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一回目 (過去)
11.取り繕うカサンドラ
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「この者は⋯⋯我が⋯⋯我が公爵家の長女、ローザリアです」
「トーマック公爵家の長女と言えば、確か身体が弱くベッドから起き上がれないと聞いていたが」
「何故メイド服を着ているのですか?」
「それは⋯⋯」
ウォレスが口籠もっていると皆の後ろからカサンドラの声が聞こえてきた。
「それには色々と訳がありますの。幼い頃は身体が弱かったのですが今はこの通り。
ですがマナーも何も身に付いておりませんから公爵家令嬢として表に出すのは恥ずかしくて。
今回は国の一大事ですからトーマック公爵家として最善を尽くすため連れて参りましたの」
「左様でしたか。ローザリア様のお力は素晴らしい! 精霊師達が力を発揮出来たのもローザリア様のお陰でしょう。流石はトーマック公爵家の方です」
ランブリー団長が絶賛し周りの貴族達も喜び頷きあった。
「外に出せない間我が家にて訓練を施した甲斐がありましたわ」
優しげな声とは裏腹なカサンドラの冷たく凍えるような目と、怒りに顔を赤くして拳を握りしめたリリアーナの釣り上がった目に気付いた者はいなかった。
「トーマック卿も水臭い。ご長女がこのような力をお持ちならもっと早く教えて頂きたかったですなあ」
「はは、コレは平民と同じくらい礼儀知らずでして。皆様方のお目汚しをする訳には参らんと思うておりましてな」
喜び舞い上がる大勢に囲まれながら家族に睨みつけられローザリアは生きた心地がしなかった。
(この後どうなるかわからないけど後悔はしたくないわ。ウンディーネ、みんな本当にありがとう)
【どいたしましてー】
【虐める奴がいたらやっつけたげるからねー】
【サービスしといたよぉ】
キラキラと虹色の光を撒き散らしながら水の精霊ウンディーネ達が消えていった。
その後次の目的地の溜池に移動したが驚いたことにどれも満々と水を湛えており、ウンディーネの『サービス』の意味に初めて気付いたローザリアだった。
その夜は屋敷で盛大なパーティーが開かれる事になった。ローザリアが不参加というわけにはいかないがメイド服以外何も持っていない。
ウォレスの部屋に連れて行かれたローザリアは3人が座っているソファの横で土下座させられ頭を侍女に踏まれていた。
「リリアーナのドレスを使うしかないわ。少し詰めればなんとかなるでしょうけど、まさかこんな事になるなんて⋯⋯」
「嫌よ! なんで私のドレスを貸さなきゃいけないのよ!!」
「仕方ないでしょう。コレをパーティーに出席させないわけにはいかないのだから!」
溜息をついて顳顬を揉んでいたカサンドラがローザリアを睨みつけた。
「こんな奴連れて来なきゃよかったんだわ。私が主役だったのに、コレの所為で⋯⋯その上ドレスまで奪うなんて酷い!!」
「コレが馬鹿な事をはじめる前にリリアーナが力を見せつけておけば良かったのよ。それなのに、ほんの少し不快な言葉を聞いただけで集中を切らしてしまうから」
「お父様、あれは私の力だったってみんなに伝えて! だってそうでしょう!? コイツは教会に行ってない、加護なんて持ってないんだもの。私以外には誰もあんなことできないわ!」
「今更リリアーナの力だったと言っても今は誰も信じんだろう。何にせよコレにあれほどの力があるはずがない。何が起きたのかはわからんが次にリリアーナが力を示せば済む話だ」
「⋯⋯お母様の所為だわ。コイツをメイドとして連れてきたり⋯⋯あの時だってもっと違う説明が出来たはずなのに」
「お黙り!! 出来損ないに力負けしたお前にわたくしを非難する資格などないわ!! これ以上文句があるのならより大きな力を見せつけなさい。
それさえ出来ず文句を言うなら娘と言えどタダではおかないわよ!!」
「⋯⋯ごっ、ごめんなさい。ドレス、ドレスを選んでくるわ」
生まれてから初めてカサンドラに叱られたリリアーナは真っ青になり、土下座を続けるローザリアを思いきり蹴りつけてから部屋を飛び出した。
リリアーナに怒りを向けられたカサンドラは目を吊り上げ、リリアーナの出て行った扉に向けて扇子を投げつけた。
「貴様の処罰は屋敷に帰ってからだ、覚悟をしておくんだな。今日のところは大人しくしておけ。これ以上余計な事はするな! わかったか!?」
目を吊り上げたウォレスがローザリアに指を突きつけた。
「はい⋯⋯申し訳ありませんでした」
痛みを堪えるローザリアのくぐもった声が気に入らなかったのかカサンドラが立ち上がりローザリアの頭を踏みつけた。柔らかい部屋履きだったのがせめてもの幸いだったが、ローザリアの顔は絨毯にめり込むほどの力で押さえつけられた。
「折角だからリリアーナの晴れ姿を見せてお前との差を見せつけてあげようと親切心を起こしたばかりに⋯⋯。
全く、とんでもない事を仕出かしてくれたわね。リリアーナの言う通りお前なんて連れて来なければよかったわ。
そんなにわたくし達に恥をかかせたかったのかしら?
