34 / 62
第34話 遺言
しおりを挟む
突如として姿を現したアルトの姿を見た瞬間、トビーは張り詰めていた精神の糸が断ち切れたかのように、大声で笑い出した。
「ハッハッハッハッハッハッハッ!!」
それは、滑稽で、哀れで、そしてどこか狂気に満ちた笑いだった。トビーが全身全霊で作り上げた千秋楽が、最も信頼していた協力者(駒)の登場によって崩壊したことへの、絶望と諦念の笑いだ。その声は会場の隅々に響き渡る。
トビーは約3分間、笑い続けた後、猟奇的な視線をアルトへと向けた。
「アルト……」
トビーはアルトを飲み込むように言葉を発する。
「おまえの力を最大限に引き出すことができるのは俺だ。それはお前が一番よくわかっているだろ」
トビーは、最後の話術を繰り出す。
「アルト、その男に言ってやれ! 『僕はトビーが必要だ』と! それが、お前が泥底から抜け出して、故郷の母を助けるための唯一の手段だ」
トビーの呼びかけに、アルトは顔全体を涙と憎悪で歪ませた。アルトの瞳には、友情を裏切られた痛みと、再び道具として利用されそうになった怒りが燃えていた。
「もう、お前なんか信じない! 絶対に信じないぞ!」
アルトは喉が張り裂けんばかりに叫んだ。
「お前の足りない脳ミソでよく考えろ!」
トビーは声量を上げ、力説する。
「お前には何度も言ったはずだ。この王都で生き残るには知識と仲間が必要だと。お前の隣にいる男は、恐怖で相手を服従させる冷酷な独裁者だ。お前の【仲間】ではないぞ。お前には俺が必要なはずだ。冷静になって考えろ。お前にとって必要な人物は誰なのか!」
トビーの言葉は論理的だった。ヴァレリウスを恐怖の独裁者と断じ、自らの利用価値とアルトの利益を結びつける。しかし、既にトビーの言葉は、アルトの心には届かない。アルトは泣き崩れそうになりながら、憎悪を込めて吐き捨てるように叫んだ。
「だまれ!お前よりかは……マシだ!」
その言葉を最後に、アルトは嗚咽を漏らしながら、来た時と同じように影の中へ逃げるように立ち去った。アルトの決別を目撃したヴァレリウスは、トビーに向けられていた最後の関心を断ち切った。トビーの表情は、相変わらず冷徹なままだ。
「エドワード。お前が持つ才能は非常に利用価値が高い。それは認める」
ヴァレリウスは静かに、しかし有無を言わせぬ決断を告げる。
「だが、お前はワシの野望の行く末に危険要因となる可能性がある。ワシの邪魔をする可能性がある者は、排除する」
ヴァレリウスは、トビーの背後に立つシュペーアーに、冷たい目で命じた。
「シュペーアー、コイツの頭を斬り落とせ。そして、裏切者の証として、泥底の1番目立つところへ晒しあげろ」
シュペーアーは、微かに恭しく一礼し、静かに答えた。
「御意」
トビーは死を宣告されたにもかかわらず、その場に跪いたまま、背筋を伸ばした。彼の顔から恐怖は消え、最後に残ったのは、燃えるような執念だけだった。
「俺は負けていないぞ! ヴァレリウス!」
トビーは、最期の力を振り絞って叫んだ。
「俺は、必ずお前を王都の闇の王から引きずり落として、家族の汚名を晴らしてやる!」
トビーがその言葉を言い終えるのを待って、シュペーアーは無言で愛用の剣を抜いた。
「エドワード様、みごとな最後です」
シュペーアーは、トビーの才覚を認める者としての、最後の慈悲を込めた一言を捧げた後、一閃。剣は、最後まで堂々とした態度を崩さなかったトビーの頭を、瞬時に胴体から斬り落とした。シュペーアーは、流れ出る血には目もくれず、落ちたトビーの頭を大事に拾い上げ、用意された布の袋の中に静かにしまった。
「ハッハッハッハッハッハッハッ!!」
それは、滑稽で、哀れで、そしてどこか狂気に満ちた笑いだった。トビーが全身全霊で作り上げた千秋楽が、最も信頼していた協力者(駒)の登場によって崩壊したことへの、絶望と諦念の笑いだ。その声は会場の隅々に響き渡る。
トビーは約3分間、笑い続けた後、猟奇的な視線をアルトへと向けた。
「アルト……」
トビーはアルトを飲み込むように言葉を発する。
「おまえの力を最大限に引き出すことができるのは俺だ。それはお前が一番よくわかっているだろ」
トビーは、最後の話術を繰り出す。
「アルト、その男に言ってやれ! 『僕はトビーが必要だ』と! それが、お前が泥底から抜け出して、故郷の母を助けるための唯一の手段だ」
トビーの呼びかけに、アルトは顔全体を涙と憎悪で歪ませた。アルトの瞳には、友情を裏切られた痛みと、再び道具として利用されそうになった怒りが燃えていた。
「もう、お前なんか信じない! 絶対に信じないぞ!」
アルトは喉が張り裂けんばかりに叫んだ。
「お前の足りない脳ミソでよく考えろ!」
トビーは声量を上げ、力説する。
「お前には何度も言ったはずだ。この王都で生き残るには知識と仲間が必要だと。お前の隣にいる男は、恐怖で相手を服従させる冷酷な独裁者だ。お前の【仲間】ではないぞ。お前には俺が必要なはずだ。冷静になって考えろ。お前にとって必要な人物は誰なのか!」
トビーの言葉は論理的だった。ヴァレリウスを恐怖の独裁者と断じ、自らの利用価値とアルトの利益を結びつける。しかし、既にトビーの言葉は、アルトの心には届かない。アルトは泣き崩れそうになりながら、憎悪を込めて吐き捨てるように叫んだ。
「だまれ!お前よりかは……マシだ!」
その言葉を最後に、アルトは嗚咽を漏らしながら、来た時と同じように影の中へ逃げるように立ち去った。アルトの決別を目撃したヴァレリウスは、トビーに向けられていた最後の関心を断ち切った。トビーの表情は、相変わらず冷徹なままだ。
「エドワード。お前が持つ才能は非常に利用価値が高い。それは認める」
ヴァレリウスは静かに、しかし有無を言わせぬ決断を告げる。
