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一回目 (過去)
64.ジェイクの冒険
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「さて、ジェイクにはこれから色々聞きたいこともありますが、村に帰る時には教会の者が送っていきますね」
神託の儀で土の加護を戴いたジェイクだが本人は綺麗な模様のハンカチをもらった程度にしか思っていないようで、凄いお土産ができたと言ってナスタリア神父に笑われていた。
「せいじょさま、オレしかられるかなあ」
「勝手に飛び出してきたんでしょ? お父さん達は心配してるから少し叱ると思うけど、安心するとか無事で良かったとかの気持ちの方が大きいと思う」
「うん、わかった!」
「準備ができたので食事にしましょう」
「メシ? やったあ、おなかペコペコだったんだ」
ジェイクは村に来ていた行商人の馬車の荷物に紛れ込んで家族に何も言わず出てきたと言う。行商人の馬車を降りた後、親切な商人が馬車に乗せてくれたこともあったが王都を目指してひたすら歩き続けた。
持って出た食べ物は村を出て直ぐになくなり、食べ物を恵んでもらったり残飯を漁ったりして漸く王都に辿り着いた。
「水のせいじょさまのすんでるとこをおしえてくれた人がいたから、おねがいにいったんだけどダメだった」
旅で薄汚れた服を着た平民の子供なんか⋯⋯と言われて追い払われたが、屋敷の近くを彷徨いていると夕方沢山の護衛を従えた馬車が出入りするのを見つけた。
「ぜったい、せいじょさまだとおもったんだ。そしたら、きしさまはきょーかいの人だったからまちぶせしたんだ」
話を聞けば聞くほど行き当たりばったりで運任せの旅をしてきたジェイクは満面の笑みを浮かべながら話しているが、幸運をいくつ使い果たしたのかと言いたくなる無謀な旅だった。
たまたま親切な人に出会いたまたまお腹を壊さずいられた。王都に辿り着けたのもたまたまでトーマック公爵家を知ったのも馬車に出会えたのも⋯⋯言い出したらキリがないほどの偶然が積み重なりジェイクはここにいる。
「これが本当の精霊の加護かもしれませんね。こんな奇跡があるとは驚きしかありません」
ナスタリア神父にそう言わしめたジェイクの言葉は⋯⋯。
「えっ? だってさ、おーとに行くのはいちばんひろいみちをあるいてけばいいっておもったんだもん」
白いパンに興奮しソーセージと格闘しチーズを食べて眼を丸くするジェイクは、一緒に席について食事をしているローザリアやナスタリア神父達の心を鷲掴みにした。
スープに肉や野菜が入っているとジェイクが目を丸くした時には「そうでしょ、びっくりだよね」と思わず頷いてしまったローザリアだった。
初めて白いパンを手にした時自分も同じように感動したのを思い出し、昔は想像もしていなかった幸せに包まれていることを実感した。
(精霊王と精霊、教会の方々に心からの感謝を。ジェイクのように旱魃で大変な思いをしている人達を少しでも早く助ける事ができますように)
王宮は前回参内した時よりも殺伐としているように感じられた。謁見室に案内する侍従は無表情のままセカセカと歩き、すれ違う貴族達は蔑むような目つきでローザリアを遠巻きにしている。
謁見室前の控室に着くとトーマック公爵家の3人が部屋の中央のソファに座っていたが、謁見を待つ多くの貴族がトーマック公爵達と知己を得ようと周りに集まっていた。
ウォレスの着ているアビ・ア・ラ・フランセーズは、濃紺のコートの中に迫り出したお腹を覆う派手な刺繍を施した白いウエストコート。コートと同色のブリーチズはピッタリと太ももに張り付き膝までの白い絹靴下を履いている。袖口飾りにレースを使いクラバットに大きなサファイアを飾っていた。
カサンドラは濃いオレンジ色をベースに植物の模様を織り込んだ絹ブロケードのローブ・ア・ラ・フランセーズ。共布の縁飾りと二段のパゴダ型袖にレースを飾りストマッカーに黒真珠で作ったブローチを付けている。ローブと共布のペティコートはパニエで大きく膨らませローブと揃えた柄模様の扇子で口元を隠していた。
リリアーナは少し落ち着いたペールピンクの絹ブロケードのローブ・ア・ラ・フランセーズ。ローブと共布のペティコートには金銀や緑の糸で刺繍を施し二段のパゴダ型袖のレース飾りがとても華やかなドレスだった。白いストマッカーに飾られた小粒のエメラルドは王太子殿下の色だと後から聞いて知った。
