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第13話 エリーゼの恋 -1-
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夏の暑さも和らいだ初秋、聖ユリダリス学院は入学シーズンを迎えていた。
白を基調にしたジャケットとボトム、胸元にはネイビーのリボン。新しい制服に身を包んだ新入生たちで講堂はざわついていた。これから入学式が執り行われる。
エリーゼもその中で、自分に割り当てられた座席を探していた。
――――Cクラスの15番か、……あった!
「ふうっ」
ドサッと勢いよく腰を下ろし、背もたれに体を預ける。あまりの人の多さにすっかり気疲れしてしまった。
「ねえ、名前なんていうの」
ふいにとなりの男子生徒から話しかけられ、慌てて姿勢を正す。
磨き抜かれた漆のような深みのある黒い髪。整った顔立ちだが、やや垂れ目がちな瞳が柔らかさと愛嬌を醸し出している。
「エリーゼよ。エリーゼ・アースキン。よろしくね」
「すごく可愛いね」
「え、なっ、いきなりなに言ってるの」
「おれは、ノア・グッドウィン」
赤面するエリーゼの手を取り、強引に握手をしてきた。大きな手がエリーゼのほっそりとした指を包みこむ。
「えっ!ちょっと!」
男の子に触られることに慣れていないエリーゼは手を振りほどこうとするが、ノアはもっと強い力で握りしめてくる。
「ねえ、離して」
「了解」
ノアは微笑みながら、ぱっと手を放した。エリーゼはさっと手を引っ込め、ノアから顔を反らす。しかし、まだ視線を感じる。どうやら、ずっと見られているらしい。
――――何なのよ、もう!
入学式の間、隣の席が気になり、先生たちの話はまるで頭に入ってこなかった。
ノアはあっという間に1年生の人気者になっていた。ただ美形というだけでなく、太陽のように明るく人を引き付ける魅力がある。彼のいるところにはいつも人が集まっていた。
どちらかというと人見知りでおとなしいエリーゼは、ノアとは対極にいる存在であり、入学式以降はほとんど接点がなかった。顔こそ美人の部類に入っているが、おしゃれが苦手で垢ぬけないところがあり、華やかな女子たちに対して密かにコンプレックスを抱いていた。
そんなエリーゼにも気になる男の子はいた。同じ図書委員の一つ年上の先輩のマーク・ウェブスターはインテリ系の落ち着いた男子生徒で、委員になった時からずっと憧れていた。本の趣味が似ているので話も合う。マークもエリーゼを気にかけ、面倒をよくみてくれた。
2年生に進級し新入生が入ってくると、ノアはさっそく下級生にもファンを増やしていた。なかでもスザンナという1年生は本気でノアが好きらしく、人目も憚らずにアタックしている。
そんなノアのことをエリーゼは遠巻きに見ているだけだった。
白を基調にしたジャケットとボトム、胸元にはネイビーのリボン。新しい制服に身を包んだ新入生たちで講堂はざわついていた。これから入学式が執り行われる。
エリーゼもその中で、自分に割り当てられた座席を探していた。
――――Cクラスの15番か、……あった!
「ふうっ」
ドサッと勢いよく腰を下ろし、背もたれに体を預ける。あまりの人の多さにすっかり気疲れしてしまった。
「ねえ、名前なんていうの」
ふいにとなりの男子生徒から話しかけられ、慌てて姿勢を正す。
磨き抜かれた漆のような深みのある黒い髪。整った顔立ちだが、やや垂れ目がちな瞳が柔らかさと愛嬌を醸し出している。
「エリーゼよ。エリーゼ・アースキン。よろしくね」
「すごく可愛いね」
「え、なっ、いきなりなに言ってるの」
「おれは、ノア・グッドウィン」
赤面するエリーゼの手を取り、強引に握手をしてきた。大きな手がエリーゼのほっそりとした指を包みこむ。
「えっ!ちょっと!」
男の子に触られることに慣れていないエリーゼは手を振りほどこうとするが、ノアはもっと強い力で握りしめてくる。
「ねえ、離して」
「了解」
ノアは微笑みながら、ぱっと手を放した。エリーゼはさっと手を引っ込め、ノアから顔を反らす。しかし、まだ視線を感じる。どうやら、ずっと見られているらしい。
――――何なのよ、もう!
入学式の間、隣の席が気になり、先生たちの話はまるで頭に入ってこなかった。
ノアはあっという間に1年生の人気者になっていた。ただ美形というだけでなく、太陽のように明るく人を引き付ける魅力がある。彼のいるところにはいつも人が集まっていた。
どちらかというと人見知りでおとなしいエリーゼは、ノアとは対極にいる存在であり、入学式以降はほとんど接点がなかった。顔こそ美人の部類に入っているが、おしゃれが苦手で垢ぬけないところがあり、華やかな女子たちに対して密かにコンプレックスを抱いていた。
そんなエリーゼにも気になる男の子はいた。同じ図書委員の一つ年上の先輩のマーク・ウェブスターはインテリ系の落ち着いた男子生徒で、委員になった時からずっと憧れていた。本の趣味が似ているので話も合う。マークもエリーゼを気にかけ、面倒をよくみてくれた。
2年生に進級し新入生が入ってくると、ノアはさっそく下級生にもファンを増やしていた。なかでもスザンナという1年生は本気でノアが好きらしく、人目も憚らずにアタックしている。
そんなノアのことをエリーゼは遠巻きに見ているだけだった。
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