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91.あの人は今!
「何遍言ったらわかるんじゃ! この薄鈍が!(バチン、バチン)無駄にでかい図体には知恵のカケラもないんか!」
「ひぃっ! もも、申し訳ありまっせん!」
「それでも二児の母親か! 弛みすぎは腹だけで十分じゃあ! 厚化粧で歳を誤魔化す暇があるなら子供の歌でも覚えんか!」
「ううっ! そ、そんなぁ」
「夜までに腕立て伏せと腹筋二千回、その後この本を丸暗記せい! できんなら飯抜きじゃあ!(ガツン、ドスッ)疲れた後でも子育てに待てはないんじゃ!」
「メ、飯抜きはご勘弁を! あわわ、やります、やらせて下さいぃぃ」
「貴様はここにあるシーツを全部洗ってアイロンがけが終わるまでは座ってはならんぞ! 休憩なんぞ百万年早いわ! 母親は体力勝負じゃ、覚えておけ!」
「あ、あぅぅ。洗濯などした事が⋯⋯ああ、ごめんなさいぃ。す、すぐに行って参りますぅ!」
ご想像通り⋯⋯トーマス司教様のご指導中です。
「貴様らの無神経な行動であのように可愛らしかった子供達はいまだ怯え泣き叫び、リリスは真面な生活もできんようになっとる! 幼子の心理を理解できぬ『大たわけ』が子を引き取るじゃと!?
神を愚弄する行いじゃ! そこへ直れ、ワシが成敗してくれる!」
司教杖を構えたトーマス司教様でしたが⋯⋯。
シャキーン!
「ふっ! 貴様なら知っておろう、特製の仕込み杖じゃ。縮こまった其方の逸物程度なら瞬殺じゃな」
「そそ、それって司教杖をき⋯⋯凶器にとかだ⋯⋯ダメじゃ⋯⋯」
「ワシに文句の言える奴などおらんわい! 嘘だと思うなら教皇だろうが国王だろうが連れて来い、ワシがケツを蹴り上げて引導を渡してくれるわい。
唯一、リリスの文句なら受け付けてやるが、貴様らがあの子の側に近寄る気配を見せただけで頭と胴が離れると覚悟せい!」
「わわ、私は辺境伯領のふふ⋯⋯復興があり、ありまして」
「わ、わたくしもその手伝いが⋯⋯」
「貴様らのようなクズなどおらんでも辺境伯領の復興は順調に進んでおるわい。いや、おらん方が順調じゃと報告が来ておる。
頭の弱い脳筋のくだらん采配と無駄な買い物の支払いに悩む時間がなくて大助かりじゃと申しておったわ!」
「「そ、そんな!」」
「たかが子爵家の一令嬢がと申したそうじゃな!? 貴様らなどその令嬢の髪の毛一本分の価値もないとわしが教えてやるから覚悟せい。
腐れ外道育成機の辺境伯ごときがラングローズ子爵家を金目当てだのと言いおったな。しかも、リリスを女狐扱いした挙句、間抜け王太子に触手? は! 言っておくがな、間抜けにリリスは勿体なさすぎじゃ。手を出したらワシが『正しい去勢の仕方』を実演付きで教えてやるわい」
「お、お聞きになら⋯⋯なられたんですか?」
「ふっ! 誰からも聞いてなぞおらんが、ワシはリリスの事ならなんでも知っておるわい。何しろリリスの『追っかけ』じゃからな!」
「「ひぃ!」」
これがトーマス司教様と辺境伯夫妻の初対面だったそうです。
なんでも、王宮に乗り込んだトーマス司教様は会議中の陛下を引き摺り出して説教した後で、復興に必要な技師や労働力と資材の手配などを期限付きで約束させたそうですから辺境伯夫妻は安心していられる事間違いなしですね。
グレッグとチェイスに骨抜きになっているブルス助祭も張り切っておられるそうです。