そのまま夜会に出かけられそうなほどゴージャスな衣装は周りから明らかに浮いている。
神託の儀で土の加護を戴いたジェイクだが本人は綺麗な模様のハンカチをもらった程度にしか思っていないようで、凄いお土産ができたと言ってナスタリア神父に笑われていた。
「せいじょさま、オレしかられるかなあ」
「勝手に飛び出してきたんでしょ? お父さん達は心配してるから少し叱ると思うけど、安心するとか無事で良かったとかの気持ちの方が大きいと思う」
「うん、わかった!」
「準備ができたので食事にしましょう」
「メシ? やったあ、おなかペコペコだったんだ」
ジェイクは村に来ていた行商人の馬車の荷物に紛れ込んで家族に何も言わず出てきたと言う。行商人の馬車を降りた後、親切な商人が馬車に乗せてくれたこともあったが王都を目指してひたすら歩き続けた。
持って出た食べ物は村を出て直ぐになくなり、食べ物を恵んでもらったり残飯を漁ったりして漸く王都に辿り着いた。
「水のせいじょさまのすんでるとこをおしえてくれた人がいたから、おねがいにいったんだけどダメだった」
旅で薄汚れた服を着た平民の子供なんか⋯⋯と言われて追い払われたが、屋敷の近くを彷徨いていると夕方沢山の護衛を従えた馬車が出入りするのを見つけた。
「ぜったい、せいじょさまだとおもったんだ。そしたら、きしさまはきょーかいの人だったからまちぶせしたんだ」
話を聞けば聞くほど行き当たりばったりで運任せの旅をしてきたジェイクは満面の笑みを浮かべながら話しているが、幸運をいくつ使い果たしたのかと言いたくなる無謀な旅だった。
たまたま親切な人に出会いたまたまお腹を壊さずいられた。王都に辿り着けたのもたまたまでトーマック公爵家を知ったのも馬車に出会えたのも⋯⋯言い出したらキリがないほどの偶然が積み重なりジェイクはここにいる。
「これが本当の精霊の加護かもしれませんね。こんな奇跡があるとは驚きしかありません」
ナスタリア神父にそう言わしめたジェイクの言葉は⋯⋯。
「えっ? だってさ、おーとに行くのはいちばんひろいみちをあるいてけばいいっておもったんだもん」
白いパンに興奮しソーセージと格闘しチーズを食べて眼を丸くするジェイクは、一緒に席について食事をしているローザリアやナスタリア神父達の心を鷲掴みにした。
スープに肉や野菜が入っているとジェイクが目を丸くした時には「そうでしょ、びっくりだよね」と思わず頷いてしまったローザリアだった。
初めて白いパンを手にした時自分も同じように感動したのを思い出し、昔は想像もしていなかった幸せに包まれていることを実感した。
(精霊王と精霊、教会の方々に心からの感謝を。ジェイクのように旱魃で大変な思いをしている人達を少しでも早く助ける事ができますように)
王宮は前回参内した時よりも殺伐としているように感じられた。謁見室に案内する侍従は無表情のままセカセカと歩き、すれ違う貴族達は蔑むような目つきでローザリアを遠巻きにしている。
謁見室前の控室に着くとトーマック公爵家の3人が部屋の中央のソファに座っていたが、謁見を待つ多くの貴族がトーマック公爵達と知己を得ようと周りに集まっていた。
ウォレスの着ているアビ・ア・ラ・フランセーズは、濃紺のコートの中に迫り出したお腹を覆う派手な刺繍を施した白いウエストコート。コートと同色のブリーチズはピッタリと太ももに張り付き膝までの白い絹靴下を履いている。袖口飾りにレースを使いクラバットに大きなサファイアを飾っていた。
カサンドラは濃いオレンジ色をベースに植物の模様を織り込んだ絹ブロケードのローブ・ア・ラ・フランセーズ。共布の縁飾りと二段のパゴダ型袖にレースを飾りストマッカーに黒真珠で作ったブローチを付けている。ローブと共布のペティコートはパニエで大きく膨らませローブと揃えた柄模様の扇子で口元を隠していた。
リリアーナは少し落ち着いたペールピンクの絹ブロケードのローブ・ア・ラ・フランセーズ。ローブと共布のペティコートには金銀や緑の糸で刺繍を施し二段のパゴダ型袖のレース飾りがとても華やかなドレスだった。白いストマッカーに飾られた小粒のエメラルドは王太子殿下の色だと後から聞いて知った。
そのまま夜会に出かけられそうなほどゴージャスな衣装は周りから明らかに浮いている。
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