あれだけ大勢の前でやらかしてしまったらもう国中に広まるのは時間の問題。でも、お前の思うようになんて絶対にさせない。この落とし前はきっちりつけてやるから覚えてらっしゃい!」
リリアーナに蹴られた反対側から蹴りを入れるカサンドラ。
「いつまでグズグズしているんだ!? さっさと準備してこい!!」
「トーマック公爵家の長女と言えば、確か身体が弱くベッドから起き上がれないと聞いていたが」
「何故メイド服を着ているのですか?」
「それは⋯⋯」
ウォレスが口籠もっていると皆の後ろからカサンドラの声が聞こえてきた。
「それには色々と訳がありますの。幼い頃は身体が弱かったのですが今はこの通り。
ですがマナーも何も身に付いておりませんから公爵家令嬢として表に出すのは恥ずかしくて。
今回は国の一大事ですからトーマック公爵家として最善を尽くすため連れて参りましたの」
「左様でしたか。ローザリア様のお力は素晴らしい! 精霊師達が力を発揮出来たのもローザリア様のお陰でしょう。流石はトーマック公爵家の方です」
ランブリー団長が絶賛し周りの貴族達も喜び頷きあった。
「外に出せない間我が家にて訓練を施した甲斐がありましたわ」
優しげな声とは裏腹なカサンドラの冷たく凍えるような目と、怒りに顔を赤くして拳を握りしめたリリアーナの釣り上がった目に気付いた者はいなかった。
「トーマック卿も水臭い。ご長女がこのような力をお持ちならもっと早く教えて頂きたかったですなあ」
「はは、コレは平民と同じくらい礼儀知らずでして。皆様方のお目汚しをする訳には参らんと思うておりましてな」
喜び舞い上がる大勢に囲まれながら家族に睨みつけられローザリアは生きた心地がしなかった。
(この後どうなるかわからないけど後悔はしたくないわ。ウンディーネ、みんな本当にありがとう)
【どいたしましてー】
【虐める奴がいたらやっつけたげるからねー】
【サービスしといたよぉ】
キラキラと虹色の光を撒き散らしながら水の精霊ウンディーネ達が消えていった。
その後次の目的地の溜池に移動したが驚いたことにどれも満々と水を湛えており、ウンディーネの『サービス』の意味に初めて気付いたローザリアだった。
その夜は屋敷で盛大なパーティーが開かれる事になった。ローザリアが不参加というわけにはいかないがメイド服以外何も持っていない。
ウォレスの部屋に連れて行かれたローザリアは3人が座っているソファの横で土下座させられ頭を侍女に踏まれていた。
「リリアーナのドレスを使うしかないわ。少し詰めればなんとかなるでしょうけど、まさかこんな事になるなんて⋯⋯」
「嫌よ! なんで私のドレスを貸さなきゃいけないのよ!!」
「仕方ないでしょう。コレをパーティーに出席させないわけにはいかないのだから!」
溜息をついて顳顬を揉んでいたカサンドラがローザリアを睨みつけた。
「こんな奴連れて来なきゃよかったんだわ。私が主役だったのに、コレの所為で⋯⋯その上ドレスまで奪うなんて酷い!!」
「コレが馬鹿な事をはじめる前にリリアーナが力を見せつけておけば良かったのよ。それなのに、ほんの少し不快な言葉を聞いただけで集中を切らしてしまうから」
「お父様、あれは私の力だったってみんなに伝えて! だってそうでしょう!? コイツは教会に行ってない、加護なんて持ってないんだもの。私以外には誰もあんなことできないわ!」
「今更リリアーナの力だったと言っても今は誰も信じんだろう。何にせよコレにあれほどの力があるはずがない。何が起きたのかはわからんが次にリリアーナが力を示せば済む話だ」
「⋯⋯お母様の所為だわ。コイツをメイドとして連れてきたり⋯⋯あの時だってもっと違う説明が出来たはずなのに」
「お黙り!! 出来損ないに力負けしたお前にわたくしを非難する資格などないわ!! これ以上文句があるのならより大きな力を見せつけなさい。
それさえ出来ず文句を言うなら娘と言えどタダではおかないわよ!!」
「⋯⋯ごっ、ごめんなさい。ドレス、ドレスを選んでくるわ」
生まれてから初めてカサンドラに叱られたリリアーナは真っ青になり、土下座を続けるローザリアを思いきり蹴りつけてから部屋を飛び出した。
リリアーナに怒りを向けられたカサンドラは目を吊り上げ、リリアーナの出て行った扉に向けて扇子を投げつけた。
「貴様の処罰は屋敷に帰ってからだ、覚悟をしておくんだな。今日のところは大人しくしておけ。これ以上余計な事はするな! わかったか!?」
目を吊り上げたウォレスがローザリアに指を突きつけた。
「はい⋯⋯申し訳ありませんでした」
痛みを堪えるローザリアのくぐもった声が気に入らなかったのかカサンドラが立ち上がりローザリアの頭を踏みつけた。柔らかい部屋履きだったのがせめてもの幸いだったが、ローザリアの顔は絨毯にめり込むほどの力で押さえつけられた。
「折角だからリリアーナの晴れ姿を見せてお前との差を見せつけてあげようと親切心を起こしたばかりに⋯⋯。
全く、とんでもない事を仕出かしてくれたわね。リリアーナの言う通りお前なんて連れて来なければよかったわ。
そんなにわたくし達に恥をかかせたかったのかしら?
あれだけ大勢の前でやらかしてしまったらもう国中に広まるのは時間の問題。でも、お前の思うようになんて絶対にさせない。この落とし前はきっちりつけてやるから覚えてらっしゃい!」
リリアーナに蹴られた反対側から蹴りを入れるカサンドラ。
「いつまでグズグズしているんだ!? さっさと準備してこい!!」
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