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1.ボロボロの空き店舗
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「必要なのは、捺染職人と仕立て屋と刺繍工。まずはそんな感じかしら。
布はチンツか絹でいくつもり。上質の布を作ってる織り工と契約を結びたいんだけど、クロエに心当たりはある?」
「織り工なら任して! 腕の良い人を知ってるから。で、お店はどうするの?」
「3丁目に大きな空き店舗が出たの知ってる? あれをクロエの名前で買って欲しいの。現金一括で払うわ」
「あそこ? ボロボロじゃない」
「だから安くて助かるの。あの値段なら改修する費用もなんとかなるから」
「全て計算済み?」
「勿論よ。改修が済み次第はじめるわ」
「お給料の殆どを溜め込んでたのはこの為なのね。大工の手配は私に任せて」
「ありがとう、私は職人と話をつける。目をつけてる人はいるから、そんなに時間はかからないと思うの」
ウォーカー商会の仕事の傍ら、シエナとクロエは新しい商会の立ち上げに奔走した。
キャンベル伯爵家に見つからないよう、細心の注意を払いながらの準備だったが、とうとう出来上がった捺染布が職人から届けられた。
シエナとクロエはこっそりと改装の終わった新店舗に行き、テーブルに荷物を置いた。
「小花模様のこれでペティコートを作って、ガウンは淡いピンクの無地で裾とロビングスに刺繍を入れるの。
勿論レースもつけるわ。
ストマッカーは・・小さなリボンと宝石かしら」
布を広げ出来上がりを細かくチェックしながら、詳しく説明するとクロエの目が輝いた。
「うわぁ! めちゃめちゃ良いじゃん、若いレディが泣いて喜びそう」
「それと⋯⋯こっちの布を使って、新しいスタイルのドレスを作ろうと思うの」
シエナはクロエにスケッチブックを開いて見せ⋯⋯。
「今の流行は肩から裾まで切り替えなしの後ろ姿が多いでしょう?だけどこれは、背中のラインをピタリと体に沿わせるの。
袖も今のようなヴィラーゴ・スリーブじゃなくて、もっとシンプルにして。装飾は袖口とコートにレースのみ」
「それなら大振りの花模様が映えるわね。デザインがシンプルな分、模様の華やかさが引き立つわ」
「普段は裾を下ろしておくんだけど、ガウンの裾を両サイドのスリットから引き出して、後ろ腰の所に寄せてからげるようにするの」
「えーっと⋯⋯つまり、野外では裾を上げておいて、着いたら下ろせば良いのね。これは良いわ、絶対流行りそう」
シエナは別のページを開き『後はジャケットを作るわ』と呟いた。
「これ?」
「ルダンゴトからイメージしたの。
スカートは白のリノンを使って軽やかな感じにして、ジャケットはウエストをキュッと絞るの。腰にはこんな風に大きなバッスルを入れて膨らまして。
これで、日傘を持ったら素敵じゃないかと思うんだけど・・」
シエナは、スケッチブックを見つめ何も言わないクロエを見て不安になった。
「これ、駄目かしら?」
「⋯⋯凄いわ! ビックリし過ぎて言葉が出なかったの。まさか新しいスタイルのドレスを考案してるとは思わなかった」
布はチンツか絹でいくつもり。上質の布を作ってる織り工と契約を結びたいんだけど、クロエに心当たりはある?」
「織り工なら任して! 腕の良い人を知ってるから。で、お店はどうするの?」
「3丁目に大きな空き店舗が出たの知ってる? あれをクロエの名前で買って欲しいの。現金一括で払うわ」
「あそこ? ボロボロじゃない」
「だから安くて助かるの。あの値段なら改修する費用もなんとかなるから」
「全て計算済み?」
「勿論よ。改修が済み次第はじめるわ」
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「うわぁ! めちゃめちゃ良いじゃん、若いレディが泣いて喜びそう」
「それと⋯⋯こっちの布を使って、新しいスタイルのドレスを作ろうと思うの」
シエナはクロエにスケッチブックを開いて見せ⋯⋯。
「今の流行は肩から裾まで切り替えなしの後ろ姿が多いでしょう?だけどこれは、背中のラインをピタリと体に沿わせるの。
袖も今のようなヴィラーゴ・スリーブじゃなくて、もっとシンプルにして。装飾は袖口とコートにレースのみ」
「それなら大振りの花模様が映えるわね。デザインがシンプルな分、模様の華やかさが引き立つわ」
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シエナは、スケッチブックを見つめ何も言わないクロエを見て不安になった。
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