転生した元社畜ですがタッチの差で勇者の座を奪われたので紆余曲折あって魔王代理になりました ~魔王城の雑用係の立身出世術~

きのと

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第10話 魔王様の真実

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俺はこの生活がすっかり気に入っていた。
勇者になれなかったときは絶望もしたけれど、今は最高に充実している。

相棒は元気が過ぎるけど面白くて良い子だし、上司は部下思いで頼りがいがある。
好きな女の子も出来た。
モンスターたちは気のいい奴ばかりだ。荒っぽかったり、がさつだったり、言葉が悪いやつもいるけど、決して意地悪をしたりしない。
はるか上位ランクでも、地位を振りかざすような真似はせず、誰にも対等に接している。
会社員時代の同僚たちとは大違いだ。


そんな雑用係ライフを謳歌していたある日、魔王から呼び出しがかかった。
何かしでかしただろうか??
オロオロうろたえる俺を、ラヴィは白いハンカチを振りながら見送ってくれた。


漆黒の大広間に来るのは魔王城に初めて連れてこられたとき以来だ。
玉座の魔王のほかに、側近のレッドワイバーンのレオンハルト宰相、ブルーワイバーンのヴォルフラム軍師も揃っている。
俺はガチガチに緊張していた。

「ダイよ、心して聞いて欲しい」

穏やかだが力のこもった声だった。

「勇者含む冒険者たちが魔王を倒そうと躍起になってるのは何故かわかるか。それは私がこの世界のバグだからだ」
「え?」
「『ワイバーンクエスト』なのになぜワイバーンがトップではないか不思議だと感じたことはなかったか?」

ゲーム開発が最終段階に入ったときにデバッカーが疲労で倒れ、わずかなバグが残ったまま発売の日を待つことになった。
はじめはちっぽけだったバグが徐々に力をつけていき、どのモンスターよりも強大な存在となった。
当時の最高権力者だったワイバーンの二頭とは血みどろの戦いを繰り広げたが、やがてお互いを認め合うようになる。
そしてバグが魔王となり、ワイバーンが宰相、軍師としてそれを支える、現在の態勢ができた。

そして、近々、大規模なバージョンアップが行われることがわかった。


「私は大きくなり過ぎた。今度こそ取り除かれるだろう。そこで、お前に跡を継いでもらいたい。まだ発生したばかりのお前なら発見されずに済むだろう」

俺が次の魔王???
どうしてそうなる!無理!絶対!無理!

「お言葉を返すようですが、それなら、俺なんかよりも、ワイバーンのおふたりがトップの座に就くのが筋ではないでしょうか」

レオンハルト宰相が口を開いた。

「我々がトップだったころの魔王城は暴力が支配していた。力だけがすべて、力の強いものが弱いものを嬲る、もうそのような組織にはしたくないのだ。モンスターが権力の座に就くと、どうしても下の者の気持ちを忘れてしまいがちになる。お前はまだしがない雑用係だが、だからこそ組織をまとめる力があると信じている」

ヴォルフラム軍師が続けた。

「バグの追い詰められた時の強さは魔王を見てきたからわかっている。おまえもいずれ強くなる日が来る」

そして、魔王は俺を諭すように言った。

「組織のために個があるのではない。個が自分らしく生きるために組織は存在する。私は魔王城をそのようにしたいと願い、行動してきた。お前ならその意思を継いでくれるだろう」
「魔王様……」

同じバグだというだけで、なぜこんなに買いかぶられているのか理解できない。
でも間違ってもお断りできる雰囲気ではない。

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