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地下の狂宴

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狭い廊下を進むと、そこには20畳ほどの大きめの部屋があった。壁の一面がガラス張りになっていて、向こう側は暗い。ガラスのこちら側では、見た目ふつうのサラリーマンのような男たちが5、6人程度、椅子に腰掛けて思い思いに過ごしている。スマホは没収されているので、全体的には暇そうだ。ワインやビールなど、酒を飲んでいる人間が多い。

俺も彼らと同じように、椅子に腰掛けて何かを待つことにした。壁際に設置されたドリンクサーバーで飲み物を得る。どうも酔う気にはなれなかった。周りを観察して立ち回りを間違えないようにすること、それで精一杯だった。

十数分ほど経って、ガラスの向こうがライトアップされた。遊佐が言っていた通り、始まったのはストリップで、アングラなロケーションにお似合いの場末感ある粗末な演出と演技だった。浅草などにある今どきのストリップ・ショーとは違い、ただ裸の女がよくわからない動きで身体を見せるだけの雑なショー。粗末な台の上、単色の光が白々と肌を照らす。

だが、それらのいずれとも決定的に異なるのは、演者が今をときめく第一線の人気女優であることだった。

ろくにドラマや映画を観ない俺でも知っている、なんならさっき街で三度は広告で見かけたであろう、国民的女優。その裸体が、ガラスを隔てて艶かしく動いていた。

……興奮よりも、恐ろしさが勝つ。

あまりの超現実に、俺は急速に疲弊した。
しかしその一方で、その裸体を脳に刻むべく、凝視した。
周りの人間に倣い、飲酒もした。

そして15分のショー・プログラムが終わり、彼女は一礼して舞台を降りた。ガラスの向こうの照明が全灯する。すると、奥に扉があるのがわかった。そしてその扉が開き、数名の男たちーー彼らもまた、風貌はふつうのサラリーマンだーーが、裸で乱入した。

そのうちのひとりがおもむろに女優に近づき、そして、キス。

そこまで見届けたところで、ガラスを覆うように幕が下ろされた。
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