「期限は決まっていないそうですからじっくりとご指導させていただきます。
子供と言うのは使用人任せで愛でていれば良いというものではございません。心の傷を癒しつつ励まし前に進ませる⋯⋯領地経営の基礎ともなる人材育成にも繋がります。
一秒たりとも無駄にせず励まれますよう」
ブルス助祭の獲物はよくしなる鞭だとか。トーマス司教様があちこち勝手に出歩かれるので、護衛役を兼ねているうちにすっかり上達したと仰っておられました。
辺境伯夫妻の教育が進められている間に、ナーシャ様の裁判がはじまりました。
婚約していた頃からはじまったジャスパー様の不貞の数々。政略により結ばれたこととナーシャ様自身の想いもあり結婚したものの、家に寄りつかず遊び歩くジャスパー様。
気位の高いナーシャ様とは顔を合わせれば喧嘩ばかりになりジャスパー様の足は益々方々の女達の元へ向かう悪循環だったそうです。
娘可愛さでナーシャ様の願いを何度も叶えてきたのはドミラス侯爵です。
いつまで待ってもチェイス拉致の連絡がこないため我慢ができなくなったナーシャ様が修道院を抜け出し、あのパーティーの夜のドミラス侯爵はチェイスを手に入れさえすれば⋯⋯とかなり焦っていたのだとか。
ナーシャ様とドミラス侯爵は爵位剥奪の上、斬首が決まりました。
処刑の前日、トーマス司教様はナーシャ様と対面されましたが、予想と違いとても落ち着いた様子だったそうです。
『わたくしは大きな罪を犯しました』
『そうじゃな』
『⋯⋯わたくしはどこから間違ってしまったのでしょうか。ただ純粋にジャスパー様をお慕いしていたはずが、多くの方を苦しめその挙げ句にあのような凶行をしてしまいましたの』
『どこから⋯⋯そりゃ、男選びを間違うたのじゃろうな、ジャスパーはクソ野郎じゃ』
『プッ! 亡くなられた方に鞭を打つ司教様など初めてお会いしましたわ』
『フフン! ワシに常識は通用せんからのう』
『では、向こうでジャスパー様にお会いしたら一発殴ってやりますわ』
『おう、気の済むまで何発でもやってやれ』
『そうですね。司教様、ありがとうございました。疑問が解消してようやく懺悔と謝罪に専心できます』
トーマス司教様はドミラス侯爵には会われなかったそうです。
(クソ親父の顔など誰が見に行くか!)
「ひぃっ! もも、申し訳ありまっせん!」
「それでも二児の母親か! 弛みすぎは腹だけで十分じゃあ! 厚化粧で歳を誤魔化す暇があるなら子供の歌でも覚えんか!」
「ううっ! そ、そんなぁ」
「夜までに腕立て伏せと腹筋二千回、その後この本を丸暗記せい! できんなら飯抜きじゃあ!(ガツン、ドスッ)疲れた後でも子育てに待てはないんじゃ!」
「メ、飯抜きはご勘弁を! あわわ、やります、やらせて下さいぃぃ」
「貴様はここにあるシーツを全部洗ってアイロンがけが終わるまでは座ってはならんぞ! 休憩なんぞ百万年早いわ! 母親は体力勝負じゃ、覚えておけ!」
「あ、あぅぅ。洗濯などした事が⋯⋯ああ、ごめんなさいぃ。す、すぐに行って参りますぅ!」
ご想像通り⋯⋯トーマス司教様のご指導中です。
「貴様らの無神経な行動であのように可愛らしかった子供達はいまだ怯え泣き叫び、リリスは真面な生活もできんようになっとる! 幼子の心理を理解できぬ『大たわけ』が子を引き取るじゃと!?
神を愚弄する行いじゃ! そこへ直れ、ワシが成敗してくれる!」
司教杖を構えたトーマス司教様でしたが⋯⋯。
シャキーン!
