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一回目 (過去)
65.謁見の間にて
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「今日はまたお美しいですわ。黒水晶がいっそう華やか⋯⋯」
「閣下の素晴らしい刺繍飾りは⋯⋯」
「金銀の刺繍と⋯⋯」
ウォレス達を褒め称える声の中カサンドラの得意げな声が聞こえてきた。
「友人が色々贈って下さいますのよ。禁止令が出ていてもお友達の好意を無にするわけには参りませんものね」
「まさに」
「流石カサンドラ様、他国との交流も幅広くておられる。我が国の発展はトーマック公爵夫妻とリリアーナ様抜きには語れませんからなあ」
一際大きな声な賞賛が聞こえてきた。
「あら、そこにいるのはローザリアではなくて? いつ来たのか全然線気づかなかったわ。そんな貧相なドレスでここへ来るなんて、準備してあったドレスを来てくるよう言ってあったでしょう?」
勿論ドレスなど準備してなかったが、それよりもナスタリア神父達が準備してくれたドレスを貧相だと言われた事に腹が立った。
「準備して頂いていたとは存じませんでしたが、このドレスをとても気に入っておりますの」
にっこりと笑い堂々と反論したローザリアの態度にカサンドラ達が唖然とした。生まれて初めてローザリアに言い返され然しものカサンドラも言葉に詰まったようだ。
馬車を降りる直前にナスタリア神父から渡されたネックレスとイヤリングはローザリアの瞳の色と同じアメジスト。
『アメジストの石言葉は『誠実・高貴・愛情』気持ちを落ち着かせて思考力を高めると言われている宝石ですからお役に立てると思います。
ピアスは魔除けになりますから今度加工しましょう』
「アレが例の? なんとも可愛らしい⋯⋯15歳には見えんな」
「ナザエル枢機卿とナスタリア神父を引き連れてるとは厄介な」
「病弱? 痩せすぎだが健康そうに」
貴族達の呟きが聞こえたウォレス達が目を吊り上げた。
「トーマック公爵家御一堂様!!」
朗々たる声が控えの間に響き渡った。
何日も前から謁見が叶うのを控えの間で待ち続けていた貴族達はガックリと肩を落とし、これで漸く国が水不足解消に動きはじめると期待した者達は目を輝かせた。
ウォレスを先頭にして歩き出した3人とローザリア達一行が謁見室の両扉の前に並んだ。
「枢機卿や神父まで引き連れていくつもりか!?」
扉を守る衛兵の前でウォレスが顔を顰めた。
「私達はローザリア様の教育係ですから今回の謁見に必要だと思われませんか?」
暗にローザリアの実力など知らないだろうと揶揄するナスタリア神父を横目で睨みつけたウォレスとカサンドラが言い返す言葉に詰まっていると、リリアーナの呑気な声が聞こえてきた。
「お父様、枢機卿と神父は私のために来てくれたのよ。私の偉業を目にする為について来てくれるつもりなのよ。そうでしょう?
私専属の教育係ですもの」
ナスタリア神父の腕に手をかけ撓垂れ掛かったリリアーナは得意満面でローザリアを嘲笑った。
両扉が大きく開き歩き出すタイミングでリリアーナの腕を引き剥がしたナスタリア神父はまるで汚れを落とそうとするかのように腕をさっと払った。
白漆喰の壁際には大臣や一部の王侯貴族が並び好奇心と欲に目を爛々と輝かせている。磨き上げられた床がシャンデリアの明かりを受けて輝き、中央に敷かれた赤い絨毯が数段高くなった玉座まで続いていた。
視線を下に向けたまま中央まで進み出て陛下を待つ。ウォレス達男性は片膝をつき右手を左胸に当てて頭を垂れ、カサンドラ達女性はカーテシーで待った。
精霊王に仕えるナザエル枢機卿とナスタリア神父は立位のままで右手を左胸に当てて頭を垂れた。
しんと静まり返る中、奥の扉から国王と王妃がお出ましになられ玉座に着座。侍従長が国王の着るマントの裾を直し侍女長が王妃のドレスを整え、玉座の後ろに立って宰相に小さく頷いた。
「陛下の御前にて、旱魃による被害に関わる審議を行う」
「皆の者、頭を上げよ」
「恐れながら、発言のご許可を」
言葉を発したのはアウグスト・ギャンター内務大臣。
「許す」
「以前、オーレリアでの偉業はトーマック公爵長女ローザリア様のお力だと聞き及んでおりましたが、昨今は次女リリアーナ様のお力だったのではないかと噂する者もございます。先ずはそれを審議しては如何かと提議させて頂きたいと存じます」
「その噂ならば、余も聞き及んでおる。それが真実であればローザリアは余を謀った事になる。そうであろう?」
ウォレスの顔に冷や汗が流れはじめ、ポタポタと赤い絨毯に染みを作った。
