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第1話 転生したらチートできるんじゃなかったんですか?
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3か月間休みなしの連続勤務、残業は月に平均150時間。
とうとう体が限界を迎えていた。
心臓が猛烈に痛み、呼吸も満足にできない。
意識が薄れてゆく。
これが過労死か。
鏑木大輔、26歳。
ゲームだけが癒しの社畜生活。
彼女どころか女友達もできたことがない。
いいさ、いいことなんか何もなかった現世に未練なんかない。
もし生まれ変われるなら、大好きなRPG『ワイバーンクエスト』に勇者として転生できますように。
ゲーム機を抱きしめて、俺はこの世を去った……。
『ワイバーンクエスト』
それは、国民的ゲームとも呼ばれる日本を代表する人気のオンラインゲームだ。
プレイヤーは勇者になってストーリーを進める、あるいはオープンワールドで冒険者となって、単体で好きなクエストをこなしたり、ギルドを結成しチーププレイで難易度の高いミッションに挑んだりと、幅広い楽しみ方ができる。
目を覚ました俺は、草原に横たわっていた。
心地よい風がやさしく草木を揺らし、さやさやと音をたてる。
右手には麻でできた袋を握りしめていた。
体を起こし、袋の中を除く。
ひのきの棒、皮の服、皮の帽子、皮のブーツ。スタート時に勇者に与えられる装備だ。
やったーーーーー!!!
念願かなって俺は『ワイバーンクエスト』に勇者として転生できたんだ!
俺は飛び起きると、跳ねるように駆けだした。
さようなら、社畜人生!俺には明るい未来が待っている!
オールダム城の城下町に着いた。
ゲームのストーリー通り、旅人の酒場の扉を開ける。
酒場はたくさんの冒険者たちでにぎわっていた。
ここではパーティを組む仲間を探すことができる。
どんなメンバーがいいかな。
ベーシックな組み合わせが好みな俺としては、魔法使いと僧侶は必須。
攻撃役は、戦士か武道家か、どっちにしようか?
ラスボスの魔王を倒すまで長く連れ添う仲間なんだから、じっくり選びたい。
ハーレムが夢だけど、男女のバランスはとった方がいいだろうか。
つらつら考えていると、筋骨隆々の戦士が飛び込んできた。
「おい、みんな聞いてくれ!勇者様が現れたぞ!!」
おおおおおっ!と盛り上がる冒険者たち。
うわ!どきどきしてきた。
いよいよ始まる、俺の冒険が!
「それで、勇者様は今はどちらにいらっしゃいますの?」
魔法使いの娘が問う。
緊張マックス!!!
はいはーい、俺はここにいますよ!
「先ほど、王様から勅命を受けて、パーティを引き連れてお城を出発されたそうだ」
は?
は?
え?
あれ?俺、出発どころか、まだ仲間も見つけていませんけれど?
さらに盛り上がる酒場を飛び出し、オールダム城へ向かった。
何時間もやりこんだゲームだから、地図は頭に入っている。
広場では瓦版が配られていた。
「偽勇者を見つけたものは直ちに保安官へ連絡してくれ!!」
人々がざわついている。
落ちていた瓦版を拾ってみると、「Wanted」の文字の下に、俺の似顔絵があった。
とっさにフードをかぶり、顔を隠す。
速足で城下町を抜け出した。
とにかく人のいない方へいかなければ。
馬車道を外れ、草原を進む。
牧場の納屋を見つけたので、とりあえず身を隠すことにした。
どういうことだ?
