪ねてきた。
「こんな遅い時間にどうされましたか?」
ジェイクがやって来たことに戸惑いを感じると同時に、屋敷に着いた途端嬉しそうに離れに走って行ったジェイクの後ろ姿を思い出した。
「迎えに来たんだ。君は家で待っていると思っていたんだが・・。
父上に報告が終わったなら一緒に帰ろう」
「私の家はここですわ。どこにもいく予定はありません」
状況が全く理解出来ていないジェイクは、冷たく突き放すエリンに戸惑っていた。
「王宮から帰ったら話し合うんじゃなかったのか?」
「その必要はないって教えて下さったのはリーガン公爵様ですわ」
「ジェイクだ」
「一番に知らせたい方とお祝いなさって下さいまし。
私はお父様とお祝いしますので。
今までありがとうございました。大切な方と幾久しくお幸せに」
「何が言いたいんだ?」
「頂いたプレゼントは全て置いて参りましたし、私の方こそリーガン公爵様が何を仰りたいのか分かりません」
「妹を優先したのが気に入らないのか?」
「いいえ。えっ? 妹?」
「彼女はずっと屋敷から出られなかったんだ。自由になったって教えに行っただけなのに、何故怒ってるんだ?」
「怒っていません。いえ、怒ってた?」
「何故うちに帰ってこないんだい?」
「私のうちは・・ここですわ。状況が理解出来てませんけど」
「さっきから気になってるんだが、幾久しくとか末長くとか・・恋人とか夫婦に対して使う言葉だろう?」
「そのつもりで申し上げておりましたけど、妹ですか?」
「・・そう、妹だぞ。離れにいるのは」
「はあ?」
父は以前と違い顔色も良く、痩せ細っていた体型もかなり昔に戻って来たようだ。
「お父様ただいま帰りました」
2人並んでソファに座った。エリンを心配していたのだろう。ジェラールはソワソワと落ち着かない様子で話をはじめた。
「お帰り、今日はどうだったかい?」
「大成功よ。罪を認めさせられたわけじゃないけど、精一杯できたと思う」
「やっぱり私も行けば良かった。お前のそばにいて支えになってやれたかもしれないのに。
お前の母様が『エリンを一人で行かせるなんて』って今頃ぷんぷん怒ってそうだ」
エリンの手を握りしめ目を潤ませたジェラールは、壁に飾られた亡き妻の肖像画を見つめている。
「駄目よ、あの場にいたらきっとお父様は我慢なんて出来なかったと思うの。
陛下の前で暴力沙汰になったら、私一人ぼっちになっちゃうもの」
「ジェイクがいるだろう?」
「ジェイクは大好きな人の元に帰ったわ。元々特別な仲じゃなかったの。
これからまたここで暮すから宜しくお願いします」
「そうか。ジェイクに別の人が・・意外だったな。彼は本気なんだと思っていたんだがな」
ジェラールはエリンを抱きしめて背中をトントンと叩いた。エリンの体が震えている。
「そうだ、お前に報告がある。イライザと漸く離婚できたんだがね、バイオレットはお前の妹じゃなかったんだよ」
「どう言う事?」
「バイオレットの本当の父親は、伯爵家のお抱え絵師だったそうだ。
父親の伯爵も分かっていて私を騙したと認めたよ。
離婚に腹を立てたイライザがうっかり口を滑らせたんだ。
女に騙されて、共同経営者にも騙されて。
情けなくて目も当てられないよ」
赤い目のエリンはハンカチを探しながら、
「もう忘れましょう、全部わかって良かったってことで。
それよりもね私はこんなだから、もう結婚は無理だと思うの。だから、早めに養子を迎えるべきだと思うの」
「そうか、お前には苦労をかけてきたからのんびりするといい。
今日は祝いだな」
エリンとジェラールは2人で食卓を囲み、お祝いをしていた。
話のメインは亡くなった母親の話。悪戯好きでよく笑う女性だったと、ジェラールは優しい顔で語ってくれた。
これからは遠慮なく母親の話が出来ると二人で喜びを分かち合った。
楽しい会話が続き食事がほぼ終わる頃、ジェイクが訪ねてきた。
「こんな遅い時間にどうされましたか?」
ジェイクがやって来たことに戸惑いを感じると同時に、屋敷に着いた途端嬉しそうに離れに走って行ったジェイクの後ろ姿を思い出した。
「迎えに来たんだ。君は家で待っていると思っていたんだが・・。
父上に報告が終わったなら一緒に帰ろう」
「私の家はここですわ。どこにもいく予定はありません」
状況が全く理解出来ていないジェイクは、冷たく突き放すエリンに戸惑っていた。
「王宮から帰ったら話し合うんじゃなかったのか?」
「その必要はないって教えて下さったのはリーガン公爵様ですわ」
「ジェイクだ」
「一番に知らせたい方とお祝いなさって下さいまし。
私はお父様とお祝いしますので。
今までありがとうございました。大切な方と幾久しくお幸せに」
「何が言いたいんだ?」
「頂いたプレゼントは全て置いて参りましたし、私の方こそリーガン公爵様が何を仰りたいのか分かりません」
「妹を優先したのが気に入らないのか?」
「いいえ。えっ? 妹?」
「彼女はずっと屋敷から出られなかったんだ。自由になったって教えに行っただけなのに、何故怒ってるんだ?」
「怒っていません。いえ、怒ってた?」
「何故うちに帰ってこないんだい?」
「私のうちは・・ここですわ。状況が理解出来てませんけど」
「さっきから気になってるんだが、幾久しくとか末長くとか・・恋人とか夫婦に対して使う言葉だろう?」
「そのつもりで申し上げておりましたけど、妹ですか?」
「・・そう、妹だぞ。離れにいるのは」
「はあ?」
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