「今名前の上がりました2人の娘の父、ウォレス・トーマックでございます。発言をお許しいただけますでしょうか」
「許す」
「閣下の素晴らしい刺繍飾りは⋯⋯」
「金銀の刺繍と⋯⋯」
ウォレス達を褒め称える声の中カサンドラの得意げな声が聞こえてきた。
「友人が色々贈って下さいますのよ。禁止令が出ていてもお友達の好意を無にするわけには参りませんものね」
「まさに」
「流石カサンドラ様、他国との交流も幅広くておられる。我が国の発展はトーマック公爵夫妻とリリアーナ様抜きには語れませんからなあ」
一際大きな声な賞賛が聞こえてきた。
「あら、そこにいるのはローザリアではなくて? いつ来たのか全然線気づかなかったわ。そんな貧相なドレスでここへ来るなんて、準備してあったドレスを来てくるよう言ってあったでしょう?」
勿論ドレスなど準備してなかったが、それよりもナスタリア神父達が準備してくれたドレスを貧相だと言われた事に腹が立った。
「準備して頂いていたとは存じませんでしたが、このドレスをとても気に入っておりますの」
にっこりと笑い堂々と反論したローザリアの態度にカサンドラ達が唖然とした。生まれて初めてローザリアに言い返され然しものカサンドラも言葉に詰まったようだ。
馬車を降りる直前にナスタリア神父から渡されたネックレスとイヤリングはローザリアの瞳の色と同じアメジスト。
『アメジストの石言葉は『誠実・高貴・愛情』気持ちを落ち着かせて思考力を高めると言われている宝石ですからお役に立てると思います。
ピアスは魔除けになりますから今度加工しましょう』
「アレが例の? なんとも可愛らしい⋯⋯15歳には見えんな」
「ナザエル枢機卿とナスタリア神父を引き連れてるとは厄介な」
「病弱? 痩せすぎだが健康そうに」
貴族達の呟きが聞こえたウォレス達が目を吊り上げた。
「トーマック公爵家御一堂様!!」
朗々たる声が控えの間に響き渡った。
何日も前から謁見が叶うのを控えの間で待ち続けていた貴族達はガックリと肩を落とし、これで漸く国が水不足解消に動きはじめると期待した者達は目を輝かせた。
ウォレスを先頭にして歩き出した3人とローザリア達一行が謁見室の両扉の前に並んだ。
「枢機卿や神父まで引き連れていくつもりか!?」
扉を守る衛兵の前でウォレスが顔を顰めた。
「私達はローザリア様の教育係ですから今回の謁見に必要だと思われませんか?」
暗にローザリアの実力など知らないだろうと揶揄するナスタリア神父を横目で睨みつけたウォレスとカサンドラが言い返す言葉に詰まっていると、リリアーナの呑気な声が聞こえてきた。
「お父様、枢機卿と神父は私のために来てくれたのよ。私の偉業を目にする為について来てくれるつもりなのよ。そうでしょう?
私専属の教育係ですもの」
ナスタリア神父の腕に手をかけ撓垂れ掛かったリリアーナは得意満面でローザリアを嘲笑った。
両扉が大きく開き歩き出すタイミングでリリアーナの腕を引き剥がしたナスタリア神父はまるで汚れを落とそうとするかのように腕をさっと払った。
白漆喰の壁際には大臣や一部の王侯貴族が並び好奇心と欲に目を爛々と輝かせている。磨き上げられた床がシャンデリアの明かりを受けて輝き、中央に敷かれた赤い絨毯が数段高くなった玉座まで続いていた。
視線を下に向けたまま中央まで進み出て陛下を待つ。ウォレス達男性は片膝をつき右手を左胸に当てて頭を垂れ、カサンドラ達女性はカーテシーで待った。
精霊王に仕えるナザエル枢機卿とナスタリア神父は立位のままで右手を左胸に当てて頭を垂れた。
しんと静まり返る中、奥の扉から国王と王妃がお出ましになられ玉座に着座。侍従長が国王の着るマントの裾を直し侍女長が王妃のドレスを整え、玉座の後ろに立って宰相に小さく頷いた。
「陛下の御前にて、旱魃による被害に関わる審議を行う」
「皆の者、頭を上げよ」
「恐れながら、発言のご許可を」
言葉を発したのはアウグスト・ギャンター内務大臣。
「許す」
「以前、オーレリアでの偉業はトーマック公爵長女ローザリア様のお力だと聞き及んでおりましたが、昨今は次女リリアーナ様のお力だったのではないかと噂する者もございます。先ずはそれを審議しては如何かと提議させて頂きたいと存じます」
「その噂ならば、余も聞き及んでおる。それが真実であればローザリアは余を謀った事になる。そうであろう?」
ウォレスの顔に冷や汗が流れはじめ、ポタポタと赤い絨毯に染みを作った。
「今名前の上がりました2人の娘の父、ウォレス・トーマックでございます。発言をお許しいただけますでしょうか」
「許す」
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