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第4話 婚約破棄を繰り返す男-4-
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とりあえず、今日、出来ることはここまでだ。
ラウル様に礼を言われて、帰路につく。
ハワードのお屋敷に戻る馬車の中で、アイザック様は楽しそうに話しはじめた。
「芝居とはいえ、君に物をねだられたことがないから新鮮だったな。何か欲しいものはないのか?」
うーん、そう言われましても。
宝飾品にはあまり興味はないし、必要なものはハワード公爵夫妻が用意してくださったから、不自由はしていないし、金銭的にこれ以上甘える気もない。
私の欲しいもの……。
「ぎゅーってしてください」
アイザック様はちょっと虚を突かれたような顔をしたが、すぐに私を抱き寄せた。
彼の逞しい胸に頬をつけて、存分に甘える。この時間がたまらなく好きだ。
彼は私の顎をくいと持ち上げるとゆっくりと時間をかけたキスをした。
「それはねだっていませんけど」
「いや、心の声が聞こえた」
「まあ、バレていましたか」
馬車が停まるまでの間、私たちは幾度となくキスを繰り返し、お互いの唇の感触を楽しんだ。
数日後、ラウル様がハワード家を訪ねてきた。
「実は気になって絵について調べてみたんです。入手経路をたどったら、サーバル画商に行きつきました。盗品や表立って売買できない美術品を数多く扱っているという悪名高い画商です。そこに顧客リストを提出させたら、なんとスタンリーが婚約破棄した令嬢の家が名を連ねていたんです」
「よく、顧客リストなんてもらえましたね」
「そこは職権乱用しました」
何かの事件の捜査だとでも言ったのだろうか、なかなかラウル様も大胆だ。
「とても偶然とはいいがたいな」
アイザック様は古参の執事を呼んだ。美術史に詳しくて、私も講義してもらっている。
「ゲリー・クロードという画家を知っているか」
「はい。遅咲きの天才と言われた画家ですね。遅筆だったので作品点数も少なく、コレクターの間ではとんでもない高値がついているものもあります。
トーマス・ウィリアムズ子爵がクロード作品の収集家として知られていましたが、20年ほど前でしょうか、美術品狙いの強盗にそっくり盗みだされたそうです」
「盗品はどうなったんだ?」
「ほとんどが闇市に流れたと噂で聞いております」
「犯罪関連なら王宮の資料保管庫に調査報告書が残っているはずだ。調べてみよう」
調査報告書には当時の様子が詳細に記されていた。
執事の言った通り、21年前にウイリアムズ子爵邸に強盗団が押し入った。子爵夫婦は惨殺され、クロードの絵画のほか、金目のものはすべて強奪された。そのあと火が放たれ屋敷は全焼した。
当時5歳だった一人息子は子守役の侍女が命からがら連れ出して無事だった。
息子は母方の親族に引き取られ、養子になったという。
「ここを見てください」
ラウル様がその親族の名を指さす。
「なるほど、なんとなくスタンリー氏の狙いが分かったような気がします」
事の真相を突き止めるため、カーラ嬢には申し訳ないが罠を張らせてもらうことにした。
「ラウル様、ふたつお願いがあります。ひとつ、私にあの絵をください。ふたつ、ご家族で旅行に行ってください」
ラウル様に礼を言われて、帰路につく。
ハワードのお屋敷に戻る馬車の中で、アイザック様は楽しそうに話しはじめた。
「芝居とはいえ、君に物をねだられたことがないから新鮮だったな。何か欲しいものはないのか?」
うーん、そう言われましても。
宝飾品にはあまり興味はないし、必要なものはハワード公爵夫妻が用意してくださったから、不自由はしていないし、金銭的にこれ以上甘える気もない。
私の欲しいもの……。
「ぎゅーってしてください」
アイザック様はちょっと虚を突かれたような顔をしたが、すぐに私を抱き寄せた。
彼の逞しい胸に頬をつけて、存分に甘える。この時間がたまらなく好きだ。
彼は私の顎をくいと持ち上げるとゆっくりと時間をかけたキスをした。
「それはねだっていませんけど」
「いや、心の声が聞こえた」
「まあ、バレていましたか」
馬車が停まるまでの間、私たちは幾度となくキスを繰り返し、お互いの唇の感触を楽しんだ。
数日後、ラウル様がハワード家を訪ねてきた。
「実は気になって絵について調べてみたんです。入手経路をたどったら、サーバル画商に行きつきました。盗品や表立って売買できない美術品を数多く扱っているという悪名高い画商です。そこに顧客リストを提出させたら、なんとスタンリーが婚約破棄した令嬢の家が名を連ねていたんです」
「よく、顧客リストなんてもらえましたね」
「そこは職権乱用しました」
何かの事件の捜査だとでも言ったのだろうか、なかなかラウル様も大胆だ。
「とても偶然とはいいがたいな」
アイザック様は古参の執事を呼んだ。美術史に詳しくて、私も講義してもらっている。
「ゲリー・クロードという画家を知っているか」
「はい。遅咲きの天才と言われた画家ですね。遅筆だったので作品点数も少なく、コレクターの間ではとんでもない高値がついているものもあります。
トーマス・ウィリアムズ子爵がクロード作品の収集家として知られていましたが、20年ほど前でしょうか、美術品狙いの強盗にそっくり盗みだされたそうです」
「盗品はどうなったんだ?」
「ほとんどが闇市に流れたと噂で聞いております」
「犯罪関連なら王宮の資料保管庫に調査報告書が残っているはずだ。調べてみよう」
調査報告書には当時の様子が詳細に記されていた。
執事の言った通り、21年前にウイリアムズ子爵邸に強盗団が押し入った。子爵夫婦は惨殺され、クロードの絵画のほか、金目のものはすべて強奪された。そのあと火が放たれ屋敷は全焼した。
当時5歳だった一人息子は子守役の侍女が命からがら連れ出して無事だった。
息子は母方の親族に引き取られ、養子になったという。
「ここを見てください」
ラウル様がその親族の名を指さす。
「なるほど、なんとなくスタンリー氏の狙いが分かったような気がします」
事の真相を突き止めるため、カーラ嬢には申し訳ないが罠を張らせてもらうことにした。
「ラウル様、ふたつお願いがあります。ひとつ、私にあの絵をください。ふたつ、ご家族で旅行に行ってください」
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