手配書を改めてながめる。
勇者の偽物が現れたので見つけ次第すぐに通報するようにと書かれている。
察するに、俺ともう一人誰かが同じタイミングで死に、このゲームに転生された。
一つのゲームに勇者は二人要らない。
タッチの差でそいつが勇者となり、ただのバグとなった不要な俺を排除しようというのだろう。
元の体はたぶんもう火葬されてしまっているだろうから現世に戻ることは出来ないし、この世界で死罪になるのも牢獄に繋がれるのもごめんこうむりたい。
なんとしても、逃げ延びなければ。
せっかく勇者に生まれ変われるはずだったのに、なんでこんなことになってしまったんだ。
俺は泣き出したかった。
納屋の外が騒がしくなった。
村人で結成した自警団が見回りをしているらしい。
いくつかある納屋をひとつずつ開けて調べているようだ。
ここにいたらみつかる。
納屋から出て、そっと忍び足で遠ざかる……つもりだったが、
「ワン!ワン!ワン!」
犬が俺を見つけて吠え始めた。
「いたぞ!!!」
自警団がいっせいにこちらに向かってくる。
全力で走った。
走って、走って、走って、たしか、この先は崖になっていたはず……。
そう、思い出した時には遅かった。
俺の体は宙に浮かび、そのまま転げ落ちていった……。
とうとう体が限界を迎えていた。
心臓が猛烈に痛み、呼吸も満足にできない。
意識が薄れてゆく。
これが過労死か。
鏑木大輔、26歳。
ゲームだけが癒しの社畜生活。
彼女どころか女友達もできたことがない。
いいさ、いいことなんか何もなかった現世に未練なんかない。
もし生まれ変われるなら、大好きなRPG『ワイバーンクエスト』に勇者として転生できますように。
ゲーム機を抱きしめて、俺はこの世を去った……。
『ワイバーンクエスト』
それは、国民的ゲームとも呼ばれる日本を代表する人気のオンラインゲームだ。
プレイヤーは勇者になってストーリーを進める、あるいはオープンワールドで冒険者となって、単体で好きなクエストをこなしたり、ギルドを結成しチーププレイで難易度の高いミッションに挑んだりと、幅広い楽しみ方ができる。
目を覚ました俺は、草原に横たわっていた。
心地よい風がやさしく草木を揺らし、さやさやと音をたてる。
右手には麻でできた袋を握りしめていた。
体を起こし、袋の中を除く。
ひのきの棒、皮の服、皮の帽子、皮のブーツ。スタート時に勇者に与えられる装備だ。
やったーーーーー!!!
念願かなって俺は『ワイバーンクエスト』に勇者として転生できたんだ!
俺は飛び起きると、跳ねるように駆けだした。
さようなら、社畜人生!俺には明るい未来が待っている!
オールダム城の城下町に着いた。
ゲームのストーリー通り、旅人の酒場の扉を開ける。
酒場はたくさんの冒険者たちでにぎわっていた。
ここではパーティを組む仲間を探すことができる。
どんなメンバーがいいかな。
ベーシックな組み合わせが好みな俺としては、魔法使いと僧侶は必須。
攻撃役は、戦士か武道家か、どっちにしようか?
ラスボスの魔王を倒すまで長く連れ添う仲間なんだから、じっくり選びたい。
ハーレムが夢だけど、男女のバランスはとった方がいいだろうか。
つらつら考えていると、筋骨隆々の戦士が飛び込んできた。
「おい、みんな聞いてくれ!勇者様が現れたぞ!!」
おおおおおっ!と盛り上がる冒険者たち。
うわ!どきどきしてきた。
いよいよ始まる、俺の冒険が!
「それで、勇者様は今はどちらにいらっしゃいますの?」
魔法使いの娘が問う。
緊張マックス!!!
はいはーい、俺はここにいますよ!
「先ほど、王様から勅命を受けて、パーティを引き連れてお城を出発されたそうだ」
は?
は?
え?
あれ?俺、出発どころか、まだ仲間も見つけていませんけれど?
さらに盛り上がる酒場を飛び出し、オールダム城へ向かった。
何時間もやりこんだゲームだから、地図は頭に入っている。
広場では瓦版が配られていた。
「偽勇者を見つけたものは直ちに保安官へ連絡してくれ!!」
人々がざわついている。
落ちていた瓦版を拾ってみると、「Wanted」の文字の下に、俺の似顔絵があった。
とっさにフードをかぶり、顔を隠す。
速足で城下町を抜け出した。
とにかく人のいない方へいかなければ。
馬車道を外れ、草原を進む。
牧場の納屋を見つけたので、とりあえず身を隠すことにした。
どういうことだ?
手配書を改めてながめる。
勇者の偽物が現れたので見つけ次第すぐに通報するようにと書かれている。
察するに、俺ともう一人誰かが同じタイミングで死に、このゲームに転生された。
一つのゲームに勇者は二人要らない。
タッチの差でそいつが勇者となり、ただのバグとなった不要な俺を排除しようというのだろう。
元の体はたぶんもう火葬されてしまっているだろうから現世に戻ることは出来ないし、この世界で死罪になるのも牢獄に繋がれるのもごめんこうむりたい。
なんとしても、逃げ延びなければ。
せっかく勇者に生まれ変われるはずだったのに、なんでこんなことになってしまったんだ。
俺は泣き出したかった。
納屋の外が騒がしくなった。
村人で結成した自警団が見回りをしているらしい。
いくつかある納屋をひとつずつ開けて調べているようだ。
ここにいたらみつかる。
納屋から出て、そっと忍び足で遠ざかる……つもりだったが、
「ワン!ワン!ワン!」
犬が俺を見つけて吠え始めた。
「いたぞ!!!」
自警団がいっせいにこちらに向かってくる。
全力で走った。
走って、走って、走って、たしか、この先は崖になっていたはず……。
そう、思い出した時には遅かった。
俺の体は宙に浮かび、そのまま転げ落ちていった……。
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