「ふっ! 貴様なら知っておろう、特製の仕込み杖じゃ。縮こまった其方の逸物程度なら瞬殺じゃな」
「そそ、それって司教杖をき⋯⋯凶器にとかだ⋯⋯ダメじゃ⋯⋯」
「ワシに文句の言える奴などおらんわい! 嘘だと思うなら教皇だろうが国王だろうが連れて来い、ワシがケツを蹴り上げて引導を渡してくれるわい。
唯一、リリスの文句なら受け付けてやるが、貴様らがあの子の側に近寄る気配を見せただけで頭と胴が離れると覚悟せい!」
「わわ、私は辺境伯領のふふ⋯⋯復興があり、ありまして」
「わ、わたくしもその手伝いが⋯⋯」
「貴様らのようなクズなどおらんでも辺境伯領の復興は順調に進んでおるわい。いや、おらん方が順調じゃと報告が来ておる。
頭の弱い脳筋のくだらん采配と無駄な買い物の支払いに悩む時間がなくて大助かりじゃと申しておったわ!」
「「そ、そんな!」」
「たかが子爵家の一令嬢がと申したそうじゃな!? 貴様らなどその令嬢の髪の毛一本分の価値もないとわしが教えてやるから覚悟せい。
腐れ外道育成機の辺境伯ごときがラングローズ子爵家を金目当てだのと言いおったな。しかも、リリスを女狐扱いした挙句、間抜け王太子に触手? は! 言っておくがな、間抜けにリリスは勿体なさすぎじゃ。手を出したらワシが『正しい去勢の仕方』を実演付きで教えてやるわい」
「お、お聞きになら⋯⋯なられたんですか?」
「ふっ! 誰からも聞いてなぞおらんが、ワシはリリスの事ならなんでも知っておるわい。何しろリリスの『追っかけ』じゃからな!」
「「ひぃ!」」
これがトーマス司教様と辺境伯夫妻の初対面だったそうです。
なんでも、王宮に乗り込んだトーマス司教様は会議中の陛下を引き摺り出して説教した後で、復興に必要な技師や労働力と資材の手配などを期限付きで約束させたそうですから辺境伯夫妻は安心していられる事間違いなしですね。
グレッグとチェイスに骨抜きになっているブルス助祭も張り切っておられるそうです。
「期限は決まっていないそうですからじっくりとご指導させていただきます。
子供と言うのは使用人任せで愛でていれば良いというものではございません。心の傷を癒しつつ励まし前に進ませる⋯⋯領地経営の基礎ともなる人材育成にも繋がります。
一秒たりとも無駄にせず励まれますよう」
ブルス助祭の獲物はよくしなる鞭だとか。トーマス司教様があちこち勝手に出歩かれるので、護衛役を兼ねているうちにすっかり上達したと仰っておられました。
辺境伯夫妻の教育が進められている間に、ナーシャ様の裁判がはじまりました。
婚約していた頃からはじまったジャスパー様の不貞の数々。政略により結ばれたこととナーシャ様自身の想いもあり結婚したものの、家に寄りつかず遊び歩くジャスパー様。
気位の高いナーシャ様とは顔を合わせれば喧嘩ばかりになりジャスパー様の足は益々方々の女達の元へ向かう悪循環だったそうです。
娘可愛さでナーシャ様の願いを何度も叶えてきたのはドミラス侯爵です。
いつまで待ってもチェイス拉致の連絡がこないため我慢ができなくなったナーシャ様が修道院を抜け出し、あのパーティーの夜のドミラス侯爵はチェイスを手に入れさえすれば⋯⋯とかなり焦っていたのだとか。
ナーシャ様とドミラス侯爵は爵位剥奪の上、斬首が決まりました。
処刑の前日、トーマス司教様はナーシャ様と対面されましたが、予想と違いとても落ち着いた様子だったそうです。
『わたくしは大きな罪を犯しました』
『そうじゃな』
『⋯⋯わたくしはどこから間違ってしまったのでしょうか。ただ純粋にジャスパー様をお慕いしていたはずが、多くの方を苦しめその挙げ句にあのような凶行をしてしまいましたの』
『どこから⋯⋯そりゃ、男選びを間違うたのじゃろうな、ジャスパーはクソ野郎じゃ』
『プッ! 亡くなられた方に鞭を打つ司教様など初めてお会いしましたわ』
『フフン! ワシに常識は通用せんからのう』
『では、向こうでジャスパー様にお会いしたら一発殴ってやりますわ』
『おう、気の済むまで何発でもやってやれ』
『そうですね。司教様、ありがとうございました。疑問が解消してようやく懺悔と謝罪に専心できます』
トーマス司教様はドミラス侯爵には会われなかったそうです。
(クソ親父の顔など誰が見に行くか!)
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