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1日目の晩

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暇を持て余す2人。
普段はなんの取留めもない会話をするだけだが、
変わった環境で少し突っ込んだ内容が洸太の口をついた。

「…まだ先の話だけどさ、孝明は東京の大学に行くんだろ?」

「ああ。 この神社を継がなきゃいけないから。
 それに必要な学部に行かないと。」



「あの…さ、東京についてって良いかな?」


洸太の切り出しが意外だったのか、孝明がキョトンとする。

「てっきり洸太は村に残るもんだと…
  お前この辺のジジババと居るの好きそうだから。」

「確かにそうなんだけどさ。」

「やっぱり高校出てすぐに仕事ってちょっと不安で。
 ジジババ世話すんのにも数年は専門知識とか集中して学んだ方が良いだろうし。
 それで…。


 それで、せっかく勉強すんなら、お前と一緒のが楽しいかなーって。」

洸太はそう言っておそるおそる孝明を見上げる。



「うん。俺もできることならお前と離れたくないな。」

そう孝明はあっさりと返した。


洸太の鼓動は予想していなかった程大きく跳ねた。
心臓のあたりから ”嬉しい” という感情が轟く。


「あのさ、東京出たら "ルームシェア" ってのしようぜ!
 家賃半々だし、しっかり者のお前とだったら親も文句言わねえよ!
 むしろ安心するって。
 そんでお前は大学に行って、俺は短大か専門学校にそれぞれ通う。」


洸太は勢いづいてまくし立てる。
俺と孝明が1つの部屋で、毎日が修学旅行の夜のような楽しい生活。

孝明は相変わらず仏頂面だが、洸太の話を優しく穏やかに聞いている。



『高校を出たら一緒に東京へ行って、一緒に住もう。』



その夜、2人の間に約束が交わされた。


 ***


孝明は決まった時間に秘薬を飲み、
2人は布団を並べて就寝した。


洸太は落ち着かず寝付けないでいたので、
隣の孝明に声を掛けてみようかと逡巡していた。

チラと孝明を見てみる。


「~~ッ…!」

孝明は何かを堪えるようにこちらに背を向け、
丸くうずくまっている。


「孝明…ッ!?」


洸太は布団から跳ね起き、孝明に飛びつく。


「はぁ、はぁ…、うぐっ…ッ!」


孝明の息は荒い。

「どうした、苦しいのか?」

「はぁ、はぁ…全身が…ギシギシ…痛い……
 うぅっ…!」


その夜、洸太は孝明の身体をさすったり、汗を拭ってやるくらいのことしかできなかった。

朝の4時をまわった頃、やっと孝明の息も整い始め洸太も眠りについた。


 ***
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