「だが、お前はワシの野望の行く末に危険要因となる可能性がある。ワシの邪魔をする可能性がある者は、排除する」
ヴァレリウスは、トビーの背後に立つシュペーアーに、冷たい目で命じた。
「シュペーアー、コイツの頭を斬り落とせ。そして、裏切者の証として、泥底の1番目立つところへ晒しあげろ」
シュペーアーは、微かに恭しく一礼し、静かに答えた。
「御意」
トビーは死を宣告されたにもかかわらず、その場に跪いたまま、背筋を伸ばした。彼の顔から恐怖は消え、最後に残ったのは、燃えるような執念だけだった。
「俺は負けていないぞ! ヴァレリウス!」
トビーは、最期の力を振り絞って叫んだ。
「俺は、必ずお前を王都の闇の王から引きずり落として、家族の汚名を晴らしてやる!」
トビーがその言葉を言い終えるのを待って、シュペーアーは無言で愛用の剣を抜いた。
「エドワード様、みごとな最後です」
シュペーアーは、トビーの才覚を認める者としての、最後の慈悲を込めた一言を捧げた後、一閃。剣は、最後まで堂々とした態度を崩さなかったトビーの頭を、瞬時に胴体から斬り落とした。シュペーアーは、流れ出る血には目もくれず、落ちたトビーの頭を大事に拾い上げ、用意された布の袋の中に静かにしまった。
3
あなたにおすすめの小説
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
俺の好きな人は勇者の母で俺の姉さん! パーティ追放から始まる新しい生活
石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが別に気にも留めていなかった。
ハーレムパーティ状態だったので元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、三人の幼馴染は確かに可愛いが、リヒトにとって恋愛対象にどうしても見られなかったからだ。
だから、ただ見せつけられても困るだけだった。
何故ならリヒトの好きなタイプの女性は…大人の女性だったから。
この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。
勿論ヒロインもチートはありません。
他のライトノベルや漫画じゃ主人公にはなれない、背景に居るような主人公やヒロインが、楽しく暮すような話です。
1~2話は何時もの使いまわし。
亀更新になるかも知れません。
他の作品を書く段階で、考えてついたヒロインをメインに純愛で書いていこうと思います。
勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~
名無し
ファンタジー
突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。
自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。
もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。
だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。
グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。
人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ
天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。
彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。
「お前はもういらない」
ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。
だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。
――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。
一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。
生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!?
彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。
そして、レインはまだ知らない。
夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、
「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」
「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」
と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。
そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。
理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。
王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー!
HOT男性49位(2025年9月3日0時47分)
→37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる