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第12話 カルヴィンの心変わり -2-
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社交シーズンも終盤に入り、夜会に参加する機会も増えた。
貴族として必要な付き合いだとはわかってはいたが、億劫でこれまではずっと敬遠してきた。しかし、今は着飾ったエリーゼを見るのが楽しかったし、周りから美しい人だと褒められるのも嬉しかった。こんなに素敵な女性が僕の妻なんだと、世の男たちに自慢して歩きたい気分だった。
初夏のガーデンパーティに、エリーゼを伴って出かけた。
大勢の招待客の中で、女性たちの関心を一身に集める一人の若い男がいた。初めて見る顔だった。パーティの主催者であるチェスター伯爵は事業を手広く活発に行っている。貴族ではなく、商売仲間だろうか。
目鼻立ちの整った黒髪の男はこちらを見て、驚愕の表情を浮かべた。
「まさか、リゼ?」
「ノア……」
エリーゼが息を呑むのがわかった。
「エリーゼ、知り合いなのか?」
「あ、あの、え、ええ。聖ユリダリス学院でクラスメイトだったんです」
エリーゼの顔が強張っている。こんなに狼狽えた彼女を見るのは初めてだった。
「お久しぶりです。グッドウィンさん。こちらは私の夫のカルヴィン・ボークラーク侯爵ですわ」
「……侯爵」
「ええ。結婚して、今は私は侯爵夫人なの」
「そうでしたか。侯爵閣下、私はノア・グッドウィンと申します。奥様と面識があったとはいえ、突然声をかけたことお詫びいたします」
ノアは失礼、と一礼すると背を向けて行ってしまった。
エリーゼの取り乱し方からして、ただの学友ではないのだろう。
「彼と何があったの?」
「いいえ、何もありません。まさかこんな遠く離れたところで元同級生と会うとは思わなくて、驚いただけです」
「そう……」
取り繕うエリーゼに対して、今はそれ以上、追及はできなかった。
その日以来、エリーゼから笑顔が消えてしまった。務めて明るくふるまってはいるが、明らかに覇気がない。使用人たちもエリーゼの変化を心配していた。
「大至急、調査を頼みたいことがある」
秘書に命じて、ノア・グッドウィンについて調べさせた。
間もなくして報告書が届いた。
ノア・グッドウィンはエリーゼの言うように聖ユリダリス学院の同級生だった。在学時には恋人同士だったが、エリーゼの中等科卒業と同時に付き合いは途絶えたらしい。
ノア自身は高等科を卒業後、曽祖父が起こした家業の酒造業を継ぎ、若社長として精力的に仕事をしているようだ。昨年、学院の後輩だったスザンナ・ジョンソンと結婚し、今、細君は妊娠中。
ガーデンパーティから一週間後、エリーゼは一人で外出して数時間戻らなかった。帰宅してからは、私室に閉じこもり、翌日になっても具合が悪いと言って出てこようとしなかった。侍女によると、ベッドで臥せったまま、食事もスープなどを少量、口にするだけらしい。
体を壊さないか心配だったが、カルヴィンは部屋を訪ねることができないでいた。エリーゼの気持ちを確認するのが怖かったからだ。
十中八九、昔の恋人に会ってきたのだろう。もし、あの男のところに戻りたいと言い出されたら、引き留めることができるだろうか。
エリーゼを手放すなど考えられない。カルヴィンは膠着状態に陥っていた。
貴族として必要な付き合いだとはわかってはいたが、億劫でこれまではずっと敬遠してきた。しかし、今は着飾ったエリーゼを見るのが楽しかったし、周りから美しい人だと褒められるのも嬉しかった。こんなに素敵な女性が僕の妻なんだと、世の男たちに自慢して歩きたい気分だった。
初夏のガーデンパーティに、エリーゼを伴って出かけた。
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「まさか、リゼ?」
「ノア……」
エリーゼが息を呑むのがわかった。
「エリーゼ、知り合いなのか?」
「あ、あの、え、ええ。聖ユリダリス学院でクラスメイトだったんです」
エリーゼの顔が強張っている。こんなに狼狽えた彼女を見るのは初めてだった。
「お久しぶりです。グッドウィンさん。こちらは私の夫のカルヴィン・ボークラーク侯爵ですわ」
「……侯爵」
「ええ。結婚して、今は私は侯爵夫人なの」
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ノアは失礼、と一礼すると背を向けて行ってしまった。
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「彼と何があったの?」
「いいえ、何もありません。まさかこんな遠く離れたところで元同級生と会うとは思わなくて、驚いただけです」
「そう……」
取り繕うエリーゼに対して、今はそれ以上、追及はできなかった。
その日以来、エリーゼから笑顔が消えてしまった。務めて明るくふるまってはいるが、明らかに覇気がない。使用人たちもエリーゼの変化を心配していた。
「大至急、調査を頼みたいことがある」
秘書に命じて、ノア・グッドウィンについて調べさせた。
間もなくして報告書が届いた。
ノア・グッドウィンはエリーゼの言うように聖ユリダリス学院の同級生だった。在学時には恋人同士だったが、エリーゼの中等科卒業と同時に付き合いは途絶えたらしい。
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体を壊さないか心配だったが、カルヴィンは部屋を訪ねることができないでいた。エリーゼの気持ちを確認するのが怖かったからだ。
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