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第11話 魔王代理爆誕!

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「とはいえ、いきなり魔王になれというのは厳しいだろう。まずは魔王代理として仕事をして欲しい」

魔王代理とな?

「現在、勇者がデルタ地区まできている。お前に迎え撃ってもらいたい。その成果があれば、魔王城の皆もお前を新魔王として受け入れやすくなるだろう」

考えたくはないが、もしデバッグされてしまうなら、魔王にとっては最期の勇者との対決となる。
ならば、最高の花道を用意したい。
せめてもの恩返しだ。


ヴォルフラム軍師に連れられ、モニタールームに向かった。
このフロアは上位モンスターしか入れないから、俺が来るのは初めてだった。

ここでは全フィールドの冒険者たちを監視していている。
人が一か所に集中したり、手持ち無沙汰にならないようにバランスよくモンスターを配置するためだ。

なかでも勇者は専用のモニターで一挙手一投足を徹底的にマークしている。

「これが勇者だ」
「こ、こいつは!!」 

勇者はかつての同僚、マーケティング部の陽キャの王様、伊集院だった。
同期No,1美女をはじめ、会社のめぼしい美人を残らず食い散らかし、もっと環境のいい職場がいいと、わずか3年で退職していった。
風のうわさでは、そのあとは親から資金提供してもらい、IT企業を設立。
仕事はまるっと親の用意した部下にまかせ、若手実業家という肩書をちらつかせてはアイドルや若手女優にまで手を伸ばしているという。
イケメン、実家は資産家。
それだけならまだ許せる。親ガチャでSSRを引き当てる奴もいるだろう。世の中平等なんかじゃない。

俺には会社員時代に好きな女性がいた。
鈴森麻衣子。
一つ年下の後輩で営業補助の仕事をしていた。
控えめで目立たないが、チー牛の俺にも笑顔で話しかけてくれる優しい子だった。
映画にでも誘おうか勇気を振り絞ろうとしていたある日、給湯室で数人の女子社員たちが話しているのを聞いてしまった。

「ねえ、鈴森さん、伊集院くんと付き合っているって本当?」
「女癖悪いって評判じゃん。秘書課の牧田さんとか、経理の山之内さんとか、総務の早川さんとか、受付嬢だった橋口さんと付き合ってたよね」
「あと、人事の岸さんでしょ、そうそう、広報課の三宅さんもそうだったよ」

同僚たちの心配をよそに、彼女は明るく答えた。

「今は会社の人とはみんな別れているっていうから大丈夫、信じてみる」

そう、やつは確かに社内の女性とは別れていた。
しかし、取引先のバリキャリ、学生時代の同級生、合コンで知り合ったCA、銀座のキャバ嬢他、社外の女とは10人以上同時進行で付き合っていた。

鈴森さんと交際を始めてから3か月後に、伊集院は読モ出身女性との婚約を発表した。
他に本命女性がいたこと、自分が10番手の女だったことだけでも十分なショックだったろう。
二人の関係は社内で知れ渡っていたから、皆から同情のまなざしと、言わんこっちゃないという憐みの視線を向けられ、彼女は耐えきれず退職してしまった。
俺は思い切ってLINEしてみたが、ブロックされていた。

社畜生活のささやかな癒しだったのに。
俺の天使をあいつは傷つけた!!!

なお、読モの結婚相手とは半年持たずに離婚したらしい。

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